4-11 チャオの弱点。
-------N.A.Y.562年 8月15日 16時25分頃---------
銀龍とヨウが話している、同時刻頃。
そのころルェイジー達は暗闇の中をランタン一つで進んでいた。
たまに、うまく給水できていない配管もあるので、そこからぽつりと、音が不気味に闇夜に響き渡る。
ルェイジーとチンヨウが先頭。
後方では、チャオが担当している。
「アイヤ、五爪龍会まではどれくらいアルネ!!」
「ふむ、ルェイジー君、五爪龍会はメインのアジトは闇市場だ。もっとも影響力が強くて、銃なども持っている」
「ふん、俺は興味ないけどな」
「チャオ、お前はあまりにも世界に頓着がなさすぎる。たまには上側の九龍城国でも見てみてはどうだろうか?」
「俺はいけすかねぇのが気に食わない」
「ま、おまえももう少し成長すればわかるだろうけどな、九龍城国と裏九龍城国は互いに必要だということだ」
ルェイジーは鋼鉄製のハイヒールを鳴らしていたが、止めた。
「アイヤ、なんか声が聞こえるアル!!」
「ニンニン!!」
チャオも、気づいた。
「ヤバい!! 逃げろ!!」
三人は同時に走り出した。
50メーターほど走ったら、目の前にはひどく明るいネオン街へとたどり着いた。
三人は階段をネオン街へ向かっている階段を下りながら話す。
狭苦しかった通路よりも、三人横並びで話しながら降りれるので、窮屈な印象はない。
「アイヤ、ここ、久しぶりアルネ!!」
「闇市場に着けば、奴も来ないだろう」
「なんでアルか?」
「不思議なのだが、奴はどうやらここが苦手なようだ」
「あの変なやつ、光が苦手というか、ごきぶりみてーなやつなんだ」
ルェイジーはそう聞いて、眉を吊り上げた。
「アイヤ!! ゴキブリ、強敵アルネ!! でも、必ず殺すアルネ!!」
「まあ、どこでも衛生はつうじているもんな、ルェイジー君」
明るいところに来たら、チャオが闇市場を案内し始める。
ネオンが多いので、夜でも夜じゃないみたいだ。
「ルェイジー君は、五爪龍会の人に会ったことはあるのか?」
「噂でしか聞いたことないアルネ!! 出前は来るアルけれど、一室に書置きがしてあって、チャーハン置いていくだけ、アルネ!!
そこも正しいアジトの場所なのか分からないアルネ!!」
三人が雑談を交えながら歩いていくうちに、いつの間にか屋台がいっぱいあるところへと歩いていた。
ルェイジーは、匂いに誘われながら、あらゆる屋台のごちそうに、舌を出しながら歩いている。
「アイヤ!! 色々と美味しそうな食べ物がいっぱいアルネ!! 北京ダック、トウモロコシの豆板醤焼き!! チンジャオロース、たまらない、アルネ!!」
「ルェイジー君、申し訳ないがそれは後にしよう」
チャオが交差していく人々を器用にかわし、背中を見せながら歩いている。
「え? お前あんだけ食って、もうお腹すいたのかよ。どんな身体してんだ?」
「よく言われるアルネ!!」
「ところでチャオ、この方向であっているのか?」
「間違いない、チンヨウ。ここの通りを超えて、突き当りにあるマンションから、地下に潜る」
人のざわめきが多少静かになったところで、チャオは足を止めた。
「ここだ、この地下に五爪龍会のアジトがある」
三人は古ぼけたマンションから階段を登る。
階段を登り終えたら、すぐ右側に妙な清掃用具がしまってそうな扉を見つけた。
「ここから、入るぞ」
チャオは、扉を開けた。
パーティカルロイド灯などもなく、チャオはヨウのランタンを借りて降りていく。
二、三階ほど降りた先に一つの木製の扉が見えた。
チャオは臆することなく、その扉を開けた。
扉を開けると、そこには古めかしく、何も手入れされていない木製のテーブルの上にボタンが一つだけあった。
更に奥には扉がもう一つある。
チャオは、そのボタンを押した。
押すと屈強そうな大きな男が、チャオを見下げたまま扉から出てきた。
上半身はピチピチの白いTシャツに、ズボンは右肩には牛革製の肩あてをしていて、肩あてには龍が刻印されている。
その男はオールバックに右目に眼帯、鼻の下に髭を伸ばしている。
「なんだ、チャオか……」
「よお、おっちゃん、ルェイジーとかいうやつと、チンヨウさんときたぜ……」
大男は、すぐさまにチャオの頭の頂にゲンコツをお見舞いした。
「いってぇ!!」
「チャオ、ルェイジーちゃんは、あの神童と呼ばれた方だぞ!! お前がそうやすやすと呼び捨てにするな!!」
「なんだよ!!」
「昔から言われてるが、お前ももう少し外の世界に目を向けろ!! おっと、失礼。チンヨウ様、入ってください」
三人は木製の扉をくぐると、そこには初老の男性と思しき者が背を向けていた。
手前には簡素なテーブルがあり、とてもアジトとは思えないくらい質素だった。
右隣にはマーメイと同じぐらいの青い髪をしていて、頭は白いコックさんみたいな帽子をかぶっている女性がたっていた。
髪の長さはボブぐらいの髪だ。
「あらチャオ、ひさびさ!!」
「なんだよ、钱 狱かよぉ」
「チャオ、元気してた? ちょっとは強くなったの?」
「うるせーよ!!」
「減らず口は、相変わらずだね。おや、チンヨウシェンシンも珍しい。いつもは別々でくるじゃない?」
「お久しぶりですな、ユーさん」
ユーは、チンヨウの隣にいる紫色の髪の毛を馬のしっぽみたいに縛っている女の子を見下ろす。
「あら、お隣さんは?」
「紹介しよう、彼女がルェイジー君だ」
ユーはルェイジーを見るなり、目を輝かせる。
「あら、カワイイ!! 噂に聞いてるわ、あなた裏九龍城国のドラゴンマフィア界隈では神童と呼ばれているそうじゃない」
「アイヤ!! 神童? 何アルネ? 美味しいアルネ?」
ユーはすぐさま近づき、ルェイジーの頭を撫でる。
「かーわいー!!」
ルェイジーはなすがままに撫でられて、瞼をつぶる。
「ユーさん、悪い人じゃないアルネ!!」
ルェイジーは、相手と触れるだけで、何となく直感で敵かどうか判別できる。
よもや、聴頸を超えた超能力に近いのかもしれない。
「ん~~おねーさん銀龍みたいに、いい匂いアル~~」
「ん、かわいい~~」
ルェイジーをぎゅっと、ユーは抱きしめる。
チャオとチンヨウは二人を放っておいて、老人と話し始めた。
「五爪龍会は大丈夫そうなんでしょうか? 龚 勇志様」
「様などと……てれくさいのう、チンヨウ。我々は大丈夫じゃよ。五爪龍会はもっとも権威があって、かつ兵器も武器も持っておる
このアジトにはいない者たちも必ず銃器も持たせておる」
チャオは、両腕を後頭部へ回し、そっぽを向く。
「俺は銃なんて大嫌いだけどな」
「チャオも、相変わらずじゃのう。なんせ、お前さんは人一倍強くて、人一倍頑固じゃからのう。
じゃがのう、神童のルェイジー君には既に抜かれておるよ……」
老人は笑顔を絶やさないまま、チャオを見つめた。
「お、俺はヨンジー爺ちゃんは苦手だ。全部見られている気がする……」
「ほほ、悪いことは言わん。チャオ、お前さんはもっと外を見てみるべきじゃ……」
「なんで、みんな俺ばっかり否定すんだよ!!」
「君はまだまだ外を見たりなさすぎる。
もっと勉強した方がいいんじゃないか?
「ほほ、行く先々でいわれているのう。チャオよ……」
「ふん!!」
「ヨンジー様、ところであのような輩を呼び込んだのか、見当はつきませんか?」
「見当? 見つけたいのはやまやまじゃが、そうじゃの、おい、ユーや……」
帽子をかぶっている老人はユーへと振り向く。
女の子からベッタリ離れない、コックのおねーさんは老人へと顔を向けた。
ルェイジーは胸の谷間からヨンジーへと顔を向ける。
「はいはい、老師様!!」
「この三人についていきなさい……」
「アイヤ!! もごもご……ユーさんともごもご……一緒……もごもご」
胸の谷間におぼれながら、ルェイジーは喋っている。
「ここら辺界隈の事だったら、ユーおねーさんにお、ま、か、せ」
「賑やか、悪く……もごもご、アルネ! もご」
チャオは、顔を赤らめながら、ユーに文句を言う。
「い、いいから、お前ら離れろよ!! 見ているこっちが……」
ユーは胸の谷間からルェイジーの頭を退け、チャオに近づく。
「そお? おねーさんの事、き、ら、い?」と、チャオをからかい始めた。
チャオは、胸を見ていいのか、ユーの憂いのある瞳を見ていいのか、頭が完全にパニクっているようで、
両目がグルグルと渦巻き状に回っている。
ユーは、老師に止められた。
「こらこら、年端のいかない男の子をからかうのではない」
チャオは完全にそのままノックアウトし、仰向けに倒れる。
ルェイジーはしゃがみ込んで、チャオの頬をつつく。
「アイヤ、気絶しちゃったアルネ? 女の人の身体、珍しくないアルヨ? ルェイジーいつも見てるヨロシ!!」
チンヨウは何か言いたそうな顔をしながら、ヨンジー老師と話す。
「ヨンジー老師、どうしましょうか。我々は穏健派、同盟に近い状態です」
老人は、頭にかぶっている帽子を治す仕草をしながら考えているようだ。
「ふむ、牙龍会に行ってみはどうじゃ。とにかく手掛かり、情報は必ず必要じゃ」
「牙龍会、違法執刀医の集団ですが、非常に医療の技術は高いと呼ばれている者たちですね。
彼らの縄張りは、牙龍省と白龍省の真下あたりですね。
分かりました。ではそう致しましょう。老師様感謝いたします」
「じゃが、明日にしなさい。今日はもう遅い。体力を回復させてから、向かうと良い」
「そうですね、では我々の神龍会で泊まりましょう」
「すまないが、ユーの事もよろしく頼むじゃ……」
ユーは、ノックアウトしたチャオを見下げた後、チンヨウへと顔を向ける。
「ちょっと待って、チンヨウシェンシン。着替えてから、出発ね!」と、チンヨウにウィンクをさせる。
ルェイジーはただひたすら、チャオをずっと突っついていた。
「早く起きるヨロシ!! すぐ出発アルネ!!」
チャオは、ひたすら目を回しながら一言つぶやいた。
「う~~ん、おっぱい~~」と、1時間ほどずっと気絶していたのだった。
龚 勇志
五爪龍会会長、権威のある会であり、秩序を守ろうという動きがある。
クンフーは持っていないが、周辺を囲っている側近が非常に優秀で、人を扱うことに長けている。
裏九龍城国内で、床屋さんとして商売している。
アジトは、闇市場にある。
钱 狱
五爪龍会の副会長。
20代前半の女性で、髪は青色でボブぐらいの長さ。
美味しいご飯を作るのがとても得意。




