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2-6 イェチンの涙

  

 イェチンは、不自然と離れにあるテントに到着し、テントを開ける。


 そこにはやせ細ってしまった女の子たちが十人ぐらい、裸にされたまま両手と両足を縛られて横たわっていた。


 年齢もイェチンとほぼ変わらない年齢だろう。


 慰みも受けているのも、見るからに分かる。


 イェチンは自信の持っている兵器で、少女たちの両手両足に縛られている強化繊維のロープを全て切る。


 少女たちの小さな胸の動きや、筋肉の動きで分かる。


 今すぐにでも逃げ出したい。


「冷静に聞いて、分かるけれど、逃げちゃダメだよ。逃げた瞬間に見つかったら即座に撃ち殺されるから」


 中国語が通じたのか、皆なんとか動かずにいてくれた。


 テントの入り口が、強く揺れる。


 イェチンはテントから顔だけ出した。


 上空を見上げると、銀色を放ちながら、バトルドレスが降りてきたのだ。


 フェイロンは着陸すると、イェチンと一緒にテントの中に入る。


 フェイロンはミサイルやランチャーなども使用しないので、だいぶスリムな方なのだ。


 ちょっと大きなテントだったら入れる。


「イェチン、よくやった。彼女たちの保護はオレがする」


 イェチンは、涙が自然と流れて、下唇を噛む。


「銀龍ターレン、涙を流してもいいですか?」


「もう、ながしてるだろぉよぉ」


「女性として、とても耐えられません」


「テメェが、一番まともだ。見るんじゃねぇ。そして、それを全てぶつけてこい……」


「アイヨ、銀龍ターレン……」


 イェチンがテントを背にして、他の部隊の所に加勢しに行った。


 裸になったままの少女たちに、銀龍は叫んだ。


「オレは、九龍城国専属傭兵集団、チャイナガールズの長だ。テメェらには拒否権がある。ここで野垂れ死ぬか、九龍城国まで逃げるか、二つ選択肢がある」


 金龍もあらかじめ聞いていたので、すぐに輸送トラックでテントに駆けつけてきた。


「銀龍、こっちは準備オーケーよ! 多少の水分補給もできるようにしておいたわ!!」


「おう、そうか、わかった。ナマス切りにされてねぇのが、唯一の救いだ。オレは頭が悪りぃ、陳腐な表現しかできねぇが、生きろ!」


 生気を失った、十人の少女達の瞳が徐々に輝きを取り戻してきた。


 フェイロンの右肩の辺りの隙間から、マニュピレーターが出てきて、キセルをくわえる。


「テメェらは、あのトラックに乗って逃げな」


 十人の少女たちは、そそくさと輸送車に次々と乗り込む。


 フェイロンは、テント前で瞬時に飛び立ち、周辺の様子を見ている。


 そこらじゅうで、相手側の兵士たちの断末魔がこだましていた。


「テメェら、まだまだ地獄を見たりてねぇようだなぁ!」


 フェイロンは、更に加速し、あっという間に空を駆る。


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