4-53 チャイナガールズ混成部隊VSドラゴンテロリスト!! その2
「だってよお、チャンツィイーさんよお?」
レイレイは、真っ暗な中から人影が一つ、二つと出てくる。
「ふふ……ついに……ついに! 宣戦布告をしてくれたわね……」
右側奥から、レディーススーツを全身に真っ黒に染めている女性が、ゆらりと現れた。
捲し上げられた髪に、スーツの腰ベルトには兵器が二つほどぶら下がっている。
あらゆる闇を背負っている。
そんな印象だ。
「私の名前は、黒龍会兼ドラゴンテロリストの、張 子怡……。
もう、黒龍会なんてどうでも良いわ!! そして、あなた達はメイヨウ様には近づけないわよ……」
左側の奥からは、ヒョロリとした男があらわれる。
丸いサングラスをしていて、ダブルジッパーの革ジャンを着用している。
「俺の名前は、田 文海……。姉さんのおつきの者だ……。俺はこの国が気に食わねえ!!!
こんな、詐欺みたいな国は最低だぜ!!」
ツィイーという女性は、眉毛を多少吊り上げて微笑んでいる。
このツィイーという女性。
レイレイは、あらゆるところで戦ってきたが、見てくれで判断すると相当な闇を重ねている人間だということは何となくわかる。
シャオイェンが、レイレイの後ろから小声でアドバイスをする。
「レイレイ小隊長、あのツィイーという人、相当ヤバいですよ……。間違いなく、彼女は別格です」
ツィイーという女性は、両手を胸の下に二の腕を添え、腕を交差させる。
「チャイナガールズ混成部隊の宣戦布告は、もらい受けたわ。そして、私たちも戦争をさせて頂こうかしら……。
我々ドラゴンテロリストは、各九龍城国内全てに毒ガスコマンダー鷺沼の毒ガスを各所に設置させてもらったし……。
それも、裏九龍城国含めてね……。一度表も裏もぶっ壊してあげるわ!!」
レイレイは、この国に住んでから色々な人々の顔が横切る。
猫猫喫茶の人々や、毎日顔を合わせている人。
たまに道端でバカ騒ぎをしている人達。
マンションの隣近所にいる、おじさんやおばさん。
――そして、チャイナガールズの面々。
何とか冷静さを保ちつつ、レイレイは口を開く。
「そんなこと、させないですよ。あなた達の真の目的は……何なのでしょうか?」
ツィイーは、青白い頬に手を添えて、紫色の唇が裂ける。
笑いをこらえるどころか、大笑いしたので赤い華がはじけた。
「ふふ、あははははははは!! 目的!! 我ら一族、念願の思いを遂げられる!! そして……」と、暗い瞳がメイヨウへと視線を向けられる。
「私はね、この人の為に生まれてきたのよ? 裏九龍城国とメイヨウ様との関係性。表側の人間たちにも、その苦渋を吐くまで味合うといいわ!!!
メイヨウ様はこのスラムにはいてはいけなかった!!」
隣りにいる、ウェンハイは階段状になっている赤い台座に座り込み、煙草を口にくわえた。
「ふー、仕事前の一服はいーねー……。前もって言っておくぜ……。毒ガスまみれになった国がどういう事になるのか? そして、俺たちも巻き込まれるのは間違えねぇ。
けどよ、毒ガス作れるなら、対応策もできる。それが、科学者。博士と言うものだぜ?」
ツィイーは闇一色にまみれた笑顔をさせた。
「ふふ、なぜ毒ガスコマンダーを招き入れたのか? 全部対応できるからよ!! 人をどのようにして神経をいじくれば、下手をすれば各部位ごとでも操作することも可能なのよ!!
人体実験には子供が最適!!
そうよ、メイヨウ様以外だったら、いくらででも犠牲を払えばいいわ!!」
レイレイは、怒りのあまり胸の中で煮えくり返りそうなものが噴き出しそうだった。
だが、後ろにいるシャオイェンが、レイレイの朱雀を背負っているチャイナドレスを引っ張る。
「レイレイ小隊長、こらえてください……。そこで爆発してしまうと、メイヨウちゃんの奪還の可能性がもっと低くなります……」
レイレイは、銀龍の采配がなぜこのようになっているのか、心底納得できた。
シャオイェンとレイレイがなぜ一緒なのか?
自分の激情的な感情を、シャオイェンが冷静に戻してくれる。
だからこそ、彼女と行動を共にしているという銀龍の考え方だった。
レイレイは、少し深呼吸しシャオイェンに小声で伝える。
「シャオイェン、行くわよ? パーティカルロイド起動、気功ユニットオン……」
口許を動かした瞬間だった。
シャオイェンが、目の前で刃を交差させて、ツィイーの攻撃をかわした。
二人同時に重なって吹っ飛ぶ。
が、二人同時に足元をふんばり、何とかこらえた。
豪勢な赤いじゅうたんには二本の焦げ付いた線が10メーターほど走っている。
レイレイの両足太ももでこらえたハイヒールが熱い。
熱を帯びているのだ。
そして、目の前には黒いスーツ姿の女性が顔を俯かせている。
両手には、鉄尺を持っていた。
「ふふ、やるじゃない……。私の滅殺蟷螂拳の初手をかわしたのは、褒めてあげるわ!!」
ユーは、すぐさま二人に近づいた。
「大丈夫、二人とも!!」
レイレイは、呼吸を何とか整えながら答える。
「はい……。ありがとうございます、ユー大姐……」
ユーは、ツィイーに顔を向けた。
「横で見ていたけれど、おねーさんの動きを完全に凌駕していたわ、フォローできなくてごめんなさい」
「大丈夫です」と、しゃがみ込んでいるレイレイは、後ろのユーを一瞥させてから、シャオイェンに声をかけた。
「大丈夫? シャオイェン!!」
無表情のシャオイェンも、汗ばんでいた。
「大丈夫です、小隊長。ですが、今の初手、正直あなたを守るだけで精いっぱいでした……。
鉄尺の柄で突いてきたみたいですが、パワー、スピード。
普通の人ではないですよ……。
恐らく、気の循環がルェイジーさん並ではないのかと……」
張 子怡
年齢33才ぐらい
女性
身長168センチ
髪は黒色、頭上に巻き上げている髪を乗っけて金色の櫛で止めている。
肌の色 黄色 右目下に涙ほくろ有
瞳 黒
人種 裏九龍城国(不明)
利き腕 右手
クンフースタイル 滅殺蟷螂拳
得意技 全てを欺く
得意武器 鉄尺(日本のサイみたいな兵器、先は尖っていない)
一人称 私
誕生日 NAY545年7月21日
所属部隊 黒龍会
BWH 体重 87/55/85 60キログラム
黒龍会会長。
周辺の者からは「黒龍」と呼ばれている。
黒龍は勿論偽名で、組織名として使っている。
本名を知る者はウェンハイ一人のみ。
切れ長の瞳に、黒いスーツを着こなしている。
右目の下には涙ボクロがある。
ナイフの切れ味のように、カンが鋭く、どんな状況下でも諦めが悪い。
自身の目的のためだったら、色気も使うほど何でもあり。
演技力がもっともの武器で、相手をだますことに関しては相当なプロフェッショナル。
今回の事件の真犯人。
伊達に裏九龍城国で過ごしているわけではなく、裏取引や裏で人を非常に操るのを得意としている。
鷺沼脱走計画を企てまとめあげたのも、この人物。
鉄尺は 南派蟷螂拳の一つの門派である周家蟷螂拳の有名な武器です。
日本のサイに似ていますが先は尖っていません。
昔、中国の百姓達が畑を計るのに使用した鉄尺がそのまま武器として伝承されています。
南派蟷螂拳は客家武術から発達したものでそのルーツは日本に派生した琉球空手と同じです。
田 文海
黒龍会所属。
男性。
身長158センチ。
瞳は薄茶色。
髪は、黒髪で、革のダブルジッパー(斜め)のジャンパーを羽織っている。
胸元には黒龍会のバッヂをしている。
会長に忠誠を誓う男性。
ツィイーの事を慕っており「姉さん」と呼んだりしている。
今回、レイリンを手招きした人物でもある。