3-14 ホンホンリャンリャン警報 その2
1時間後。
ヤーイーは、呆気にとられて、口を丸く開けた。
「え? じゃんけん知らないの?」
二人は、じゃんけんというシステムを知らなかった。
ある意味しょうがないことだった。
二人は、元孤児で物心ついたころから裏九龍城国で何とか生きていたからだ。
学校も、コミュニティもない、あの黒い闇の奥で……。
二人は、うつむき加減にくちびるをとがらせ、同時にあやまった。
「ごめん、ヤーイー隊長」
「ごめんなさい、やーいーたいちょう」
ヤーイーは、両手を細い腰に当てて、一息ついた。
そして、二人の前に拳を出した。
「これ、方拳の形がぐーよ!」と、今度は掌をだす。
「掌底みたいな開き方が、ぱーよ!!」
目がウルウルしている二人の前に、ピースの手を出す。
「点穴の、目尽きみたいな、この手の形が、ちょきよ!!」
「ぐー、ちょき、ぱー……そんなのあったんだ!!」
「あったんですね!!!」
「で、ポイントはここからよ? ぐーは、ぱーに勝てなくて、ちょきに勝てるの。
ちょきは、ぐーに勝てなくて、ぱーに勝てるの。
そして、ぱーは、ちょきに勝てなくて、ぐーに勝てるわけよ……わかった?」
二人は、一生懸命にぐーちょきぱーをしながら、がんばって出している。
ヤーイーは、二人を見下ろしながら、目を細める。
姉のような、母親のような瞳で微笑させた。
ったく、あんたたちは、私の妹みたいなのよ……。
可愛いったら、ありゃしない……。
ヤーイーは、ホンホンとリャンリャンの二人の手を同時に覆う。
「ヤーイー隊長、ありがとう!!」
「やーいーたいちょう、ありがとうございます!!」
「うん、良いってことよ!! さ、今日はどっかでご飯食べる?」
双子は、同時に笑った。
二子の左右同時に八重歯が見えた。
「うん、劉龍飯店にでも行きたいな!!」
「はい、劉龍飯店に行きたいです!!」
三人は、手を繋ぎながら青龍省へと向かっていく。
「ん? どうしたの、二人とも」
「ヤーイー隊長、お母さんみたい!!」
「やーいーたいちょう、お姉さんみたいです!!」
「ま、両方じゃないの?」
ホンホンとリャンリャンは、お母さんに変わる人に引き取られているが、彼女達は心から「お母さん」と認めている。
そして、ヤーイーもクンフーの母なのだ。
「劉龍飯店ついたら、なに頼もうか二人とも?」と、夕日をバックに三人は向かって行くのだった。
次の日。
銀龍は、キセルをくわえながら、パソコンの前で、あごを突き出している。
イライラしている感が、空気からでも伝わるのか、金龍も声をかけなかった。
しかめっ面のまま、灰皿に向けてキセルをひっくり返す。
灰がうっすらと、赤い光を残している。
「なぁ、金龍?」
金龍は、いつも通りの、口角をあげたまま、返事をする。
「あら、何かしら? もう嫌になったの、事務処理? 朝九時に来てから、まだ1時間もたっていないわよ」
「いや、なんで、こう、うちらの問題児達はよぉ、こんなに保険がかかるんだーーーーー!! ああ、ちくしょう!!」
銀龍は、ようやく爆発したのか、片手で黒く長い髪をかきむしる。
「もう、なんだよ、今月はぁああああ!!」
パッと、左手を出して、銀龍は指を一つ一つ折り始めた。
「ホンホンリャンリャン警報からはじまってよぉ、ルェイジー注意報、シャオイェン警報。シャオイェンなんかぁ、オレは眠れなかったぜぇ。
どこの省の人達見てもよぉ、寝不足なのかよぉ、皆なんか、こう動きが緩慢なんだよなぁ」
「シャオイェンちゃんは、放送でずっと喋っているのよね。
たまに、ヒットする雑学は面白いけれど、彼女放送作家かなんかになってもいいんじゃないのかしら」
「とにかくよぉ、これ、全部、書いたからよぉ、頼むぜぇ、相棒……。よっこらせっておぉ!!」
と、束になった書類をもち上げ、金龍のデスクに置いた。
「うちも、もう少しシステム考えないといけないかしら?」
「あん? 何でぇ。うちも副業で保険会社作るかぁ?」
「あら、いいじゃない。設立する?」
「めんでぇがぁ、やってみるかぁ!!」
「綾ちんに相談してみる?」
「いや、綾ちゃんの手ぇかりるほどじゃなねぇよお……」
銀龍は、背筋を伸ばし、オフィスの出入り口へと向かう。
「さてと……劉龍飯店でも行くかぁ……」と、銀龍は背中の開いたドレスを金龍へ向けて出て行った。
巻末特別大爆発!! ルェイジーちゃんの設定講座!!
アイヤ!!
ルェイジーアルネ!!
ここでは、設定を教えるアルネ!!
みな、よろしく、アルネ!!
今日は、双子の説明アルネ!!
まずは、雷 虹虹(レイ ホンホン)アルネ!!
彼女はとっても性格が負けず嫌いアルネ!!
言葉の節々で分かるけど、特に白虎部隊としてのプライドが高くて、ルェイジーも尊敬するアルネ!!
笑うと右側に八重歯があるのがホンホン、アルネ!!
彼女は白虎拳使い!!
直立したまま、両手をネコみたいに丸める拳で、独特な拳法アル!
そして、ホンホンとリャンリャン双子の得意武器は六角棍アルネ!!
白虎部隊は、打撃武器を素早く回して弾丸を弾く技を皆持っているアルネ!!
雑技団もビックリアルネ!!
そして、雷 梁梁アルネ!!
ホンホンの妹アルネ!!
双子だから、ホンホンとほぼ同じ顔つきだけど、
彼女の方が言葉が丁寧なのと、笑うと左側に八重歯が見えるアルネ!!
彼女も白虎拳を使用するアルけれど、姉とは違って本当の虎みたいな動きアルネ!!
その素早さは、本当に早くて、弾丸の軌道すらよけながら近づいてくるアルネ!!
そして、二人の持つ合体大技が、
空をも穿つ雷撃(雷电也在天空中醒目)アルネ!!
この技は、パーティカルロイドを全開にして、ホンホンからリャンリャンへと雷撃を流すという大技アルネ!!
二人が起こした六角棍で竜巻を無理やり起こして、更には雷撃を呼ぶという、ルェイジーでも
無茶苦茶に感じる技アルネ!!
ホンホンがプラスで、リャンリャンがマイナスという風に雷撃が流れ、周辺の人や、パワードスーツや戦車、装甲車、
ありとあらゆる機器をダメにしてしまうアルネ!!
とっても刺激的!!
今日は、これで終わりアルネ!!
ザイジェン、アルネ!!




