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チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
173/178

5-93 レイレイと龍王。

 


 -------N.A.Y.562年8月18日 15時00分---------



 ヨウは、降りしきる雨の中、龍王の間へと戻った。


 ヨウが戻ったころには、背中に朱雀の刺繍を入れている女の子が、銀龍と会話している途中だった。


 銀龍は、フェイロンをパージさせ、ジィモにバトルドレスの回収を頼んだので、いつも通りの背中が開いているチャイナドレスに戻っていた。


 レイレイは、銀色の影の前、台座の階段途中で佇んでいた。


「まさか、本当に女性だったなんて」


「初めまして……。いいえ、この姿では初めましてですね、朱雀小隊小隊長レイ・レイレイさん」


「私が信じたものは、一体何だったのでしょうか?」


 ミンメイの隣りにいる銀龍は、レイレイを見下げつつキセルをくわえながら話す。


「レイレイ、テメェさんには言っておくぜぇ。龍王はだいぶ前に亡くなっている。


 だがよぉ、それなりにこういう体でやっているのも理由はあるんだぜぇ?」


「理由ですか? ターレン」


「ああ、龍王はこの状態を維持したかったそうだ。まあ、親父の遺言でもあったわけだ」


「でも、なぜここまでして徹底的にやったの?」


「簡単だぜ、うちは残念ながらオレ達の代で女系の血筋になっちまったみてぇだ。

男が国おさめるっていう考え方はよぉ、古くてどうにも好きになれねぇが、いきなり女が国を支配する。

そうすると、反乱分子や国民の暴動が起きかねない。

ただでさえ、歴史が浅い国だ。国の土台はまだまだ弱い。そんなもん、カンタンに崩れちまう。

ということで、こういう風にした。あ、あともう一つ。

ミンメイはオレ達みたいに血なまぐさいのは、実は苦手でなぁ。

チャイナガールズにいるよりも、ここにいることをミンメイにオレが勧めたんだ」


「申し訳ありませんでした。私は国民をだましていたことには、罪を感じていたのです。このやり方にも限界を感じていました。

国民含めて、皆さまにお伝えするつもりでしたが、直前で大規模テロに合うとは、想定外だったのも事実です」


「で、更にワケが分からないのが、何でユー大姐ターチェがいるのよ?」


「彼女は、私が作った機関、五爪龍王の中でも三刀さんとうと言われているうちの一人です」


 青い髪の女性は右手を出して、ウィンクした。


「ごめんね、龍の情報を集める諜報機関なのよ。おねーさん、謝るから許して?」


「でもさ、ターレン。これからどうするの? 色々と国の方針が急に変わるじゃない?」


 銀龍は、中国キセルを右手でつまんで、口許から外す。


 淡い桃色の、ナチュラルメイクをしている薄い唇が動いた。


「つまりでぇ、うちらが国に属していないという話しに繋がってくる」


「え? どういうこと?」


「軍なんて言うもんは、国が作るべきだと勘違いしているが、うちらは軍でも何でもねぇ、自由気ままなチームだ。

だからこそ、国の一括受注みたいな安定した仕事も必要な訳なんでぇ」


「もし暴動が起きた時、必ずあなた達の力が必要になります。

私、ミンメイはあなた達を専属の傭兵集団として迎え入れるということなのです」


「おおう、つまりユグドシアル大陸にいる連中と同じような契約になるということだな?」


「そうです、カォルンセングォ専属傭兵集団チャイナガールズです。シェンメイターチェ。どうでしょうか? このはなし?」


「オレはなぁ、断る理由なんてねぇぜぇ。それとよぉ、ミンメイ。ユグドシアル大陸での演習は必ずそっち優先させて貰う」


「構いません。朱雀部隊小隊長レイ・レイレイさん。

あなた達にも同意が必要です。私のようにくさびに繋がれ、道化師になってしまった龍王でもお願いできますでしょうか?」


 レイレイの左隣にいたシャオイェンは、膝を折り曲げてしゃがみ込んだ。


「私は、龍王様に忠誠を誓います」


 レイレイは、視線が定まらず、眉根を寄せていた。


 衝撃的な情報が多すぎて、頭の中を処理しきれないのだ。


 黒龍会の副会長と戦ったときの、「斎藤問汰」の言葉を思い出してたのだ。


「朱雀部隊隊長さんよぉ、他の所にその力を預けたりはしねぇのか? おめぇさんだったら、独立しても平気でやってけるぜ……」


 レイレイは、少しうつむいて、眉を落として嘆息をさせる。


「そう、そういうことだったのね。彼は見抜いていたのかもね。この国の真実を――」


 死んでしまったので、もうそれは分からない。


 銀龍は、そんなレイレイの言葉の気持ちを知らずに、言葉を続けていた。


「ここは、九龍城国カォルンセングォだ。テメェさんがここを今から抜けるもよし、ここに居続けるもよし。テメェさんで決めやがれ」


 レイレイの右隣にいる、リームォがレイレイの左手を、小さな手で引っ張る。


 リームォは、無垢で大きな瞳でレイレイを見上げていた。


「れいれい、ちょうたいちょう……いなくなっちゃうにょ?」


 いつもだったらレイレイは、即座に「どっかに行くわけないじゃない!!」と、返答していた。


 だが、レイレイは下唇を噛んだ。


「そ、それは……」と、眉根を寄せて、苦悶の表情でしか返せなかった。


「ちょうたいちょう、いにゃくにゃったゃりゃ、あたち、かにゃしみゅ……」


 銀龍は、左隣に立っている、龍王のミンメイに声をかけた。


「ミンメイ、玉座、借りるぜぇ?」


「構わないわ、銀龍大姐ターチェ


 銀龍は両足を組んで、金色の玉座に勢いよく座った。


 右頬をついて、レイレイを見下げている。


 レイレイは、銀龍のフェイロンを着用した時、パレードの時を思い出した。


 まだ入隊前だった、あれは10歳の時。


 あの人は、いつだって正しい道を進むと確信していたのだ。


 銀色の鎧を着た女性、銀龍を初めて見上げた時は、いつだったのだろうか?


 シルクのように黒く長い髪が流れていて、その白銀に纏った姿は、立派に戦士だった。


「私が歩むべき道は――」


 レイレイの右耳にぶら下がっている、小さな七星剣が揺れた。


 レイレイも、膝を折り曲げて顔を下げた。


 リームォは、その様子をただ見ていた。


 ヨウは、レイレイの朱雀が背中に描かれたチャイナドレスを見つつ、歩いてきた。


 銀龍は、びしょ濡れになっている彼に一言だけ、つぶやいた。


「ヨウ大佐。いいや、ヨウさんよぉお疲れさんだぜぇ」


 ヨウは、眉根を寄せて、銀龍を見上げている。


「私は、全てを失いました。祖国も、階級も、家族も。私を受け入れてくるような国はあるのでしょうか?」


「へっ、そんな言葉を聞きたいわけじゃねーぜぇ? オレはなぁ久々に骨のあるヤツに遭ったと思ってんだぜぇ? テメェさんはどうなんでぇ?」


「私は、もう行くところがない。私は、ここにいる資格もない」


「へぇ、それでぇ?」


 銀龍は、唇の端を歪めつつ、中国キセルを咥えた。


 肩眉を上げつつ、首裏を掻く。


「はー、これだからよぉ移民の考え方は嫌いなんでぇ。ここは、九龍城国。テメェさんたちまとめて」


 銀龍は玉座から立ち上がり、全員を見下ろす。


「面倒見てやるぜぇ? ヨウさんよぉ。えっとよぉ、なんだ? チャイナガールズは今現在人を募集してんだよぉ?」


 ヨウは、即座に聞き返した。


「はい? どの様なポジションでしょうか? 私はこれでも男なのですが」


「チャイナガールズは、チャイナガールズだぜぇ? 別に、なんだ、その? ブツ切ってはいれなんて言わねぇ。

うちはなぁ、経理担当がいなくてよぉ、困ってるんでぇ。わりぃが、無理矢理スカウトさせてもらうぜぇ?」


「……よろしいのでしょうか?」


「キッチリとよぉ、あの書記長とケリをつけてきたんだろぉ?」


「良かったのか、どうかは分かりませんが、階級章と部隊章は全部投げつけてきましたよ」


「ふん、やっぱりオレが見込んだ男だけあるぜぇ?」


 ヨウは、俯きつつ笑いが腹の底から込み上げてきたようだ。


「ふふ、あはははははは。全部、あなたにやられたというわけですか?」


「そうだ、狙い通りだ。よろしく頼む、ヨウさんよぉ? オレ達に協力してくれよぉ? なぁ?」


 彼は、何か憑きものがとれたように、歯を見せて笑った。


「いいでしょう、協力しましょう!! 私はチャン・ヨウと言います。しっかりと仕事はさせて貰いますよ!!」


 ヨウの更に後ろから、メイヨウがゆっくりと歩いてきた。


「りゅうおうさまに、お話しがあります!!」


 ミンメイは、銀龍に目配せをした。


「あら、銀龍ターチェ、今度は私がその玉座に座りますね?」


「ふん、好きにしな、ミンメイよぉ」


 銀龍は、銀色のハイヒールで赤い絨毯を踏みしめつつ、階段を降りる。


朱雀ジューチュエ小隊、テメェらはあと片付け頼むぜぇ?」


「全ては、銀龍ターレンの為に!!」と、小隊全員が声を出すと、レイレイ、シャオイェン、リームォは行動に移った。


 ヨウの目の前で、銀龍は顔を上げる。


「ヨウさんよぉ、早速だがよぉ。よろしく頼むぜ。復興の事も考えないといけねぇしな」


「分かりました、銀龍さん。ところで、私に銃を突きつけられているとき、私の耳元でささやいた言葉、あれは本気だったのでしょうか?」


 銀龍は、ヨウの耳元でこう囁いたのだ。


「中国国防部のもんがここへ来ているらしいぜぇ? アンタを殺しにな?

オレはオレを殺しそうなヤツがぁタイプだぜぇ? アンタはどっちなんでぇ?」

銀龍はあの時と同じように「ヨウさんよぉ、耳貸しなぁ?」


 ヨウは、中腰になって銀龍の口許に左耳を寄せる。


「ふぅ」と、息を吹きかけられ、「ひゃう!!」と、ヨウは背中から全身に鳥肌が一気に巡った。


 銀龍は、ヨウの右肩に手を置きつつ、彼を追い越した。


「なな、なんですか!? 銀龍さん!!」


 銀龍は背中から顔だけ覗かせると、彼女は笑っていた。


「へっ、マジかどうかなんてよぉ、ご想像にお任せするぜぇ? ヨウさんよぉ」と、一言だけ残すとエレベーターの方へと向かって行った。


「銀龍さん、どちらへ?」


「あん? そうだなぁついでだ。オレ達のやり方を、テメェさんもちょいとつきあってくれ」


「分かりました。ついていきましょう……」


 金龍たちの前には、五本の爪が彫られた龍が目の前にある。


 ここは、超高層エレベーターホールの手前だ。


 鋼鉄製の扉が開くと、奥から二つの影が見えた。


 銀龍と、ヨウだ。


 金龍は、瞳を細めると、微笑をさせる。


「あら、ヨウさん。ご機嫌麗しゅうございます?」


 シェンリュが、早速つっかかってきた。


「ちょっと、アンタ、さっきから、ここを出たり入っていたりして、肝心な時にどこに行っていたのよ!!」


 銀龍は、右手を出して、シェンリュを抑える。


「まあまあ、とりあえずよぉ許してやってくれよぉ。

国に利用されて、捨てられちまったからよ、これ以上追い打ちをかけるのは許してやれ」


「で、でも」


 金龍は、スマートコンタクトレンズで情報を見た。


「あら、仕事速いのね? 銀龍?」


 シェンリュは、首を傾げる。


「え? どういう意味よ。金龍シェンシン?」


「仮契約だけど、彼もチャイナガールズに入ったわよ?」


「え、嘘でしょ? 男でしょ? あれ、切っちゃうの!? え、どこ担当?」


 サングラスをしている、ファリンが口を開く。


「あ、本当だね。どうやら、経理担当みたいだよ、シェンリュちゃん?」


 リーシーは、笑顔っぽい、真顔で間延びした声を出す。


「あらあら~本当ですね~~。適材適所ではないでしょうか~~?」


「ま、リーシーが一番うれしいんじゃねぇの? たまに経理手伝ってもらったからよぉ」


 シェンリュは、両手を水平にして首を傾げた。


「それよりも、ターレン。ここに来たのはそれじゃないでしょ?」


「ああ、そうだ。ヨウさんにもよぉ、チャイナガールズのやり方を見てもらおうっていうもんでよぉ、最後のダメ出しを見せてやるっつー話だぜぇ?」


「ターレン。と、いうことは?」


「毒ガスコマンダー鷺沼に、二度とここへ来させないようにするために、念を押してやる!! テメェらも競技場へ来いよ!!」


「分かったわ、銀龍ターレンの命令だったら、付き合うわ!!」


 ヨウだけが、一番分かっていないので、銀龍に話す。


「どういうことでしょうか、銀龍さん?」


「いいけぇ? オレ達にここまでしたからにはよぉ、1兆倍にして返してやるんだよぉ?」


「私は、既に亡命みたいなものですが、彼を殺してはいけないですよ?」


「殺すんじゃねぇよ? それよりも、もっとひでぇめに合わせてやる!!」


 銀龍は、裂けんばかりの口を、ニタリ顔をさせながらヨウに振り向いた。


 その銀色の眼光は刃よりも鋭く、ヨウは背中に氷を詰め込まれた錯覚すら起きた。


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