表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
172/178

5-92 逃亡者は、九龍城国を背に。 その2


 九龍城国から橋を越えた護送車は、透明の色から再びOD色を帯びていく。


 自動AI制御により、半透明だとしても、他の車とぶつかることもない。


 手錠を外されたツィイーは、暗がりの中、目の前にいる人物をただ見つめていた。


 護送車に揺られながら、目の前にいる人物は妙なカッコウだった。


 大剣を両手に持っていて、護送車の硬い椅子に座っているのだ。


 その左隣りでは、左目を抑えていて、呻きながら仰向けに倒れている男が倒れていた。


 暗がりの中、見にくかったが徐々に目が慣れて行って、その男の姿がよくわかった。


 革のライダースジャケットを着ている、細身の男が寝そべっているのだ。


 ツィイーは、その男に向かって叫ぶ。


「シィェン!!」


 シィェンは、真っ赤に充血している右目だけを動かし、ツィイーに瞳を向けた。


「姐さん……どうやら俺は死にそびれたようだ」


 ツィイーは、眉宇を落とし、一瞬だけ安心した表情を見せたが、すぐに眉毛を吊り上げた。


「ふん、死にぞこないが!!」


「へへ……なぜか俺は悪運が強いらしい。この秘匿車両に拾われたぜ」と、シィェンは頭を長椅子に預けて気絶した。


「シィェンウェンハイ、貴様は120パーセント合格だ!!」と、野太い声が薄暗がりの中を制した。


 大剣を持っている影は、まばゆいぐらいの白銀の鎧を装着している。


 ツィイーは、中世のイギリスの騎士などは、映像でしか見たことなかったが、実際見ると重厚な迫力に圧倒されそうになる。


 シィェンがいたところよりも、一段と闇が深い場所なのか、前の前にいる人物の者の顔が良く見えない。


「よお、お嬢さん。そこの部下とはいつでも喋れるぜ。それよりもよぉ、俺と話そうぜえ?」


 低く野太い声からにして、男だと判別できる。


 声からに察すると、中年の男性。


 ユグドシアル語で話していた。


 ユグドシアル語は、中国でも必須教科なので彼女もその言葉で返した。


「わ、私を捕まえてどうするつもり? レイプでもするの? 残念ながら、私は生き残るためだったら、そんな苦しみ、痛みなど、軽いものだわ!!」


「ふん……一人娘が俺にはいる。そんなものは、俺には300パーセント興味がねえ」


「じゃ、なんなの!! あなた達は誰!?」


「誰でもいいじゃねえか。十字聖教騎士団……知ってるよなぁ? あんた」


「知ってるわよ!! 300年帝国よね」


「じゃあ、説明はいらねーな。ファイブズって……しってるか? お嬢さん」


「も、もちろんよ。300年帝国の礎とも言われている……」


 右隣に座っている、鋼鉄製のヘルメットを被っている男性が口を開く。


「リュシフェル様、九龍城国からは50キロ以上離れました!!」


「そうか、明かりをつけろ。一応潜伏任務だからな……」


 護送車の中に設置されているパーティカルロイド粒子により、粒子灯により急に明るくなった。


 ツィイーは、細い瞳を大きく開け、口も大きく開けた。


 彼女の瞳孔が微妙に揺らぎ、光彩が徐々に縮んでいく。


「あ、あなたは、ファイブズの……オプティキス!!」


 その男は、太い首に金髪の髪を無造作に短く切っており、もみあげと髭が繋がっている。


 太い眉毛をひん曲げて、ゴツイ男は口を開いた。


「よう、ご面会だ。初めましてだな。チャンツィイーさん」


「に、偽物じゃ……ないわよね……」


 男は大笑いし、おでこをひっぱたいた。


「ガハハ! こりゃ傑作だー!! ファイブズが遠征なんて、信じられない!! っつー顔だなー。お嬢さん!!」


「本当に、意味不明すぎだわ……」


 一息ついたあと、オプティキスは唇の端を歪ませた。


「おうおう、いいか? これはスカウトだ」


「……スカウト?」


「おうよ。す、か、う、と。お前さんの履は見せてもらったぜ。ハッキリ言うと、300点満点合格だ!!」


「な、何の話しよ!!」


「ユグドシアル大陸で、指揮を執ってほしい。俺の右側で寝ているシィェンと一緒によ。

一人じゃ寂しいだろ? で、突如始めるクイズ番組、オプティキスクェスチョンコーナー。

指揮に一番重要なもんて何かわかるか?」


「人の動かし方……? 違うわ、いかにダマせるかだわ……」


 オプティキスは、手の甲で二度ほど振って、はらう。


「ちがうちがう!! おめーさんは、きづいてねーんだよー。それは生きる執着だ!!」


「……執着?」


「おめーさんのことは、ずっと見てきたぜ……うちらも潜伏できる奴らは結構いるからよ」


 ツィイーはその言葉を聞いて、一気に鳥肌がたったのか、両腕を胸の下に交差させて持ってくる。


 十字聖教騎士団の軍事力もそうだが、情報収集力も半端ではなかった。


「右目に涙の、かわいいかわいいホクロの女性。年齢は33歳ぐらい。

ぐらいというのは、しょうがねぇもんな。生き別れた弟がいるということだ。

長年裏社会で生きてきたため、証明できる、信用

出来そうな肉親はしばらくいなかったもんな。生き別れた弟は現在中国国防軍で、大佐をしているそうな……。おっとお、失礼。その弟さんも、そろそろ軍部を抜けるかもしれないもんな。

あんたの性格は、目的の為だったらなんでも利用する。

例えば、その体とかな。

特に、男に対する引っかけ具合はこの俺も惚れ惚れするね!!

ヘタな娼婦よりもスゲェうまい駆け引きするみたいだよな?

扱える戦闘術は超接近戦に長けていて、蟷螂拳を使う。

蟷螂拳と言っても普通のじゃねぇ。こう、なんていうんだ? 超はえー攪乱戦法の蟷螂拳だ。

うちの一般の騎士よりもつえーんじゃねーの。それと、その目的の為には生き残る執着は、並みならぬものを感じざる負えん……。それと、セックスする時の好きな体位も言った方がいいか?」


 ツィイーは、完全に閉口してしまった。


 赤い果実が弾けるように、口を開け始めた。


「そっちに行って、プライベートは、あるの?」


「いんや、ない。まあ、俺もほぼない。プライベートは仕事だ」


「どうして、そこまで言うの?」


「言う? お前さんがうちらのところに来る確率は195パーセントだ!! おもしれーぜえ、ユグドシアル大陸の防衛は!!」


 ツィイーは、両腕を胸元に寄せて、オプティキスと視線を外した。


「わかった、負けたわ。この車はどこに、向かってるのかしら?」


 オプティキスは、太い眉毛を歪ませ、大きな口を開いた。


「お嬢ちゃん、良いこと聞いたなー。やっぱ、こういう女はたまんねーぜ。

頭のキレよし、身体のキレよし、おこちゃま感覚がない。そういう女はモテるぜ?」


「そんな茶化し、どうでもいいわ。どこ向かってるって、言ってるでしょ?」


「おうおう、お嬢さん。言っただろ? ユグドシアル大陸までひとっ飛びだ!!」


「プランを教えて頂戴、無事にいかない可能性も考えるのよ……」


「おめーさんの価値は、俺が守るぐらいにある!!」


「ふん、どうだか……」


「ま、任務完遂率は300パーセントだ!!」


 降りしきる雨の中、護送車は軍用空港へと向かって行く。


 夏場の雨はさらに強くなっていく気配だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ