1-25 会場内での、チャイナガールズたちは……
ルェイジーは、ありとあらゆる振舞われた料理を平らげている。
「ルェイジーちゃんの胃袋は宇宙アルネ!!」
隣では、マーメイがゆっくりとお酒を飲んでいる。
「あらまぁ、いつも以上に凄いですねぇ、ルェイジーさんはぁ」
リームォが負けじと、ご飯をもうスピードで食べている。
が、せき込んだ。
マーメイがハンカチを出し、リームォの口元を拭く。
「そこはぁ、がんばらなくていいのですよぉ、リームォ」
「リームォ、おいしいから、食べるのぎゃんばりゅ……」
さらに、その隣では、イェチンがルェイジーの食べっぷりに、ひいていた。
「アイヨー、ルェイジーいつも以上に爆速だね。いっそのこと、お城事食べてしまえば?」
レイレイは、舞台みたいなところを注目した。
何か、お披露目みたいなことをするみたいだ。
やがて、司会の男性がマイクを片手に叫ぶ。
「本日は、お越しいただきありがとうございます。ハミルトン綾三世のパーティーにご来場いただき、御礼申し上げます!!皆様も交流を深め、様々な商品の発表もありますので、ぜひごゆっくりとしてください!」
舞台の奥から、えらくスタイルの良い女性が下着姿で歩いてくる。
「まずは、こちら、アルファインドスタリアーズ社が開発した、最新の女性用下着です。遠征に行くにしても、バトルドレスをずっと着続けなければいけないのは非常にツライところ。
しかし、この下着は、2週間ほど着ていても、雑菌も増えず衛生的な特殊繊維となっています。
雨が降っていても、速乾性も非常に速く、すぐに乾きます。特にデリケート部分にも気を付けていて、これを着ることで、快適度も当社比20パーセントもアップしています!!」
一番、興味あるイェチンが反応する。
「おおー、これはいいね、一週間以上もつのは素晴らしい」
ホンホンとリャンリャンは左右を振り向きながら、同時に声を揃える。
「きらびやかすぎるわ!!」
ファリンは、お団子頭の鈴が目立つのか、同年代らしき男の子たちに囲まれてナンパされている。
が、本人は顔を赤らめたまま俯いたままで困り果てているようだ。
シェンリュは、普通にボロネーゼをフォークに突き刺し、巻いて、口紅がつかないように食べている。
「うまいわねー、このパスタ。あたい、こんなにキラキラしているところ、初めてかも!」
リーシーは、後ろに結んでいる三編みが気になってしょうがないらしい。
いつもと変わらないのだが、なんか落ち着かないという印象だ。
「キラキラしすぎて~私は~苦手かも~」
レイレイとシャオイェンは、中華料理を食べながら話している。
シャオイェンは、相変わらずこんな時でも楽しむというか、分析している。
「これは、非常に美味しいです。特に、仕上げの味の調整が絶妙であり、冬には塩を多くし、薄くするという調理技術がありますが……」
レイレイは、シャオイェンの横で、苦笑いしている。
「たまには、素直に美味しいとか、分析抜きで感情表現してみたら?」
シャオイェンは、レイレイを一瞥した。
「超うまい……」と、一言だけ呟いた。
レイレイは「極端ね」と首筋を掻く。
銀龍は金龍を見つけて、合流した。
「そういやよぉ、綾ちゃんは何やってんだよ?」
「なんか、新作発表会というものがあるらしいわよ?」
下着の紹介が終わった後、今度は新しい軍用転用された一般の車両の紹介などが舞台では続いていた。
そして、パーティー会場の照明が消える。
会場はざわついている。
そして、一点のスポットライトが降り、そこには綾が立っていた。
「皆様、本日は当パーティー会場にお越しいただき、ありがとうございます」
金龍は、口元を中国扇子で隠しながら、銀龍のそばで口を開く。
「あやちんの、真骨頂ね?」
銀龍は無言でうなずいて返事をする。
「今回は、パーティカルロイド技術を利用して、新しいパワードスーツの紹介です!!」
彼女が掌を右手に出すと、もう一つ照明が照らされる。
そこには黒鉄の色をさせた、パワードスーツだった。
大きさは、綾よりも一回り大きいぐらいで、宇宙服と同じぐらいの大きさだ。
「元はクトゥルフ社製パワードスーツを、ハミルトンアヤインダストリアーズがoriginal equipment manufacturer。つまりOEM製として、開発、ブラッシュアップしました!!」
「諸元はこのようになっています」
銀龍は、まったく興味なかったが、金龍は珍しく瞳を輝かせている。
「このパワードスーツは、一般に広まっている軍用で、戦車のように大量生産も可能です。
両肩には、ミサイルポッドを搭載可能で、重量は1トンまで可能です。
右腕部には対戦車ミサイルも搭載できます。
左腕部にはお金次第ではありますが、パーティカルロイド技術を応用したレールガンも装備可能です。
ここまでは普通のパワードスーツですが、それよりも弊社が力を注いだのは、そのパーティカルロイドシステムを限界まで消費量を減らし、パーティカルロイドコア1個で20時間まで稼働できます」
その瞬間、会場が更にざわつく。
銀龍は、耳たぶを触ると、扇状のピアスが揺れた。
「なるほどなぁ、確かに性能はまあまあだな。フェイロンですら17時間ほどが限界だもんな」
「確かに、けれど、さすがに空を飛ぶような性能はないんじゃないかしら?」
「だが、戦車と歩兵の中間として扱う分には十分だぜ。何よりOEMだから値段は安いはずだ」
「しかも、各駆動部のパーツの流用もきくわ」
「オレ達のように、特注も特注なところは広まらないからな。さすが、綾ちゃん。きちんと考えて商売していやがる」
そして。と、ハミルトン綾はパワードスーツの周辺を深紅のハイヒールを鳴らし、歩く。
「値段はもちろん、お安く用意しております。ですが、もっとすごいのはバリア技術です!」
綾が立っている前面から、デモンストレーション映像が流れた。
スマートコンタクトレンズの応用で、映像を流しているのだ。
普通のパワードスーツが戦闘訓練をしている映像だが、金龍は速攻で気づいた。
「あれ……私たちのバリアと似てない?」
「間違いない、オレ達のバリアに近いな」
だが、と、銀龍は付け加える。
「すげぇな、けどよ。局所的にしかガードできていない。オレ達のシルバーバリア、ゴールドバリアとは違うのは一部分だけしかガードしていないということだぜ」
「つまり、あれが一番凄いのは、処理計算速度」
「その通りだぜ、金龍。あれは世界を変える代物になるぜ。しかも、パーティカルロイドコアもかなり低消費なのは間違えねぇ」
デモンストレーション映像が消えたら、今度は人が乗っている。
黒い髪をした、日本人らしき女の子だ。
綾は乗っている女の子を紹介した。
「弊社に協力してもらっているのは、日本外人部隊、セーラーガールズの神奈川真奈夜さんに搭乗してもらっています」
マーメイに肩車をさせてもらっている、リームォの目が輝いている。
「おおー、セーラーガールジュ……、。きれい、きゃわいい」
綾はプレゼンを続けている。
「お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、搭載できる武器の数などは多ければ良いというものではありません。
それよりも、一番重要視したのは処理演算能力です。AIなどの搭載はすでにほかの企業が行っていますが、我々は独自AIの技術により、最も高速で、かつ適切な判断能力を処理できるAIの搭載に成功することができました。
つまり、簡単な指令でしたら、オートメーションも可能で、運搬などにも役に立ちますし、負傷した兵士などを運ぶこともできます。
独自AIの名称はミヤビと弊社は命名しました。そして、このパワードスーツはすでに試験運用を兼ねてセーラーガールズに運用してもらっています」
銀龍は、銀色の中国扇子をポーチから取り出し、金龍の耳に寄せる。
「知っていたか?」
「いえ、知らなかったわ」
「ったく、ビジネス的に、手ごわいし手広いぜぇ……」
「弊社は、この商品をAIの名前から取って「ミヤビ」と命名しました。デモンストレーション用なので、1時間ほど間近で見ることも可能です。今後とも弊社ハミルトンアヤインダストリアーズ社をよろしくお願いします」
と、綾は一礼をして、プレゼンの幕を閉じた。




