3-31 シャオイェン、ラジオDJになる。 その1
朝九時三十分。
銀龍は、のそりのそりと、中央省のタワー25階にある、チャイナガールズの事務所へと足を運んだ。
相棒の金龍が既に事務所を開けていてくれたので、自動ドアを潜り抜ける。
金龍は、金色の中国キセルを片手に銀龍に挨拶をした。
「おはよう、銀龍……」
「あーあ、おはよう……」
「凄い顔してるわよ?」
彼女は微笑みながら、赤い唇でキセルをくわえる。
銀龍は黒いソファーへと千鳥足になりながら歩を進める。
「あーヤベェ。昨日はよぉ……シャオイェン警報のお陰でぇ、寝れなかったぜぇ……」
「ああ、私は全部防音の部屋に住んでいるから、そこまでして影響ないのよねぇ」
「ったくよぉ、金持ちさんはよぉ羨ましいぜぇ……」
銀龍は、孤児院にポケットマネーをつぎ込んでいるので、金龍ほど裕福ではない。
金龍は、お金に関してはしっかりとしているので、色々な事業も回したり、美貌も手伝ってか様々な副業にも手を出している。
金龍はキセルを口元から外すと、煙がふわりと軽々しく踊る。
彼女の気分を体現しているみたいだ。
「あー眠みぃ……」
銀龍は左手にある黒いソファーに腰をかけて天井を仰いだ。
「あーレイレイがいないだけで、こんなにきついとはなぁ……」
「彼女、どこに行ってるんだっけ?」
「実家にでも帰ってんじゃねぇの?」
「彼女も年頃の女の子よね」
「まあ、田舎に帰って遊んで、仕事で全力でつくしてくれりゃあな。それだけで十分だぜぇ……ふあーぁ……ねみぃ……」
「シャオイェン警報も、保険みたいの作ってみる?」
「どうっしようかなぁ。最低でもよぉ、相手側にもいろいろと行ってもらわないとよぉ、成立しねーじゃん。睡眠障害ごときで妙なクレーム入れられてもなぁ」
「何か良いアイデアないかしら?」
「……しっかしよぉ、よくあそこまでよぉ、喋れるもんだぜぇ。才能だよ、才能」
自動ドアが開く。
黒い髪に、豪勢な花飾りをしている女の子が扉をくぐる。
メイヨウが書類を持ってきてくれた。
「おはようだぜぇ……メイヨウ」
「おはようございます、銀龍様……」
「あー、メイヨウさあ、シャオイェンのあの警報ヤバくないか?」
メイヨウは、精神的に強い部類に入る。一切の寝不足という感じがしない。
まだ9才ぐらいの女の子だというのに、しっかりしている。
メイヨウは、金龍のデスクの前に書類を積み上げ、銀龍に振り向く。
「さすがにねむいですが、まだ大丈夫です……」
「ったくよぉ、リームォやルェイジーよりも年下なんでぇ。お前さんみたいな女の子の方が、しっかりしていやがるぜぇ」
「何を話されていたのでしょうか?」
「いやよぉ、シャオイェンのあの警報何とかなんねぇのぉ?」
「そうですね、皆さんなんかどんよりとした動きですし、少し考えないといけないかもしれません」
「おうよぉ」
「そうですねぇ、ラジオDJなんかどうでしょうか?」
銀龍は、ソファーから立ち上がり、指を鳴らす。
「うぉう!! そ、れ、だ!!!」
「いっその事、彼女の24時間ラジオ番組にしてしまって、なおかつずっと不定期放送にしてみるのはいかがでしょうか?」
「よし、放映局を作るぞ!!」
金龍は、微笑させながら、灰皿にキセルの灰を捨てる。
「いんじゃないかしら? 会社作っちゃえば、税金対策にもなるし」
「でもよぉ、とりあえずよぉ、これだけネットも普及してるしよぉ。試しにシャオイェンに喋ってもらおうかい」
「そうね、ネット配信みたいで喋ってもらいましょうか?」
「オッケー、じゃあさっそく実行だ!! メイヨウ、わりぃがそれなりに高そうなマイクを買ってきてやってくれよ!!」
メイヨウは瞼を薄く閉じ、着物を揺らせ、腰を落とす。
「かしこまりました、銀龍様……」と、メイヨウは早速行動に移してくれる。
午前中、銀龍は全ての物事を済ませ、最近は毎日足を運んでいる「劉龍飯店」の扉をくぐる。
店内は閉店かと錯覚するほど、物静かで、騒がしいのはルェイジーぐらいだ。
「アイヤ!! 劉店長!! 銀龍来たネ!!」
いつもの劉店長のはりのある声は聞こえず、皆、周辺の客も何も言わずにぼそぼそと喋りながらご飯を食べている。
よく見ると、他の客は中国箸をひたすらかじりついている者や、鼻からスープを飲んでいる者や、ワンタンスープを飲もうとしているのに、レンゲのすくう部分を取っ手に持って、何とかしてワンタンを食べようとしている。
ここ、連日のシャオイェン警報が全ての原因であるのは間違いない。
銀龍も寝ぼけ眼で、そのままルェイジーの案内通りにそのまま店長がよく座っている奥のテーブルに座った。
「アイヤ!! 銀龍、注文何アルか!!」
「テメェさん、よく大丈夫だよなぁ。あれ? ママさんはどうしてぇ?」
「今日は、ママいないアルヨ!! ルェイジー、ぐっすり眠れたアルネ!!」
「あー、テメェさんは水の中でも寝れるんだったよなぁ……」
銀龍はその一言で突如思い出した。
何かの、どっかの大規模作戦だったか忘れたが、ルェイジーはなぜか泳ぎながら眠れるという、傭兵にとっても羨ましい謎の身体能力を持っている。
つまり、彼女のねぞうもヤバいということになる。
「アイヤ!! ママと寝ていても、ママも寝ながらルェイジーの攻撃をかわしているネ!!」
「んだよぉ、そりゃあ。どんだけ、クンフー狂いなんだよぉ……」
銀龍にとっては、それは誉め言葉であるのだ。
「それで、注文は何アルか!!」
「……チャーハン、お願いします……」
これで、酒が入ったら、確実に即死コンボだ。
いつもは新聞も目に通すはずなのだが、あまりの睡眠不足で、両肘をついたままこうべを垂れている。
「やべぇ、オレの髪って、カーテンの役割に……」
銀龍はこういう傭兵家業をやっている割には、部屋が暗くないと眠れないタイプだ。
そして、自身のセミロングがまさかのカーテンの役割を担うということに対して、32年間生きてきて初めて気づいた。
「こいつぁ、こたえるぜぇ……」
銀龍は、そのまま眠りそうになっているところで、オーダーしたチャーハンが来ないことに銀龍は気づいた。
ルェイジーも一人なので、忙しそうなあまり、ついついカウンターの方まで重い足を運ぶ。
カウンターから劉店長の背中は見えていたが、ブツブツと何かを言いながら空を眺めている。
銀龍はチャイナドレスを揺らしながら、椅子に膝を乗っけ、半身を出して劉店長をようやく覗くことができた。
「劉……さん……」
なんと、劉店主は眠さと戦うあまり、卵を握って鍋を振っているつもりだったようだ。
つまり、生卵を鮮やかに縦に振っている。
「……こ、コイツぁヤベェぜ……」
シャオイェン警報は、チャイナガールズの中でも最も持久戦に適したものだと、新たに気づかされた瞬間だった。
「店長!! おい!! 劉さん!!!!」
銀龍の声に、ようやく気付いたのか、ハッとして劉店主はカウンターに振り向いた。
「あ、すみません、銀龍さん!!」
「おいおい~頼むぜぇ。チャーハンまだかい?」
劉店主は自身の右手を見て、ハッとしている。
「ああああ、すぐつくりますんで!!」
「すまねぇ、シャオイェンのせいだよな……」
背中を見せながら店主は口を開く。
「いえ、うちの九龍城国守ってもらっているんです、そんなことはないですよ」
「ムリしなくていいぜぇ。ったくよぉ、法律が整備されなさすぎの国もまた、不便だぜぇ」
「へい、銀龍さん、お待ち!!」
「だよなぁ、普通はもっとはえーもんなぁ……」
「へへへ、すみません」と、店主は照れくさそうに笑った。
朱 曉燕(晓燕) (シュ シャオイェン)
年齢16才
女性
身長155センチ
髪は赤 髪型は、短髪。右耳に、梅の花の髪飾りをしている。
肌の色 黄色
瞳 赤
人種 中国(山東省)
利き腕 両方
クンフースタイル 梅花蟷螂拳(連続攻撃を得意とする)
得意技 赤き閃光の突き 最快的速度决策技术(Zuì kuài de sùdù juécè jìshù)
得意武器 梅花双刀
一人称 自分
誕生日 NAY546年3月11日
部隊 朱雀
BWH 体重 73/50/74 61キログラム
実直で、まじめな女の子。
だが、ストレートすぎるが故、分析癖は他の部隊員の追随を許さず、
セリフの量も膨大になりがち。
カンフーは、本当に実直、まじめで、まっすぐな技を撃つと、
部隊長である、李麗々(リー レイレイ)からも評価をもらっている。
服装は、中国服に、しちぶだけのパンツをはいている。
とても、さっぱりしていて、ボーイッシュ。
その為なのか、あまり感情を表立って表情を変えることは少なく、
回りが見えていない部分も多数出てしまっているところが、弱点。
だが、それを含めて皆から慕われている。
趣味は、ボーイッシュとはかけ離れている、女の子らしいピアス集め。
現在は、九龍城国の「紅龍省」に住んでいる。
マンション「紅木楼」の101号室に住んでいる。




