2-1 VSビッグバンコステロ編 プロローグ
-------N.A.Y.歴562年 7月23日---------
――――そして、ことは急ぐこと二日後。
銀龍は、12名のチャイナドレスを着たクンフー使いを集めている。
全員は、真剣なまなざしで、銀龍を見つめていて、緊張が最大に張りつめている空気だ。
銀龍は、綾から借りた拳銃を片手に持っている。
「いっかぁー、テメェら全員ここにいるっつーことは、覚悟があるっていうことだ。
これが何かわかるか?」
銃口を横一列に整列している、12名全員に遊ぶように見せる。
「これはなぁ、オモチャでしかねーんだ。だけどよぉ、こんなのにどんな意味があるんだぁ?」
白いチャイナドレスを着ている、白虎の刺繍を背負っている女の子が口を開く。
ヤーイーだ。
「銀龍ターレン、そんなのでは私たちは倒せないわ!!」
銀龍は、隊列を作っているガールズを目の前に、左右にゆっくり歩く。
「そうだ、その通りだぜ、ヤーイー。いいか? オレたちが何のために演習をしたのか覚えているだろぉよぉ。
全ては、クンフーのためなんだぜ。剣とか刀、棒などはいつか壊れるし、飛び道具、つまり、なんだ? 銃も弾丸が無くなればおしまいだ。
パワードスーツも膨大なパーティカルロイドを消費し、いつかは切れる。だけどよぉ……」
銀龍は拳を作り、鋭い突きをだす。
空を切った拳は、直接人が攻撃を食らえば、即死は免れないだろう。
「オレたちには、これがある! スンジン、フェンジンを意識しろ!! 分かってんな!!」
シャオイェンが、無表情のまま言葉を出す。
「瞬間的に、最大限のパワーとスピードを出せる、クンフーの技術ですね、銀龍隊長」
「そうだ、テメェらには今までも、これからもそれを教えてきた! そして、初速度が最大限に達した時……」
「バリアが発生し、相手にバリアをぶつける!!」
「あと、そうだなぁ、戦車や装甲車をぶっ壊せるのは、別に青龍部隊だけの専売特許じゃねぇっていうことよぉ。
いいか? スンジン、フェンジンを極めた時、パワードスーツもいとも簡単にぶっ壊せる!!!
弾丸よりも強力に力が抜ける!!!」
金龍が、扇子の風で顔を撫でている。
「そうですよ、あなた達は他の傭兵チームと比較しても、秘めたる可能性が底知れないのです。
それは気功ユニットの最大の特徴、元気があれば無限にパワーアップというのも、安直な表現ですが、事実なのです。
なんて言ったって、バニーガールズたちと渡り合えるのは、我々ぐらいなものですしね。
私はクンフー使いではありませんが、針と気功で、大量生産されているパワードスーツでしたら、破壊など料理をするよりも容易いです」
銀龍は、腕を組みながら、背筋をのばす。
「いいか、テメェらぁ! 極めし者は、どんな技術でもド硬いパワードスーツですら貫通するっつーことだ!」
銀龍は腰の後ろに手をあてて、右往左往と歩く。
「そして、クンフーには土火木金水という概念がある! どんな武器、兵器にも弱点はあり、そして対するクンフーも対局する技によって、弱点がある!
つまり、この世には最強、便利という二文字はねぇってことだ!!
わかったな、チャイナガールズども!!」
「はい! 銀龍ターレン!!」と、全員は一斉に返事をする。
銀龍は、金龍に手を投げる。
作戦概要を彼女たちに教えろという合図だ。
金龍は、頷くと作戦概要の内容を説明を始める。
「今回は、演習ではなく、戦争になります。相対するチームはビッグバンコステロです。
ビッグバンコステロの戦力は、歩兵30名、機甲兵15名、そしてボスのビッグバンコステロ1名と言われております。
つまり、合計46名中堅の傭兵部隊となります。
相手側の拠点は、住民がいない市街地です。
市街地手前には荒野が広がっています。
荒野には、いくつか哨戒拠点があり、そこはテントが集合している可能性があります。
特に荒野は遮るものがほとんどありません。
我々にもバリアという防御方法はありますが、なるべくパーティカルロイドを消耗しないように気を付けてください。
青龍、朱雀、玄武、白虎でいつも通りの小隊で出撃をお願いします。
今回は、戦争なのであなた達にも兵器(武器)も用意しておきます。
各自、ゴーグル着用、高圧縮繊維で作成された手袋の着用を命じます。
兵器の準備、整備は怠らないようにしてください」
銀龍は、銀色のチャイナドレスを翻す。
「あいつは、オレが一番大嫌いなタイプだ。他の傭兵部隊からの評判も悪く、特に相手が女集団だった場合は、マジで鬼畜だぜ。
オレもオツムは弱いが、やつ等のやっていることは、人間じゃねぇ。もしかしたら、女性の捕虜が素っ裸でいるかもしれねぇ。
捕虜がいた場合は、必ず保護してやれ。戦場にはルールなんてねぇ。けどなぁ、伝説の傭兵も言っている。
人情を理解してこそ、本当の傭兵だ。人を捨ててこそ、任務が達成されるなんてなぁ、時代遅れも甚だしいぜぇ」
「バリアの発展により、様々な戦術変更が行われてきました。しかし、人が人として戦争を行う以上、
そういう非人道的な事は無くなることはまずないでしょう。
あまいとか厳しいとかそういう問題ではなく、我々は、我々の戦争を行うべきです。そして、ルールがないからこそ……」
銀龍は、金龍を手で制する。
彼女は、奥歯を限界までかみしめ、眉根を寄せ、首を前に傾ける。
ケンカ上等という思いが、表情いっぱいにあふれているのだ。
「テメェら、ルールがねぇからこそ、オレたちが、女の鉄槌を食らわせてやれ!!
そして、思い切りテメェらのクンフーを叩きつけろ!!」
ルェイジーは、敬礼をした。
「アイヤ、了解アルネ!! 銀龍から教わった新技使ってみるアルネ!!」
ルェイジーの隣の、可憐な少女、イェチンは笑みをにじませる。
「アイヨー、ルェイジー負けないよ!!」
マーメイは、二人を落ち着かせる。
「あらまぁ、二人ともぉ、気合入り過ぎよぉ」
リームォは、目を輝かせている。
「おおー、リームォ、ぎゃんばりゅ……」
レイレイは、拳を振る。
「久々に、よいクンフーができそう!!」
全員がまた言いたいことを言いそうになったので、銀龍は両手を二回たたく。
「はいはい、テメェら士気上げてぇのも分かるけどよぉ、もう一つ知らせがある」
「今回は、戦争ということなので、我々も容赦はしないのは勿論のこと、九龍城国に連絡し、飛龍の導入をします」
緑色のチャイナ服を着ている、シェンリュが口開く。
「え? 出す必要ないじゃない。アタイ達で十分だよ!!」
「なぁに、言ってやがんだよぉ、シェンリュ。最悪の事態を考えるのは、戦争の考え方だ。そして、今回はオレが駆る!」
「いいかぁ」と、銀龍は言葉を置いた。
「テメェらのクンフーを、嫌というほど体験させてやれ! オレ達は最強の部隊、チャイナガールズだ!! わかったなぁ!!」
12名全員は銀龍に敬礼をする。
「「「我らチャイナガールズは九龍城国のために!! 銀龍大人に敬礼!!」」」




