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1-5 銀龍ターレン、高みの見物

 

 捕らえられてしまった、ルェイジー。


 ゴツい巨大な体躯をした、メイド服を着ているオカマたち、二人にかこまれていた。


 ルェイジーは、甲高い声でわめき泣いている。


 首を大きく左右に振りまくるので、紫色のポニーテールがムチのようにしなる。


「みんな、助けてアルー!! このまままだと、もっと可愛くなってしまうアルー!! 誰か、助けてアルー!!」


 遠方で、ぴーぴー泣き続けるルェイジーをよそに、銀龍の黒い瞳に映っていた青い光が消える。


 パーティカルロイド粒子技術を利用し、スマートコンタクトレンズで、超長距離でも何をやっているかハッキリとわかる。


 ここは、建前上は演習場中央監視の場所で選んだ場所だ。


 遠くからでも、鉄塔が見えていて、森林も街並みも一望できる、山っぽい場所だ。


 その頂きに赤、銀、金の影が3つあるのだ。


 横にいる赤いスパンコールドレス姿の部隊長は、煌びやかに装飾された椅子に座っている。


 銀龍は、その者に話しかけた。


「おいおい……うちのやつらに何するんだよぉ……。綾ちゃん」


 スパンコールドレス姿の女性は、きらびやかに装飾されたカップの取っ手を手に取り、紅茶を上品に口内に満たした。


「あらあら、契約書に全部書いてあったはずだわ」


 金龍の瞳も青く光る。


 スマートコンタクトレンズの所から記録契約書の録画情報が浮き上がる。


「そうね、書いてあるわ。すごく小さい字だけど」


 赤いスパンコールドレスを着ている女性は、口紅を取り出し、塗り始める。


 お色直しだ。


「いいじゃない、最高の練習相手でしょ?」


 銀龍は、口紅も何もしていない唇をへの字に曲げる。


「まあ……。あのバケモンども、女? 男? 強いけどさぁ……」


「あら、私の傭兵に文句でも?」


「文句はないけどよぉ、あの強さ……。もうちょっと、ナリというか、格好は何とかならなかったのかよぉ? 綾ちゃんさぁ」


 ど派手なドレスを着た女性は、扇子で口元を隠す。


 口許は隠してるが、目は確実に笑っていて、表情を読み取られないようにという気もする。


「しょうがないじゃない。どの服がいいって聞いたら、彼女たちが選んだもの」


 銀龍は大口をあけて大声で叫びつつ、閉じている銀色の扇子を森林に向けた。


「あれ、狙ってるだろ! 絶対に!! ケタ違いのパワーは、認めるけどよぉ……」


「そう、桁違いなのよ。たぶん、あの威力だったら、戦闘機の一つや二つぐらい一人で墜落させられるんじゃないかしら? あなた達は、パーティカルロイドシステムを利用した、元十字聖教騎士団にいた私たちよりも、面白い独特なシステムを開発したわよね?」


 銀龍は、眉をしかめながら、自分自身の武器であり、カーボンナノファイバーでできた銀色の扇を開き、自身の顔をあおぐ。


 あおいだ風になびいて、七三に分けた前髪がなびく。


「オレたちの場合は内気功だったかな。あいつらも、内気功っぽいぜ……」


 金色のチャイナドレスをまとった女性が、二人をよそに、笑顔のままようやく小さい口を開く。


「そう……銀龍。あのオカマ達、恐らくだけどパーティカルロイドを体内に直接埋め込んでるのよ」


 笑ったまま、龍の装飾が施されたキセルを赤い唇を開きくわえる、金龍。


 そばにいた、女の子が「失礼します、金龍様」とキセルの先端に火をつける。


 煙は龍みたいに昇り、空を泳いでいる。


 キセルを口元からはずし、再び話し始める。


「私たちは、外気功ユニットは積むような技術はあるけれど、内気功ユニットを積んじゃうと、外気功ユニットは積めないのよね。そういうことしょ、綾ちん?」


 綾は、元十字聖教騎士団の貴族だった。


 そして、誰の言うことも聞かず、突如十字聖教騎士団を脱退し、大陸の三ツ群島で商売をしながら、傭兵家業を続けている、起業家でもあるのだ。


 スパンコール姿の女性は、満足げに微笑む。


「さすが、金龍さん。内気功ではないけれど、近いユニットを入れてるわ。たぶん、技術的には最新じゃないかしら?」


 銀龍は、扇子を仰ぐのをやめて、パチンと中国扇子を閉じる。


「もしかして、強化外骨格の応用。強化内骨格かよ!! どうりで、メンバーがかなわないわけだわ。つよすぎるじゃねーかよぉ」


 綾は、ティーカップを置き、欧風に装飾された椅子から立ち上がる。


「そうよ、パーティカルロイドシステムを体内に直接埋め込み、外科手術を施したわ」


「パーティカルロイドは、エネルギー粒子だな。うん、オレにもわかるわ。でもよ、綾ちゃんさ、体内に入れるって相当リスクがあるんじゃねえの?」


「リスク前提で、進まないと化学技術なんてうものは進歩しないわよ。けど、あなた達も似たようなことやっているじゃない……」


「ま、まあなぁ。背中のタトゥーで、パーティカルロイド粒子と気功ユニットを同時に持っているからなぁ」


 金龍の瞳が再び青く光りだす。銀龍と同じように、遠距離の様子を伺おうとしてるのだ。


「そういえば、粒子の補充はどうやってるの?」


 綾は、金色に装飾された棒状の望遠鏡らしき眼鏡で、金龍と同じ方向を見た。


「仕組みは想像以上に簡単よ。コアシステム自体は、外れないように物理的にロックされてるわ。ロックを解除し、パーティカルロイドコアを交換することも可能よ。まあ、服で隠れていて、場所自体は見えていないけれどね」


 金龍は、綾のとなりにある椅子に座り、足を組んだ。


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