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リアル

作者: 烏猫秋


 子供が海に(おぼ)れて、意識不明の重態で見つかったという記事を読んで、普通の人なら「可哀想(かわいそう)だ」「気の毒だ」などの哀れを(もよお)すだろう。だが、僕のような天の邪鬼(じゃく)は、溺れることを理解した上で、海に飛び込んだのではないかと思惟(しゆい)する。つまり、僕が言いたいことは、子供は自分探しのために溺れたのではないかということだ。

 子供ながらにして、厭世(えんせい)主義の思想を持つことはあり得ると僕は思惟する。厭世主義の代表者として認知されているドイツの哲学者、ショーペンハウアーはこう言っている。


『孤独を愛さない人間は、自由を愛さない人間になってしまう。なぜなら、孤独でいるときにのみ、人間は自由になれるのだから。』


 子供は自由の獲得(かくとく)のために、死という最大の孤独を選んだのだと僕は思惟する。

 大人になり、子供と話しているとよく思うことがある。それは、話の内容を理解し()ねるということだ。子供が大人の話を理解できないことはよくある。話が晦渋(かいじゅう)で子供には理解できないからだ。この場合は、無智(むち)世事(せじ)(うと)いから、といって理由をつけることができるが、大人が子供の話を理解できないのはどう説明するのか。おそらく、万人に合点がいくと言わせる理由を見つけることは、容易ではないはずだ。

 


 ここで、どんな子供が厭世主義のような思想を無意識の内に持ち始めるのかを述べたいと思う。僕は、大きく二つの原因・理由があるのではないかと思惟する。

 第一に()げられるのは、厭世主義の対義語である楽天(らくてん)主義の存在だ。僕は、厭世主義という語は、楽天主義との差異(さい)によってはじめて意味をもつものだと思惟している。(ゆえ)に、楽天主義の思想が存在しなければ、厭世主義の思想も存在せず、その逆もまた(しか)りだ。

 人間個人には、言葉では表すことのできない多様性があると、僕は思惟する。断行(だんこう)して例えるなら『色』だ。ある人は青で、ある人は青と赤をもっているとしよう。ここで(わか)ることは、青をもつ人は一通りの色しか表すことしかできず、類比(るいひ)して、青と赤をもつ人は三通りの色を表すことができる。その三通りの色は青、赤、紫だ。この場合では、紫は青と赤の融合(ゆうごう)色と言うこともできるだろう。

 このように、人間の多様性には個人差があり、多様性はその人自身の性格だ。そのことを踏まえた上で、もう一つの原因・理由を述べたいと思う。



 第二に挙げられるのは、児童虐待(ぎゃくたい)だ。児童虐待と一括(ひとくく)りで言っても、僕がここで取り上げるのは、育児放棄(ほうき)(ネグレクト)の家庭環境下で育てられた子供についての話だ。

 一般に、教育的影響的としての家庭環境には、自然的物的側面、経済的側面、社会的価値側面、人間関係的相互作用的側面の四つがある。今回取り上げている育児放棄の家庭環境下で育てられた子供に最も欠落(けつらく)しているのは、人間関係的相互作用的的側面だと僕は思惟する。育児放棄された子供は本能的に親とコミュニケーションを取ろうとするが、親はそれに反応しない。これでは、人間関係が相互的に成り立っているとは到底(とうてい)思惟できない。

 子供が親に似るのは幼少の頃だけでなく、当然大人になってからも類似する部分は表れるものだということは、(みずか)(さと)っている人は多いことだろう。何故大人になってからも親に類似する部分が出てくるのか。それは、幼少の頃に置かれていた家庭環境が密接に関係している。

 詰まる所、子供の頃に児童虐待またはそれ同等の扱いを受けた子供は、大人になり家庭をもったときに、自分の受けたことと同じことを子供にする可能性が高いということだ。

 


 傷つけられ、傷つけ、傷つけられ、傷つけ―――。まさに至悪(しあく)の連鎖だ。この負の連鎖を止めることができるのは誰なのか。

 それは他でもない、自分自身だ。


 

 

 最後に、若くして亡くなった(とうと)い命に、黙禱(もくとう)を捧げます。

 

 

 

 


初めて書いたエッセイになります。


これからもこのようなエッセイを書きたいと思っているので、ドシドシとご指摘よろしくお願いします。


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