3-29 銀龍、薄い本が盗まれる。 その3(クロスオーバー作品)
挿絵&キャラクターは「めんち様」のシュガープロジェクトより。
シュガープロジェクト、女の子かわいくて、いいよ!!
シュガプロも、よろしくね!!
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真っ暗な中、AIタクシーはメインストリートではなく、細い枝道の横方向へと進んでいく。
そして、二人はGPSの付近、紅龍省内で降りた。
各省ごとに橋がかかっていて、国の外側に出るには必ずその橋を渡らなければいけない。
GPSは紅龍省のセントラル寄りの場所で反応していた。
「ターレン、反応はここら辺だね?」
ファリンが歩みを止めた場所は、裏九龍城国」への地下への入り口だった。
階段を降りると油圧式で開く鋼鉄製の扉が二人を迎える。
厚さは30センチ以上にも及び、あらゆる兵器にも耐えられるような仕組みになっている。
その扉を開ける権限は、銀龍達にもあり、国に正式に雇われている傭兵にも権限が与えられている。
それは、逐一譲渡するのにも時間がかかるし、姉である銀龍は国の王という位置づけも利用して
目の前の鋼鉄の扉を開けることが可能なのだ。
「おいおい、まさかの裏九龍城国かよぉ……」
だが、銀龍のSクラスの秘匿情報を守らなければいけないのだ。
容赦なく、扉へとアクセスをする。
鋼鉄とレンガ造りの壁とのこすれる音が、二人を歓迎してくれる。
ファリンは、リュックからランタンを取り出し、あかりをつけた。
ランタンの底面には、パーティカルロイドシェルが組み込まれているので、下手なライトよりも明るい。
パーティカルロイド技術により、あらゆるものが薄く、軽くなっていった代表的なものがこのような光エネルギーなのだ。
「ターレン行こうよ」
「ああ、そうだな」
二人は闇より、更に深い闇へと身を沈めていった。
銀龍は地下通路を見回しながら考えていた。
小柄なファリンと銀龍が二人並んで何とか歩けるような地下通路だからだ。
これが、何かの拍子で敵と遭遇してしまったら、どうしようもない。
銀龍は絶えず考えるクセをつけている。
なぜならば、何事もイレギュラーはつきもので、この考え方を養っていないと、ユグドシアル大陸の戦場はおろか、裏九龍城国ですら生き残るのは怪しい。
ここは、そのぐらい危険な場所なのだ。
紅龍省は、真ん中の闇市場に最も近く、昔の「九龍城砦」が色濃く残っているところだ。
歩いて40分ほどでネオン街へと到着する。
いたるところにパーティカルロイドで供給された看板が立ち並び、煌びやかなネオンがこれでもかというほど薄暗い中光を放っている。
現在は夜なので全て暗いのだろうが、昼夜のシステムも自動制御されていて、昼には必ず明かりがともされるようになっている。
ネオンの輝きの文字は様々で「大金龍」と書かれているものや「○○酒家」と書かれているような看板が至る所で灯っている。
銀龍とファリンは周辺を見回しながら、階段をゆっくりと降りている。
見栄えはきれいだが、スラムの場所もある。
色々な処理は「裏九龍城国」が全て牛耳っていて、このパーティカルロイドも国から勝手に借りているのだろう。
「さてとぉ、どこら辺だ?」
銀龍とファリンの瞳が青くなる。
裏九龍城国に入ると、二度と出られなくなるという噂もあってか、そこまでして地図情報も詳細には解明されていない。
その為、座標軸ぐらいしかGPS情報は乗っていなかった。
二人は様々な出店が出ている通路を歩いている。
周辺は鶏肉がそのまま加工されてぶら下がっていたり、妙なよくわからない食べ物なども出ている。
二人の姿が小奇麗なので、通り過ぎるごとに裏九龍城国の通行人と視線が合う。
「ボ、ボク……凄く視線を感じるよ……ターレン」
「ま、いつもの事じゃねぇの? 身がキレイな奴ほど身ぐるみはがされるっていうやつだぜぇ」
銀龍の姿も派手というのもあるが、背中の銀色の刺青も目立つ。
ポーチから龍の装飾が施されたキセルをくわえ、歩きながら火をつけた。
「ったく、相も変わらずカオスな所だぜぇ」
座標軸を頼りにしていくと、右手に階段があり、コンクリート製のアパートみたいなところで立ち止まった。
見かけは三階建てで、中は多少広そうだ。
「ファリン、ここら辺だよなぁ……」
「うん、ターレン。間違いないよ!!」
「ほんじゃま、行くかぁ……」
のらりくらりと階段を上がり、両開きである木製の扉を銀色のハイヒールで蹴破った。
瞬間、右側に影が見えたので、反射的に右足を一歩踏み出し右掌底を打ち出す。
「ギャース!!!」
手ごたえはあったが、相手も後ろへ跳んで力をうまく逃す。
ファリンが明かりのスイッチを押してくれた。
「ターレン、大丈夫!!」
埃が充満していて、天井からところどころチリが落ちているのが分かる。
ギャースと叫んでいた男は、間違いなくすれ違った男だった。
細身の男は黒いコートを身に包んでいる。
鷲みたいな鼻で、丸いサングラスをかけている。
その横には丸く大きい男がいた。
男の姿は丸く太っていて、単なるデブではなく、あらゆる暴力を叩き込まれている体格をしていた。
身長は約2メータほどあって、異常なほど横にもでかい。
両腕には包帯をしていて、いかにも拳を固くしているのが、遠目からでも分かる。
相手との距離は約10メーター。
「へっ、何事かと思ったぜぇ。テメェらどこの会のもんだ?」
「そんなこと、教えると思ったダスか?」
「ふん、大方そんな感じだと、チンピラなのはぁ間違えねぇなぁ」
「ギャース!! こいつらがスーツケースを奪ったギャース!!」
銀龍は、キセルをひっくり返し、灰を捨てる。
「奪っただぁ? 笑かしてくれるじゃねぇかよぉ。
ふん、おおかた良い金じゃねぇんだろうなぁ。元からスーツケースは持ってくるつもりなんてねぇぜ……」
銀龍はポーチから銀色の中国扇子を取り出した。
そして、ポーチを適当な所にほっぽり投げる。
「銀色のチャイナドレスに、銀色の扇子!! そのいで立ち、知っているギャース!! チャイナガールズの銀龍でギャース!!」
「カラスみてぇにうるせぇ。いいからかかってきなぁ!!」
ファリンもバッグから兵器を取り出した。
子母鴛鴦鉞と言われる兵器で、半円状の刃を交差させて組み合わせたような独特な形をしている。
バッグを静かにおいて、腕を交差させて腰を落とし銀龍の真横へ立つ。
「ターレン、ボクも手伝うよ!! パーティカルロイド起動、気功ユニットオン!!」
「いいダスよぉ、ぜひとも伝説的なクンフーを試させてもらうダスよ!!」
細身の男は突如左胸のコートから拳銃を出した。
二発ほど撃ち込むが、銀龍の高密度のバリアが放たれ、弾道はそれていく。
「ギャース!! やはりきかないか!!」
ファリンは、大きな男の前まで接近。
兵器を相手の腹から胸にかけてまで両手をあげ、切り裂こうとした。
だが、男は包帯を巻いた腕で、ファリンの攻撃を両手首を交差させ防御。
想像以上に固く巻いてあるので、刃が突き刺さることはなかった。
男は見てくれ以上に怪力で、ファリンの腕でも上がらない。
小柄な男は、拳銃をしまい、蟷螂拳の構えをさせる。
「ギャース!! やはり、これしかないでギャース!!」
銀龍も、両手を広げ腰を落とし、扇子を持ったまま太極拳の構えをさせた。
「ギャースギャース、うるせぇ……。いいからかかってこいよぉ!!」
男は、拳を握りしめ、直線上の攻撃をさせる。
しかし、銀龍は、片手のみでその手をいなす。
男はバランスを崩し、銀龍は相手の鳩尾に左膝を出す。
「ぐぼうぇ……ギャース……」
ダメージはあったのもの、致命傷とはいっていないようだ。
男はすぐに離れる。
銀龍は扇子を広げ、口元を隠す。
「さっすが、蟷螂拳使いだぜぇ。あと五発ぐらい打ち込もうとしたが、逃げたかよぉ。素早さはいっぱしのようだなぁ!!」
ファリンは両腕で相手を傷つけようとするが、包帯にすら一切傷が入らない。
相手の太い両腕が上がった瞬間、ファリンは高速で後退し、銀龍の隣へ再び並ぶ。
「ふん、お相手さんも、まぁまぁだなぁ……。ファリン、交代だぜぇ」
「ターレン了解!!」
ファリンと銀龍は、構えを崩さず左右立ち位置を変更させる。
「そんなことしたって無駄だギャース!!」
「いいからよぉ、もう一度来やがれ。肋骨二本折ってやるぜぇ……」
相手側の空気が変わった。
銀龍は表情をしかめる。
「空気が変わったな……」
「うん、何か仕掛けてくるのは、ボクにも感じてるよ……」
太った男はそのまま腕を交差させる。
「ふーん、何か面白い動きしそうだぜぇ……」
「ギャース!!」と、不穏な空気を破ったのは細身の男だ。
跳躍し、交差した腕に乗っかる。
交差した腕に乗ったあと、思い切り振り上げる。
「ターレン!! 気をつけて!!」
「大したことねぇぜ。狙いは単純だ」
銀龍は、瞼を落とし深呼吸させる。
あらゆる感覚が全ての神経を研ぎ澄まされる。
チリの動きまで分かるような錯覚がおきる。
相手は、上空から着地までの動作攻撃。
狙いはファリンか、銀龍だ。
ファリンだったら、すかさず蹴ってファリンをどかせばよい。
自分だったらそれ相応の対応で構わない。
むしろ、狙いを銀龍側に寄せる。
自身の読みが当たるかどうかは五分五分だ。
銀龍は静かに瞳を開ける。
気を纏うという言葉は存在している。
己の気の流れはゆっくりと徐々に広がっていって、その気はさらに広がる。
相手と気が触れ合った瞬間、勝負がつくはずなのだ。
銀龍の髪はふわりと広がり、優雅に横へと身体を回転させた。
男が既に着地していて、相手の右肋骨目掛けて閉じた扇子をつく。
鋼鉄の扇子は男の肋骨二本を同時に割った。
威力が突き抜けるので、男は悶絶しながら地面の上で足をばたつかせた。
「ギャース!!!!」
ファリンは気功ユニットを全開にさせ、容赦なく男の肋骨に兵器を叩き込む。
パーティカルロイド粒子は切ってあるとはいえ、完全にメリケンサックの代わりだ。
男が既に折れている肋骨に更に叩き込むので、たまったものではない。
「ぎゃーーーーーー!!」
細身の男は、完全に動きが停まった。
「ターレン、ボク、やったよ!!」
「でかした!!」
「さあてとぉ、あとは残り一人だぜぇ」
「そこまでだ!!」
銀龍とファリンは同時に後ろの入り口方向へと顔を向ける。
黒い防弾チョッキを着ている男たちが20人ほど入ってきて、銀龍たちに銃口を向ける。
その団体をかき分け、一つの影が真ん中に突っ伏した。
茶色いハットをかぶっていて、同色のトレンチコート姿の男性がいた。
「テメェは、誰でぇ? いんや、その格好はぁ九龍城国治安維持部隊だなぁ」
「チャイナガールズの、銀龍だな。そいつらはうちが預かる!!」
「ふん、テメェらのその動きぶりからにしてぇ、この二人を保護してみたいだなぁ……。オレにぶっころされるよりもよぉ、保護してぇらしいなぁ?……」
「銀龍、貴様らには断る権利はない!! 我々に信用はないが、下手なドラゴンマフィアよりも厄介なのは理解しているだろ!!」
「へっ……面倒くせぇ。あらかたこいつらのボスが手下どもを殺されると都合悪りぃから殺される前に、保護という名目なわけかぁ?」
「何とでも言え!! 我々は貴様たちも管理しようと思えば管理できる!!」
「ふん、お国柄座っているような組織でもねぇのによぉ、どこの口が言えるんでぇ?
ま、敵にするつもりもねぇがぁ、オレ達に手を出そうもんならよぉ、余裕でぶっつしぶしやるぜぇ!!」
「貴様は、分かっていないだろう。つまみ出すことなどいつでもできる。
反乱分子も作れるし、いつでも貴様が通っている飯屋を全部寄せ付けないっていうことも可能だ」
「おおう、こえーこえー。わーった、今日はこれで引き上げるぜぇ。おっと」
銀龍はでかい男を見上げる。
「例のブツ、どこでぇ?」
丸い男は暴れることもなく、素直に応じた。
「俺もこれ以上暴れるわけにはいかないダス!! また、お金は奪えばいいダス!! 裏の倉庫ダス!!」
暗過ぎてよく見えなかったが、男のそばによると、横には扉があった。
「ふん、まあ、会長にはよろしく言っといてくれよぉ? このオレがいつでもぶっ潰してやるとなぁ……」
「そんなのはどうでも良いダス!! お前たち以上に、会長が怖いダス!!」
「へっ……。次あったら、その脂肪全部、ちぎって絞り出してやんぜぇ……」
銀龍は捨て台詞をはいたあと、大男の隣の倉庫に入った。
埃だらけの中、トランクを見つけた。
銀龍は、犬のように舌を出し、トランクを回収。
そして、この出来事が裏九龍城国への闇への入り口となることは誰にも知ることなど誰も考えなかった。
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