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チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
171/178

5-91 逃亡者は、九龍城国を背に。 その1

 

 九龍城国セントラルの入り口手前には、軍用の護送車や様々な兵士たちが右往左往している。


 ヨウは、バッヂなどを握りしめたまま、ツィイーを護送しようとしている書記長を止めた。


「書記長!!」


 書記長はしかめっ面のまま、振り向く。


「なんだい、ヨウくん……」


「今まで、お世話になりました……」と、バッヂなどを全て投げつけた。


 兵士は小銃の銃口をヨウに向ける。


「貴様、侮辱罪で銃殺するぞ!!」


 書記長は、ため息をつきつつ、手のひらをあげて制した。


「ここは九龍城国だ。彼らの戦闘力を見ただろう。ここでは分も悪く、彼女達に勝てる者など中国国防部には誰もいない。

それに従うしかないのだ。ヨウくん、きみを利用したのは謝る必要もないし、私は一切悪くも思っていない。

全ては民主主義の為だからな。きみは二度と国に帰ることもできないことも覚悟しておいてくれ。

最後の餞別ではないが、きみの姉と話す権利はある……」


 ヨウは、黒いスーツ姿の女性の背中に声をかける。


「姉さん、ツィイー姉さん。あなたは間違いない、私の姉だ!!」


 両手に手錠をされたツィイーは背中を向けたまま、無視して歩き続ける。


 目の前には護送車がある。


 ヨウはもう一度、護送車の階段に足を置いたツィイーに叫ぶ。


「姉さん!! あんたは間違いなく、俺の姉さんだよな!!」


 ツィイーは足を止めて、背中から顔だけを向ける。

「そんな名前なんて知らないわ。私は元黒龍会会長、チャン・ツィイーよ……」と、一言呟くと足を再び動かした。


 護送車のハッチが閉まり始めた時、ずっとヨウを見ていた。

 

 彼女の細い顎からつたうものが、ヨウにはハッキリと見えた。


「やはり……あなたは!!」


 ヨウは、眼鏡をはずし、両膝をついた。


「姉さん……」


 ヨウの背後で、書記長と兵士の会話が耳に入る。


「書記長、ただいま戻りました」


「うむ、そうか。なんだね……」


「護送車が到着しました!!」


 ヨウは、すぐに涙を拭き終え、メガネをかけなおして立ち上がる。


 ヨウは、すぐに気づいた。


 橋を走り去る護送車へと視線を運ぶが、既に姿がなかった。


 書記長は、いなくなったことに唖然とした顔だった。


「何? どういうことだ? ツィイーはどうした!!」


「……え?」と、兵士は口をあけた。


「いや、ご命令の通り、我々は……」


 ヨウは気づいた。振り向きざまに叫ぶ。


「書記長!! 誰かに誘拐されたかもしれません!!」


 行方を眩ました車がどこにあるのか色々と視線を運ぶが、目視は不可能だった。


 ヨウは銀龍に、イヤホンで連絡した。


「銀龍さん、ツィイーが行方不明になりました!」


「何ぃ? どういうことでぇ? ちょっと待て、GPS情報を見てみる。


 なんだとぉ? 手錠に仕組まれているGPSも橋の真上、すぐに捨てられたな……目視は?」


「ダメです、光学迷彩で車ごと行方を眩ました可能性が強いです!!


 申し訳ありませんが、フェイロンは出せますか!!」


「……ムリでぇ」


「なぜ!!」


「冷静になりなぁ、旦那ぁ。そちらさんに空域の確保を出すときはよぉ、しっかりとぉ申請はしてるんだぜぇ?」


 ヨウは歯を食いしばり、ただ橋を見つめるしかなかった。


「そうでした。許可申請が必要でしたね……」


「そうでぇ、もっともはやく済むのは、ユグドシアル大陸への自動AI制御の輸送機のみだぜぇ?


 そのルートのみ、唯一許されている。あとはなぁテメェさんとこの国への申請許可が必要だ」


「私としたことが……」


 銀龍は言葉を続けた。


「まあ、生きてりゃそのうち会えんじゃねぇのぉ? 誘拐されたっつーことはよぉ……そう簡単に殺しはしねーだろぉ? 前向きに考えな?」


 銀龍は、龍王の間を抜け出し、バルコニーの所でキセルに火をつけて空を仰ぐ。


 彼女の鼻筋を、冷えた雨がポツリとはじく。


「そろそろ、夏場の雨がふるぜぇ……」


 曇天が九龍城国を覆ってきたのだった。




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