3-9 レイレイ、七星剣のイヤリングの思い出。 その2
レイレイは、腕を組んだままリビングで座禅を組むように座り込んだ。
「うーん、うーん……。どこやったのかなぁ……」
ありとあらゆるところを探しているが、見つからない。
クローゼットの中、洋服タンスの中、化粧棚の中。
見つからないのだ。
スマートコンタクトレンズから着信が入る。
レイレイは、心の中で受け取るという意思を示した。
脳波が感知し、レイレイの目の前にはウィンドウが開く。
音声通信のみなので、ウィンドウには「not of service」の文字が浮かんでいる。
「なによ、シャオイェン……」
「いや、私的には非常に思うところがありましたので、小隊長に連絡させていただきました」
レイレイは、立ち上がる。
そして、タンスから色々と出した洋服をしまいながら話す。
「長くなりそうなの?」
「いえ、簡潔にお話ししたいところですが、お忙しいのでしょうか?」
「まあ、ちょっとね?」
「どういう風に忙しいのでしょうか?」
「タンスを片づけなくちゃいけないのよ」
「ほおタンスでしょうか? タンスは本来、我々の中華人民共和国でのタンスと、日本にもタンスと言われているものがあります。
そして、中国の場合のタンスは、持ち運び可能な小型の箱を指していましたが、
徐々に大型化し、その過程でいつしか「箪笥」の文字にすり変わったようです。
つまり、日本のタンスと中国のタンスの意味は全く異なっており、更には……」
レイレイはいつの間にかタンスの辺りは完全に片づけ終わっていた。
「はいはい、それで? タンスの次はクローゼットの豆知識でも教えてくれるの?」
「そうですね。それもそうですが、それよりももっと重要な事を忘れておりました」
「なによ、シャオイェン」
「先ほどの周辺の音から察するに、レイレイ小隊長は何かをお探しなのかと推測できます。
そして、音声を分析させていただくと、かなり小さな物を探しているのではないかと予測しています」
「アンタは回りくどいから、面倒だから白状するわよ。勲章を探しているの」
「なるほど、勲章はレイレイ小隊長が右耳にしている飾りの事ですね?」
「そうよ……」
レイレイは話しながら、散らかしたクローゼットも片付け終える。
「では、こういう推測はどうでしょうか? 本日はお洗濯をしましたか?」
「したわよ……」
「そこにヒントがあるのではないのでしょうか? ちなみに、何をお洗濯したのでしょうか?」
「えっと、ブラジャーと、パンティと、あとはチャイナドレス? 中国服?」
「何枚ぐらいでしょうか?」
「2日分だから、ブラジャー二枚と……ねぇ?」
「はい、何でしょうか?」
「私たち、女同士だからいいんだけどさぁ、これってセクハラじゃない?」
「セクハラですか。セクハラとは相手が嫌がることに対して、無理やり行った。
もしくは相手が同意していないのに、感情との相違の幅が広がることにより、
セクハラと感じるかどうかということではないのでしょうか?」
「……もう、いいわ……。とにかく、外着二着よ?」
「そこを調べてみてはいかがでしょうか?」
レイレイは、訝しげな顔をさせて、バルコニーに向かう。
外は雨が降るようなことはなく、快晴だ。
夏の暑さはとてもまぶしく、レイレイの額にも汗が玉のように出る。
暑い中、中国服と私物の赤いチャイナドレスを調べてみたが、見つからなかった。
「探したけど、なかったわ……。とっても大事な物なのに」
「バルコニーの床は探しましたか?」
「そういえば、探していなかったわね……」
レイレイはバルコニーの側溝を探した。
そして、側溝の排水口の辺りに、金色に輝くイヤリングを見つけた。
「あ、あったよ!! さすがシャオイェン!! ありがとう」
「おめでとうございます!! では、早速ですが、私のウンチクを再び……」
レイレイは、すぐに七星剣の形を作られたイヤリングを、洗面所で洗って右耳にとりつける。
両手に腰をあて、鏡に映る自分と向き合った。
自信に満ちた自分の顔を確認し、両方の眉を吊り上げた。
「うん、良し!! これでまた出かけられる!!」
「レイレイ小隊長、今日はとっても快晴ですね。そういえば、晴れのメカニズム……」
「ごめん、シャオイェン……」
「はいなんでしょう、小隊長」
レイレイは、片方の眉毛を痙攣させる。
「あのさ、アンタどこに住んでいるんだっけ?」
「紅木楼ですが……」
「その、何号室?」
「101号室ですが、何か?」
「何かじゃないわよ……。私の住んでいるところの、真下でしょ?」
「はい、そうですが……」
「わざわざ通信で話さなくてもいんじゃないの?」
「ですが、動きながらウンチクを話したいものでして」
「毎回毎回思うんだけど、うちのマンション結構良い所よね?」
「そうですね、日当たり良好で、よく洗濯物も乾きます」
「エレベーターもあるわよね?」
「はい、ここのマンションのエレベーターは、オメガ重工製で、エレベーターの速度も速く、非常に乗りやすいです」
「てか、アンタさ、あたしンちに来なさいよーーーーー!!!
「……嫌です」
「ったく、あまのじゃくなんだから……。分かったわ、今から私がアンタの家に行くわよ!!」
怒ったレイレイは、がにまた歩きでマンションを出て行った。
・勲章授与式について。
九龍城国内では、勲章授与式は行うが、かなりの最小人数で行う。
現在は多少落ち着いている九龍城国になったが、銀龍から5世代前の時は内乱だらけの国だった。
その為、裏切り行為も半端ではなく、国の長がすぐに入れ替わるときも多々あったと言われている。
それは、国を管理している龍王の暗殺を恐れるという話もあるが、
実は龍王は老人ではなく、若い男でもなく、女性という噂もある。
一般市民にとっては、かなり謎に包まれているが、以前から顔を出すようなことはなかったので、
誰もが気にすることなく平然と「龍王」様と呼んでいる。
龍王の権限は、ほぼ独裁だが、戦闘に関しては指揮することはなく「チャイナガールズ!!」に一任することが多々ある。
龍王の周辺には「五爪龍」と呼ばれ、全員チャイナガールズが遠征などに行っていた時などの為に、
龍王をお守りする役目である。
その他の傭兵も存在するらしいが、国直属の傭兵ではないため、チャイナガールズみたいに堂々と目立つことはない。
その傭兵集団は、噂ではドラゴンテロリストの専属傭兵という噂もあるが、、、、、。




