4-12 チャオ、ユーに拉致される。
-------N.A.Y.562年 8月15日 20時00分---------
ここは、神龍会のアジトだ。
四人で散り散りになり、待ち合わせしても効率が悪いため、当分の間、四人で動くということとなった。
裏九龍城国内を歩くのは元からリスクは高いが、手練れの者が四人も集まっていれば大丈夫という判断になったが、それでも全員安心はできなかった。
四人は今までやってきた道を戻り、アジトへと到着したのだ。
あれから、チャオはユーを見るたびに顔を赤くさせている。
ユーは普段はコックの恰好をしているが、裏九龍城国を探索するときは、なぜか洞窟の探検隊の姿をしていたのだが、胸のサイズが大きいため、ブラジャーをたまに覗かせるのだ。
チャオにとっては、目のやり場に困ることばかりだったのだ。
程 建明が、食後のお茶をすすりながら、テーブルに座っている。
その隣には、チンヨウ、ユー、チャオ、ルェイジーの順で全員座っている。
「では、現在どういった状況か、整理しておこうかのう……」
チンヨウが一番初めに切り出した。
「ヨンジー老師の情報によりますと、あの者を手招いたのは、牙龍会の可能性があるのではないかと」
「ふむ、それはなぜじゃ?」
「あやつが着ている白衣。通路を歩いていると、何回か見かけたことがあります」
ルェイジーが銀龍の言っていたことを思い出した。
「アイヤ!! 銀龍、言っていたアルネ!! その白衣にはたぶんGPSがついていたはずアルネ!!」
「どういうことだ、ルェイジー君」
「GPSつけるたびに、白衣を脱いでいるらしいアルネ!!」
「なるほど、それで通路内に白衣があんなに転がっている訳か……」
ユーは、手をあげる。
「はいはーい、おねーさんも最新の情報があります」
「ユーおねーさん、何アルかね?」
「言ってみてくれ、何かの参考になるかもしれない」
「実はねぇ、黒龍会が一人凄腕の人を雇ったらしいよー?」
ジャンミンはほほうと、老体とは思えぬツルツルな顎を撫でる。
「ほほう、それは興味深いじゃの……」
「しかも、おねーさんの情報によると、そのフリーランサーの女の子はメチャクチャ空中戦が速いみたい。
地面から離れれば離れるほど、速くなるみたいよ?」
「なんだそりゃ? どんな拳なんだよ?」
「さあ? おねーさんにも分からないわ」
「では、明日早速牙龍会へ行ってもらった方がいいかもしれんのう」
「それでは、明日の午前中に必ず行くようにします」
「お前さんたちのクンフーは強い。じゃが、気をつけてのう……」
「わかりました、老師様……」
全員は、順繰りにシャワーを浴びた後、アジトのソファーや、客室などを借りて寝ている。
ルェイジーは客室を借りることとなり、客室にはテレビなどが設置してあって、割と快適だった。
客室の木製の扉がいきなり開き、ルェイジーは振り向いた。
「アイヤ!! チャオ、どうしたアルネ!!!」
チャオは、血相を変えて、右手拳を一つ作り、叫ぶ。
「どうしたじゃねーよ!! なんで俺がユーと一緒にソファーで寝なきゃならねーんだよ!!」
「アイヤ、そのどこが悪いアルネ?」
「しかも、ユーのヤツ、俺を抱き枕がわりにしやがるんだ!!」
「でも、ルェイジーと一緒に寝ると、危ないアルよ?」
「普通、女同士で寝るだろ!!」
「あまり経験ない、そうアルか?」
「そうアルか? じゃねーよ!」
「ルェイジー、俺と交代しろ!!」
「交代すると、みな危険。ルェイジーの寝相は戦いながら、寝ているヨロシ! 仲間、傷つけたくないアルネ!」
「いや、なにが何でも……」
チャオは急に冷や汗をかき始める。
後ろにいつの間にか下着姿の女性が扉の淵に肩ひじをかけて、チャオを見下げていたからだ。
「まあ、チャオったら……。おねーさんから逃げちゃ、ダメでしょ?」
ウィンクをしながら、徐々にチャオに近づく。
うろたえながら、後ずさりするチャオ。
「う、うわわあわあ!!」
「もう、ウブな18歳なんだから……」
「ち、ちかづくなー!! 俺にちかづくなー!!!」
チャオは、後ろにある箱に引っ掛かり、仰向けに倒れる。
「クンフー強いのも魅力かもしれないけれど、女性を知るっていうことも重要よ。おねーさんが、お、し、え、て、あげる」と、チャオに攻めより、完全に胸の間に顔を挟む。
チャオは、全身の力が抜けて、気絶。
ユーはチャオを軽々と抱え上げて、そのままソファーがある一室へと向かった。
「お邪魔したわね、ルェイジーちゃん!!」
「アイヤ!! また明日、皆でご飯食べよう、ヨロシ!!」
「了解よー」と、木製の扉がばたりと閉まる。
「チャオ、静かに埋もれるヨロシ!!」
ルェイジーは再びテレビに視線を運んだのだった。
朝……18歳、男性。
拳龍会所属。
身長160センチ。
黒髪、黒い瞳、髪ミドルまでボッサボサ。
浅黒い肌。
口元には黒いバンダナを巻いて、
ボロボロの黒いマントを羽織っている。
地下組織裏九龍城国の中でも、最強の暗殺形意拳使い。
彼の放つ方拳は、チャイナガールズでさえ、手に負えないぐらい、威力が強い。
二のうちいらずの拳も持っていて、ポンケンを放つだけで、人は吹っ飛びます。
実は、地下組織にいるにも関わらず、非常に犬好きである。
ありとあらゆる闇を見てきたので、瞳は薄暗く、殺人となってもいとも容易く出来る。
拳銃などを持っていたとしても、素早く突撃し、引き金を引く前に事を処理しようとするので、どんな輩でも戦う。




