5-78 カォルンセングォゴキブリホイホイ大作戦!! その5
-------N.A.Y.562年8月18日 12時00分---------
ヤーイーを先頭にし、後続からリャンリャン、チャオ、チンヨウという順に老龍省の街中を全員走っていた。
老龍省は、病院などが多いので、割と無機質な建物が多い。
そんなビルの谷間を抜けると、いきなり違和感のある競技場の入り口が遠くの方から見えてきた。
リャンリャンは、四つん這いになりながらも走っていて、スマートコンタクトレンズからのGPS情報が目に映っているのだ。
小さな白い子虎は、ヤーイーの横に来ると彼女に声をかける。
「ヤーイーシェンシン、うまくゆうどうされているみたいですね!!」
「ええ、でも、油断はいけないわ!! 相手がどう動くなんて、予想は出来るけど、結果を見れるわけじゃないからね!!」
ヤーイーは、アスペルギルスの作戦に畏怖も感じていた。
それは、ヤーイー達が手をくわえる必要なく、全て仕掛け罠で、鷺沼をサッカー競技場まで運んでいたからだ。
アスペルギルスが、ここまでの手練れだとは、正直ヤーイーは思わなかった。
ヤーイーは、思ったことがふと口から洩れていたのだ。
「彼女、ガスマスクを取ったら、どういう顔をしているのかしら?」
リャンリャンは、叫ぶ。
「ヤーイーシェンシン、もうすぐで、さっかーきょうぎじょうの、いりぐちまでとうちゃくします!!」
競技場の、観客席の部分までは出来てきていたのだろう。
ヤーイーは、工事中と書いてある壁に、「アッチョォォオオオオオ!!」と、思いっきり蹴りを放つ。
壁は、彼女の蹴りで一気に砕かれ、そのまま吹っ飛ぶ。
目の前には、ほぼ完成している出入口が解放されていた。
ヤーイーたちは、自動開閉ゲートを飛び越えて、スタジアム内に入る。
眼前には、まだ芝生を敷設していないので、茶色い土がむき出しだ。
そして、目の前にはモスグリーン色をしているテントが二つあり、テントの目の前には、パーティカルロイド粒子特製の簡易牢獄がそこにはある。
見かけは、四角い鋼鉄フレームだけの産物に見えるが、鷺沼を瞬時に認証して、バリアによって囲まれる仕組みになっている。
遠くの方で、人影らしきものが動いて、他の出入り口に行こうとするが、完全に身を縮こまさせて叫んでいる鷺沼の影だった。
「ぎゃあああああ、アルネ!! 拙者はぁあああ、アルネ!! これしきのことでぇええええ、アルネェエエエエ!!」
鷺沼の行動パターンを全て把握しているらしく、あらゆる逃げ道が失われているのだ。
カォルンセングォゴキブリホイホイ作戦は、ヤーイーたちがここへ到着することで、ほぼ完成するのだ。
逃げようとする鷺沼を一切この建設中のスタジアムから、出してはいけないのだ。
ここは、いつでも逃げれる広場に見えるが、ヤーイーはとても恐怖に感じた。
「リャンリャン、チンヨウさんに、チャオくん!! みんな目標を逃がさないように散開して!!」
チンヨウは無言でうなずき、チャオはすぐに返事をし、リャンリャンもそれとほぼ同時だった。
「分かったよ、ヤーイーねーちゃん!!」
「わかりましたあ!!」
三人は同時に四方に散らばり、スタジアム内の出入り口まで待機した。
銀龍が適当に、もとい。
銀龍が、彼らの役目を分かりやすく理解するために、教訓を伝えている。
全員、その言葉を暗記しており、リームォですら言える。
だが、リームォは、おバカさんなので、こういう発言になるであろう。
「たとぉへ、このみぎゃあきゃいほにょぉにみゃみりぇにょうとも、にゅんみゅをたゃしぇいしゅりゅべきゅ」
以上である!!!
青龍部隊の教訓について。
例えこの身が蒼く絶えようとも、己の打破する力で任務を達成するべきという意味が込められている。
朱雀部隊の教訓について。
例えこの身が赤い炎にまみれて焼かれようとも、任務を達成するという意味が込められている。
白虎部隊の教訓について。
白い牙を剥いても、食らいついて任務を達成するという意味が込められている。
玄武部隊の教訓について。
例えこの身が砕かれようとも、任務を達成するという意味が込められている。