1-10 演習二日目、ブリーフィング
――――――演習、二日目。
戦死者(キレイになった子達以外)は、一度銀龍の呼ばれた集合場所にあつまる。
それは、銀龍の呼び出しがあったからだ。
銀龍は、後頭部をガシガシとかきながら、面倒くさそうに眉をしかめる。
「ったく、テメェらが弱すぎるおかげで、金龍さんによぉ、基本に立ち返り教えてほしいって頼まれちまったぜぇ……」
リームォが12歳とは思えない、幼くもちっちゃな声を出す。
「きんりゅ、どこに行った?」
「あー、アイツは今頃どっかで朝飯食ってんじゃねーのぉ? それよりもだ、テメェら基礎中の基礎、
パーティカルロイド技術とクンフーの融合攻撃方法を、立ち返って考えてみてみろよぉ」
黒髪で長さは肩ギリギリぐらいの、女の子が口を開く。
着ているチャイナドレスも真っ白で、背面には白虎が踊り狂うように刺繍してある。
白虎隊隊長、ヤーイーだ。
「銀龍ターレン、我々は基本的には気功ユニットを使用して、相手に急接近。急接近したら、気功ユニットを全開にし徒手空拳で戦います!!」
銀龍は、才能で整っている美しい眉毛を指先でかいた。
「まあ、シンプルな答えかただな。あながち間違っちゃいねぇよ。けどな、基本戦術ではあるが、テメェらは道具、システムを最大限いかしちゃいねーっつーことよぉ……」
白いチャイナドレスを着ている、髪の長い女の子が口を開く。ファリンだ。
「それは、私たちのクンフーですか?」
「いんや、テメェらのクンフーは、かなりの練度だし、その執着はオレですら恐怖に感じる。生身では食らいたくねぇな。けどよぉ、あともう一つだ。物をぶっ壊すには何が必要だ?」
銀龍は、銀色に飾られたキセルを取り出し、火をつけ、がぶりと咥える。
――せめてヒントだ。
銀龍は思いを巡らし、脳内に煙が充満するような錯覚を感じる。
彼女たちに考えさせなければ、成長もないし、強くもなれない。
クンフーは、一日にしてならずだ。
銀龍は「ん?」と、緑色のチャイナドレスを着ている、モジモジしている女の子を見ている。
発言したそうだが、顔を真っ赤にしているのだ。
玄武部隊の、ファリンだ。
銀龍は、咥えているキセルを歯でくわえたまま、彼女を手で招く。
彼女の頭に乗っかている、お団子頭二つを結っている髪飾りの鈴が、シャンシャン響く。
彼女は、銀龍の耳元でヒソヒソ話をした。
彼女がヒソヒソ言うたびに、銀龍は青い空を眺めながら「うんうん、うん」とうなずく。
シャンシャンと頭を鳴らしながら、再び整列に戻る。
「なるほど、まあかなり惜しいが、良しとしてやるか。
つまりだ、気功ユニットの醍醐味は、そのスピードだ。テメェらは確かに強えぇ。
けどなぁ、もっとつえー奴らはいっぱいいる。
特にバトルドレス以上の、破壊的なパワードスーツ。
大量破壊兵器に関しては、いくらなんでも歯がたたねぇ。
そうだなぁシャオイェン、パーティカルロイドシステム。
なんだぁ、そのよぉバリアシステムは理解しているかぁ?」
左耳に、梅の花のピアスをしている、シャオイェンはキリっとした表情のまま、大真面目に答える。
「はい、銀龍隊長。バトルドレスのバリアシステムは、対爆、対炎、耐衝撃です。
つまり、銃や大量破壊兵器、その他熱線などの時に、衣服、繊維に組み込まれているパーティカルロイドシェルと、中央演算処理を施し、物体のスピードや初速などを計算し、あらかじめ事前にバリアを展開するというものです」
「そう、その通りだ。だがなぁ、ここに一つのスキマがあるんだよぉ」
にたりと、銀龍は醜悪に満ちた表情をさせる。
ここにいるメンバーは慣れているが、その恍惚とも言える表情は他部隊の者は恐怖でしかないだろう。
「対刃がなく、対棒もないし、対拳もないぜぇ?」
一番、年長者のマーメイが、唇に指をあてる。
「あらぁ、銀龍隊長さん。もしかして、私たちの最大の武器ってぇ……」
「そうだ、クンフーだ!!
そして、そのクンフーとバリアとの能力が掛け合わされれば、あらま、ビックリ、初速度時に強固なバリアをぶつけて物が吹っ飛ぶ。
まあなんだ? おはじきみたいなもんだな。初めはコツがいる。しかし、だ。
慣れたとき、そのクンフーは一発の拳が最強になる時だ! おわかりぃ?」
突如、リームォが小っちゃい拳を突き出した。
「固いもの、ぶつけりゅ……。固いものと、固いものがぶつかりあぇば……」
何人かは同時に声を出した。
「バリアも壊れる!」
銀龍は、口元からキセルを外し、キセルの先端をメンバーに向ける。
「そう、ご明察。テメェらのクンフー事態は濁っちゃいねぇよ。
けどよ、何事も更に先の方を見据えて強くなる。
それが、戦いっつーやつだろぉ? テメェらいいか? アイツ等はジョークでレイレイたちをキレイにしているが、本場だったら、レイプされてナマス切りだぜ。
そこを、忘れんじゃねぇ! 話は、以上だ!!」
残りの9名のチャイナガールズ達は、銀龍に敬礼をする。
「我ら、チャイナガールズは九龍城国のために!! 銀龍大人に敬礼!!」
銀龍は、腰まである自然で美しい長い髪を振る。
「いいか、せめて互角に戦え!! わーったな!」
彼女たちに背を向けて、綾からレンタルしたジープに乗り込んだ。