9.
「それは、確かなのか?」
彼は、フランクリンに尋ねた。
「ええ、実は私、アリス様を見つけて、直接会ったのです。彼女は居場所を報告しないでくれと私に頼みました。そして、いろいろと事情を話してくれました。ブラウン侯爵家の誰かに、命を狙われているのだそうです。殺し屋を差し向けられたのだそうですよ」
フランクリンが、いろいろと説明してくれた。
「なるほど、事情は分かった。しかし、それならなぜ、私にこの話をしたんだ? 知っての通り、私はブラウン侯爵家の子息だぞ。私がその殺し屋を差し向けた犯人かもしれないじゃないか」
彼はフランクリンに対して警戒を強めた。
「ええ、もちろんわかっています。私がこの話をしたのは、お金のためです。この情報の見返りに、報酬が欲しいのです。母が病気で、どうしてもお金が必要なのです。兵士としての仕事だけでは、とても足りなくて……」
「なるほど、事情は分かった。もし、私がその犯人でなかった場合はどうする?」
「その場合は、今の話は聞き流していただけると助かります。もちろん、処分を下されると言うなら、受け入れるつもりです。私はそれだけのことをしたのですから。もし、見逃していただけたら、ほかのご兄弟にも、今の話を聞いてもらうつもりです。確か、皆さん仲が悪いので、別々の屋敷にお住まいなのですよね?」
「そうだ。だが、彼らのところへは行かなくていい」
彼は笑った。
フランクリンはまだ、ほかの兄弟に今の話を知らせていないのだ。
つまり、彼がアリスに殺し屋を差し向けようとしていることを、ほかの兄弟はまだ知らない。
アリスが国外に追放された時はどうしようかと思ったが、ようやく運が回ってきたようだ。
「フランクリン、ほかの兄弟に報告する必要はないぞ。私が、アリスに殺し屋を差し向けた犯人だからだ」
彼は正直に答えた。
しかし、彼は用心深いので、フランクリンがアリスと協力している可能性もゼロではないと思っていた。
なので、彼は心配の芽を摘むことにした……。