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チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
88/178

4-9 ようこそ、拳龍会へ。


 中はパーティカルロイド粒子を応用したエネルギ-灯が照らされ、割と明るい。


 個室内には様々な装飾されたテーブル、快適なソファー、超薄型壁面テレビまでもある。


「ここは、拳龍会のアジトだ。オレの名前は、チャオ。もう18年もずっと住んでいる」


 ルェイジーはしっているが、裏九龍城国の人々は割と快適な生活を送っていて、日の光を浴びたいときは迷路のような道でも


 独自ルートを知っていたり、色々な裏道なども全部把握している。


 銀龍が持っている地図情報よりも全てアテになる情報ばかりだ。


 個室の奥から顔を笑顔にさせた老人が暗がりから出てくる。


「チャオ、客人か」


 チャオは死んだ瞳を老人に向け、口を開く。


「はい、神龍会のヨウさんと、なんだっけ、お前は?」


「チャイナガールズのルェイジーアルネ!!」


 老人は、ゆっくりと微笑み返した。


「おお、五年前の神童と言われた、君か。噂では聞いていたが、君のクンフーは非常に良いクンフーだと聞いておる」


「アイヤ、ありがとうアルネ!!!」


 チャオは、怒りをあらわにさせ、老師に言葉を投げる。


「老師、あのお遊び集団のどこが!!」


 老師はすかさず反論した。


「チャオ、お主は本当に凄腕だ。だがのぉ、お主はただ破壊するだけ。そんなクンフーは闇に落ちるだけだ」


「で、ですが、老師様。俺は老師様を守る為にだけ磨いてきました!!」


「ワシは、まだまだ十分動けるわ。それよりもお前は、外を理解してきたのか?」


「外?」


「そうじゃ、何事も光と闇は表裏一体。光があれば闇がある。闇があれば光がある。そうそう……ルェイジーと、いったけな?」


「老師様、そうアルネ!!」


「彼女を教えた者は、相当良い指導者じゃ。通称銀龍じゃったけな?」


「銀龍、お金とご飯くれるアル!!」


「彼女は、相当うまくクンフーを対等に使っておるのぉ。チャオ、お前は何のために拳を磨くか考えたことあるのかい?」


 チャオは、汗をかきながら黙り込んだ。


「ほーれ、みろ。おのれ以外を傷つけるのみのクンフーなど、あってはならん。刃物をずっとぶら下げているようなもんじゃよ」


「刀は、鞘にしまわないといけない、アルネ!!」


「うるさい、お前らみたいなクンフーを単なる戦争の道具にしていないやつ等なんかに、理解してもらいたくねえよ!!」


「アイヤ、道具じゃないアルヨ、クンフーは皆を守るためにアルネ!!」


「いや、絶対違う、おのが拳を極めるためだ!!」


「みんな、クンフーで傷つけあう、良くないヨロシ!! クンフー知る人たち、皆友達アルネ!!!」


「お前なんか、クンフーを語る資格などない!」


「やめい」と、間を置いたとき、老人はニヤリと笑った。


「そうじゃ、せっかくの客人じゃ。チャオ、お前はこの方々と同行せい」


「な、老師!! 俺はこんな女に頼らずとも大丈夫です!!」


「何を言うてい。おぬしは影ばかり見つめすぎておる。彼女たちのおかげでどれだけ上の者が助かっていると思う。

経済、流通、お主だって幼いころに劉龍飯店のご飯も食ったことあるじゃろい」


「ろ、老師様……」


「アイヤ、劉龍飯店知ってるアルか!!」


「今はなかなか遠くてのぅ、なかなか足を運べんのじゃが……」


「ルェイジー、そこで今は住み込みで働いているアルよ!! 出張出前サービスもやっているから、落ち着いたら電話で頼むヨロシ!!」


 老人は、うっすらと瞳を開け、笑顔になる。


「おう、そうかのぉ……。この件が片付いたら、ぜひとも利用させてもらおうかのう」


「よろしくアルネ!! 出張出前サービスお待ちしているアルネ!!」と、ルェイジーは笑う。


 チンヨウは、老師に話しかける。


「老師様、今回、あのような者を招き入れた輩を探しております。老師様と我が神龍会は同盟を組んでおりますが、どこの会が怪しいのか突き止めなければなりません!!」


「チンヨウさん、そうじゃのう。わしらも迷惑しておる。裏九龍城国には、ざっと分ければ五つの組織に別れておる。

五爪龍会、黒龍会、そなたのところの神龍会、ワシらのいる拳龍会、そして牙龍会。どこの組織が招き入れたのか、情報を扱う神龍会にも分からないくらい、準備は万端だったと見えるのぅ」


「はい、私たちも色々と調査はかけていますが、なかなか尻尾を出さないみたいです。

それと、気になる点があります」


「チンヨウ、ドラゴンテロリストの件じゃな」


「仰るとりです、彼らは会にいつの間にか侵入し、色々な姑息な手段を招いて我々みたいな穏健派にも牙を剥く連中です」


「そうじゃのう。この間もおったしのぅ」


「その者は?」


 老師は、チャオを一瞥する。


「いうがまでじゃよ」


 老師の意思を汲み取り、「なるほど」とチンヨウはうなずく。


「チャオ、よろしく頼む」


「わかった。だが、オレはその女がいるのが気に食わない」


「アイヤ、ルェイジーちゃんのことアルか?」


「お前しか、女はいないだろう」


 ルェイジーのお腹が、四人の間の静寂を突き抜ける。


「皆、お腹すかないアルか?」


 ルェイジーちゃんのお腹時計は11時だ。


「そういえば、そうじゃのぅ」


「中華鍋とかあるアルか?」


「調理場は、そっちじゃのう」


「じゃ、借りるアル!!」


 ルェイジーは、裏九龍城国と言われる地下にしては小奇麗な調理場へと足を運ぶ。


 まずは中華鍋にゴマ油を入れ、劉店主直伝の方法で、卵を割り、溶きいれる。


 卵を溶きながら、まずは鍋をふるい、それからネギ、チャーシュー、ご飯を入れ、ひたすら片手で鍋をふるう。


 タワーチャーハンの出来上がりだ!!


 チャオも、その高さに少しひいている。


「凄い量だな……」


「いいから、皆で食べるアル!!」


 拳龍会の老師は、満面な笑顔でチャーハンを食べる。


「これこれ、この味じゃ……。相変わらずうまいのぅ」


「チャオも、食べるアル!!」


 チャオは、腕を組んだまま、食べようとはしない。


「食えるかよ!!」


「なんでアルか? お腹すいていないアルか?」


「違う!! 毒でも盛られていたら……」


 チャオは、冷や汗をかきながら、チャーハンの香りが喉奥を鳴らす。


 毒ガスコマンダー鷺沼のお陰で、昨日からずっとご飯を食べていなかったのだ。


「老師様が、食べているから大丈夫アルヨ!! ね、ネ!!! 召し上がるアルヨ!!」


 中国では、誰が考えたのか、中華料理を皆で分けて食べるという習慣がある。


 それは、皇帝が編み出した、毒味の方法であり、信用をはかる方法でもあるということだ。


「ご飯、皆で仲良く食べるアルヨロシ!!!」


 ゴマ油の香りがふわりと広がり、程よく焦げたネギの香りもまた格別だ。


 チャオは、負けた。


「うるせーよ!!」と、言いながら、チャーハンをかきこむ。


 チャオは、軽く涙を浮かべる。


 5歳ごろに行ったきりだった。


 日々、クンフーに明け暮れ、あの懐かしい味が一気に広がる。


 うまい、うますぎる!!


 そして、まだまだあるタワーチャーハンを目の前に、喉元を鳴らす。


 ルェイジーも、あっという間にかきこむ。


 チャオは、欲しそうに眺めていた。


「何アルか? まだまだいっぱいあるアルヨ!!」


 チャオは、眉根をしかめながら食べた。


 老師は満面の笑みをさせる。


「ほほぅ、クンフー以上に強かったのは、ルェイジーちゃんの、チャーハンじゃったのぅ」


 四人は、一気にご飯を食べ終える。


 食器を片付け中に、ルェイジーに通信が届く。


 裏九龍城国でも、しっかりと通信設備はある。


 どっかのマフィアが、違法で回線を引っ張り込んでいるのだろう。


 着信は、銀龍からだ。


 回線を開く。


 内耳から銀龍の声が聞こえる。


「ルェイジー、今大丈夫か?」


「大丈夫アルヨ!!」


「テメェさんどこにいる?」


「神龍会のチンヨウさんと一緒アル!!」


「神龍会? ドラゴンマフィアか? いってぇ、どういうことでぇ?」


「ドラゴンマフィア、悪い人ばっかじゃないアルネ!!! 良い人もいるアルよ!!」


「まあ、分かるっちゃあ、分かるけどよぉ」


「ドラゴンマフィア、五つの組織がアルネ!! そして、その五つの組織のうち、

三つのうちのどっかの組織が、あの変なヤツ呼び込んだアルネ!!」


「ふむふむ、何で三つなんだ?」


「一人は、出前のお客さんアルネ!! もう一人は、拳龍会の人アルネ。クンフーで交わして、分かったアルネ!!」


「まあ、そっちはそっちで任せるわ。それとだが、ホンホンが倒れた」


「え? 大丈夫アルか?」


「正直、わかんねぇ。五分五分だ」


「心配アル……」


「とりあえず、オレ達はヤツをどうにかしなければいけねぇ。テメェも分かってんだろうよぉ? 現場の相棒」


「モチロン、アイツ、許さないアルネ!!」


「とりあえず、生け捕りがメインだ。忘れんなよ? テメェさんのフルパワーだったら、人が粉々になるからなぁ。

見つけたら、連絡してくれ。こっちはこっちで、別動隊作る予定だ」


「金龍にも手伝ってもらうアルか?」


「そうだ、流石にあの手のヤツは、金龍にも手伝ってもらわないといけねぇな。それと、リャンリャンは休んでもらう」


「了解アル!! ルェイジー、操作するアル!!」


「とにかく、テメェさんも気ぃつけろよぉ」


 銀龍と通信を切った。


 チンヨウは、椅子に座ったまま、考えている。


「さてと、どうするか。我々はまず信用するとしてだな」


「俺はこの女を認めないからな」


 ルェイジーは、元気なさそうに眉を落とした。


「そんなこと言わないアルヨ、悲しいアルネ」


「ふん」と、チャオはそっぽを向く。


「チャオくん、君がルェイジー君をどう思おうがかまわない。しかし、私は君も、彼女も仲間だと思っている。どうだい、たまには君も我々以外の人を信用してもらってみてはどうだろうか?」


「俺は今まで、一人で何とかしてきたんだ。誰にも文句なんか言わせない」


「一人じゃないアルネ!! クンフー、皆からずっとずっと教わってきたアルネ!! チャオくんもクンフーなかったら今いないアルネ!!」


 チャオは、黙り込んでしまった。


「クンフー、一人のものじゃないアルネ、皆のものアルネ!!」


「いいや、俺は俺のやり方だ」


 チンヨウは、二人を抑える。


「まあまあ、君たち後で話し合おう。それよりも老師様」


「まずは、五爪龍会に行ってみます」


「うむ、とにかく気をつけなさい。特にあの毒ガス使いは危険じゃ。現れたら向かわずにとにかく逃げなさい」


「老師、ではまた」と、三人は順々に小さなアパートの扉を開け、再び闇へともぐりこんだのだった。



ドラゴンテロリスト


九龍城国内に潜んでいる、国の意思に反対する団体。


その全容は不明だが、ドラゴンマフィアからも依頼がきたりする。


結構な人数が在籍していて、一般にすんでいる住人もドラゴンテロリストの可能性がある。


部隊らしきほどの別れ方もしていなく、全ては九龍城国内の思想に合わないのを理由に破壊活動を行おうとしている。





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