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1-20 演習、ラストバトル!! その2

  

 交代したイェチンに、場面は切り替わる。


 イェチンは、玄武部隊所属のファリンと組むのは初めてだった。


 あまりにも喋らないので、どんな女の子かよくわからない。


 とりあえず、分かるのは、頭の鈴がシャンシャン鳴っていることだ。


 相手は跳躍力が朱雀部隊以上の化け物。


 だが、それは相手の動きを読めば大丈夫。


 しかし、ファリンとの絡みが少ないので、少々困惑気味だ。


 相手が急激な跳躍をし、二人の裏に回る。


「あんらぁ、ますます楽しみね!!」


 振り向きざまに、単体通信でファリンの声がした。


「ぼ、僕がおとりになる」


 顔を赤らめているのがよくわかるし、イェチンの想像以上に可愛すぎる声だ。


「アイヨー!!喋れるのね!!」


「二人までが限界。何とか」


 白虎部隊が驚くはずだ。


 回線をイェチンのみに絞っているのが分かる。


「おセンチなシャイさんなのね!!」


「了解!!」と、イェチンも同じように回線を絞ってあげた。


 女の子らしい気遣いが一番できるのがイェチンだ。


「僕が、相手の攻撃を防御する。イェチンさんはアレをやってくれればいい」


 ファリンは、頭をシャンシャン揺らし、オカマと接近する。


 青いメイド服を着た大オカマが、お得意のローキックとは言えない超絶的な破壊力のローキックを出す。


 物凄い風圧が起き、ローキックの軌道を描きながら、赤い土がえぐられていく。


 下段蹴りの衝撃が凄まじいので、ファリンのバリアが半円球状にバリアがはられる。


 だが、太い丸太みたいな足がバリアにぶつからず滑っていく。


 オカマは、余裕の笑みをさせる。


「あんらぁ、面白ぉい。受け流してるのねぇん」


 イェチンは走りながら、言葉を放つ。


「ファリンちゃん、背中と肩を貸して!!」


 ファリンは、うなずくと同時に、彼女の小さい背中、肩へと比重がかかる。


 イェチンは、ファリンの肩を土台にし、かなり跳躍。


 イェチンは人間技ではない高速回転しつつ、「全てを断つ蹴り技 踢技术打破一切!!!!!!」と、叫びオカマの後ろからかかと落としをさせた。


 急激なスピードなので、彼女のかかとにバリアが発生。


 バリアどうしが衝突し、オカマのバリアは飛散した。


 さらに天から真空の斬撃がふりそそぎ、オカマのメイド服が一気に裂けはじめる。


 イェチンは着地し、バク転を数回行い、その場から離れる。


 オカマは胸の辺りを両手で隠した。


「いやぁあああん!!」


 オカマの野太い声とともに、自慢のメイド服が全て裂けていった。


 ファリンは、すでに深呼吸を終えた。


 全てがゆっくりとなる時の中、ファリンは考えていた。


 相手の挙動が変わる時、それはファリンにとっては最大のチャンスだ。


 バトルドレスが壊れたとしても、相手は必ず拳を繰り出してくる。


 相手は身を立て直し、左拳を握りなおした。


 ファリンの大きな瞳が更に開く。


 今だ!!


 頭の髪飾りの鈴がシャンとこだまし、ファリンは相手の手首、右掌をあてて、いなす。


 どんなに体格の良い相手でもバランスというものは重要だ。


 相手は前のめりに一歩身を崩したところで、ファリンは一歩二歩と進み、相手の後ろに回り込む。


 そして、両の掌をゴツイ背中めがけて突き出した。


「あらゆる打撃をかわす回身掌 时间来躲避所有的打击!!!!」


 鋼鉄の背中は勢いよく投げ出される。


 ファリンはすぐに連絡する。


「イェチンさん!! チャンス!!」


「アイヨー、ファリン、ナイス!!」


 イェチンは吹っ飛んだ相手をよく見ていたのか、飛んできた相手めがけて、タイミングよく回転し、


 胸のパーティカルロイドコアめがけて回し蹴りをさせる。


 パンツスタイルの彼女の中国服が揺れ、靴は彼女の足裏にクリーンヒットした。


 パーティカルロイドコアにヒビが入り、目をふさぐぐらいの光を放って、砕け散った。


 白い要塞は方向を変えて、150メーター吹っ飛んでいく。


 小競り合いをしている三人の後ろから、黒い影が真横に流れていく。


 ヤーイーは、薄い唇の両端をあげる。


「ふふ、今度はこっちから行くよ!!」


 それでも要塞の余裕は一切消えない。


「あんらぁあ、よくやるじゃない!! オカマの恐怖を思い知らせてやるわ!!」


 リャンリャンは「がるる!!」と、気功ユニットを全開にする。


 朱雀部隊ほどではないが、気功ユニットを全開にすると初速度がアップする。


 リャンリャンが二メートルジャンプし、大オカマの胸に蹴りをさせる。


 オカマは反射的に彼女をとらえようとするが、オカマの胸の筋肉を壁にし、逃れる。


 その瞬間、ヤーイーが突撃する。


「ホワッチャァ!!」と、相手の腹にドストレートのハイヒールの足先を胸に鋭く突き刺す。


 オカマは腹筋を戦車ほどの装甲と一緒の硬さぐらいに力を入れて、彼女の蹴りを耐えた。


 二メータほど後ろに後ずさり、ブーツが赤い土を後ろへとえぐる。


 ボディービルダーのポーズをさせ、ニタァリィとオカマは笑う。


「じゃあ、これは?」


 また、肩の筋肉が膨張する。


 同じパターンかと思い、ヤーイーが跳躍する。


 ヤーイーのところに来ると思ったが、激突したのは、何とリャンリャンだった。


 直線ではなく、一瞬で急激に角度を変えて、油断したリャンリャンにぶつかった。


 リャンリャンは大きな口を開けてしまい、左側の八重歯が見える。


 ヤーイーは思わず叫んでしまった。


「リャンリャン!!」


 ひらりと、横一直線に吹っ飛ぶリャンリャンと一緒の方向に走り、急激に旋回し、素早くリャンリャンを受ける。


 リャンリャンのバトルドレスもかなり傷んでしまった。


 傷だらけになったリャンリャンは、うっすらと目を開ける。


 カワイイ顔が台無しだ。


「ヤーイーたいちょう……すみません」


「いいわ、私が必ず仇を取ってあげる!!」


「たい…ちょう……絶対に勝ってください」


「うん、分かってる」


 OD色のメイド服を着たオカマは、ゆっくりと歩きながら、近づいてくる。


「まあ、ちょっとした奥の手よぉん。光学迷彩使わないだけでもありがたいとぉ、思ってちょうだい!!」


 金髪緑メイド服オカマを前に、青い中国服を揺らしイェチンと緑色のチャイナ服のファリンが、ヤーイーを中心にして両左右に到着する。


 ヤーイーはゆっくりとリャンリャンを赤い土にそっと寝かす。


 ヤーイー、イェチン、ファリン。


 それぞれが、クンフーを構えなおした。


「私を本気にさせたわね!!」


 静かに風が揺れる。


 その風は、荒野の赤い土の埃を巻き上げる。


 イェチンの前髪が揺れ、ファリンの鈴がシャンシャン静かに鳴る。


 ヤーイーが火ぶたを切った。


「みんな最後よ!! パーティカルロイド再起動!! 気功ユニット全開!!」


 ファリンは、そのまま一気に相手に詰め寄る。


 オカマが驚異的なスピードでフックを繰り出そうとするが、ファリンは手のひらで滑らす。


 イェチンは、心の中で思っていた。


 回転蹴りは、出せたとしてもあと一回だけ!!


 想像以上に消耗していたのだ。


 イェチンは、ファリンの背中を階段にして跳躍し、さっき以上に高速回転させ、必殺技を繰り出す。


「いっけーーーーー!!! 全てを断つ蹴り技 踢技术打破一切!!!!!!」


 頭上にイェチンの中国靴のかかとが当たり、オカマの全身をまとっていたメイド服が高速でズタズタにされていく。


「次はぁ!! お次は、何が来るのかしらぁあ!!」


 裂けるオリーブドラブ色のバトルドレスを目の前に、パーティカルロイドコアに両掌を突き出す。


 ガキリと、鈍い音がして、アタッチメントのロックが壊される。


 ファリンはすぐにヤーイーと交代。


 そして、ヤーイーはスラっとした長い脚で、パーティカルロイドコアをヒールの踵で蹴り飛ばす。


「これが、私の本気だぁぁあああああ!!」


 相手のパーティカルロイドコアも外れ、はるか300メーター吹っ飛んでいく。


 緑色の大オカマは赤い土の上を転げまわり、ようやく止まった。


 ヤーイーは、大喜びした。


「イェチン、やったーーーーーー!! 私たち、勝ったのね!!」


 イェチンは、中国服から櫛を取り出し、髪をといだ。


「アイヨ、強かったよー」


 ファリンは、顔を赤らめたまま、俯き喜びを分かち合いたいのだが、できなくてモジモジしている。


 イェチンは、ファリンの両手を握った。


「ファリン、ありがとう!!」


 そして、銀龍の声が三人の背筋を凍らせた。


「テメェら、油断という言葉知ってんのか?」

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