4-63 赤いウサギたちの来訪 その2
オレたちは、ざっと身体を流し終えた。
脱衣場の籠に入れておいた、ボロボロになっている銀色のチャイナドレスを見つめていた。
長い髪は濡れていて、オレの目の前にいくつものしずくが落ちる。
金龍はその様子に気づいたらしく、声をかけてくれた。
「どうしたの? 銀龍?」
オレは、右隣で髪を捲し上げている金龍を見上げ見つめる。
「いつもだったらよ……このボロボロになっているチャイナドレスも毎回メイヨウが取り替えているはずなのによぉ……今回は違うんだぜぇ?」
「そうね……いつもだったら、必ず変えてくれるのにね……。倉庫にあるハンガーから取り出さなくちゃね?」
「そうだな、金龍。絶対にメイヨウを助けるぞ……」
「ええ、そうよ。彼女もメンバーの一人だから……」
オレと金龍は、汚れ一つないチャイナドレスにさっさと着替えた。
オレの背中が開いているチャイナドレスは、Ⅰ型と言われているやつだ。
パーティカルロイドの保持力が低くて、チャイナガールズ初期の時からずっと使用していたチャイナドレスだ。
そして、背中が隠れているのはⅡ型だ。
今回の事件で初めてⅡ型を着た。
やはり、Ⅱ型は全然違うぜ!!
性能はパーティカルロイド粒子がフルの状態で、1.5枚バリアがはることができるし、ユグドシアル大陸でいつも着ているやつだから、なおのことだぜぇ。
オレは待合室の扉前まで行き、ノックせずにそのまま待合室に入った。
狭いところなのに、シェンリュがバニーマムに言葉のごとく絡まれていた。
バニーマムは、シェンリュになぜかコブラツイストをかけていたのだ。
「うおお!! テメェ、うちの隊員に何しやがる!!」
シェンリュは、複雑怪奇に絡まった状態でオレに視線を向ける。
「ちょ、ターレン、違うの! 対関節技をマムさんから教えてもらっていたの!!」
オレは左手に持っていたキセルを口にくわえる。
「あん? どういうこってぇ?」
「ああら、シルバードラゴン? お、ひ、さ、し、ぶ、り!!」
オレは、突っ込みを入れるのもめんどくさくなって、高身長のバニーガールの格好をしている、ブロンド長髪の女性を見上げた。
右目に眼帯をさせていながらも、笑っていやがるぜぇ……。
オレは、半ば呆れ気味に首を振った。
「コブラツイストしながら、バニーガールのかっこうしてよぉ、お久しぶりなんてぇ言う傭兵部隊隊長ってどうなんだよぉ?」
扉を閉めてきた、金龍も笑っている。
「ふふ、今回はシェンリュちゃんがMVP、お笑い役ね? 気功で毒ガス防ぎたいだの、防御力をあげるために対関節技……。
コブラツイストって、それ……プロレスラーの技よ?」
オレは、眉根を寄せていた顔で目を細めさせた。
「てかよぉ、小銃や火器、戦車などを素手で相手するオレたちによぉ、その……なんでぇ? 対関節技ってよぉ、意味あんのかよぉ?
へっ……絵柄的には超おもしれぇけどなぁ?」
シェンリュは、顔を赤らめながら、オレを見つめている。
「ちょ、それ言わないでよ!!」
「ま、なんせぇ? とりあえず、席外せや。これから作戦会議の始まりだぜぇ?」
マムは、関節を緩めて、シェンリュを開放した。
「またね~~シェンリュちゃん~」と、バニーマムは手を軽く振りながら、シェンリュを見送っていった。
テーブルの傍に、一人だけぽつんと小柄な女の子が座っている。
もちろん、その恰好は間違いなく赤いバニーガールだ。
だが、オリーブドラブ色のコートで上半身を覆っていて、顔を全部覆うガスマスクをしているのだ。
小顔な割には結構大きめのピアスをしていて、左耳には「CO2」とデザインされたピアスに右耳には
「G」と形そのままのピアスをしている。
あからさまに、キャラ濃そうなやつだぜぇ……。
そう思いながら、オレは黒い革張りの椅子に座る。
クソバニーも、唇の端をあげながら笑いつつ、ガスマスクをしている女の子の右横に座った。
眼帯が反射して、幾何学模様に浮き上がる。
噂では、彼女の眼帯は旧世代タイプのスマートコンタクレンズが広まる前のゴーグルタイプの眼帯らしい。
オレは、脚を組んでふんぞりがえりつつ、キセルをくわえなおした。
「んでよぉ、何の用でぇ? クソバニー……」
「苦戦しているみたいねぇ、シルバードラゴンさん……」
オレは、認めざるを得ないので、自然と顎に力が入る。
「っせーよ、クソバニー!!」
小柄なガスマスクをしている、勘違いバニー女子の姿がどうしても目に入っちまう。
ミリタリーコートのスキマから、水着みたいな赤いエロイ服がのぞいている。
オレは、そいつをチラ見しちまうので、思わず一言もれちまったぜ。
「テメェら、セクハラも良いところだぜぇ。ったくよぉ……」
「あらあら、シルバードラゴンさん? あんた達だって似たようなもんじゃないのよぉ」
オレは、口をへの字口にした。
「ヘッ!! んでよぉ、遊びに来たわけじゃねーだろぉ? バニーマムさんよぉ?」
クソバニーが、前のめりに顔を傾けさせ、高性能眼帯をちらつかせ、笑う。
ったく、いつも通り何企んでいるか分からねぇ……。
「毒ガスコマンダー鷺沼。服部半蔵鷺沼に苦戦してるんだってぇ?」
「ったくよぉ、本当にメンドイことになったぜぇ? すでに、うちのホンホンがやられた。
必ず生け捕りにしてやる!!」
「あの三つ編みを輪っかにさせている女の子ね? あらまぁ、かわいそうに……」
「んでぇ? それを聞きに来て、病院の果物でもあげに来たわけじゃねーんだろぉ?」
オレをみつつ、バニーマムの唇が裂けるようにオレには見えたぜぇ?
右目を覆っている眼帯が、赤く光っていやがる。
貸し付けられた恨みを、5億倍にして返してやるという笑顔だぜぇ。
「そうよ? うちらとしても借りがあるのよお。あの毒ガスコマンダー鷺沼にね!!」
「やれやれ……やっぱ、そういう話になるかねぇ」
「以前の、戦線の時にねぇ、うちらもお世話になったし、今回で四度目ぐらいじゃない?」
オレは、キセルに火をつけた。
ふわりと、煙がそこら中に漂う。
スマートコンタクトレンズで、排気ファンを動かすように頭の中で「指令」を出した。
自動的に、排気ファンが回り、煙を追い出していく。
「奴にあらゆる手段で報復してやるわ!!」
「ああ、そこらへんは同意見だ。報復してやる……」
金龍は、隣でずっと笑顔で笑い続けながらも、口を開いた。
「あら、珍しい……利害が一致したわね? 協力してくれるのかしら、バニーマムさん?」
バニーマムは、あらわになっているサファイアブルーの左側の瞳がオレをずっと狙っている。
「ええ、もちろんよ。私たちに屈辱を与えたのならば、その屈辱は2億倍にして返してあげるわ!!」
「でもよぉ、どうするよぉ? 裏九龍城国との相性は大抜群だぜぇ?」
「そうね、そんなことは知ってるわぁ。けどねぇ、一つだけ弱点があるのは事実よ!!」
「ほー、そいつぁ、いいぜぇ……。とりあえず耳を傾けてみるぜぇ……」
「ガスにはガスを……アイツのプライドをぎったぎったにさせてあげるわ!!!」
<キャラクター設定①>
バニーマム(本名 カビーラ=シルヴァ)
年齢27才?
女性
身長180センチ
髪 ブロンド長髪。
肌の色 白人
瞳 右目 赤 左目 青(オッドアイ)
人種 アメリカ人
口癖 この美女に文句ある?
利き腕 左手
コードネーム バニーマム、マム
BWH: 90 53 80
体重 77キログラム
チームのボス。
左目は青い瞳。
右目は黒い眼帯をしていて、ウェーブのかかった金髪の美女であり、ボスとしての迫力もある。
右目の眼帯を外すと、一応目は見えているが、ほとんど視力はない。
なので、高性能眼帯で視力をカバーしている。
六角形の高性能眼帯は、旧世代と言われているが、マムはとても愛用している。
眼帯を外すと、右目は赤い瞳をしている。
眼帯だけの生活をしているため、戦闘時以外は、実生活の時には左手利きになってしまった。
眼帯をはずせば、実は、超絶的アメリカン美女。
右目の眼帯にはパーティカルロイド技術を利用し、眼帯が視力補強と、情報収集。
衛星情報を見ることが可能になっている。
アメリカ政府とは繋がってはいないが、ある程度の技術をパーティカルロイドコアを交換条件に、取引をしている。
年齢は不詳だが、見てくれは二十代後半ぐらい。
元アメリカ傭兵女集団レッドバニー所属。
当時は副リーダーを務めていた。
長身の体格に似合わず、身軽な跳躍力と素手で戦車を転がせるほどの、怪力が特徴。
チャイナガールズのマーメイ以上の怪力の持ち主。
戦争相手からは、彼女がやってくるだけで、弾丸の命中率が悪くなる。
ウサギのようにぴょんぴょん跳ね回る様、気づいたときには、死んでいると言われるほど、
十字聖教騎士団から畏怖の念を込め「レッドバニー」と呼ばれていた。
非常に面倒見がよく、命をかけていることからか、いつでもみんなが帰ってこれるような場所を作ろうと、
レッドバニーガールズを結成したいきさつがある。
その為、彼女たちに頼む依頼人たちから金額の交渉も任されており、非常に強欲とも言われるが、
傭兵は非常にウェットワークでありながらも、値段に合わないと言われており、
全くひかない態度を取ることが多い。
実は中絶経験があり、だからこそ、部隊内を守りたいという思いが強く、隊員一人一人を我が子のように思っていて、そこら辺は粗暴な銀龍とは一緒。
細身な方ではあるが、重いものを持つことを得意としており、バズーカを片手で二丁持つことも出来るし、
さらには装甲車を一人で持ってしまうことも可能。
ちなみに、細いハマキとウィスキーのロックが大好き。
使用武器は、レールガン、対物ライフル、ミサイルなど。とにかく、ごつくて重いもの!!
<キャラクター設定②>
アスペルギルス=フミガータス
年齢17才
女性
身長140センチ
髪 白銀でクセっ毛のあるボブヘアー
肌の色 色白
瞳 グレー
人種 アメリカ人
口癖 です、ます口調。
所属 後方支援
利き腕 左手
コードネーム バニー7(セブン)
BWH: ヒミツ
体重 ヒミツ
茶色いクセっ気のあるボブヘアーに、茶色い瞳。
アメリカ出身。
イヤリングは、CO2の元素記号が元になったデザインのイヤリングを左耳にしていて、gravityの、「G」を右耳にしている。
主に細菌兵器をメインに扱う、危ない女の子。
名前は、細菌の名前から取っている。
本名は、伝説の傭兵と一緒の名前らしい。
常にガスマスクを所持、もしくは着用しており、所持しているガスマスクは同じものを10個ほど所持している。
ガスマスクをはずすと、かなりの美少女なのだが、職場も女性ばかりなので、想像以上に無頓着。
私服にガスマスク、よもや生活の一部。
彼女が言うには、「よく、みんな色々なものつけてるじゃないですか。眼鏡とかイヤリングとかです。私の場合はガスマスクなのです」
と言うくらいに生活全てに溶け込んでいる。
才女なので、基本的には誰にたいしてもタメ口はつかわない。
です、ます口調で話す。
仕事はかなり優秀で、いざって言うときにはかなり頼りになる存在である。
元は、アメリカの製薬会社の元研究員で、天才少女と言われていた。
実は、毒ガスコマンダー鷺沼(服部半蔵鷺沼)とは因縁の仲であり、部署こそ違えど結構やりあっていた。
その為、半蔵の毒ガスを瞬時に解析し、すぐさま必要なものを揃えて対応することも可能。
それと、服部半蔵鷺沼の弱点も知っている、貴重な人物。
細菌にやられたとしても、何事も合理的に考えていて、パズルのように対抗策で対応すればいいとおもっている。
二酸化炭素と重力を神様だと思っており、その支配思想は何者にも追随を許さないくらい、崇拝している。
父親と別れてしまった事があり、ずっと父親を捜し続けながら戦っている。