3-7 メイヨウちゃんの、思い出。
メイヨウは、銀龍と金龍に頼まれた、キセルのメンテナンスをしていた。
二つともド派手なのもそうだが、本物の金箔と銀箔を張り合わせて作っているので、
傷つけないようにと、慎重になり力が入る。
メイヨウは、銀龍のキセルを見るたびに笑う。
なぜならば、銀龍の場合は傷だらけになっている場合が多いからだ。
それだけ使用回数も多いのだろうが、扱いが粗雑なのがそのまま性格にあらわれているからだ。
「銀龍様、金龍様……」
と、一言もらすと、メイヨウは笑う。
メイヨウは、元は銀龍の孤児院にいたのだ。
銀龍の事は誰よりも知っているつもりだ。
ずっと、見上げていたのだから。
白い手袋をはめ、メイヨウは静かにキセルを三つのパーツに分けた。
このように、メンテンナンスをたまにしておかないと、灰で詰まるし、フィルターも交換しておかないと、灰を吸ってしまうことになりかねない。
金龍の場合は化粧が濃いので、口紅のあとも結構ついている。
それを丁寧に白く清潔な布で磨く。
キセルの先と口の間には筒状になっているのだが、
それ専用の掃除道具を通し、中に入っている灰をかきだす。
フィルターを交換し、再び慎重に組みなおした。
メイヨウは、裏九龍城で生まれた。
しかし、その環境はひどく、子供が生きていくのにはあまりにも陰惨で、メイヨウは泥水の中、毎日を必死にもがいていた。
中国服も段々とボロボロになっていき、ご飯にもありつけられないとき、そこに銀の龍が降りたったのだ。
その姿はまぶしくて、メイヨウにとってはヒーローだった。
あまりにも空腹と、暗闇にいすぎたせいと、身体の抵抗も無くなっていたので、メイヨウは死ぬ直前だったのだ。
しかし、その銀の龍がメイヨウを生きろと、引っ張り上げてくれたのだ。
1年後、メイヨウはいつの間にか孤児院で過ごしていた。
何とか元気になり、後遺症もなく、健康的になったのだ。
そして、孤児院で子供たちとコミュニケーションをとっている、キセルをくわえている女性を見上げた。
「銀龍様、私はあなたに助けられました。何かお仕事をください。タダでも構いません。あなたには恩義を感じているのです」
ただワイワイしている子供たちとは異なり、メイヨウはいつの間にかこの言葉を言っていた。
銀龍は、その子を見下げて、笑う。
「メイヨウ、そう簡単に人に尽くすもんじゃねぇぜ。タダなんて言うもんはなぁ、本当に恩義を感じているやつの言うセリフじゃねぇ。
いいか、あと一年後だ。テメェも色々とここで学んでから、何か特技が見つかる。その時、必ず雇ってやるぜぇ」
銀龍を見上げているメイヨウの両方の瞳の輝きがぐるりと一周し、輝き始めた。
スラムで殺されていた瞳から、生命を得たように生まれ変わった瞬間だった。
そして、きっかり約束の一年後、銀龍が直々にやってきた。
「よう、メイヨウ。テメェに仕事だ。オレ達はますます忙しくなっているんだ。色々と補助を頼むわ。
事務処理からデータ入力、果ては……」
銀龍は、キセルを口元から外し、これを見せた。
「キセルのメンテナンスだ。テメェさんは特に器用さが群を抜いていやがる」
メイヨウには心当たりがあった。
裏九龍城国では、南京錠などどこでもかしこでもされている。
その為、それを開錠するために、細かい作業をし続けた結果、チャイナガールズ達とは異なり、地味だが器用な所が特技になったのである。
そして、隣ではリームォが、なぜかいた。
「メイヨウ、なにしてりゅー?」
9歳なのに、リームォよりもしっかりとした口調で答えを返した。
「金龍様と銀龍様のキセルのメンテナンスだよ」
「きしぇる……中身、割としんぷりゅ」
「一番気をつけるのは、傷つけないようにすること」
「きじゅつけない、だいじ……」
キセルのメンテナンスしているのも、これから九龍城国の勲章式があるからである。
リームォも何気に結構なおめかしをしている。
赤いチャイナドレスに、パンツスタイルで、素材はシルクを扱っている。
着心地が良さそうだ。
何とかキセルを組み上げ、メイヨウは汗をぬぐう。
「ふう、何とか間に合った」と、金と銀のキセルを台座に置いたままリームォと一緒に部屋を出て行った。
美友(美友) メイヨウ
年齢9才
女性
身長125センチ
髪は黒色 長髪で、左右に花の髪飾りをしている。
肌の色 黄色
瞳 黒
出身 裏九龍城国
利き腕 両方
クンフースタイル なし(猿拳を習っている)
得意技 なし
得意武器 なし
一人称 メイヨウ
誕生日 不明だが、NAY519年頃
所属部隊 なし
銀龍がポケットマネーで運営している孤児院の女の子。
非番の時にもお手伝いをしたり、銀龍にとても忠実。
元は、裏九龍城国にいた孤児で、その命を銀龍に救ってもらって恩義も感じている。
本人は生きられれば良いと思っているが、実はかなり手伝ってもらっているため、
一般のサラリーマン以上の金額を貰っている。
後方支援的な役割が多いのだが、下手な九才児よりもソツなく何事もこなすせいか、
リームォよりも大人っぽいと評されることが多い。
非常に頭のキレがよく、手先も器用なので、後方なのにかなり重宝されている。
金龍についているが、銀龍にも信頼を寄せていて、双龍の為に色々とお世話をしている。
落ち着いた雰囲気や見かけによらず、超頭脳派で誰よりも行動派。
金龍と銀龍の目の前では、特におめかしに気を付けており、銀龍や金龍に負けないようにと
しっかりと中国服や漢服を着こなしている。
リームォとは、実は結構はなししたり、交流がある。




