2-8 白虎部隊、おくれをとる
白虎部隊の青空の上空、左横で銀色の機体が駆け抜ける。
ヤーイーは思った。
進むにつれて、攻撃が激化しているのがよくわかる。
聞いていた金龍の情報よりも人数が増えているのだ。
モヒカンをしている男が、小さな白い子供たちへ銃口を向け、ヘッドショットを狙う。
しかし、ホンホンは手足のように自在になった、六角棍を最速回転させて、弾丸を弾いた。
モヒカンが、恐怖におののきながら、「ひぃぃ!!」と叫びつつ、小銃をフルオートで撃つが、通用などしない。
気功ユニットを全開にし、弾丸をはじきながら、一気に相手との距離を詰め、相手の顎先めがけて六角棍の先を上方へすくいあげる。
男が息つく暇もなく、顎が砕け青空へと向いた。
更に、彼女はすくいあげた棍を180度回転させ、右足を一歩踏み出すと同時に、腹めがけて「やぁあああ!!」と突き出した。
男の割れた腹筋はいとも簡単にめり込み、後ろにいる他の小隊に向けて吹っ飛んで行った。
ボーリングのピンのように倒れた、手下たちは更に驚愕する。
リャンリャンが小隊の前に瞬時に到着し、六角棍の顔面を打ち付ける。
男の顎が、歯もろとも砕け、土埃と血しぶきが巻き上がる。
倒れてしまった男どもは、身体を起き上がらせるのに、一苦労だった。
力が抜けてしまった人間をどかすのには、非常に厄介な事で、どう頑張っても5分以上はかかる。
白いチャイナドレスの裾が舞い上がり、ヤーイーが両手にトンファーを持ちながら、倒れている相手に近づいた。
倒れている男は涙を流しながら「ちょっと待っ……、」と口を開いた瞬間、ヤーイーはトンファーの先端に握り替え、倒れている男の顔面ごと雑草を刈るのと同じ感覚で、顔を薙ぎ払う。
骨が軋む音が響き、男は二度と動かなかった。
ヤーイーは男を見下ろしている。
風が、彼女の前髪を撫で、雲が太陽をふさぎ、若く白く美しい顔が暗がりになる。
ぼんやりと瞳が白く光り、浮き出ていた。
遠方から見ていた男が、ヤーイーに向けて撃とうとしたが、右指先が砕けた。
リャンリャンが六角棍を投げつけていたのだ。
そして、人間業ではないスピードで、ホンホンは近づき、砕け散った指先の痛みを感じる暇もなく、軽く跳躍、相手の鉄製のヘルメットに向けて六角棍を振り回す。
弾丸を弾くと言われている、鋼鉄製のヘルメットがめり込み、男の体が四肢を横回転させながら、地面を50メーターほど転がっていった。
男の体は既に人としては機能などしていないだろう。
ホンホンは、六角棍を回収し、ヤーイーの左隣へ。
リャンリャンも追従するように、ヤーイーの右隣りへ。
ホンホンとリャンリャンは、ヤーイーの傍に戻り、六角棍を構えなおした。
ヤーイーは、両手のトンファーを腰に構え、二人に礼の言葉を発する。
「ありがとう、ホンホン、リャンリャン!!」
「ヤーイー小隊長、スキありありなのよ!!」
金龍から連絡が入る。
「銀龍はすでにフェイロンで出ているわ!!」
三人は「了解!!」と返事をし、再度行進を開始する。
遠方の格納庫が見えてきていた。




