3-8 レイレイ、七星剣のイヤリングの思い出。 その1
レイレイは、タンクトップにショートパンツ姿で自宅マンション内をうろうろ歩いていた。
困ったことに、いつも右耳につけている七星剣のイヤリングが見つからないのだ。
衣装入れの棚の上には、銀龍とレイレイが写っていて、銀龍は彼女の肩に手を回していて、レイレイは眉を吊り上げて笑っている。
その写真の隣は、メイドインガールズの時の、全員集合のカオスな写真もある。
「うーん、まいったなぁ。どこやっちゃったのかな……」
レイレイはその写真を見つめると、高い戦果を初めてあげた時の勲章授与式を思い出した。
ここは、九龍城国の中でも最も高い位置、最上階にある龍王の間だ。
龍王の間は、ありとあらゆるところが、赤、金と飾られていて、それは椅子も、テーブルも、カーペットにも散りばめられている。
そして、玉座の前には顔が見えない「龍王」と名乗る人物が声を出す。
年老いた声なので、重みが違う。
思わず、レイレイも気を引き締めていた。
「チャイナガールズ、朱雀部隊小隊長、レイレイ。
そなたには部隊内でも成績も優秀ながら、戦死者を一人も出さず、5年間職務をまっとうした事を、
証としてここに授与する……」
レイレイは玉座の前で、チャイナドレスを揺らし、片膝をついてしゃがみ込み俯いた。
「はっ!! 勿体なき、お言葉!!」
玉座の左隣には、銀龍が銀色のチャイナドレスを着たまま、片膝をついている。
その右隣には、黒い長髪の女の子がいる。左右両方に花柄の髪飾りをしている女の子、メイヨウがいた。
「メイヨウよ、彼女に勲章を……」
「はい、かしこまりました、龍王様……」
メイヨウの両手に持っていたのは、赤い箱だ。
赤い箱の中には、金色の剣で形どられたイヤリングが丁寧に横たわっている。
彼女はレイレイの目の前に近づいて、彼女の右耳に剣の形をしているイヤリングを取付けた。
「レイレイよ……面をあげい……」
レイレイは、背筋を伸ばし玉座に座っていると思わしき龍王を見上げる。
「ほう、似合っているではないか……。今後とも戦果を期待する……」
龍王の玉座の隣りにいた銀龍は、ようやく立ち上がりレイレイの右隣へ並んだ。
そして、銀龍は龍王へ向けて敬礼をした。
いつもの銀龍らしくない、大声で叫ぶ。
「敬礼!!」
レイレイは銀龍に続き、即座に敬礼した。
さらに声を張り上げて、銀龍は大きく口を開く。
「我ら、チャイナガールズは九龍城国の為に!!」
影になっていて分からないが、龍王は右手らしきものを下げた。
レイレイにも何となくそれは分かった。
「今後とも戦果を積み上げるように。なおってよろしい……」
銀龍の声が爆ぜる。
「なおれ!!」
銀龍とレイレイは同時に右手を下げた。
「ふむ、本日の勲章授与式はこれで終わりじゃ……」
龍王の目の前にはスモークウィンドウが降りて、姿が全く見えなくなる。
ようやく、レイレイは胸をなでおろした。
「ふうー……誰もいないけれど、超緊張したわ。銀龍ターレン」
「へっ……オレはぁ何回もやっちまってるからぁ、もうそんな気持ちなんてねぇけどなぁ……」
銀龍は、メイヨウに合図をさせる。
「メイヨウ、いっちょ写真とってくれやぁ」
メイヨウは、首にぶら下げている超薄型のカメラを銀龍とレイレイに向けて掲げる。
彼女はスマートコンタクトレンズの適性試験を受けることは出来ない。
なので、チャイナガールズみたいに写真を撮ることがまだできない。
銀龍は、レイレイの肩に手を回す。
「な、ちょっと、ターレン!!」
「たまにはよぉ、いいだろぉよぉ?」
銀龍は、レイレイに肩を回して、ピースする。
「ほらほらぁ、向こう向こうぜぇ……レイレイ小隊長さんよぉ」
レイレイは、緊張感が一気にほぐれたのか、いつも通りの自信たっぷりの表情をさせる。
「銀龍様。では、撮りますよ……」
メイヨウはカメラを掲げた。
・マンション紅木楼について。
九龍城国内にある「紅龍省」の川沿いあるマンション。
付近には大きな公園があり、住民たちも健康の為にクンフーを行っている。
このマンションは、チャイナガールズがいくつか購入しているマンションで、
税金対策の一つなのだが、単なる空き室があっても損なので、
チャイナガールズの寮として、格安待遇で借りられるマンション。
以前は、レイレイやシャオイェンの師匠が借りていたらしいのだが、
現在は二人が借りている。
劇中でも説明しているように、レイレイは301号室
シャオイェンは101号室に住んでいる。
近いので、二人ともよく会いに行ったりしている。




