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1-6 朱雀部隊隊長 黎 麗々(レイ レイレイ)その1

 

 そのころ、チャイナガールズたちは……。


 廃鉄塔のそばで、怪物二人は集まっている。


 森林から場所を移したのだ。


 そして、捕虜となった、クレオパトラみたいな金色の恰好をしている、シェンリュ。


 椅子に腰を落として、うねうね動くルェイジーを見下ろすことしかできない。


 隣には、ひたすら叫んでいるルェイジー。


 他のチャイナガールズにも通信ダダ洩れなのに、ずっとルェイジーは叫んでいる。


 ルェイジーは、何とか抵抗しようとしてるが、黒い縄みたいなのがほどけず、足をバタバタさせていた。


 となりで冷静に見ている金色のド派手な衣装をしたシェンリュは、その動きを見てクスクスと笑う。


「ふふ、何か打ち上げられた魚みたいね?」


「アイヤ、シェンリュ、助けてほしいアルネ!」


「それ、思っている以上にはずれないわ。アタイも頑張ったけれど、無理」


 シェンリュは、捕虜になったことはないが、確実に対バトルドレス用の捕縛繊維でできているのは間違いなかった。


 ルェイジーは、身をよじらせているが、黒いロープみたいなものはびくともしない。


 小柄な女の子の周辺で白いハトが、「くるっくぅー!」と、鳴きながら首を突き出しながら周辺を歩いている。


「あんら、無理よぉん。一度捕らえられたら、私たちがほどかない限りは、それははずれないわよん」


 ごつい体躯をした、顔面白塗りの男二人に囲まれている、ルェイジー。


 ビジュアル的なインパクトもさながら、ムキムキの屈強な男どもがそんな化粧をしているのだ。


 ごついオカマたちは、ルェイジーの身体をひょいと持ち上げ、無理やり椅子に座らせ同じ素材の、黒いロープのようなものを巻き付ける。


 チャイナガールズともいえ、バトルドレスがなければ、根は普通の女の子。


 ここから抜け出すのはなかなかキツイのだ。


 顔面白塗りどもの笑顔がルェイジーの小さな顔に寄る。


「あらあらぁ……子猫ちゃぁん、暴れないほうがいいわよぉ。その黒いロープみたいなのはねぇ……。超強化繊維で編んだロープよぉん。暴れると……ケガしちゃうわぁん……」


 もう片方の化け物も口を開いた。


「そうね、君たちはぁ!! 可愛さ余って可愛さ一千倍なのよぉ!!」


 二人は、意味不明な言葉を放ちながら、ルェイジーは、ひたすら泣いてるのか、笑ってるのか、よくわからない表情のまま、ただひたすらアイヤーとしか叫ぶしかない。


 日本人らしき黒髪の化け物は、真っ赤な口紅を動かす。


「ごめんなさいね、お嬢さん。お色直しするのにね、このままだと恥ずかしいじゃない。今ね、もう一人に、テントを運んでもらってきているからぁ」


「アイヤー!!! 怖いアルー!!! 顔を近づけないで下さいアルー!」


「あぁらぁん、可愛い、、、、」


 四人をよそに、女の子の声が鉄塔のてっぺんから聞こえる。


「あんたたち!! 好き勝手やってくれるわね!!」


 四人は空高き鉄塔の上辺を見上げる。


「朱雀部隊隊長!! 黎 麗々(レイ レイレイ)が再度お相手するわ!!」


 ルェイジーは、ようやく仲間が助けに来てくれたのがうれしく、ご飯にありつけたような満面な笑顔をさせる。


 目をまんまるくさせ、ぽろぽろと涙を流している。


「レイレイー、助けてアルー!! 助けてアルー!!」


 シェンリュはレイレイを見上げた。


「助けてほしいけれど、化け物よ!! 気を付けて!」と、アドバイスにもならないことをアドバイスする。


「二人とも、待っててね!」と、彼女は鉄塔の天辺で、うまくバランスを保ちながら、姿勢を地面すれすれまで低くさせ、両手指をつまむ形で、カマキリのように構えた。


 彼女のクンフーは、七星蟷螂拳。


 そのため、構えもまるでカマキリそのものだ。


 その構えを見せた瞬間、彼女が言葉を放つ。


「パーティカルロイドシステム起動!! 気功ユニットオン!!」


 彼女が来ているチャイナドレスの背中には朱雀の刺繍が施されている。


 叫んだ瞬間、朱雀の刺繍が光りだす。


 彼女の足元、ハイヒールが光りだしたのだ。


 気功ユニットから外側へと気功を流すため、足元が光るのだ。


 彼女は高さ五メーターほどの高さの頂から、朱雀のように高く飛び上がる。


 同時にルェイジーの周辺を歩いている白いハトも「くるっくぅー!」と、ゆっくりと羽ばたく。


 「くらえ、私の蹴りを!!! イヤァアアーッッ!!」


 鳥みたいに甲高い声をあげ、金髪のオカマの頭上に蹴りの一撃をくわえる。


 しかし、怪物は微動だしない。


 大男の大振りの腕が、彼女の足を掴もうと襲う。


 大振りだが、そのスピードは速い。


 彼女は機転をきかし、男の頭を蹴りあげ、即座にそばから離れ、三メーターほど距離をおく。


 レイレイの背中、すぐ真後ろには鉄塔がある。


 シェンリュは、もう一名のオカマに口を開く。


「何で、あんたは戦わないの?」


「こういうときって、基本は1対1よぉ。今回は戦争じゃないのよぉ、演習よ。

え・ん・しゅ・う。銀龍さんも言っていたけれど、あなた達を強くすることが今回の目的。

綾ちゃんの意思にも反するわぁ。あなただって、何もしてこないじゃないのぉ」


「キレイになっちゃった以上、戦死扱いだからね。でも、あたいはあんたたちに勝ちたい」


 オカマは、どでかい唇の端をあげ「いいわ、いつでもかかってらっしゃい」と言う。


 シェンリュは、このオカマ達を少し見直した。


 格好はアレだが、想像以上に中身が戦士だった。


 かたずをのんで二人の戦いを見ている。


「あらぁ、レディーに失礼じゃない?」


 レイレイは構えを崩さず、冷や汗を拭った。


 想像以上に、余裕はない。が、なんとか口を開く。


「あんた達みたいな化け物相手に、金龍もなに考えてるんだか……」


 レイレイは、蟷螂拳の構えから少し崩した構え方をさせる。


 あくまで套路(型)のうちの一つなので、崩しても戦える。


「あたしたち、化け物かしらぁ? 私たちは女の子よ!!」


 巨大な相手の影が、レイレイを覆う。


 レイレイの身長は155センチぐらいだ。


 対して、相手はゆうに、2メーター以上はある。


 レイレイは、肩の力を抜き体勢を整え、拳を構えなおした。


 金髪のオカマはにたり。と、笑う


「あらぁ、まだまだヤル気なぉー。こちらから、攻撃してもいいのかしらん?」


 相手のゴツい肩の筋肉が、さらに膨張するのがわかった。


 その瞬間、レイレイが横へと一足飛びで逃げた。


 勢いよく、その巨大な影はレイレイの後ろにある鉄塔とまともに激突した。


 鉄塔は破砕音をあげる。


 陳腐な表現になるが、ミサイルのような一撃だ。


 鉄塔が崩れ落ちるので、地面が揺れ、爆風がレイレイを突っ切る。


 レイレイの赤いチャイナドレスの裾も勢いよく、揺れた。


 スリットからちぎれそうなので、裾をおさえている。


 瓦礫の中から、人間なのか、メカなのか、よく分からない怪物目が赤く光っている。


 急激な緊張感とストレスなのか分からないが、レイレイには土煙の中、相手の両目が赤く光ってるような幻覚に襲われたのだ。


 ――構えを崩さず、いよいよ汗を拭う。


 これは、化け物とかそういう部類ではない。


 唇が自然とひきつっていた。


 相手は粉々になった鉄骨の山々を一本ずつどける。


 ごしゃぁああん!! と、響く。


 一本、また一本、ゆっくりと長さ5メータ以上ある鉄の塊を片手や背中でどかしているのだ。


 立ち上がると、首を左右に一回ずつ傾けた。


「あらぁ、よくよけたわねぇ。危うく倒しちゃうところだったわよー」


 粉塵が風で流されて、相手の姿があらわになった。


 全くの無傷で、平気な顔をしている。


 レイレイの頭のなかは、パニクっていた。


 相手の攻撃力の桁が違う!!


「バケモノ!! それでも、あなたには負けられないわ!!」


 深呼吸をし、拳を両脇に構える。


 朱雀の刺繍が再び光り、彼女は叫ぶ。


「気功ユニット全開!!!!」


 気功ユニット最大出力だ。


 もっと全力でぶつからないと、勝機はない!!


 レイレイは心の中で思った。


 相手のデータを知らせてはもらっていないので、なおのこと恐怖は増すが、心の底から勇気を出さなければ、やられる!!


 相手が、また笑った。


 ――今だ!!


 レイレイが、初動に入る。あまりにも速すぎて、巨大な男の後ろにいつの間にか、レイレイが初手を取った。


 いける!! と、確信をもったレイレイ。しかし、鋼よりも固い腕に阻まれる。


 レイレイの突きは空しく、相手の片腕に、阻まれたのだ。


「な!!」と、声を出したときは、すでに遅く、そのままレイレイのか細い腕を一握りでつかまれてしまった。


 そして、そのまま地面にたたきつける。


 青い六角形が集まったバリアは円球状に彼女を保護してくれるが、バリアが自動的に出るということは、拳銃や小銃で撃たれた時やミサイルなどの爆風でバリアが出るという事なのだ。


 すなわち、今の一撃にはそのぐらいの馬鹿力が加わっていたのだ。


 彼女の小柄な体は一度バウンドし、バリアがとかれた状態で、右肩から落ちた。


 レイレイは呼吸をする暇もなく、頭から地面に打ち付けたのだ。

 この時、レイレイは右肩に違和感があった。


 肩を脱臼したのだ。


 バリアが衝撃を守ってくれたとはいえ、その強力な一撃に、そのままレイレイは想像以上のダメージが戦意を喪失させる。


 痛みというものは、そのぐらい人の気力を奪うものなのだ。


 レイレイは、何とか上半身を起き上がらせようとするが、そのまま地面へ伏した。


「あら、やだー、傷つけるつもりなんてなかったわーん」


 そして、ルェイジーは椅子に巻き付けられたまま、レイレイを心配する。


「アイヤー!! レイレイ!! 目を覚ますネ!! やばいアルネ!!」


 そして、気絶するレイレイに影が黒い紐を両手に、徐々に近づいてくる。


「さ、あなたもキレイになりなさい!!」


 ルェイジーは、目を丸くさせ涙を流し叫ぶしかなかった。


「レイレイまでもキレイになってしまうアルネーーーーー!!」



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