3-30 銀龍、薄い本が盗まれる。 その4(クロスオーバー作品)
挿絵&キャラクターは「めんち様」のシュガープロジェクトより。
シュガープロジェクト、女の子かわいくて、いいよ!!
シュガプロも、よろしくね!!
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ここは、裏九龍城国内でも闇医者が集まる場所だ。
位置的には、牙龍省の真下にあたり、九龍城国で医者の手当てなどを受けられないような、ならず者たちが集まっているような場所だ。
清潔感などとは遠く離れていて、薄暗く、必要最低限の機材しかない。
ベッドらしきところで黒いコートを着ていた男は、横になっている。
大男は相方を、見下げていた。
薄暗い入り口の奥から杖と地面が接触する音が響く。
それが、徐々に近づいてきているのだ。
そのたびに、大男は身体を震わせる。
薄暗い入り口からは、オールバックにサングラスをしていて、40代らしき、かっぷくの良い男性が入ってきた。
金色の杖を頼りにして、大男のところまで近づき見上げ、唇の端を歪めさせながら話す。
彼が口を開くと、全部の歯が金歯になっているのがよくわかる。
「おう、お前ら。随分とトチってくれたな。銀龍が相手だったら、すぐに身を引くべきだ……」
「ボ、ボボボボ、ボス、申し訳ねぇダス……」
「まあ、いいさ、金を集められなかったのは痛い。だがなぁ、これで口実は作れた。
ある意味……でかした!」
大男は震えがるほど、滝のように汗を流していた。が、ボスと言われる男の様子が今回は違った。
「ふ、これでこの国の表も裏も、滅茶苦茶にできる!!」
「ウェン会長……何を考えているダスか?」
ウェンという男は大男の肩に手をかけて、顔を寄せた。
「お前にはまだ教えねぇ。だがなぁ!! この国を転覆できそうなくらいのゲストを既にお招きしている。とだけ、言ってやる……」
コートを翻し、かっぷくの良い男性は足を引きずりながら薄暗い入り口へと消えていった。
次の日。
ここは、チャイナガールズの事務所だ。
銀龍は黒いソファーに腰を下ろし、考えていた。
二つのトランクを見比べながら、顎に手をあててキセルをくわえている。
「さぁてぇ……。どうしたものかぁ……」
金龍が自動ドアをくぐり、事務所に入ってきた。
「よぉ、おはようだぜぇ。金龍」
「あら、一番乗りだなんて、珍しいわね」
「へっ……。ちょっとした騒動に巻き込まれたんでねぇ」
「なに、その二つのトランク?」
銀龍は、寝ぼけ眼になりながらトランクの取っ手を持って立ち上がる。
もう一つのトランクは金龍でさえ、知られるわけにはいかないからだ。
軽い方のトランクを掴み、更衣室のロッカーへ何とか入れ、黒いソファーに戻る。
金龍は金色のポーチからキセルを取り出し、粉を詰める。
そして、マッチで火をつけた。
「やっぱり、朝の喫煙はいいわね……」
「ああ……」と、銀龍は思いふけりながら、振り返っていた。
アイツ等は、どこの所属の会の者なのか?
このお金をどうするべきか?
「なあ、金龍、ここにあるトランクの金なんだが、どうしよう?」
金龍は微笑み絶やさず、トランクに一瞥する。
「ずっと気になっていたけれど、どうしたの?」
「まあ、ちょっとな……裏九龍城国からたまたまパクった」
「ふぅん、それいくらぐらいあるの?」
「知らねぇ、とりあえず開けてみるか……」
「ちょっと待って、正式な紙幣とかでしょ?」
「あ、ああ……」
「だったら、たまには龍王に頼んでみたら?」
「ミンメイにかよぉ……」
「私たちでも、お金の追跡機能なんて使わせてくれないんだったら、龍王様にお願いして、お金を一度返却してもらうようにしましょう」
「あーあ、ま、それでいんじゃねぇ?」
自動ドアが開く音がしたので、二人は同時に振り向いた。
黒い髪に、左右両方とも華の髪飾りをしている、背の小さな女の子が入ってきた。
「おはようございます。銀龍、金龍様……」
「おはようだぜぇ、メイヨウ。あれだ、あれ。このトランクよぉ、龍王様によぉ届けてくれねぇ?」
「かしこまりました……なんと申し付ければよろしいのでしょうか?」
「あん? ああ、ま、裏九龍城国から流れた金だって、伝えておいてくれよぉ。
あとは龍王の取り巻きのやつらがお金を元に戻してくれるぜ」
「かしこまりました、では早速お渡しに向かいます……」
「ちょっと、重いから気ぃつけろよぉ?」
「ありがとうございます」と、メイヨウは豪勢な中国服を揺らし、トランクを両手で持ったまま事務所を出て行った。
「ま、一件落着じゃない?」
金龍は自身のデスク前の椅子に座り、窓ガラス奥に映る九龍城国を照らす朝日を見つめた。
「ふん、だったらいいけどよぉ……」
銀龍は、うやむやな気持ちをおさえながら、大股を広げ、前かがみのまま事務所のカーペットをずっと見ていた。
このうやむやな、しこりが残った気持ちは何なのだろう。
そして、あの二人組は誰だったのか。
更にはタイミングよく出てきた九龍城国治安維持部隊。
きな臭い匂いしかない。
「ったくよぉ、なんかぁ、血の匂いがするぜぇ……?」
金龍は椅子に座ったまま、シリアスな雰囲気の銀龍へ振り向く。
「なぁに? なんか言った?」
「いや、なんでもねぇ。ちょいと変なにおいがするっつー話だぜぇ」
明滅するライトの中、スラムの子供たちは逃げ惑う。
「うひひひひひひぃいいいいい!!」
不気味な声がこだまする中、メイヨウよりも小さそうな男の子が涙を流し続ける。
「こわいよぉおお、こわいよぉおおおおお!!!」
「ねぇねぇ、おじさんと遊ぼうよぉ!!! うひひひひひ!!」
ライトは完全に暗闇になり、子供は動かなくなった。
静かに、シューっという音がただ不気味に充満している。
闇では、ただならぬ声がひたすら響いた。
「うひひひひひひひっひひひいいいいい!! 毒ガス、最高ぉおお~~~~!!!」
次の日。
銀龍は「九龍喫茶店」へと入った。
ファリンと会うという約束ではないので、背中がバッサリ開いている銀色のチャイナドレスを着ていた。
銀色の裾を揺らし、木製の扉を開く。
ベルの音が鳴り響くと、この間いた黒髪長髪、合法ロリのお嬢さんがいた。
「いらっしゃい……ませ……」
銀龍は唇の端を歪ませ、彼女を見上げた。
「おう、合法ロリのショコラちゃんだっけぇ? どうでぇ? 多少は慣れたか?」
彼女は顔を赤らめさせ、胸元を相変わらずお盆で隠している。
「……合法ロリ……!!」
うつむき加減のまま、顔を赤らめさせたまま、静かにうなずいた。
「……はい」
「そりゃあ、よいこってぇ……」
「先客が……いらっしゃいます……」
銀龍はそのまま先客という者に用事があった。
奥の席で、こんなに暑いのに似合わない茶色いコートを着た男だ。
帽子をかぶっていたので、よくわからなかったが、
年齢は45歳ぐらいの、白髪が混じった中年の男性だ。
髪は短く刈り込んでいて、無精髭を生やしている。
背筋は丸まっているが、
年齢を重ねた年の功を感じさせていた。
先日、会った九龍城国治安維持部隊の男だった。
銀龍は、キセルをくわえたままその席へと座る。
「よう、オレを捕まえるつもりか?」
「ふん、そんなもんはいらねぇ。いつでも追い出せるといっただろ?」
「へっ!! 追い出してみろよ、テメェさんも困るだろぉよぉ?」
「貴様の減らず口など、どうでも良い。それよりもだ、貴様には聞いてほしいことがある」
「なんでぇ?」
「いいか、近々、九龍城国でとんでもないことが起こるかもしれん」
「ああん? どういことだ?」
「裏九龍城国の動きがかなり怪しい……」
「どうして、オレにそんな話をしたぁ?」
「いいか、よく聞け。国として何とか成立しているのは、お前たちのお陰でもある。裏九龍城国がもし潰れるようなことがあったら、どうなる?」
「簡単な話じゃねぇかよぉ。難民が一気に増える」
「そうだ、そうなると中華人民共和国も困るだろ?」
「ふん、そんときゃ、そん時だぜぇ」
「クラス的に言わせてもらえば、お前たちが作っている警報の中でも最もエマージェンシーが高い、チャイナガールズ警報になる」
銀龍は思わずキセルを落としそうになる。
「な、マジか……」
「ふん、表裏一体の情報を扱うものを舐めるな……」
「で、なんでオレにそういう話をよこした? テメェさん的にも非常に危ないんじゃねぇの?」
「俺は大丈夫だ。とにかく、近々きな臭いことになるということだけ伝えておく……。話は以上だ、気をつけろ。シルバードラゴン……」と、伝え残し男は帽子をかぶり、コートを揺らしながら、ショコラの横を通り過ぎた。
「チ、チャイナガールズ警報……」
銀龍は中国キセルをしっかりとくわえなおし、先端に火をつけた。
背の高いショコラがやってくる。
「……お客様……ご注文は……いかが……なさいますか?」
「あー、コーヒーでお願いだぜぇ……」
銀龍は目の前で揺らぐ煙をただ見つめるしかなかった。
江 晓迪
細身で銀龍よりも背の低い、男。
拳銃を一丁所持している。
ファリンの同人誌のファンで、エッチな本も見たことあり、それに魅了されたことがある。
なかなか、狡猾な所もあり、せこくて大きなものには必ずまかれるタイプ。
黒龍会からのし上がるのだったら、手段を選ばないが、結局は小物。
持っているクンフーは、蟷螂拳だが、朱雀部隊と比べると完成度はかなり低い。
邹 风云
チャンと必ずセットの、身体が丸く銀龍以上に背が高い、巨漢の大男。
機関銃所持の大男。
巨漢のわりには、結構すばしこく、なかなかのやりて。
チャンとは仕事仲間でそれ以上踏み込むことはないという、パートナー的な役割。
チャンとの合体攻撃は結構強力。




