1-23 いよいよ、接待です!!
銀龍と金龍。
それと、12名のチャイナガールズ達は、13時きっかりにホテルロビーで待ち合わせた。
銀龍は、一応全員に直接伝える。
「オレも、こういう場は慣れていない。そして、場内では暴れるんじゃねーぞ!! よほどのことがない限り、クンフーは使うな、わーったな!!」
12名全員は「了解」と頷いた。
13時を過ぎたので、それぞれチャイナガールズ達は受付を済ませ、会場内に入る。
レイレイを先頭に会場内に足を入れると、反射したライトが彼女の黒い瞳をうつし、その光がぐるりと一周する。
そこは、今まで見たことない煌びやかな世界が広がっていた。
ステージ上には大きい画面が映し出され、まぶしいぐらいに明るいスポットライトが場内全体を演出している。
既に100人以上の、軍関係者やキレイな服を着ている令嬢、普段戦闘しかしていない彼女達とはもっとも無縁な世界に思われた。
ホテルというか、何かのブースという感じだった。
そして、ボーイやバニーガールが、それぞれがお酒やビュッフェなどをテーブルの上に置いたりなどしている。
全員はそこへと踏み入れる。
そして、バニーガールの中でも、もっとも背が高く、ブロンド色の長髪を振り乱している宿敵に銀龍は目を外さなかった。
銀龍は、自信よりもはるかに背が高い女性に堂々と声をかけた。
「よぉ、クソレッドバニー」
彼女はブロンド色の髪を振り、華麗に踵を返し銀龍を見下ろす。
右手には、シルバー色の皿の上に、様々なカクテルが乗っている。
普段は右目と左目の色が違うだが、今日はパーティカルロイド技術を圧縮させた、眼帯をしているのだ。
彼女はそこら辺にあるテーブルに、皿を置いて右手で髪をかき上げた。
「なによ、シルバードラゴンじゃない。今日は何用?」
銀龍は、奥歯をかみしめ、今にもクンフーをお見舞いしそうな感じだ。
「今日はなぁ、綾ちゃんのお招きだぜ。バニーマムさんよぉ」
「こっちは、お仕事よ。要人警護とバーテンダー……」
銀龍は、両手を腰にあてる。
「そうかいそうかい、そりゃあご苦労なこったい……」
金龍は、銀龍の後ろで喋る。
「やめなさいよぉ、こんなところで」
銀龍は、「わーってるよぉ」と言いつつ、右手を出した。
「そう」と、バニーマムも右手を出した。
二人は、眉間にしわを寄せながら、がっちり握手をする。
ちなみに、マムの握力は普通で200キロぐらいだ。
二人とも、一切握手を外そうとはしない。
「銀龍、よくもこの間は邪魔してくれたわね」
「テメェも、よくあんなひどい目に合わせてくれたなぁ」
「まあ、いいわ、次会った時は楽しみね。その薄いメイクすら引っぺがして、顔をぐちゃぐちゃにしてあげる」
バニーマムは、後ろにいる金龍にも目を合わせた。
「金龍……針で銀龍の握力上げるのやめてくれない?」
金龍は笑う。
「あら、何の事かしら?」
「とぼけないで、分かってるんだから」
「ふふ、相変わらずね、マムさん。銀龍の手をつぶすわけにはいかないの。私の相棒なんだから」
マムは、「あーそうね」と言葉を捨てて、銀龍の手を放る。
「ダブルドラゴンともども、じゃあね。せいぜい長生きしてちょうだい」
長身のブロンド髪の美女は、踵を返し、人々が集まっている影へと消える。
金龍は、銀龍の肩に刺している針を何本か抜く。
握手をしていた右手を抑えながら、ひざをつきそうになる、銀龍。
「っくーーーーー!!! 超いってぇ、どこがウサギなんだよ!!」
「全く、たまげたものよ。以前アメリカで傭兵家業していた時は、レッドバニーと呼ばれていたわ」
「通称赤バニな。あいつの所の傭兵集団の名前はよく知ってるよ。レッドバニーガールズ。そんなに強いという印象じゃないんだが、アイツだけは別格だな。何度やりあっていることやら」
「あのユニークなキャラは、私は嫌いじゃないわ」
「ふん、この間の戦線の時にはお世話になったぜ、ったくよぉ」
「まあ、彼女には彼女なりの立場があるのよ」
「けどよぉ、マムのやつ、あれだろ? ずいぶん前に十字聖教騎士団のスーツをパクったっていう話しなのに、よくこんなところに来れるよな。
綾ちゃんのコネだってよ、十字聖教騎士団の目もあるだろうがよ」
十字聖教騎士団というか、バトルドレスを着こんでいる傭兵界隈の中では有名だ。
演習の時に、バニーマムがバトルドレスの被験者になってやると、持ちかけて、そのスーツをそのままトンずらしてしまったのだ。
マムの怪力は、さすがの十字騎士団の開発製作している技術者も注目しており、彼女の破壊的な握力にはこの世の価値があるそうだ。
シャンパンを持ってきてくれた、ボーイからグラスを受け取る、金龍。
「だから、ユニークなのよ。あのバニーちゃんは」
「ふん、何がバニーだよ」
いつの間にか金龍はワイングラスを受け取っていた。
グラスにゆっくりと接吻し、金龍は、銀龍を刺した針を片手で胸の谷間にしまう。
「怪物と言えば、今日は彼もくるみたいよ」
銀龍は、いぶかしげな顔をしながら、ボーイから蒸し鶏のサラダを貰い、箸でつまむ。
「彼? だれだよ、金龍」
「彼っていえば、伝説の傭兵に決まっているじゃない」
「えっとぉ、そうだ。戦場の物理学者の異名を持っているやつだろぉ……、。
アイツが来るのかよぉ? 綾ちゃんのコネクションの広さは滅茶苦茶だな」
「更にはね、十字聖教騎士団所属の、ハミルトン翔三世も、来るみたいよ?」
「あー、なんだっけ? 綾ちゃんの、兄貴だっけ?」
「そうそう。小さい頃に一回だけあってるけどね?」
「そうかい、金龍はあったことあるのかよ」
金龍は、どちらかというと、外交の時におもむいたりする。
母国語である、その美貌もそうなのだが、ユグドシアル語も話せるし、日本語も流暢、それに英語も話せる。
銀龍よりも、明朗活発なので、かなり交流も幅広い。
才色兼備、もっとも金龍にふさわしい言葉だろう。




