表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

1


 僕は現在「迷子」になっている。「迷子」といっても、知らない道に入っていってしまったわけではない。まあ、知らない道いうか場所ではあるのだけれども。僕のいう迷子は世界規模の迷子だ。


 まず、目の前には荒野だ。木が全然ない。というかこれは木なのだろうか、葉っぱが固い、サボテンの親戚かな。そして見たことのない生物、なにこれ、見たことがない鳥だな、なぜか知らないけどついてくる。まあ、まさに知らない土地って感じだ。


 つい先程まで周りは荒野ではなかった。僕は中学生の夏休みで、なにかないかと外をフラフラと歩いていた。あのとき突然暗幕が下りてきて、気がつくと僕はここにいた。


 なんてことだ、なにが起きていたのかさっぱりわからない。それはつまり来た道がわからないということだ。帰り方がわからない。だから「迷子」なのである。


 僕はどのようにこの場所に来たのかを考えた。そしてそれは僕が抱えるもう一つの問題にも関わっているのだろうと思う。


 その問題は、僕が、女の子になっている、ことだ。なんだこれ。(2回目)女の子だ、丁度、僕くらいの年齢の。身長は少し伸びたのだろうか。髪は伸びた。僕の下半身にあったアレはいつのまにやらなくなっていた。


 おそらくこのようになった理由はなにかしらの超常現象だろう。こんなことが自然の摂理であってたまるか。僕は生まれてこのかた超常現象なんてフェイクニュースだと思っていました。今もそうであって欲しかったと思っています。クソが。どうすればいいっていうんだこんな事態。


 とにかく、僕は見知らぬ土地で迷子になってしまったこと、そして体が女の子になってしまったことからなにか人間が与り知らないことに巻き込まれたことを悟った。なにがなんだか、さっぱりわからない。どうしよう…。



 目を覚ましてから5日近くが経過した。ここは荷馬車の中。具体的にいうと奴隷商の荷馬車の中。僕は人さらいに攫われている途中であった。


 初日に攫われたことは幸運だったのかもしれない。延々と続く荒野を見た僕は思った。間違いなく、飢えて死んでた。なんの準備もなく何日もこの道を歩くのは無理だったろう。


 ここ最近は外からの光を眺めていた。それ以外にやれることがないのだ。退屈だ。


 他の捕まってる人たちは話しかけてこない。話すと鞭でも跳んでくるのだろうか。それにしてはこちらに敵意を持っているような気がする。


 人攫いから商人らしき人に売られて幾日か。意外と奴隷の待遇はよろしかった。ご飯は少ないが1日2食でる。トイレ休憩もしっかりあった。声を出したら鞭打ちにされるけど。


 延々と続く荒野を見た僕はこのまま町まで捕まっておくことにした。奴隷になるわけではない。今すぐにでも自由の身になりたい。ただ、ここで逃げ出すのはあまりにも無謀だ。こんなところに放り出されては野垂れ死にしてしまうだろう。だから今は機会を待つのだ。


 ただ、暇なものは暇である。現代人にとってスマホのない時間は拷問だ。


 体をほぐすために身じろきした。するとギロリとした目つきが僕に突き刺さる。その目つきに僕はおとなしくすることにした。なんでこんなに睨まれてるのだろう……。


 格子からの光を眺めていたら、一羽の鳥が格子の外から潜り込んできた。インコくらいの大きさをした鳥だ。そいつは僕の膝の上に留まった。


 こいつは僕が捕まった日からついてくる鳥だ。何故か僕に懐いており、この退屈な時間の唯一の楽しみである。


 よしよしと、撫でてやる。すると気持ち良さげに眼を細める。愛い奴め。あいにく今日はパンクズを持っていない。ごめんな…。


「あんた、ベリタカを可愛がるなんて、変な奴だねぇ」


 突然、隣のおばさんがぽつりと呟いた。


「え、あ、はい。え、そうですか?」

「そうだよ。ああ、ここらの奴じゃないのか。それはそうか。」


 そういうと、おばさんは納得したのか、会話は止まった。


 ……。


「あの、なんでここらの人じゃないってわかったのですか。」

「ん?そりゃ肌の色が違ったらわかるよ。」


 あ、そうか。そりゃそうだ。どの顔つきも欧米の人のそれだ。周りの人たちは目をまんまるとしておばさんを見つめている。


「そういえば、肌の色が違うのに言葉が達者だね。どこから来たんだい?」


 おばさんが僕に質問してきた。そういえば、明らかに外国なのに言葉は通じる。不思議だ。


「えっと、僕、実は迷子なんです。本当は別のところにいたんですけれども、気がつけばここに。」

「あぁ、だからベリタカに懐かれているのか。」

「えっと、この子になにかあるのですか?」


 鳥をおばさんに見せる。おばさんは哀れむような目で僕に告げた。


「そいつは不幸の象徴なのさ。そいつに好かれたら一生ついてまわられる。そして、不幸をプレゼントしてくるんだよ。だからあんまり関わっちゃダメなんだよ。」


僕はまじまじと手元を見つめた。じっと此方を見つめ返す目があった。


 ……あれ?周りから避けられるのってコイツのせい?

2021.8.8 文章の構成変更

2022.12.16 内容変更

2022.12.18一部修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ