3-10 ルェイジーママ、劉龍飯店へいらっしゃい!! その1
銀龍は、孤児院をめぐったあと、キセルをくわえたまま、劉龍飯店に入る。
昼にしては、かなり遅くなった。
既に午後二時半を超えていたので、遅い昼飯を食べようと思っていたのだが……。
がらりと扉を開けた瞬間、銀龍はその光景にキセルを落とした。
目の前には、小柄なルェイジーが、銀龍と同い年ぐらいの女性と抱き合っていた。
ルェイジーがすすり泣きしているので、余計に意味が分からなかった。
店主も気味が悪いぐらいに泣いている。
何が起きているのか、銀龍にも判断が全くもってつかなかった。
キセルを拾いなおし、店に一歩ハイヒールを踏み入れると、二人をマジマジ見ながら歩きつつ、カウンターに行こうとしたら、突如店主がいつもの席で泣きながら口を開いた。
「うわー、わー!! いらっしゃい銀龍さぁん!!」
銀龍は「あ、ああ……」と、苦笑いしながらカウンター前の赤い椅子へと適当に座る。
店主が「ゴメン、ルェイジーちゃん。オーダー聞いてきて?」と指示を出し、そのままカウンター奥の厨房へ向かう。
ルェイジーは、涙から鼻水まで大量に流しながら、フラフラな足取りで銀龍の座っているカウンター席の真横までやってきたのだ。
銀龍は、後ろに寄ってきた彼女を見上げた。
小さな鼻の両穴から涙と同じようなくらい鼻水が流れていて、涙も滝のようなどころか洪水のようにあふれ出ている。
銀龍は訝しげな表情をさせたまま、鼻水と涙でおぼれ死ぬのではないかという余計な心配をするほどだ。
口元を最大級にまあるく広げ、のどちんこが見えるほどにルェイジーは叫んだ。
「う、ごぉ、ごちゅうもんはああはうは!! わーーーーん!!!」
彼女の前で、いきなり大泣きし、銀龍は超ドン引きする。
「う、うおお!! もう何言ってんのか、わかんねぇ!!!」
銀龍は、カウンターに両肘をつき、厨房に向けて顔を少し突き出した。
涙ぐんでいる店主に小声で声をかける。
「雰囲気壊すようで、悪りぃんだけどよぉ、劉店長。オレには何が起こっているのか、さっぱりだ。頼む、ゼロから説明してくれよぉ」
「銀龍さぁん、あっしはぁ、どんなテレビ見てもなけなかったがぁ、さすがに今回は涙がでちまったーーー!!」
そして、ルェイジーが再び銀龍からオーダーを取ろうとする。
「銀龍シェンシィーーーーー!!! ビェーーーーン!! マウマウマァアアアアアア!!」
意味が分からな過ぎて、銀龍もカチンときた。
「テメェら、オレが空気よむの苦手なのわかってるよなー!!!」
一瞬、カッとなるが、ん? と、冷静になる。
ルェイジーの思考は単純だ。
この場を納めるための、魔法の言葉があるのを忘れていた。
「わりぃ、ルェイジー。チャーハン頼むわ……」
ルェイジーの頭が切り替わり、元気よくその場でオーダーを受けた。
「店長! チャーハン一つ頼むアル!」
店長も「あいよ」と返事し、卵を中華鍋で割って溶き始める。
そんな中、涙をハンカチでぬぐっている女性に、カウンターから声をかけた。
「悪いな……」と、銀龍は目を大きく見開き、言葉を完全に失った。
彼女の容姿だが、銀龍と年齢が一緒ぐらいはともかく、髪の毛が紫色で流れる髪の毛を小さい三つ編みで後頭部に編んでいる。
ルェイジーと一緒の紫色だ。
背丈は銀龍よりも少し視線が高く、美しくも蒼いチャイナドレスも似合っている。
誰かをどっかで大きくさせるとこんな感じになるのだろう。
銀龍は先ほどよりも、顔を更にひきつらせる。
彼女は、ようやく切れ長の瞳からあふれでている涙をぬぐい取り終え、しっかりと瞳を開けた。
瞳は、噂のルェイジーと同じくらい大きく、顔にシワも刻まれていない。
そこら辺の男性からお姉さんと呼ばれても返事できるレベルだ。
「ひょっとしてぇ、ルェイジーのお姉さんですかぃ?」
そして、彼女の口から銀龍の想像以上の、衝撃の一言が走る。
「いつも、娘がお世話になっておりますアルゥ……」
銀龍は、思わず声を上げてしまった。
「う、うえええええ!!!」
お客が一人もいない、劉龍飯店に銀龍の叫び声がこだました。
李 诗涵(詩涵) (リー シーハン)
年齢31才
女性
身長158センチ
髪は紫、頭の後ろには小さい三つ編み
肌の色 ルェイジーちゃんと一緒
瞳 黒
出身 中国(河北省塩山県)
利き腕 右手
クンフースタイル ルェイジーちゃんと一緒
得意技 全部
得意武器 刀
一人称 私アルゥ
誕生日 1月1日
BWH 体重 86/54/84 57キログラム
リールェイジーのお母さん。
実は、ルェイジーをすてたわけではなく、
ルェイジーをずっと探していた。
こう見えても、劈掛拳の超絶的な使い手。
ルェイジーにとっては、母でもあり、師匠。
拳法の師範代であり、道場も構えている。
事業も好調なせいか、九龍城国にも同情を構えようと視察しているところ、たまたま入った劉龍飯店に入り、見事偶然ルェイジーと遭遇。
銀龍もその場に居合わせてしまっていた。
そして、そのまま九龍城国にルェイジーと一緒に住み着いてしまう。
お昼は劉龍飯店のお手伝い、そのあとはクンフー道場の経営、そして、夜にはバーテンダーを経営という、
実はルェイジーちゃん以上にせわしないキャラになってしまった。
二のうちいらずの拳は、ルェイジーにも教えていて、大体がワンパンチで終了してしまう。
お父さんは、中国の他の省でクンフー道場を経営し、事業は超好調。
しかし、お金にかるんじることはなく、しっかりとクンフーを鍛え上げている、努力家という名の鉄人でもある。
当時、ルェイジーを捨てたわけではなく、いつも言っているセリフを、銀龍が勘違いしてくみ取ってしまったこともあり、
五年間ほど別れてしまっているので、銀龍も後ろめたい気分は持っている。
そして、ルェイジーママはひたすらルェイジーを探していたが、
九龍城国探している間は、地下の裏九龍城国にいて、
裏九龍城国を探していたら、九龍城国で既にルェイジーはチャイナガールズに所属したために、
見つからなかったということが発覚する。




