表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
164/178

5-84 真実の裏九龍城国。その1

 


 -------N.A.Y.562年8月18日 13時00分---------



 ツィイーは、言葉をぶつ切りにさせて、つぶやいた。


「これが、せめてもの、メイヨウ様への忠誠!! やったことへの全てよ」


 その後、黒く染められた女性は、徐々に声を荒げ笑った。


「ふふ、ふははは!! そうよ、全てはメイヨウ様の一族の為、私はついにここまで来たわ!! 

我が父の思いとメイヨウ様の母方様の、無念の恨み全部が一緒くたになって、九龍城国を毒ガスで吹っ飛ばせるときがついに!!」


 銀龍は、真っ黒に染まっている女性を、冷静に見下げつつ薄い唇の端を吊り上げた。


「へぇ、ここまでたどり着けたのはよぉ、マジで褒めてやるぜぇ? けどさ、テメェさんの弟も巻き添え食っちまうぜぇ? そうなんだってよぉ、ヨウ大佐……」


 シィェンは、自身の右隣に立っている男が、気になっていたのだ。


 先ほど、非常階段の扉前で、煙草の火を貰った男だった。


 妙にサングラスを、かけ直すのだ。


 そして、背も高く、ガタイが結構良いのも気になった。


 黒龍会に招き入れるには、ある程度小柄な人材を選んでいるのだが、その男だけ妙に目立っていた。


 シィェンはその男を見上げると、思わず口を開けた。


「お前は、誰だ!?」


 その瞬間、その黒服の男は、シィェンに銃口を向けたのだ。


「なるほど、さすが銀龍さん。お気づきでしたか」


 周辺の黒服の男たちは銃を取り出そうと、身構えるがヨウは叫ぶ。


「いいか、貴様ら!! シィェンとメイヨウがどうなっても!!」


 その男は、サングラスを地面に放り投げ、静かに黒服のスーツの裏側から静かに眼鏡を左手のみで、取り出しかけなおした。


 銀龍は、ヨウに向けて茶化すように言葉を投げた。


「よう、ヨウ大佐殿。久々じゃねーかよぉ。どこをほっつき歩いていたんでぇ? それとよお、メイヨウに何かあったらわかってるよなぁ?」


 ヨウは、銀龍を睨み上げつつ、銃口の先が一切ぶれることなどない。


 彼の意志は本気なのだ。


「ツィイー姉さん、ようやく見つけましたよ」


 ツィイーは、切れ長の瞳を刃物のように鋭い視線だけをヨウに向ける。


「私には家族なんていないわ。私には、誰もいないの」


「なぜだ!! なぜ、否定するんだ!! ツィイー姉さんをどれだけ探したのか!!」


 ツィイーは、眉根を寄せて睨んだまま銀龍に視線を戻した。


「いい、銀龍。私は一切ひかないわ。メイヨウ様を再び、その玉座に座らすことが全て!!」


 銀龍は、一度ため息をつくと、黒鉄色をしているパワードスーツが一瞬にして銀色に輝いた。


 パーティカルロイド粒子が、血液のように装甲内の全てを循環し始めたのだ。


「ヨウさんよお、目を覚ました方が良いぜぇ? そいつはあらゆる手段を持ってテメェを殺しにかかる」


 銀龍の言葉が終わると同時に、ツィイーはシィェンを越え、一気に間合いをヨウに詰める。


 鉄尺の三又部分に銃を引っかけると同時に、銃口を真上に。


 上空に発砲音が響くと同時に、彼女はヨウの鳩尾に膝蹴り、右頬を左足の黒いハイヒールでそぎ、両手の鉄尺を逆手に持ってヨウの腹に柄をめり込ませる。


 ヨウは、息を吐く暇もなく、大理石の床を10メーターほど転がった。


 ほんの一瞬の出来事のあまり、全員が凍る。


 すぐに、銀龍が声を出した。


「ミンメイ、どこまでやれる!!」


「声龍の拡散能力は皆さんを巻き添えにします!! ですが、私の催眠能力でしたら、他の方々は相手できそうです!!」


「わーった、とりあえず、やってくれ!!」


 銀龍はすぐさま、銀色の軌道を乗せて、階段上からツィイーまでそのまま突撃する。


 ツィイーは、その動きを読んで、黒いハイヒールでバリアーに足をかけて俊足でかわした。


 車のボンネットに乗るような感じだ。


 ツィイーは、すぐさま龍王を見上げる。


 着地すると、鉄尺を逆手に持って、あっという間に階段を駆け上がる。


「覚悟しろ、ワンミンメイ!!」


 叫ぶと同時に鉄尺を両腕で突き出すが、鉄尺は龍王へとは届かなかった。


 鉄尺で殴ったのは、中華鍋だったのだ。


 ユーは、黒い女性を見下しつつ凍えるような冷笑をさせた。


「あら、おねーさんがいること、忘れていた?」


「五爪龍会の(チェン) (ユー)!! 貴様も邪魔をするのか!!」


「覚えてくれていたのね、元黒龍会会長さん? おねーさんはね、普段は五爪龍会の副会長兼料理人なのよ」


 ユーは、長いまつ毛を下ろしつつ、大激怒しているツィイーに顔を寄せる。


「そして、真の姿は五爪龍王の中でも三つの刀。料理人である三刀さんとうと呼ばれている者の一人よ? 必ず龍王様を守るたの戦闘要員ね。

チャン・ツィイーさん、あなたの動向が怪しいと思った辺りから、ずっと監視させてもらっていたわ。

おねーさん、全部分かっちゃったわあ?」


「不愉快だ!! 私がまるで操られた人形のようではないか!!」


 ツィイーは、両手の鉄尺を鉄鍋からはずし、今度は三又の部分でユーの頭を串刺しにしようとしたが、できなかった。


 ユーの左右両方に、三又の先が差し迫っているのだが、それ以上は動くことはなかった。


 ユーは届かない鉄尺の先端をよそに、後ろへ首を向けた。


「龍王様、あなたのお手を煩わすわけにはいけないのですが……」


 ユーは、耳栓を外すと、動けないツィイーを哀れんだ目で見た。


「あなたね、龍王様の声を聴いてしまったのね。その声は、あなただけをいつの間にか催眠術をかけていた。人には、聞こえる周波数と聞こえない周波数があるは、知ってる?

龍王様は、同時にそれを声で発することが出来る。

声をパーティカルロイド粒子に乗っけて、あなたはそれを間近で受けたのよ」


「ぐ、私は!!」


「この間は、失敗してしまって拡散してしまいました。誰かが設備に入ってしまったらしくて、国内が結構滅茶苦茶になってしまいました」


 銀龍は、銀色のバリアをオフにし、すぐさま振り返る。


 彼女の黒く長い髪が、黒い砂みたいに弧を描き、広がる。


「うぇええ!! ミンメイ、まさか!!」


「ごめんなさい、銀龍ターチェ。最近シャオイェン警報が出たことは覚えていますか? 

あの警報が出ていた時、あれは新設備の為の住民避難システムが同時に発生してしまったのです。

更に言うなれば、同時に他のシステムが混同してしまったのです。

ある程度、その効果は薄くしていましたが、多少の被害は出てしまったみたいですね」


「全員が、妙な夢遊病みたいな催眠にかかった!! ここでそれ言うかよぉ!! 空気、よみやがれよぉ」


 9名の黒服が、拳銃を龍王へ向けて、同時に発砲した。


 銀龍は、フェイロンのバックパックに乗っている、粒子ユニットを全開にし、銀色のバリアを放って全ての弾丸を弾いた。


「テメェら、まだ諦めねぇのかぁ? あくまで今のところは手加減してるんだぜぇ。これ以上やると、マジでぶっ潰しまうぞぉ!」


 銀色の球体が、五人ほどの男どもを一瞬のうちに吹っ飛ばした。


 それでも、残りの黒服達は龍王へ発砲する。だが、ユーが両手に持った包丁で数十発の弾丸を切り刻んだ。


「さすが、仕立屋の作ったエロジジイの包丁だけあるわね!!」


 ユーは、容赦なく黒服の男に中華包丁を縦に回転させて投げつける。


「ぐぅべば!!」と、黒服の顔があっという間に赤く裂けた。


 一人の男がよそ見をしていた瞬間、ユーは跳躍し、既に着地していた。


 黒服が、左へと銃口を向けた瞬間、両腕がそぎ落とされる。


「うぎゃあああああ!!」と、男は叫ぶ。


 青く短い髪を揺らしつつ、ユーは更に後ろ側の黒服の左隣へと到着。


 パーティカルロイド粒子がフル回転している中華包丁は、その男の首をはねるには十分だった。


 頭の無い体躯は、力の抜けた人形みたいに両膝をついて前のめりに倒れた。


 だが、それでも周辺の黒服達は発砲をやめなかった。


 素早く移動するユーに向けて銃口を固定するも、ユーはツィイー並みの速度で移動する。


 一発、二発、三発と撃っても当たらないのだ。


 ユーは、姿勢を地面すれすれまで前のめりになって、黒服の安全圏内まで既に到達していた。


 二の腕よりも内側に入れば、銃などそんなに怖いものではない。


 彼女が、武器の弱点特性を知ってこその、動きだ。


 黒服が「ひっ!!」と、小声をもらした瞬間、ユーは相手の右手首を持った瞬間に、中華包丁で脇の下から肩にかけて刃を食い込ませた。


 腕のつけ根から煙をあげつつ、右腕と胴体が離れる。


 後ろにいた、もう一人の男が彼女に向けて発砲した。


 ユーは、離れた右腕から拳銃を奪い、左手で引き金を引く。


 相手の眉間に、黒い穴が開いた。


「これで、五人ね? あとの残党はどこにいるのかしら?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ