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チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
99/178

4-20 復讐の龍。

 


 -------N.A.Y.562年 8月16日 14時32分---------



 ルェイジー達は、闇市場から牙龍会へと向かっている。


 服部半蔵と遭遇する危険性を考えていたが、すぐに牙龍会と接触した方が良いという、皆の答えだった。


 ずっと地下道を歩いているので、ルェイジーは方向が少しずつ分からなくなる。


 九龍城国を真上から見上げると、北西に移動しているのは何となくわかる。


 だが、細かいところは裏九龍城国のメンツ全員分かっているのだ。


 現在歩いている通路は異常に狭いので、一人ずつでしか歩けない。


 先頭はチャオ、次にルェイジー、ユー、チンヨウの順だ。


 チャオはランタンを持ったまま、地下道を歩いている。


「死体操るって本当に厄介だな。オレ達とは接点がないからまだいいけど、仲間とかだったら、本当に最悪だよな」


 チンヨウが答える。


「そうだな、考えたくもない。我々はバトルドレスを着用していないが、もし可能性があるとしたら、

ルェイジー君を執拗に狙ってくる可能性が強い。だが、ルェイジー君を何が何でも守るつもりだ」


 ユーは、探検帽にヘッドライトをつけたままのスタイルに変更している。


 相変わらず、結構重そうなリュックもお供にしているのだ。


「チンヨウシェンシン、おねーさんだってルェイジーちゃんを守るわよ」


 狭い道を越えると、目の前には鉄製の扉が見えてきた。


 チャオは説明しながら、扉のステンレス製のドアノブに手をかける。


「牙龍会は、二つの顔があるんだ。一つは違法執刀医として……俺もお世話になったことがある。

それと、もう一つは……」


 チャオは鉄製の扉を開けた。


 錆びた鉄同士が擦り切れるような音を響かせて開く。


 四人は順繰りに建付けが悪そうな扉をくぐる。


 扉を開けると、金網がはられているリングに、スポットライトが当たっている。


 リングの形状は正方形で、出入口は手前と奥にあり、リングはコンクリートらしきもので底上げされている。


 投げ技、擒拿術きんなじゅつを食らったら、ひとたまりもないだろう。


 その中で目立つ者が一人。


 白衣を着用していて白髪交じり。で、七三に分けた髪の眼鏡をしている男が一人だけ立っていた。


 右手にはマイクを持っていて、レフェリーのつもりなのだろう。


 だが、白衣なのだ。


 スポットライトがあまり明るくないので、チャオは服部半蔵かと思ったが、違っていたようだ。


 ルェイジーが甲高い声で、レフェリーらしき男に向けて人差し指を出した。


「アイヤ、闘技場に白衣の人!! すごい審判アルネ!!」


 男は遠くから歩いてくる方へ視線を向ける。


「ちょっとした、予行練習をしてましたあ。そうですか、あなた達が我々を嗅ぎまわっていたのですねえ。チンヨウさん?」


 男がこちらへ顔を向けると、眼鏡が反射して表情が見えない。


 リングは少し底上げされているので、チンヨウは階段をのぼり、フェンスを開けて闘技場の中へ入る。


「ようこそ、いらっしゃいませ。牙龍闘技場へ……」


「単刀直入に言おう。牙龍会会長、あなたに疑惑がかかっている」


 男は、ぐにゃりと唇を歪ませる。


 真上から降り注ぐスポットライトが余計不気味に生える。


「ほおぉ、どのような疑惑でしょうか?」


「そなたのところで、いくつかの情報が入っている。今回の服部半蔵に白衣を提供しているという情報だ」


「それが本当だったら、どうしましょうかあ?」


「貴様も分かっているだろう、我々は横のつながりが強い。共同関係の仲だ。だが、あやつをここに入れてはいけなかった!! 我々は断じてそれを許さない!!」


「ほほう、ではここで戦いますか? 私はねえ、あなた達のように強力なクンフーは持っていない。

だが、人体の構造は理解していますよお? どこの静脈を切れば、どれだけ出血し、貧血状態になってから動けなくなったり、関節の構造も理解していますよおぉ……」


「なるほど……」


「ちょっとまったぁあ!!」


 場外からその声が聞こえた。


 白衣の男は後ろへ顔を向ける。


 ルェイジー達が立っている奥側の暗闇から大男が現れる。


 その体格は大きく、狭い裏九龍城国の生活では困りそうだった。


 黒い髪は長髪で、龍のひげのように細い眉を吊り上げて、復讐に満ち溢れている顔をさせていた。


(リュー) (ビャオ)会長。あなたが出る幕ではありませんよ。私にやらせてください」と、フェンスの扉を開いて、身を屈まさせて闘技場の中に入る。


「いいでしょう、(ヤオ) 国安(グアアン)さん。相手はチンヨウさんでよろしいのでしょうかあ?」


 男は人差し指を、場外にいるルェイジーに向ける。


「いいや、そこにいる髪を縛っている紫色の髪の女だ!! テメェのお陰で会のやつら全員からバカにされた!!」


 ユーはルェイジーに視線を向ける。


「なに? あの恨みつらみが重なったみたいな。ルェイジーちゃん、知り合い?」


 ルェイジーは首をかしげる。


「アイヤ? ルェイジー知らないアルヨー」


 男は声を荒げる。


「テメェ!! 間違いねぇ、アル口調で、中華料理屋の小娘!!」


 何を察したのか、ビャオは眼鏡のフレームを親指と人差し指で挟み、かけなおした。


「ああ、そうですかあ、あの件ですねえ。我々が表側の九龍城国で闘技場を作りたくてですねえ。

その為に色々とお店が邪魔でしたので、交渉をさせに彼らに行かせたのですよお。

ですが、なかなか帰ってこないので、次の日に迎えに行ったらですねえ、何と中華料理屋の窓ガラスを突き破って壁に衝突して、気絶している彼がいたのですよ……。

コンクリートの壁にはヒビが入っていて、なんとまあ、人体の超越をしたパワーだったのでしょう。

あなたを解剖してみたいですねぇ……ルェイジーさん……」


「子供、しかも小さい女の子にやられた!! ってーなればよぉ。

全メンバーからバカにされる、俺の給料も減る、女房にも愛想をつかされる。

とにかくだ!! 中華料理屋の小娘よ、再戦だ!!」


 チンヨウは眉を歪ませて、腕を組んだ。


「ふん、闇落ちクンフー使いらしいな。ルェイジー君は神童だ。むしろ、その神童から拳をもらえた。

そういう考え方は出来ないのか?」


「うるせえ!! いいからそいつと戦わせろ!!!」


「ルェイジー君、きみはどうする?」


「アイヤ、クンフー知る者、皆友達アルネ!! でも……」


 スポットライトを真上から浴びている、ルェイジーの前髪が影となり、瞳が不気味にうっすらと青くなる。


 スマートコンタクトレンズの影響アクセスではなく、相手に目いっぱい殺意を持っている、青く灯される瞳だった。


 彼女の瞳が細くなる。


「……闘技場が壊れても良いアルか?」


 白衣で眼鏡の男は、うっすらと笑った。


「いいですよお、どれだけあなたのクンフーが強力なのか目の前で見てみたいです……」


「ビャオ会長、ありがとうございます!! 紫色の髪の小娘、こっちへ来い!!」


 男は腕を組んで、ルェイジーを待つ。


 チンヨウとビャオは場外へと向かう。


 ルェイジーと入れ違いになるとき、チンヨウはルェイジーに声をかける。


「きをつけたまえ、ルェイジー君。きみはあのような闇落ちクンフーになってはいけない……チャオにもそうなってほしくない」


「アイヤ、ルェイジー大丈夫ね。銀龍ターレンに救われたアルネ!! チャオくんも大丈夫アルネ!!

困ったときは、チャイナガールズに来るヨロシ!! チャオくん強いし、良いクンフーアルネ!!」


 チンヨウは、少し微笑をさせて場外へ。


 ルェイジーとヤオは向かいあった。


 ヤオの体格は、裏九龍城国で幾度とない修羅場を逃れてきている体格だ。


 無駄な脂肪がなく、上腕二頭筋が異常に発達している。


 身長はルェイジーを簡単に見下げられるくらいに高く、体格も恵まれている。


 唇を歪ませた。


「ふん、この間は油断した。だが、今回は違う!! 俺の少林拳で殺してやる!!」


「アイヤ、殺す良くないヨロシ!! クンフーは皆のもの、強くなるばかりはクンフーではないアル、ヨロシ!!!」


 場外にいる、ユーが口を開く。


「すんごい体格差だね。おねーさん心配しちゃう」


 チンヨウは鋭い瞳でルェイジーを見守る。


「相手は完全に少林拳だな。少林拳は外家拳と言われている」


 チャオが口を開いた。


「しってるぜー、あれだろ? 外側から鍛えるから、套路の動きもド派手。

でも、俺には不向きだなー」


「不向きもそうだが、チャオ君。君にはそうなってほしくないのだ。闇落ちクンフー使いにはな……」


 ルェイジーとヤオは向き合っている。


 ヤオは、ゴキリと指の関節を鳴らす。


 ルェイジーは腰を落とし、両手を広げている。


「ヤオさん、暴力はいけないアルネ!! 暴力で解決良くないヨロシ!! じゃんけんで解決するのが一番ヨロシ!!」


「ジャンケンで、解決だとぉ? 」


 男は額に血管を浮かび上がらせている。


 ビャオが叫ぶ。


「ではあぁ、始めてください!!」


 ヤオは体格の有効性を利用して、鋭いヤクザキックを右、左と放つ。


 ルェイジーは、チャイナドレスの裾を左へ右へと、かわす。


「アイヤ!!」と、ルェイジーは肩を突き出して、タックルをさせる。


 マーメイお得意の技、鉄山靠てつざんこうだ。


 だが、ヤオは両腕を腹の辺りで交差させ、ガード。


 この時、忘れていたことがある。


 ルェイジーはご飯の量が足りていないことを。


 彼女のおなかが「ぐー、きゅるるぅー」と鳴る。


 ヤオはそのまま両腕を広げ、ルェイジーを吹き飛ばす。


 体重の軽いルェイジーは真後ろへ飛ぶが、地面を一度転がり、勢いを殺す。


 背中にはフェンスが間近だ。


 チャオは思わず叫んだ。


「ま、まずい!!」


 チンヨウは眉を少しだけ動かした。


「いや、そんなに追い詰められてはいない。きみもわかるだろう。ルェイジー君のパワーは並ではないことを!!」


 男はすでに巨大な体躯を動かし、そのまま鋭いヤクザキックをもう一度放つ。


 ルェイジーはその重い一撃を止めるため、腕を胸元で交差させ、お腹に力を入れる。


 彼女の背中にあるフェンスに大激突し、鉄製のフェンスが歪み大きく揺れた。


「やばい、すげぇ一撃だぜ、あれ!! チンヨウさん!!」


「まあ、よく見てみたまえ。彼女の真の強さはそこにあらず……」


 顔を歪めさせ、ヤオは決まったという顔つきで、ルェイジーを見下ろしていた。


 だが、顔を俯いていて、表情は見えない。


 そして、彼女はすすり泣き始めた。


「……ひっく……かが……」


 ヤオはそのまま、足を引っ込めればよかったのだ。


「どうしたぁよぉ、おじょうちゃんよぉ……」


 自身の足とフェンスでロックしている足が徐々に押されていく。


「お腹が……」


 ヤオはこの時、思った。


 地雷を踏んだことはないが、その衝撃が全身を伝わる。


 余裕の笑みが徐々になくなり、ヤオは無駄な冷や汗をかき始めていた。


「な、なんだ、このバカ力は!!」


 フェンスとヤオの足で挟まれているルェイジーは、四肢に力を入れ始め、背中のフェンスは更にふくらみ大きくゆがんでいく。


「お腹が……すいた、アルネーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 ルェイジーが大きな瞳からポロポロと涙を流しながら、爆発した。


 ヤオの大きな足を押し返し、ヤオが後ろへと押し返され突如吹っ飛んだ。


 身長2メータの大男が、あっという間に金網へと激突。


 四方を囲っている、フェンスは大きく揺れる。


「気功ユニット、全開アルネ!!」


 ルェイジーの全身に気功が巡る。


 眉間、鳩尾、子宮のあたり、背中。


 これが数秒間に何万回も回転し始める。


「行くアルネ!!!」


 チンヨウも、さすがに危険を察知した。


「みんな、フェンスから離れろ!!なるべく部屋の入り口近くまで!!」


 チャオも叫ぶ。


「うわ、なんかやべぇ、俺にもわかる!!」


 今まで余裕の笑顔をさせていたヤオは顔をひきつらせた。


 感じたこともない、イヤな予感しかしないのだ。


「地面をも揺るがす猛起硬落もうきこうらく 摇动地面猛起硬落 アルネー!!!!」


 ルェイジーは、瞬間的に数メートル跳躍し、足を着地。


 地上で地震が起こったかのような衝撃が走り、揺れが一気に強くなる。


 波が地上を一度揺らし始めてから、底上げされていたコンクリート製のリングが一気に砕け始める。


 リングは、クレーターを作り、砕け散ったコンクリートがミサイルを撃ち込まれたかのように、場外へと粉々に飛散する。


 そして、その衝撃波はやまず、四方を囲っていたリングの金網とヤオ、二つセットになってすべて吹っ飛んだ。


 チンヨウたちも室内の壁際へと逃げていたが、金網が吹っ飛んでくる。


 チャオは即座に寝そべってから、横から飛んできた金網を両足で天井へと打ちあげる。


 吹っ飛ばされたヤオは、固い地面を幾度も転がり、壁のところに頭をぶつけて、気絶した。


 普通の一般人だったら、粉々に砕けていただろうが、ヤオも危険を察知してか、瞬時に自分の身体の中に気功を回し、衝撃に耐えるようにしていたのだ。


 吹っ飛んだ右隣には、ひしゃげたフェンスが、壁へぶつかり、がしゃりと音をさせた。


 ビャオは、白衣姿のまま、ヤオの瞳を無理くり開けて、携行用ライトをかざす。


「うむ、命に別条はありませんねえ」とつぶやく。


 そして、彼の鎧みたいな上半身を退けて、ヤオの胸を「ふんぬ!!」とそらす。


「いやぁ、さすがですねえ、ルェイジーさん。あなたをもっと調べたくなりましたあぁ」


 スマートコンタクトレンズでビャオが指示を出したのか、今までスポットライトだけだった部屋が一気に明るくなった。


 部屋は結構広く、小さなお店が八つぐらい入りそうだ。


 コンクリートのがれきの上で突っ立っているルェイジーに向けて、チャオが扉のそばで叫ぶ。


「てめぇ、殺す気か!!」


「アイヤー、お腹がすきすぎているアルネ!! 加減わからないアルネ!!」



牙龍会



(リュー) (ビャオ)


性別 男性

身長 170

年齢 45歳

体格 細身で白衣を着ている。

クンフー 執刀術(蟷螂拳ベース?)

所属 牙龍会

髪型 白髪交じりの七三分け


メスを両手に持っている男。

牙龍会の会長。

メガネをかけていて、絶えず不気味な笑みをさせている。

地下闘技場を経営していて、ケガした選手なども色々と施術したりもしていて、

起業家としても非常に頭の良い男性。

だが、見てくれは普通ではないので勘違いしやすいのと、絶えず白衣を着用しているので、非常に不気味に思われがち。

違法執刀医でもあり、裏九龍城国の中でも最も腕の良い医者。

ベールに包まれていることが多く、扱っているクンフーも謎が多い。

人がどのような所を傷つければ怖がることや、

どこを分解すれば腕が動かなくなるなど、計算ずくで全てをこなす。

元はといえば、中国国防部の衛生兵だった。

だが、濡れ衣を着せさせられて、国防部を出ることなった。

毒ガス鷺沼への白衣の提供はこの男がしていた。

だが、悪人というのではなく、黒龍会が作った架空会社に白衣を送っていたにすぎない。




(ヤオ) 国安(グアアン)



性別 男性

身長 2メータぐらい

年齢 30前半

体格 筋肉ムキムキ

クンフー 少林拳

所属 牙龍会

髪型 長髪



少林拳らしく、超筋肉ムキムキ。

5年前、ルェイジーに吹っ飛ばされた、少林拳使いの男。

非常に屈強な身体を持ち、幼いとはいえ、ルェイジーに吹っ飛ばされても生還できているくらい、

防御力が高い。

つまり、気功の量が多く、体内の気の回転力も高いため、生存できたと思われる。

今回、ルェイジーに再び恨みつらみ合わせて、狙ってくる。


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