5-EX1 ルェイジーちゃんと、アスペルギルスちゃんの化学反応。(おまけ1)
-------N.A.Y.562年 8月18日 05時00分---------
ルェイジーは、銀龍の命令通り朝早くからアスペルギルスを案内するために老龍省の科学実験場に到着した。
科学実験場は、あらゆる二ーズに答えるために、倉庫のような施設になっている。
ルェイジーの目の前には、茶色いくせっ毛のあるボブヘアーの女の子が目の前に立っている。
目の前にウィンドウが開き、音声データで通信してくれた。
「ありがとうございます、リールェイジーさん。ここまで案内してくれて、本当にありがとうございました」
「アイヤ!! ルェイジー、銀龍の言われ通りに案内しただけアルネ!!」
「いえいえ、それでも非常に助かりました」
「でも、ルェイジー、アスペルギルスの護衛も頼まれているアルネ!! 絶対に、アスペルギルス、守る、アルネ!!」
「分かりました。とりあえず、実験場内に入りましょう……」
ルェイジーとアスペルギルスは、巨大な倉庫の中に入った。
中に入ると、色々なプレハブ小屋みたいな建物もあったり、全てが窓ガラスになっているような実験場もあったりするのだ。
ルェイジーは、大きな口を開けながらそこら中を見渡している。
「アイヤー、よくわからないけど、凄いアルネ!!」
「よくぞ来たな、可愛い可愛い女の子たち!!」
目の前に現れたのは、超どでかい影が二人を覆う。
ルェイジーは、超巨体な白髪を後ろに縛った老人に声をかける。
「アイヤ、チャイナガールズのルェイジーアルネ!! 老龍会会長さんアルか? 銀龍から聞いたアルネ!!」
老人は、並みならぬ雰囲気で腕を組んで、ルェイジー達を見下ろしていた。
「ルェイジーというのは君か? 合格だ!! そして、隣にいるのは、レッドバニーガールのアスペルギルスちゃんか? 背が低くて、胸、お尻、何もかも小さい。カワイイ!! 合格だ!!」
アスペルギルスはミリタリーコートをしているが、反射的に両胸を隠した。
もごもごと、何かを喋るとルェイジーの耳にも音声が入る。
「……女性としての視点ですが、なんか嫌らしさを感じます……。確かに私は小っちゃいですが、それは認めます……。
普通、合格と言うものは嬉しいはずなのですが、全く嬉しさを感じないのはなぜなのでしょうか?」
ルェイジーは、無垢な瞳で老龍会の会長をずっと見上げていた。
爆発するかの如く、大きな老人は叫んだ。
「胸、程よい大きさ!! 腰、程よく細い!! そして、お尻!! クンフー使いらしい健康的なヒップ!! 最高だのう!!」
ルェイジーは、すぐさま会長に伝達する。
「アイヤ、早速毒ガス対策のための、ガスを作れる場所案内してほしいと、アスペルギルスちゃんが、言っているアルネ!!」
丸太みたいな腕を組んだ老人は、ガラス張りの実験場の出入り口に人差し指を差して案内する。
「君たち、あの奥にある扉へ向かうと良い……」
ルェイジーは、老人の隣りを越えようと歩きつつ、扉へ向かおうとした瞬間だ。
老人の眼光が鋭く走る。
「スキありぃいいいい!!」と、ルェイジーのヒップに手を出そうとした瞬間だ。
ルェイジーは容赦なく踵を返し、青く輝くチャイナドレスがふわりと舞って、老人の顔面に回し蹴りをした。
老人の鼻は、中国靴の靴底にクリーンヒットし、2メーターほど、左横へ吹っ飛んだ。
「アイヤ、ごめんアル!! ついつい、反射的に動いた、アルネ!!」
アスペルギルスは、防護マスクの奥の瞳から目を細めている。
「たぶん、謝るのも何かおかしいと思います……」
老人は、高い鼻をおさえながら、片手から鼻血があふれている。だが、彼は立ち上がる。
全ては美女のお尻のために。
「い、いや、いいのだ。くまさんパンティを覗けたから、フェアなのだ!」
ルェイジーは完全に反射的に強烈なキックをお見舞いしたのだが、彼は軽いダメージで済んでいる。
ルェイジーは、ちょっとだけ老龍会会長を不思議そうに見上げていた。
「アイヤー……老龍会会長、がんじょう、すごいアルネ!!」
「何のこれしき、老人になるにはまだまだじゃよ!!」
老人は、二人を実験場に案内した。
「ここはの、世界各国というと大げさじゃが、パーティカルロイド関係の技術が集まっておる。
そして、細菌兵器とパーティカルロイド粒子の関係性や、毒ガスとパーティカルロイド粒子の反応など……これでもほんの一部の施設じゃ」
そして、ルェイジーとアスペルギルスは案内されるがままに研究施設へと到着した。
「アイヤ!! いろいろな機械がいっぱいアルネ!! 変なにおいもしているアルネ!! 料理で使えそうなものなどありそうにない、アルネ!!」
「料理……ルェイジーさん、面白い発想しますね?」
ルェイジーは彼女を見下げながら、言葉を返す。
「……アイヤ、そうアルか?」
「そういう発想、嫌いではありません。料理もまた化学反応だと思っています。
私の部隊でも料理を作ってくれる方がいますが、その方はどんな状況下でもみんなの一人一人に合うようなご飯を作ってくれます。
あなたは、きっとその人と話が合うと思いますよ?」
「アイヤ、いつか話してみたいアルネ!!」
ガスマスクの少女の奥の目尻が垂れる。
「そうですね、ヘクセンハオスさんとは気が合うかもしれません。老龍会会長さん? この施設全部使用してもいいのでしょうか?」
「ああ、九龍城国を救うためだったら、そんぐらい大したことない!! ワシはこの九龍城国の美女たちの比率が本当に多い。
ワシの心眼による統計によると、50パーセントは世界がうらやむぐらいの美女が集まっている。しっかりと論文まで書いたわい!!」
「アイヤ、凄い、くにてき、ストーカーアルネ!! 銀龍のバストいくつアルネ!!」
「81じゃ!!」
ルェイジーは、冷や汗をかきながら震えていた。
「あわわ、あ、アタリ……アルネ……」
「わしは、ちょいと用事があるのでなぁ、席を外すわい。ルェイジーちゃん、作業が終わったら連絡してくれい……」
「分かったアルネ!!」
「ふう……」と、アスペルギルスは実験室台の上にミリタリーコートとうさ耳のカチューシャを置いた。
そして、自身で持ってきたバッグから白衣を取り出し、それを羽織る。
「やはりこの格好が一番落ち着きますね……」
後は、銀龍に頼んでいた毒ガスが付着した手裏剣を取り出した。
「手裏剣に付着している毒ガスを解析し、ワクチンみたいな粒子とナノマシンのハイブリッドガードシステムを作るのと、彼の弱点であるヘリウムガスを超強力にします。ルェイジーさん、指示しますので手伝ってもらえますか?」
「了解、アルネ!! 全てはアスペルギルスチャンのために、アルネ!!」
紫色のポニーテールを振り乱し、ルェイジーはアスペルギルスに敬礼をする。
彼女は、アスペルギルスの言われ通り、色々と様々な薬品などを持ってきた。
そして、最後の工程に必要な薬品を全て統合するというとき、ルェイジーは明らかなミスをしていたのだ。
自身の紫色の毛髪が入ってしまい、すぐに取り出した。
スプレー缶を全員分作成と、センサー式の仕掛け用の分までした。
ルェイジーは吸ってみると「あいや、なにかコエガオカシイアルネ、アルネ」と、声が変わった。
アスペルギルスも「では……」と顔を俯かせて、ガスマスクを外す。
彼女は、白くか細い首を動かし、茶色いボブヘアーを左右に振った。
クセっ気のある髪がふわりと浮き上がり、ゆっくりと瞼を開けた。
澄んだ灰色の瞳があらわになる。
小さな口元は、少女ながらも17歳という年齢と混ざり合い、少し色気もある健康的なピンク色の唇。
グレー色の大きな瞳は、中世世界の美人画がそのまま現実に出てきたような錯覚すら起きる。
その美少女は、酸素吸引缶をベースにしていので、プラスチック製のマスクに口元をあててヘリウムガスを吸ってみた。
喉が絞られる気がするのと、なぜかアルネ口調を出さないと、気がすまなくなっているのだ。
「なんか不思議アルネですね……」
「アイヤ、ルェイジーの真似アルか?」
「違います、ルェイジさん。何かしたアルネですね……」
かくして、ルェイジーとアスペルギルスのとっても素敵な偶然的科学反応が巻き起こった瞬間だった!!