4-74 その影は、いずこに……。
-------N.A.Y.562年 8月18日 11時45分---------
金龍たちが、ヨウ大佐のツィイーの捜査手記までたどり着いたあとのこと。
レイレイ達は顔が細長いダブルジッパーの男の行方を追っていた。
チャイナガールズ警報が発令されると、普段の部隊のアクセス権限が何段階か底上げされる。
つまり、銀龍や金龍でしかアクセスできない所を、普通の隊員もアクセスできるようになるということだ。
銀龍は、パワードスーツフェイロンを装着するために、時間がかかるそうだ。
黒鉄の箱は、上空から老龍省のサッカー競技場予定の所に投下しているとのことだ。
リームォは、得意の身軽な身体を活かし、紅龍省の周辺をジャンプしたり、屋根の上を走ったりしながら、俯瞰してみていた。
だが、人間はおろか、他の生物の影もなかった。
メイヨウ探索の件に関しては、完全に独立していて、バニーマムやアスペルギルスに報告するような義務はない。
むしろ、銀龍が気を使って、そこら辺は断ったのだ。
彼女には彼女たちの仕事があるように、レイレイ達にはレイレイ達の仕事があるのだ。
リームォの瞳が薄青くなる。
まあるい右目からほろりと涙をこぼし、レイレイに報告をした。
「ちょうたいちょう……めいようたん、いにゃい……」
レイレイから即座に返答が来た。
「ありがとう、リームォちゃん!! えっとぉ、リームォちゃんは、紅龍省の辺りね!!
これで、探したのは、老龍省、碧龍省、紅龍省ね!! 私が今探しているのは、青龍省で……」
リームォの耳からもう一人の声が聞こえる。
「私は白龍省の辺りですね。現在、探しまくりましたけど、見つかりませんね。
果たして、彼らはどうやって地上に上がってきているのでしょうか? 入り口は正規ルートでしょうか?」
レイレイは、大声で声をあげた。
「あ!! ゴメン。ユーターチェに聞けばいいじゃん!!」
「ですが、どうやって聞きます? 彼女は作戦に出ない代わりに、裏九龍城国の人々の非難を手伝ってもらったので、イヤホンすらないはずです」
「じゃあ、チンヨウさんに聞くしかないか……」
レイレイは、ビルの狭間を見上げると、ジャンプをして右へ左へとビルを蹴っていく。
そして、5階建てのビルの屋上に飛び移った。
後ろには超巨大タワーのセントラルが見える。
そして、青龍省が一望できる景色を真下に見ながら、チンヨウとコンタクトを取った。
表側の九龍城国なので、風が後ろから強く吹くと、レイレイの右耳の七星剣の形をしたピアスが揺れる。
「すみません、チンヨウさん……」
「レイレイ小隊長か?」
「はい、今戦闘中でしょうか?」
「いや、毒ガスコマンダー鷺沼を追い出して、我々も老龍省の正規ルートの出入り口を目指している」
「ちょっと聞きたいんですけど、裏九龍城国の人々って、正規ルートを通る人はほぼいないですよね?」
「……なるほど、そういうことか。各龍会ごとに、実は裏ルートが存在している」
「やっぱり!!」
「我々の所は会の秘密ゆえ詳しく話せないが、その龍会毎の縄張りで、裏ルートがあるのは間違いない」
「黒龍会は、どこでしょうか?」
「黒龍省の地下が黒龍会の縄張りだったはずだ。そこら辺を探してみてはいかがだろうか?」
「分かりました、ありがとうございます!」
レイレイは、五階建てのビルから飛び降りる。
鋼鉄ハイヒールが、レンガ造りの床を砕き、粉々になる。
痛み止めは飲んだものの、肋骨に響くが一刻も早くメイヨウを助けなければいけない。
気持ちがはやるのだ。
「シャオイェン、リームォちゃん、黒龍省の裏九龍城国への入り口に集まって!!」
「了解!!」という声と、「りょぅきゃい!!」という声が同時に聞こえる。
レイレイ達が本気を出すと、スピードスターの朱雀部隊はすさまじい。
横へ一直線の動きは、他の傭兵部隊もできるが、おうとつの激しい立地の所では、チャイナガールズの朱雀部隊は群を抜いて速い。
五分程度で全員が集まった。
黒龍省は、公園などの公共施設が少なく、住民の人達のコミュニケーションが特に濃い地域だ。
不思議と情報過多になりつつある世界なのに、黒龍省の人々は口コミを一番重要視する。
それと、防犯カメラの使用率もなぜか高いのだ。
情報を大事にするという根付いた文化があるらしく、口コミの信用度も高いのも特徴だ。
シャオイェンは黒龍省の裏九龍城国への入り口近辺にある、監視カメラを見上げていた。
「レイレイ小隊長? アレをみてください。 監視カメラです」
ドームタイプのカメラで、遠隔で情報を絶えず送信しているタイプだ。
レイレイはそれを見上げると、シャオイェンに指示を出す。
「シャオイェン、映像を探せる?」
「緊急事態により、私達のアクセス権限のレベルが上がっているので、大丈夫だと思います」
シャオイェンの瞳が薄青くなる。
遠隔でアクセスし、権限を容易く抜けて、映像を受け取る。
シャオイェンは、早回しで各映像を見ていた。
メイヨウがさらわれた時間を考えると、この24時間以内であるのは間違いない。
リームォは、ぴょんぴょん跳躍しつつ、ビルや民家の高い所から探している。
「どきょにも、いにゃい……」
シャオイェンの目の前にはウィンドウが開き、24時間分の監視カメラの映像がダウンロードされる。
まずは現在から24時間前の所から見てみる。
近所の子供たちが階段で遊んでいたり、そこら辺に住んでいる若い女性が通り過ぎたりしている。
めぼしい人物はいなかった。
本日の24時ごろに映像を進めてみる。
人通りは少なく、たまに野良猫が通ったり、深夜になぜか犬を散歩している人の姿もあるが、
何か人影らしきものが見えた。
シャオイェンは、AIを通してメイヨウと同じ身長かどうか、計算をさせた。
AIが処理を終えると、結果が出た。
大きさからにして、メイヨウとほぼ同じと断定できたのだ。
「レイレイ小隊長、これ、あのサングラスの男です!!」
「わかったわ、小隊全部に共有して?」
映像解析結果を全員に脳波で指令を送る。
レイレイの瞳も薄青くなった。
「これは、間違いないわね。どこに向かってるの?」
「坂を上るような方面に向かってますよね」
レイレイとシャオイェンは、その方向へと視線を送ると、そこには巨大なセントラルタワーが見える。
「ねぇ、ひょっとして……龍王様の命を狙っているんでしょ?」
「可能性は、大いにありますね」
「メイヨウちゃんが、本当に元王族だったとしたら? という私の仮説だけれど……」
「はい、レイレイ小隊長」
「そのまま、龍王様をあやめて、メイヨウちゃんを即位につかすんじゃないの?」
「ヤバいですね、その可能性大いにありますよ」
「私達もセントラルへ行った方が良いかもね……」
リームォが、二人の傍まで駆け寄る。
「せんとらりゅ……しゅごくおっきい……」
圧倒的迫力でそびえ立つ、セントラルを三人は見上げた。
そして、レイレイが銀龍に報告をする。
「ターレン、聞こえますか?」
「ああ、聞こえるぜぇ? こっちは調整するのに、もう少しかかりそうだ」
「あと、どれくらいでしょうか?」
「20分ほどでフェイロンを着終わる」
「恐らくですが、メイヨウちゃんとツィイーは、セントラルへ向かっているかもしれません。
防犯カメラを見たところ、メイヨウをさらっていったサングラスの男の姿が確認できました。メイヨウちゃんも一緒と思われます」
「分かった、テメェらは先に中央省へ向かってくれ。オレは一度装着したら、多分10分ほどであっという間につくぜ!!」
<キャラクター設定>
林 璃茉(璃茉) リン リームォ
年齢12才
女性
身長142センチ
髪は青色 髪型は、ツインテール
肌の色 黄色
瞳 黒
人種 中国(福建省)
利き腕 右手
クンフースタイル 六合蟷螂拳
得意技 あたちのじゃんけんぽん
得意武器 胡蝶刀(中国のナイフみたいなもの、両手装備)
一人称 あたち
誕生日 NAY550年4月30日
チャイナガールズ入隊時 NAY560年4月1日(10歳ごろ入隊)
部隊 朱雀小隊
BWH 体重 60/48/63 45キログラム
青龍部隊であるマーメイの、実の妹。
姉が超パワータイプなのだが、妹は完全スピードスタイル。
得に、気功ユニットは最大限出力にすると、マックススピードは小隊長をも凌駕するが、最大で30分しか動けない。
性格は、飽きっぽく、すぐにやめてしまうときもある。
修行が大嫌いで、よくサボったりする。
面倒くさがり屋が、年齢と精神年齢にズレが生じてしまっている。
精神年齢は6歳ほど年下になっているので、
「お姉ちゃん」を「おねーたま」と呼んだり、
「○○する」を「○○すりゅ」と言ったりする。
姉とは、仲が良いのだが、
本拠地(九龍城国)に帰ると、必ずどっかに隠れて、修行をサボっている。
趣味は、日本や海外の特撮を見ること。
戦隊ものが特に大好き。
なぜか、日本の傭兵部隊セーラーガールズに憧れている。
口癖は、やだー、面倒くさいー。
が、口癖。