1-19 演習、ラストバトル!! その1
演習もいよいよ大詰めだ。
銀龍は、キセルをくわえたまま、隊員の体調管理も含めて朝一番のブリーフィングだ。
「テメェら、いいか、ここで手ぇぬくんじゃねぇ。テメェらのクンフーはだいぶ強くなった。けどよぉ、
まだまだ足りねぇ。残り四名となっちまったが……。テメェらは最強の部隊だ。そして、チームワークがカギを握る!!」
「「「はい!!」」」と、最後まで生き残った四名が同時に返事をする。
「大詰めだ……。今度こそぶっ倒してこい!!」
目の前には三つの影が、要塞がいた。
向こうも最後なので、真っ向勝負というところなのだろう。
「とはいえねー」と、ヤーイーは、しゃがみ込む。
ラストステージは荒野だ。
ここには何もない。
森林に逃げるすべもなければ、市街地のように隠れる場所もない。
真っ向勝負な戦い方になるだろう。
ところどころ備え付けられている、スピーカーから、綾の声がこだまする。
「さあ、行きなさい!! ハミルトンアヤインダストリアーズ専属傭兵集団!! メイドインガールズ達よ!!」
OD色のメイド服を着ている、茶髪、茶色い瞳のオカマがマッスルな自己紹介をさせる。
「私の名前は、エバーマー=グリーン!! 陸地は私の世界よぉ!!」
白いメイド服を着ている、金髪、長髪オカマが手首を返しつつ、両腕をボディビルダーみたいに上空へ振り上げる。
「わたしはぁ、マリーン=マグドガルぅ!! 海こそ私の竜宮城!!」
四名のチャイナガールズ達は、ひそひそと話す。
「アイヨ、竜宮城ってなに?」
ヤーイーが説明する。
「何か、日本の昔話で出てきた場所? よく知らないけれど」
「それって、桃源郷みたいな感じなのかな?」
ヤーイーは、無言で肩をすくめた。
そして、最後のオカマの自己紹介が始まる。
手を広げて、上腕二頭筋に力を思い切り入れて、羽ばたくポーズ。
ヤーイーは、待ちくたびれて、しゃがみ込んで、肘と膝をつけながら手に顎を乗っけている。
「何か、羽ばたいているから、イェチンみたいじゃない?」
イェチンは、眉根を寄せる。
「アイヨ、やめてよ。あんなに変態じゃないよ」
黒髪、青いメイド服を着ているオカマが叫ぶ。
「私の名前は、蒼井空!! 空は私のぉ大舞台!!」
銀龍、金龍、綾が遠くで様子を見守る中、遠距離にいる綾がテーブルの上のボタンを押すと、オカマ達の少し後ろ側からそれぞれのメイド服の色の爆発が湧きあがる。
「私たち、メイドインガールズよ!! どっからでも、かかってらっしゃい!!」
銀龍と金龍はセリフがハモった。
「火薬の無駄じゃない?」
「そんな事ないわよ」と、綾はほくそ笑む。
リャンリャンが思わず口を開く。
「なんか、すごく戦いにくいです、ヤーイーたいちょう」
ヤーイーは、虚ろな瞳を眼前の三つの要塞に向けて、気分を切り替える。
「さてと……」と、ヤーイーはハイヒールの両踵を、地面につけた。
両手を腰にあて、眉を吊り上げる。
「オカマさんたち、もう準備はいいのかしら?」
3人のオカマは同時に、手先をクネクネさせ、誘う。
「いーわよーん!! いつでもかかってらっしゃーい!!」
50メーター先にいるのに、全員気持ち悪いのがチャイナガールズにも伝わる。
「……何か、やりにくいわよねぇ」
と、彼女は右手首を振り、どこかのアクション映画俳優の構えをさせる。
彼女のクンフーは、截拳道だ。
リャンリャン、ファリン、イェチン全員に目の合図をさせ、それぞれが深呼吸し、クンフーの構えをする。
「「「パーティカルロイドシステム起動!! 気功ユニットオン!!」」」
四人同時に一気に近づく。
しかし、要塞三人組は腕を組んだまま一切動かなかった。
早速、全力でヤーイーが茶髪オカマに急接近。
オカマが最大最小限のスピードとパワーで、ストレートパンチをさせる。
が、ヤーイーはそのパンチを二の腕で滑り込ませるように、オカマの顔面に拳をヒットさせる。
攻撃と防御が同時にあるのが、ジークンドーのだいごみだ。
だがそんなものでは要塞には通じない。
今度はそのまま膝蹴りがヤーイーを襲う。
彼女は初動の動作をよんでいたので、
相手の極太の膝にハイヒールを乗っける。
白い腿と膝が、スリットからのぞき相手のごつい顔面を穿つ。
掴まれると、思ったヤーイーは相手の胸板を土台にして、即座に相手と距離を離した。
茶髪オカマは上に向いた顔をもとに戻し、ギロリとヤーイーを見下ろす。
「あなたぁ、やるわねぇ」
「ジークンドー、なめてはいけないよ!! ホワッチャァ!!」
彼女は、両足全てに力を入れて、跳躍し、顔面に向けて右足で蹴りを放つ。
足先が腕でガードされてしまうが、ヒールをオカマの腹部目掛けて左足で蹴った。
「本当、だんだんと強くなっているわねぇ。感じるのよぉおお!!」
リャンリャンと、ファリンは同時に青いメイド服のオカマを相手している。
イェチンは、白いメイド服のオカマと激しい空中戦をしていた。
四名全員は、手ごたえを感じている。
徐々に互角になっている気がした。
リーシーは、周りを見渡しながら相手を見ている。
戦場で培った感覚だ。
茶髪オカマがにたりと笑う。
「じゃあ、私はねぇ、こうよ!!」
イェチンが、隣で飛翔中にリーシーに知らせる。
「気をつけて、それはレイレイがやられた技!!」
肩が膨張した瞬間、リーシーは上空へ飛躍した。
朱雀ほどの移動速度はないが、何とか免れ踵を返す。
「う、うそでしょ……」
通り過ぎ去ったタックルは、地面についている足跡に炎が上がり、燃えている。
摩擦熱で燃えたのだろう。
あまりにも常軌をいつしているので、振り向いたリーシーはあっけにとられてしまった。
相手との距離は約二百メートル。
ここぞとばかり、リーシーとイェチンはコンビを組む。
「イェチン、少しだけ時間がある!!」
「アイヨ!!」と、イェチンが空中で超絶技巧の回転をし始める。
そして、オカマに必殺の一撃をくらわした。
「全部、ボロキレになれ!! 旋风脚涉及一切(全てを巻き込む旋風脚)」
回転力が最大になり、回し蹴り二段をかます。
空気の摩擦が、オカマを襲い、バリアが一切なくなり、胸の真ん中にある緑色の宝玉、パーティカルロイドコアがあらわになる。
ヤーイーは、仁王立ちのまま、両手拳を腰にあて、瞼を落とし深呼吸。
「気功ユニット全開!!」
そして、ガードすら間に合わないスピードで、オカマに飛び蹴りをした。
「全てを断つ蹴り技 踢技术打破一切!!!!!!」
パーティカルロイドコアが直接衝撃を受け、オカマとコアが切り離され、オカマは300メートルぐらい吹っ飛んだ。
コアが吹っ飛び、ゴトリと地面へ落ちる。
ヤーイーの白いチャイナドレスが華麗に舞い、彼女はハイヒールで着地した。
戦力が減った瞬間、イェチンが危険を知らせる。
「アイヨ!!緑色が突撃!!」
ヤーイーは横へ緊急回避し、何とか免れ、イェチンはバク転でかわした。
オカマは急ブレーキをかけ、足元に火を宿しながら振り向く。
靴も燃えない特殊性ブーツなのが、よくわかる。
「よく、よけたわねぇ」
イェチンと、ヤーイーは二人で構えなおし、肩を寄せ合い陣形を整える。
「アイヨー、無茶苦茶よ」
「そうね」と、ヤーイーは逃げ回っているリャンリャンをチラリと視線を移す。
「ちょっと、交代する? イェチン」
「了解!!」と、イェチンはヤーイーに駆け寄り、とリャンリャンが跳躍し、交代する。
「一人足りないけれど、白虎部隊の真骨頂よ!!」と、ブルースリーの構えをさせる。
リャンリャンもホンホンと同じ、虎のような構えをさせる。
しかし、その構えの姿勢はリャンリャンよりも低く、子虎のようだ。
リャンリャン式白虎拳と、リャンリャン自身が名付けている。
「リャンリャン!!」
「はい、リーシーたいちょう!!」




