4-72 ヨウ大佐の足跡
-------N.A.Y.562年 8月18日 11時00分---------
ヤーイーが、毒ガスコマンダー鷺沼と戦っているころ、金龍たちはヨウ大佐の跡を追っていた。
金龍は、金色のチャイナドレスに、腰ベルトにポーチを合計9つほどぶら下げている。
針という武器で戦うタイプなので、中国キセルに、それぞれの対応する針がポーチの中に入っているのだ。
彼女達は、表側の銅龍省の周辺をまわりつつヨウの足取りを調査していた。
表側の九龍城国は、現在静まり返っていて、いつも商店街からも流れる月琴の音すら鳴っていない。
リーシーは、首を左右に振るう。
薄茶色い髪を三つ編みに縛っている髪が、左右に動く。
頬に手をあてて、関羽大刀を持ちつつ彼女は首を傾げた。
「おかしいですね~~。ヨウさんの~~足取りがここら辺で~途絶えていますね~~」
ファリンもサングラスをさせたまま、ゴミ箱の中、ビルの隙間、更には住宅街の辺りなど。
だが、どこにも人影はおろか、野良猫や野良犬すらいない。
あまりにもここは、誰もいなく、午前中で晴れ間だというのにも関わらず、不気味に静まり返っている。
「ボク……怖いよ……」
シェンリュも、色々と探していたが、左横にあるコンクリート製の建物が気になった。
その建物は、うっすらと扉が開いていて、シェンリュは扉の中に入った。
この建物は、簡易宿泊所みたいで、シェンリュは薄気味の悪いものを見た。
「嘘……どういうことなの……」
シェンリュは、即座に捜索している全員に連絡、この簡易宿泊所に集まってもらった。
ポーカーフェイスの金龍も、口を開けてしまったくらいだった。
壁には、黒龍会会長ことツィイーの写真が何十枚も貼ってあった。
そして、更にはその関係者、更にはメイヨウの写真もあった。
シェンリュは、その写真をはがし視線を落とした。
「ちょっと……これ……何でメイヨウちゃんの写真があるの?」
「しかも、ツィイーに相当追跡していたみたいだわねぇ……」
ファリンは、写真が貼ってある壁を横目に、隣のベッドの上にある、一枚の紙を広げた。
「き、金龍シェンシン……」と、それを広げて金龍にも広げた。
「これは、表の九龍城国と裏九龍城国の地図ね? 詳細が凄いわ……」
シェンリュもそれを覗くと、眉をしかめた。
「ファリンちゃん、表側の九龍城国を見せて?」
ファリンは、その地図をシェンリュの前で掲げた。
彼女は小柄なので、彼女の上半身が隠れるぐらいに、その地図は大きい。
「これ……何度もここへきている証拠ね?」
「なぜ、分かったの?」
「老龍省のここ、超分かりやすくない?」
シェンリュが、老龍省の辺りに指を差すと、金龍も気づいた。
そこには、地図上に「NAY561年2月着工日」と書いてあるのだ。
「これ……着工日まで書いてある……。着工日は一年半前ぐらいの事だから、結構前からこっちへ来ていたみたいね?」
リーシーは、それを見ながら、金龍に話しかける。
「でも~メイヨウちゃん、ツィイーに~、更にはヨウ大佐~。これが全部つながっているということですよね~~金龍さん~~」と、いつも通りの笑顔に見える真顔で、ふと、ベッドの隙間から覗くノートみたいなものをゆっくりと抜く。
「これは~~」と、題名も何も書いていないノートだった。
「金龍さん~~これ、どうなさいます~~?」
「そのノート、結構古いわね……」と、金龍は、ノートの端々が痛んでいるのをよく見ていた。
「いいわ、開いてみましょう……」
そこには、びっしりと、ここで何をやっているのか書いてあるノートだった。
つまり、ツィイーを捜索している活動記録だった。
「あら~~性格の通り、マメな方ですね~」
シェンリュは、眉をしかめた。
「うっわ、凄い。誰のどの人に聞いたかまで書いてある。アタイ、性格雑だからムリ」
ファリンは、地図を適当にたたむと、そのノートを皆で一緒に見つめる。
「これ……全部黒龍会会長を追っているノートだね……」
全員はその内容を見つめると、全員黙り込んだ。
「こ、これは……メイヨウちゃんと裏九龍城国の関係性、更にはツィイーまでそうだったなんて……」
「ここまで、よく調べあげたものね。普通に歴史文献に等しいわ」
金龍は、龍の形をしている金色の中国キセルをくわえる。
「さてと、行くわよ、皆?」
シェンリュは、首を傾げる。
「え? どこに?」
「ツィイーがいるところに、ヨウ大佐ありよ?」
リーシーが、感づいたようで、頬に指先をあてる。
「ああ~~そういうことですか~~セントラルタワーに、行くのですよね~~?」
金龍は、眉宇に決意を秘めながらも、赤い唇をあげた。
「ええ、そういうことよ?」
<キャラクター設定>
張 悠
年齢25才
男性
身長178センチ
髪は黒 七三分け メガネをかけている
肌の色 黄色
瞳 黒
出身 中国(香港)
利き腕 右手
クンフースタイル
得意技
得意武器
一人称 私は……
誕生日 NAY532年3月8日
BWH 体重 92/69/96 75キログラム
国防部の男。メガネをかけていて、「ですます」口調。
そこら辺の幹部とは異なり、部下の面倒見がよくて、国防のためだったら身を犠牲にしても良いと思っている。
しかし、中国国防部との軋轢もあり、そこの狭間で葛藤している。
実は、以前の作戦の時、毒ガスコマンダー鷺沼に散々引っ掻き回されたことがある。
それを追うたびに、生き別れた姉の顔がちらつき、その姉が黒龍会のチャン・ツィイーだと気づく。
何事も、フラットにならないと気が済まないくらい、几帳面な性格。