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1-1 我らチャイナガールズは、九龍城国のために!!!



 -------N.A.Y.歴562年 7月14日---------



 空が蒼い。


 それは、九龍城国(カォルンセングォ)で育ったから、青ではなく、(あお)いのだ。


 九龍城国から日本を越え、西側の元太平洋プレートがあった所に、500年ほどかけて現れたユグドシアル大陸。


 その大陸のど真ん中には、300年帝国として、ずっとその大陸に君臨している、十字聖教騎士団の本部がある。


 200キロほど離れた南の方角に、資金を出せば、傭兵同士で演習ができる演習場があるのだ。


 演習場の広さはかなりひろく、街一個分の大きさだが、ユグドシアル大陸のほんの5パーセントほどしかない。


 その領地では、市街地、森林、荒野がセットされていて、ありとあらゆる戦争のニーズにマッチするため、お客(傭兵)が絶えない。


 そこに、九龍城国専属傭兵部隊、チャイナガールズは傭兵家業として、ユグドシアル大陸に来ていた。


 今回の演習相手は「メイドインガールズ」というらしい。


 雇用主は、ハミルトン綾三世だ。ユグドシアル大陸は、かなりの平野部も多いが、ここら辺は結構山なりになっている。


 待ち合わせ場所は演習場入り口前の、廃鉄塔前。


 ここには、駐屯地のように金網など豪勢なものはなく、柵が刺さっているだけだ。


 チャイナガールズの編成は、部隊長二名。そして、部下である乙女たちは、一小隊につき三名。


 各部隊名は、青龍、朱雀、玄武、白虎と、四つの小隊になる。


 十二人のうら若き乙女たちが、これからこの演習場で戦うのだ。


 蒼い空のもと、ジープの影と巨大なコンテナが一つ。


 ジープの目の前には、チャイナドレスを着ている乙女たちが横一列になって整列している。


 その周辺には森林が少しあるだけで、ほとんど何もないだだっ広く赤い土が永遠と広がっている。


 銀色のチャイナドレスを着た、三十路らしき女性が、恥じらいもなく下品に大股を広げジープに座っていた。


 ジープがなければ、下着が見えている。そんなことはお構いなしに、空を泳ぐ煙をただただ眺めている。


 女性は、銀色の龍が装飾されている中国キセルを吸っているのだ。


 灰色のけむりは、蒼い空を泳ぎながら、女性は一言呟く。


「蒼いなぁ……」


 ジープの運転席には、隣の女性と同じように金色のチャイナドレスを着ている。


 銀色の女性と明らかに仕草など異なり、女性として何もかもが完璧だ。


 金色のチャイナドレスの背面は、完全に露出していて金色の龍の刺青が背中全部を支配している。


 全身金色の女性は、金色の中国扇子を腰のポーチから取り出し、自信の顔を仰ぐ。


 瞼には、紅いアイシャドーの化粧をしており、隣の銀色の女性よりかは高いレベルで女として全て整えられている。


 彼女は日焼け止めを塗り、目を細める。


「銀龍、空は青いものよ……」


 艶やかで、かつ気品溢れる声で金色の彼女は笑った。


 銀龍は、キセルを口元から外したら眉をしかめさせ、金龍に言葉をぶつける。


「金龍、空は青いんじゃない。蒼いんだ」


 金龍も、ポーチから金色の装飾が施されたキセルを取り出し、先端に粉を詰める。


「ソウリュウの、ソウね」


 灰をつめ終えたら、傍にいる部下らしき、小さな女の子に火をつけてもらう。


 女の子は、何とかジープに背を伸ばし、「きんりゅうさま、どうぞ……」と、火をつけた。


 その女の子にシェンシェンと、礼をする。


 金龍は、うつむきざまに一言。


「九龍城国出身らしい、良い感性だわ……」


 銀龍はキセルを返し、灰を車の外に捨てる。


 そんな態度に「不法投棄よ?」と、金龍は銀龍に注意勧告をするのだ。


 ちょっとイライラしながら、両耳についている、扇の形をしたピアスをチョンチョンいじっている。


 いじるたびに、逆さにつるされている扇が左右に揺れる。


「ったく、いつになったら、何だっけ? えーと……」


「銀龍、対戦する部隊名もう忘れちゃったの?」


 銀龍は長い髪を掻きむしながら、うーーんと、唸っている。


「そうだ、メイドインガールズだ!!」


「ようやく、言葉が出たわね。まったく、雑なんだから」


 銀龍は、自前の銀色の扇をダッシュボードから取り出し、閉じた扇の先端でおでこをかく。


「んー、毎回うるさいな、金龍。仕事できりゃーいーんだろ、仕事をよぉ」


 金龍という女性は、捲し上げた髪をお団子頭一個で、包んでいる。


 包んだお団子頭には、三本ほど櫛が刺さっている。


 うなじがかゆいのか、丸見えの部分を美に整えられた指で掻いた。


 これだけでも、男を誘っているように勘違いするくらい、女っ気が濃い。


「しょうがないじゃない。相手が遅刻してるんだから」


 ジープの目の前にいる、十二名の彼女たちは、チャイナドレスを着ているものの、全員部隊ごとで着るチャイナドレスの色は異なっている。


 蒼龍部隊は、青。

 朱雀部隊は、赤。

 白虎は、白。

 玄武は、緑。


 これを考案したのは、先々代の銀龍というものだから、うまく考えられている。


 しかも、一人一人よく見ると、全員一緒の形のチャイナドレスばかりではない。


 ズボンをはいている者もいれば、スリットの丈が足元まで来ている者、逆に短いもの。


 単なる中国服を着ている者。


 彼女たちのつけている小物も統一されていない。


 銀色のピアスを両耳につけている者、梅の花の柄のピアスを片方につけている者、剣の形をしているイヤリングをしている者など。


 言葉を投げかけてきたのは、眉をキリリとつり上がっている、とっても面目そうな、梅の花の形をしているピアスをつけている女の子だった。


 ――その女の子が、口を開く。


「すみません、銀龍隊長。我々はいつまで待てば……?」


 銀龍は、赤い紐であでやかに装飾された銀色の扇子をピシャリと閉じ、その女の子の瞳に向けて中国扇子の先端を向ける。


「シャオイェン、テメェさんは真面目すぎるぜぇ。傭兵家業は、もっと……、何だこう。気楽、気楽にやろうぜぇ!」


 十二人のうちの、もう一人が喋る。


「アイヤー! シャオイェンやっぱ真面目過ぎるアルね!」


 もう一人の女の子は、青いチャイナドレスをまとっている。


 足元はローヒールのせいもあるが、元から小柄な部類に入る。


 甲高い声で、その女の子はしゃべり続ける。


「銀龍? 傭兵はもっと食べないといけないネ!! ルェイジーもっともっと儲けたいネ!! たくさんたくさん稼いで、もっとチャーハン食べるアル!!!」


 銀龍は、肩をすくませる。


「いやー、ルェイジーちゃんも、ぶれないねー。あんたの大飯ぐらいのお陰で、トントンなのよ。

劉龍飯店の請求は毎月いくらぐらいだと思ってるのよぉ?

平均100000クーロンドルだぜぇ……。

一般の家庭ではよぉ、男性一人暮らしでもよぉ、食事代はせいぜい30000クーロンドルだぜぇ。

どんだけ圧迫してくれんのよぉ?」


 銀龍の高速の切り替えしにより、ルェイジーは目を丸くさせて涙を流す。


「アイヤー!! ルェイジーのせいで、皆が飢え死にするアルよ!!」


「飢え死にするまで食べるんかい!!」


 二人が話し始めたおかげで、よくわからない女子トークが始まった。


 一斉に話すので、意味不明でカオスな状態になる。


 銀龍は、中国キセルをくわえたまま、口をへの字に曲げて右隣りにいる麗しき、金色の龍の顔を見つめる。


「あーあ、まーたぁ、はじまっちゃったよぉ」


 金龍は、笑いながら背筋を伸ばした。


 派手な金色のチャイナドレスの胸元が余計にはられる。


 隣が銀龍ではなく、男だったら思わず視線を向けてしまうのだろう。


 彼女はひとこと、つぶやいた。


「ま、いつも元気でいんじゃない?」


 ――その時だ。


 大分遠くの方から赤い土煙を巻き上げながら、一台のジープがチャイナガールズの手前で止まる。


 ジープから降りたのは、真っ赤なスパンコールドレスを身にまとった、スタイル抜群の金髪美女だった。


「お、ま、た、せ!!」


 銀龍は、勢いよくチャイナドレスをなびかせ、スパンコールドレスの女性のそばで拳を握る。


「おまたせじゃねーだろ、ったく、どんぐらい待たせんだよ!」


「あらあら、ごめんなさーい。銀龍さん、彼女も私も全員おめかしに時間かかっちゃった」


 スパンコールドレスの女性は、羽飾りがついた扇を開く。


 扇についていた羽が風になびいて、軽々と踊る。羽が躍り狂う扇子で、口元を隠した。


 銀龍は会話を続ける。が、カオスな女子トークはまだ止んでいなかった。


 唯一、止めていたのは、真面目な性格のシャオイェン一名のみ。


「おめかしだぁ? おい、てめーらうるせぇ、黙りやがれよぉお!」


 銀龍が一言はなっただけで、全員目を丸くし、口をつぐんだ。


「チャイナガールズども、全員注目しやがれ!! えっとぉ、コイツが練習相手をしてくれる、ボス兼経営者兼、なんだ?」と、スパンコールドレスの女性に助けを求める。


「いいわよ、あなた、こういうの苦手でしょ? 私の名前はハミルトン=綾=三世。当演習場の経営者であり、傭兵も雇っているし、兵器開発もしているわ!!」


 銀龍は、さっすがぁ!と、思いながらにやける。


「テメーら、耳を血が出るまでほじくって、聞きやがれ!! 今回の演習のルールを説明してやるからよぉ……」


 金龍が口を開く。


「こんにちは、金龍です。皆さん、よく聞いてください。

今回の演習は今日を含めてから、最大5日間かけて行います。

我々が全滅したら、終了です。残りの日数は予備日だと認識してください。

今回の標的はメイドインガールズ。敵の情報はほとんどありません。

ですが、分かっているのはこの部隊はたった三名。彼女たちを撃破してください」


 その瞬間、全員がざわつく。


 12人のうち、一人が叫んだ。


 緑色の服を着ている。玄武部隊の者が口を開いた。


「3人? アタイにかかれば余裕ですよ……。金龍先生(シェンシン)


 金龍は、感情を抑止させながら、叱る。


「シェンリュ、お黙りなさい。いいですか、相手はたった三人ですが、この傭兵部隊は……」


 綾は金龍を見て、手で彼女の言葉を制す。


「この演習場は、元は十字聖教騎士団の演習場だったの。けどね、十字聖教騎士団に勝てば、経営権を譲ってくれるっていうから、彼女たちを使って、演習場を借り入れることができたのよ」


 十字聖教騎士団と聞いて、12名のチャイナガールズ達が、全員無言になった。


 帝国の実力はそのぐらい、とんでもないということだ。


「ちなみに、そのたった三人で、相手したのはファイブズ1名、シスターズ2名。その配下にある、戦車隊旅団と歩兵隊旅団を全員で相手したの」


 シェンリュは銀龍に目を合わせる。


「ちょっと……銀龍大人(ターレン)、そんなのを相手に……」


 銀龍は、扇を勢いよく広げ口元を隠し、嫌味たらしく笑った。


「シェンリュ……余裕なんだろぉ? まあ、遊ばれてこいや……」


 金龍はチャイナガールズ達の緊張などよそに説明を続ける。


「そして、今回の演習ではわが部隊の、青龍、朱雀、白虎、玄武と別れていますが、完全にシャッフルにします」


 誰かが文句を言いかける。


「ちょっとぉ銀龍隊長さん。私は反対ですぅ」


 銀龍は、ジープのフロントにジャンプし、仁王立ちする。


 銀色のカーボン製のハイヒールが、がつんと音を響かせ見かけは細い腕を組んだ。


「うるせぇよマーメイ。今回は、サバイバル訓練じゃねぇ。物資はオレたちが持ってきてやる!!

テメェら……今回は大金積んだ演習なんだ!! いいか、死ぬ気でやりやがれぇ!!」


 12名のチャイナガールズは、背筋を伸ばし、ひたいまで手をかかげ、それぞれが銀龍に敬礼する。


「我ら、チャイナガールズは九龍城国(カォルンセングォ)のために!! 銀龍大人(ターレン)に敬礼!!」


 銀龍は、目尻を下げ、にたぁと笑う。


 ここまで、従順にしてくれると、これほど気持ちの良いことはない。


 オレってかっけぇ!! という心の現れなのだろうか。


「テメェら、なおれ!!」


 そう伝え終わると、12名は同時に敬礼した手を下ろす。


 金龍がそのまま伝令を下す。


「では、今回の部隊編成を伝えるわ。返事は省略です。


 第1部隊は、マーメイ、リームォ、ホンホン。

 第2部隊は、レイレイ、ルェイジー、シェンリュ。

 第3部隊は、リーシー、シャオイェン、イェチン。

 第4部隊は、ヤーイー、リャンリャン、ファリン」


 銀龍は、金龍の堂々とした声の後に付け加えた。


「テメェら、今回の演習はキッチリとクンフーを修行してこい!! 分かったな!」


 12名全員が同時に再度敬礼をする。


 耳を切り裂く轟音がし、空一面を覆う巨大な鳥のような影を作った。


 一同全員、巨大な輸送機を見上げたのだ。 


 綾は、赤い唇の両はしをあげ、眉をおとす。


「どうやら、彼女たちがやってきたみたいね……」


 銀龍は、空からやってくる巨大な影に、顔を引きつらせ「え?」と声をもらす。


 チャイナガールズ達を目掛け、上空からだんだんと何かが落下してくるのだけは分かった。


 それは、どでかい軍用コンテナ1つだ。


「う、うおお!! テメェら逃げるぞ!!」


 蜘蛛の子を散らすような感じでそれぞれが、八方向に逃げ惑う。


 軍用コンテナは、銀龍たちのジープを完全にぺしゃんこにし、爆風が起きる。


 身体がちっちゃい、ルェイジーも真横に吹っ飛んだ。


 器用にチャイナドレスの裾を両手で股の所に手をかけながら、「アイヤー!!」と叫びながらも、横一回転でひらりと着地。


 朱雀は最大スピードを生かし、颯爽と安全地帯へ。


 玄武は、跳ね返ってくる破片を得意の特殊バリアで防ぎ、白虎は飛んでくる破片一つ一つを拳や膝蹴りで吹っ飛んできた破片を防いでいた。


 コンテナ周辺に車の粉砕された破片が飛散し、部品が炎をあげ鼻の奥を焦がす。


 鉄の焼ける臭い、ゴムが焼ける臭い。


 ――ガソリンが燃える臭い。


 喉の奥から何かがこみあげてくるぐらい、黒煙がそこら中に舞い上がっている。


 銀龍は眼前にある大きな、金色の乳房二つをどける。


 金龍が覆いかぶさっていたのだ。


「わりぃ、金龍」


 眉、一つ動かさず、そのまま金龍は立ち上がる。


「いえいえ、銀龍のためよ」


 銀龍は片方の耳をおさえる。耳鳴りが止まないのだ。


 綾は落ちてくること自体も分かっていたので、自分のジープだけ100メータほどバックさせ逃亡。


「テメェ、綾! つけだぞ、これは!」


 ジープはすぐさま銀龍のそばに到着し、綾は彼女の隣に立った。


 綾は、ニタニタしながら目を細めている。


「あらあら、ごめんあそばせ」


「あそばせじゃねぇよ! ったくよぉ!」


 モーターの駆動音が全ての空間を支配し始めた。


 コンテナの扉が金属同士をこすり合わせ、軋む音がチャイナガールズ達を注目させる。


 もうもうと、黒煙をそこらじゅうであげながら炎が激しく風で揺れる。


 その奥から三名ほどの影がうっすらと見え始めたのだ。


 避難したチャイナガールズ12名、それぞれが固唾をのむ。


 下りるハッチによって、ガラスや金属が地面に容赦なく踏みつぶされ、粉砕されたジープの非鳴が聞こえる。


 ハッチがゆっくりと開き終え、その影がいよいよあらわになった。


「あんらぁ、ごめんなさぁーい。ジープ壊しちゃったわねぇ」


 顔面真っ白な白塗りの男が野太い声を出している。


 その姿は、ボディビルダーも真っ青な体格で、メイド服の格好を無理くり伸ばして着せている。


 同じく、筋骨隆々、黒髪短髪で顔面白塗りの男が渋い声を出す。


「これは、いけないわ。綾ちゃんに減給されてしまうわぁ!」


 そして、もう一人の男もたくましき上腕二頭筋をぴくつかせ、声を出す。


「綾ちゃん、どこにいるのぉ!! 私の綾ちゃん!」


 三人全員、筋骨隆々で顔面白塗りメイド服をピッチリと着用している。


 ルェイジーは、その姿を見た瞬間「ひ、ひぃいいいーアルゥ!」と、叫んだ。


 戦場に臆さない12名のチャイナガールズ達は、一瞬にして小柄な銀龍の背中に隠れる。


 銃口を突き付けられても動じず、ミサイルを見ても逃げることもなく、戦車を見ても絶望などしない女の子たちだが、そのオカマ達の姿には全員動じた。


 ルェイジーは「ぎゃー!! 怖いアル、怖いアル! 怖いアルゥウ!!」と銀龍の真後ろに隠れたまま、銀龍の細い両肩を握っている。


 さすがの、銀龍も顔をひきつらせながら、綾の前でコンテナの中の三人に指をさす。


「お、おい、綾ちゃん。あれ……何なんだ?」


「何って、メイドインガールズよ?」


 金龍は、汚れたひざをはたいている。


「面白い、ものは言いようよね? 綾ちん……。ガールズっちゃあ、ガールズ……」


 金龍の言葉にとっさに反応する、銀龍。


「おいおい、あ、あ、ああれ、オカマじゃねーかよ! 無駄に超ムキムキだしよぉ! 綾ちゃん、お前頭がどうかしちゃったのかよぉ? 昔の綾ちゃんはどこ行っちまったんだよぉ……」


「幼いころから、貴方となじみの私よ? 彼女たちの美しさの追及は馬鹿にできないわ。悪いけれど、美しくなるための努力は銀龍よりも上なのは間違いないわ。

彼女たちは美の探究者、美容極めセットリストも教えてあげようかしら」


「んなのは、どーでもいいよぉ!! 全員オレの後ろに隠れて、誰もコンテナに近づきやしねーじゃねーかよ。傭兵家業が泣くぜ……ったくよぉ!」


 その中で、ぼそりと緑色のチャイナ服を着ている隊員が口を開く。


「ほ、本当に強いのかしら……」


 その声を聴いた綾の顔を見た、銀龍。

 顔は笑っているが、心の中が真っ赤に燃え上がっていて、彼女の赤いドレスがなおのこと見えさせているかのようだ。

 銀龍は手のひらを広げ、額にあて空を仰ぐ。


「あーあ、それを言うなよぉ。演習とはいえ、綾ちゃんにスイッチ入っちまったじゃねーかぁ」


 綾は、笑いながらも「そうよ、彼らは強いのよ!!」と、緑色のチャイナ服を着ている女の子に啖呵をきる。


 シェンリュという、玄武部隊の彼女がその言葉をもらしてしまったのだ。


 綾はシェンリュに向けて閉じた洋風センスを向けた。


「あーら、そう。では、早速やってもらおうかしらぁ?」


 金龍は綾と視線を合わす。


「綾ちん、ルールは?」


 彼女は不敵な笑みで返す。


「まあ、今回は特別ルールでいいんじゃない? 1対1のスパーリングというやつでいいかしら? 銀龍?」


「ま、いーんじゃねーの? 散打で。やつらの戦闘方法を見る機会だし、とにかく、がんばれやシェンリュ……」


 白いメイド服を着ている、オカマは一歩踏み出し、コンテナから足をおろした。


 何かのガラス片を踏みつぶしたのか、べきべきと相手の骨を折ったような錯覚をおこさせた。



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