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チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
チャイナガールズ!!達の破壊的な日常。
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3-5 銀龍ターレン「劉龍飯店」に来店。 その2

 



 ――――五年前




 降りしきる雨の中、劉龍飯店の入り口がぶち壊れる。


 ぐわぁあ!! と、男どもが吹っ飛んだのだ。


 銀龍は、バトルドレスである銀色のチャイナドレスを着ている。


 微妙にデザインが異なっていて、背中にある銀色の降龍の刺青が堂々と見えている。


「いいかぁ、テメェら、二度とオレの好きな店に手を出すんじゃねーぞ!!!」


 店主は、鋭いまなざしを銀龍に向ける。


「悪かったですね、お客様。いえ、銀龍さん。あなたに出て貰わないとドラゴンマフィアたちも、何度もしつこく来るものでして」


 銀龍も謝罪する。


「いや、こっちも悪りぃ。あんたの店の入り口をぶち壊しちまった」


「いえいえ、あなたのクンフーは本物です。特にその扇の演武はそれはもう、至高のクンフーです」


「そうかい? オレのクンフーはまだまだ道の途中だぜぇ」


 入り口が滅茶苦茶になっている。引き戸だったはずなのだが、取っ手のアルミフレームはひしゃげ、ガラスは一切残っていない。


 しかも、大雨なので、入り口付近の椅子まで雨がかかってしまっている。


「あとで弁償するわ」と、銀龍は椅子を借りて、座った。


 キセルを取り出そうとした瞬間、ガラスの破片が飛散している入り口の奥から影が見えた。


 銀龍は、すぐに扇を構え警戒する。


「テメェ、まだいたのか!」


 奥の影から、ボロボロの中国服を着た小さな女の子が泣いている。


「うわーん、お腹すいたアルー!!」


 小柄な銀龍よりも、より小さく幼い。


 びしょびしょになりながら、店内に入ってくる。


「うおお、テメェなんだよ……」


「お腹がすいたアルー、ひもじいアルよー!!」


 銀龍は店長に一瞥する。


「悪い、店長、追加注文だ。こいつに何か食わせてやってくれ」


 店長は「あいよ」と、返事をし、チャーハンを作り始めた。


 銀龍は、ビショビショになった女の子に店長から借りたタオルを渡す。


「ほれよ、テメェさん、いくつだよ?」


 涙を拭いているのか、濡れているところを拭いているのかよく分からない感じで、紫色の髪をしている女の子は顔をぬぐう。


「うう、ひっくひっく」と、何とか落ち着いてきたようだ。


「まずは、テメェじゃアレだな。名前なんていうんでぇ?」


「ル、ルェイジー……。リールェイジ……アル」


「そうかそうか、ルェイジーちゃんか。悪いことは言わねぇ。飯食ったらさっさと(けぇ)んな」


 小っちゃいルェイジーは、1皿分のチャーハンを一気に食った。


「店長、もう一丁くれるか?」


 紫色の女の子は、結局チャーハンを3皿平らげた。


「テ、テメェ、よく食べるなぁ、ルェイジーちゃんよぉ」


「ルェイジー、お母さんとはぐれたアル」


「マジかよぉ。オレは子供のおもりなんてできねぇぜ。それによぉ、お母さんはなんて言っていた?」


「分かんないアルー!!」


「その、何か原因はあるんだぜ、ルェイジーちゃんよぉ……。ほら、何か思い出してみろよぉ」


 ルェイジーは、涙をタオルでぬぐいながら、しゃっくりしながら話し始める。


「そ、ひっく、そういえばアルネ……。お母さんは、よく食べ過ぎる子ね。あまりにも食べちゃうと、捨てちゃうわよ! って言っていたアル」


「ルェイジーちゃんさ、言葉ってわかるか? 君、捨てられたんじゃねぇの?」


 ルェイジーの大きな瞳が余計にまん丸くなり、涙があふれた。


「ルェイジー、捨てられたアルかー!!! びぇえええぇえええぇぇぇええええん!!!」


 銀龍も、子供がいるわけではないので、思わず直接的な表現をしてしまった自分に、手のひらをおでこにつける。


「店長、オレやっちまったかなぁ」


「すみません銀龍さん。ちょっと直接的すぎな言葉でしたね」


「店長悪りぃ。もう一皿、餃子を作ってくれ。勿論、全部お代は持つよ」


 餃子にありつけると、すぐにルェイジーは泣き止んだ。


「全く、まだドラゴンテロリストやドラゴンマフィア相手にした方が楽だぜ」


 どうしようかなぁと、テーブルに肘をついている、銀龍。


 雨もずっと止まない。


「ったくよぉ、今日はついてねぇぜ」


 声すら掻き消えそうな雨音の中、影が一つ現れた。


 背が高く、かつ屈強そうな男だ。


 椅子に座っている銀龍を見下げながら、筋骨隆々の男は口を開いた。


「銀龍よぉ、よくもまあうちの手下をやってくれたなぁ」


 銀龍は、喧嘩を買う気満々で言葉を返す。


「おやぁ、ヤオの旦那じゃねーかよぉ。ここをテメェらに仕切られると、オレも困るんだよぉ」


 男の眉間が痙攣している。


 額には血管が浮き出始めている。


「ヤオの旦那ぁ、テメェゆでだこみたいになってんぜぇ……」


 ゆらりと、銀龍は椅子から立ち上がる。


 その時だ。


 目の前に女の子が両腕を広げて、銀龍と店長を守ろうとした。


「銀龍は、一杯ご飯食べさせてくれる良い人アルネ! ルェイジー、良い人は絶対守るべきとお母さんに教わったアルネ!」


 ヤオは、ごつい体躯を震わせ大笑いした。


「うはははは! お嬢ちゃん、ケガしないうちに帰りな!」


 ルェイジーは、眉毛を吊り上げたまま、一切ひかない。


 そして、腰を落とし両手を広げる。


 小さなクンフー使いだ。


 ヤオは、グフフと気持ちの悪い含み笑いをさせ、彼は彼のクンフーの構えをさせた。


 銀龍の後ろで、店長が口を出そうとした。


 しかし、銀龍は止めた。


「店長、悪りぃ。ちょっと待ってくれねぇか?」


「しかし、銀龍さん」


「いや、あのルェイジーちゃん格が違うと思わねぇか?」


「格ですか? 銀龍さん」


「おうよ、あの子はいつ捨てられたかわからねぇが、とにかく最近じゃねーっていうことよぉ。

そして、今までどうやって生き延びてきた? 以前よりは少なくなったが、スラムだっていまだある。

アイツは、何かを持っていやがるし、スゲェ良い構えをしている。間違えねぇ」


 男は恐らく構えからにして、少林拳法だ。


 外家拳というやつだ。


 見せかけもド派手で、分かりやすいのが外家拳である少林拳だ。


 対するルェイジーは、八極拳ぽいのは間違いない。


 ちなみに、銀龍は太極拳がベースなので、内家拳である。


 ルェイジーは、気を整える。


 相手がドストレートな分かりやすい攻撃をしてきた瞬間だった。


「アイヤー、アルヨ!!」と、彼女は一歩右足を踏むと同時に、右肘を全体重乗っけて向かってきた。


 相手の拳は空振り、その威力がそのまま男のみぞおち目掛けて一点集中に力点が入る。


 そのまま倒れれば、男はどれだけ幸運だったのだろうか、


 一瞬の間があき、男はものすごい勢いで店外へ吹っ飛ばされた。


 どしゃりと、重い音がして降りしきる雨に打たれながら、男はそのまま動くことはなかった。


 30メータぐらい吹っ飛んでいたのだ。


 ルェイジーは、振り返り、銀龍を見ながら無邪気に笑う。


「ふふ、ルェイジー敵倒したアルネ!! 銀龍守ったアルネ!!」


 銀龍は、小さな怪物を見つつ、化粧っ気のない瞳を細める。


「テ、テメェ……クンフーの逸材じゃねぇか。店長、もう一つ頼めるか?」


「銀龍さんの頼みだったら、何でも聞くぜ」


「コイツを雇いたいんだけどよぉ、コイツの食費もうちで払う。それと、ここでも働かせてやってくれないか?」


「銀龍さんのお望みだったら、構いませんよ。それにうちにゴロツキどもにも対応してもらいますしね」


 ルェイジーは、雨にも負けないまぶしい笑顔をさせた。


「店長、銀龍、宜しくアルネ!!」





「――銀龍、銀龍ターレン! 聞いてるアルか!!」


 銀龍は、ハッとする。


「わりぃ、昔の事、思い出してたわ」


「銀龍、明日はうちにくるネ!! 遊びにくるネ!!」


「なんで、オレが来なくちゃいけねぇんだよぉ」


 ルェイジーは、ムダにジャンプしている。


「いいから、いいからくるアルネ!!」


「ったくよぉ、わーったよ!! いきゃー、いーんだろぉ!! 何時に行けばいいんだよ?」


「アイヤ、時間は13時ぐらいアルネ!」


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