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2-14 銀龍VSビッグバンコステロ

 

 銀龍はスピードに耐えながら金龍と同じ方向へ向かっていった。


 ちょうど500メーター先までおよそ3分で到着。


 金龍のジープを目視、通信。


「よう、着いたぜぇ。やつぁどこだ?」


「たぶん、もう少し先ね」


 再びジープのエンジン音が聞こえ、銀龍はスピードを上げる。


 そして、広大な荒野の中、違和感のあるものを見つける。


 車が通っているわけでもなく、土煙が妙に上がっているのだ。


 銀龍はそこまで降り立つ。


 間違いない。


 光学迷彩を使用してコステロは逃げていた。


 銀龍はキセルをくわえさせてもらって、笑いながら振り向く。


 ゴーグル奥の瞳は細くなっていた。


「よう、コステロの旦那ぁ」


 相手も観念したのか、光学迷彩がとかれる。


「よくも、よくもぉぉおおおお!!!」


 鼻息が荒く、ゴリラ顔の男は顔を真っ赤にしている。


 血と硝煙が巻き上がる戦場も今回は、これで最後なのだろう。


 戦争は、朝から始まり、更に深い闇へと切り替わろうとしていた。


 血色の夕日が、二つの影を照らす。


「よぉ、コステロぉ……。どうだい? オレ達の、女の味はぁ? 十分に血の味だろぉ……」


 銀龍は、完全に冷え切った瞳で、相手と向き合っている。


 コステロは、銀龍以上にどでかいパワードスーツを身に包み、ふんぞり返っている。


「俺はな、ここまでコケにされたことは、なかった!! 金、女、名誉!! 全てあらゆる手段で奪ってきたんだああ!!」


 銀龍は、右側の背中からマニュピレーターを出し、銀の扇子で顔を仰ぐ。


「へぇ、それで? 年端もいかねぇ、少女も拉致して、慰みものにして、更には人身売買の材料かよぉ……。良いご身分だぜぇ……」


「お前たちに何が分かる!! 全てをかけて得てきたんだああ!! お前らはあ、おまえらはあ!!」


「ガキじゃねぇんだ。テメェには元から勝ち目などねぇんだよ。これを見てみろよぉ、オレはなぁ戦場に立つたびに思うんだ。


無責任には無責任の結果が待ってるっていうのによぉ……。一度だけしか言わねぇ。降参して投降しろ……。


オレはなぁ、優しいとかそういうのは大嫌いなんだ……。


テメェがどんな惨劇を受けようが知ったこっちゃねぇ。だがなぁ……」


 銀龍は、左側のマニュピレーターでキセルの灰を落とした。


「オレ達は、マシンじゃねーんだよ。戦争をするための人間なんだよぉ」


 コステロは、銀龍が口を開くたびに「ウルセェ!!」を連発している。


「言っただろぉ、テメェはもう終わりなんだよ……、」


 そして、コステロは、パワードスーツの中からありとあらゆる兵器の銃口を全部フェイロンへと向けた。


 銀龍は、一切表情を変えず、コステロを見ている。


「いいか、撃ってみろぉ。オレのシルバーバリアは、特別中の特別だぜぇ。

テメェの最後まで全部、ありとあらゆる頭のてっぺんから足先、皮膚に生えている産毛までも、テメェの攻撃をどうするかお見通しなんだぜぇ。

全部説明してやらぁ……」


 銀龍は、左右にあるマニュピレーターで掴んでいるキセルと扇子事バックパックにしまう。


「テメェが左手に持っているバズーカーを撃つが、全部オレがよける」


 コステロが左腕にある100ミリ無反動を撃った。


 銀龍は、ものすごい速度で、右に動き、かわす。


 ガコンとバズーカーが唸る。


 自動装填時間もものすごく短い。


 かなり良い装備であるのも間違いはない。


 今度はよけた銀龍の、左側に構えなおし、撃つ。


 だが、むなしく弾道だけが過ぎていく。


 右へ銃口を向けようが、左側へ向けようが、かわされる。


 機動性が全く違うのだ。


 今度は、コステロが右手から対物ライフルを向けた。


 人が支えて撃つにしても、反動がものすごくあり、その反動でケガしてしまうぐらいの代物だ。


 銀龍の黒い長髪が風で揺れる。


「そして、その対物ライフル、オレに撃つが、フェイロンのバリアによって、弾かれる」


 銃口が爆ぜ、コステロのパワードスーツですら、足元が土にめり込み、少し後ろに下がる。


 銀龍のきめの細かい銀色のバリアが半球に広がり、弾丸はあらぬ方向に滑って行った。


「そして、両方の肩に乗っかっている赤外線式弾道ミサイル。悪りぃがオレには一切当たらない。

バリアさえあれば、別にどんな攻撃でも構ねぇけどよぉ、一応相方にも協力させてやってくれや……」


 鼻息を荒くさせ、コステロの両方の肩に乗っかっている無数の弾道ミサイルが銀龍の方向に向かっていくが、


 ミサイルは銀龍の左側へと逸れ、全く別方向に飛んで行ってしまう。


 ミサイルは全て地面へと衝突し、爆発を上げ消滅する。


 煙が風で消滅すると、その奥には金龍がいた。


 彼女は長い針を片手に、腰に手を当てていた。


「あらまぁ、残念ねぇ、コステロちゃん……。シュェリー式気功針。81~85番。ミサイル、大量破壊兵器対応特殊針なのよ。

熱源に探知する針を地面に埋め込んでおいたわ」


 銀龍は、笑いも泣きもせず、冷徹に相手を見つめている。


「それでもぉ、やるかよぉコステロの旦那ぁ!!!」


「くそがああああああ!!」


 コステロは最後の一撃という念をこめて、銀龍に突撃してきた。


 銀龍は、美しいまつげを落とし、「やれやれ」と言葉を捨てた……。


 銀色のバリアが広がり、コステロに突撃する。


 とてつもない勢いで二つのパワードスーツが衝突する。


 勝負は想像以上にあっけなかった。


 銀龍のバリアが全てコステロの機体を押し切り、ありとあらゆる関節部が砕け、パーティカルロイド粒子が漏れていく。


 パワードスーツ自体もところどころが歪み、ひしゃげてきて、悲鳴をあげている。


 コステロは、一瞬だけニヤリと顔をさせた。


「そして、テメェはむなしく自分だけ爆死する……」


 その瞬間、大量破壊兵器が落とされたような衝撃が地上を支配した。


 ありとあらゆる森林、川が風圧によって、揺らぎ、揺れ、付近にあった市街地は窓ガラスが全て割れ、


 その炎は大地を焦がした。


 風は金龍にも吹きすさび、彼女の後頭部を縛っている髪飾りを強く揺らす。


 金色のバリアが広がり、あらゆる砂利、熱線、衝撃をはじく。


 夕日は徐々に沈みかけていて、赤い闇の中から無傷の銀色のフェイロンが姿を顕わにした。


「ったくよぉ……。テメェら案の定、全員死刑だ……」


 そう言葉をこぼすと、マニュピレーターからキセルを取り出し、咥える。


 金龍はすぐに近づき、マッチで火をつけた。


「お疲れ様、銀龍」


 シェンシェンと、そのマッチにキセルの先端を近づけた。


「へっ、馬鹿なやつらだったぜ……」


「無謀と希望は違うわ。彼らは無謀だったのよ」


「ふん……知るか。アイツらのことなんてどーだっていいよぉ」


「それよりも、11人いた捕虜のうち、一人は亡くなったわ……。生き残った10人のうち、一人が手を繋ぎながら言葉をかけていたわ。

加油哦ジャ ヨウオって……。彼女たち、たぶん九龍城国出身だわ」


「……ドラゴンマフィアだな」


「そうね、うちの国の膿ね」


「気分の悪りぃ話だ……。金龍、戦闘は終いだ。悪いが皆に知らせてくれ」


「了解」と、口を漏らし、金龍はそれぞれの全部隊に状況終了の連絡をした。


 金龍が連絡しているうちに、どこかで見たような金髪の、赤い軍服を着た上品なお坊ちゃんの影が現れ

る。


「いやー、シェンメイさん。お見事でしたよ」


「いえええぇ、し、翔!! どこにいたんだよ!! てか、何しにきやがった!!」


 翔は、青い瞳を細めさせ、微笑む。


「なにって、そりゃあ、君の仕事ぶりをみにきたに決まっているじゃないか」


「んだよ、テメェ」


「未来のフィアンセに向かって、テメェはないじゃないか。せめてお前とかにしてくれよ」


「っせぇ、いいから帰りやがれ!! お坊ちゃんの出る幕じゃねー」


 翔は、笑いながら平然としている。


「いやあ、さすが、九龍城のお姫様だけあるなぁ。それと、妹に頼まれて死体処理を頼まれてきたんだ。まあ、大体は把握しているけれどね」


「ふんっ……、」


「君は、最高だよ。また、どっかで会おう」


「やなこったい、そもそもオレがなんでテメェの言うこと聞かなくちゃいけねーんだよ!!」


「君は、絶対、僕のフィアンセになるからだよ」


「あん? テメェ、耳ついてんのかぁ?」


 翔は、笑いながら、整った耳を自分で引っ張る。


「あるよ、ほらほらあ。いいから、十字聖教騎士団も視察しにきてごらんよお、きっと、君も興味が出るし、面白いと思うよ」


「ふん、いやだね!!」


 金龍は遠くの方で、「ふふ」と笑いながら、通信を切った。


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