表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

1.

「いきなりのことで申し訳ないが、君との婚約は破棄する」


 侯爵令嬢であるアリス・ターナーは、婚約者であるライアン第二王子に婚約破棄を言い渡された。


「さらに、君をこの国から追放する」


 しかも、この国からも出て行くようにも言われた。

 しかし、なんだか彼の様子がおかしい。

 

「あの、いきなりのことでよくわからないのですが、どうして婚約破棄をしなければいけないのですか? それに、この国から追放なんてあんまりです」


「そ……、それは、えっと……、僕は君の顔を二度と見たくないからだ。だから、この国から追放する」


 彼は言葉を詰まらせながら言った。

 普通こういう場面ではもっと堂々とすると思うけれど。


「それに、ライアン王子、あなたに私を追放する権限はないはずです。その権限を持っているのは、国王陛下だけなのではないですか?」


「ああ、通常の場合はそうだ。しかし、陛下が病気などで執務を執行できない場合に限り、代わりに僕が権限を行使することができる」


 言われてみたら、そんな決まりがあった気がする。

 もっと彼に言いたいことはあった。

 しかし、決定事項に逆らうことはできず、アリスは国を出ることになった。


「あぁ、なんでこんなことになったんだろう……」


 アリスは王都から馬車に乗って移動した。

 そして、町から離れたところで馬車から降ろされた。

 ここからは歩いて行けということだ。

 アリスは歩いて国境を超えた。

 それを見届けると、馬車は去っていった。


「ライアン王子、いったい、どうして……」


 ライアン王子とはいい関係を築けていただけに、ショックは大きかった。

 きっかけは政略結婚のためだが、アリスはライアン王子のことを愛していたし、彼も愛してくれていると思っていた。

 大きくため息をついていると、うしろから誰かが大きな声でアリスの名を呼んでいることに気付いた。

 振り返ると、そこにいたのは馬車に乗ったライアン王子だった。


「おーい、アリス! 待ってくれぇ!」


 意味が分からなかった。

 どうして、婚約破棄して追放した相手を追ってきているのだろう。

 もしかして、何か理由があるのだろうか……。

 さっきの婚約破棄と追放には、裏に知られざる理由があるのかもしれない。


「大事な話があるんだ! 聞いてくれ!」


 どんどんこちらに近づいてくるライアン王子。

 うーん、状況がまったく呑み込めない。

 彼の話を聞くべきなのだろうか。

 それとも、これは何かの罠なのだろうか。

 アリスの三メートル手前で、馬車が止まった。

 ライアン王子は馬車から降りようとしている。

 

 それを見てアリスは……、とりあえず全力で逃げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ