4-47 チャイナガールズ混成部隊VS牙龍会!! その1
-------N.A.Y.562年 8月17日 15時00分---------
ルェイジー達は闇市場まで何事もなく、無事に到着できた。
闇市場は半壊したものの、屋台などはすぐに復旧し、半分ぐらいは運営していた。
半分ぐらいまでは機能していたので、黒龍会に襲われた所から東側に行ったところは何とか屋台などは運営しているのだ。
ただし、粒子灯を利用したネオンなどは、ほとんどがルェイジーによって砕かれてしまったので、
いつもよりも人通りも少なくて、寂しい感じがした。
――なぜ、ルェイジーが問われないのか?
チンヨウが言うには裏九龍城国の全ての粒子は、違法なので表側の九龍城国から供給されているからだ。
九龍城国のおざなりで、いい加減な法律更にはクンフーしか信じない頑ななところもあるが、全ての移民を受け入れる姿勢。
とにかく、寛容な国だということをルェイジーに説明したのだ。
ルェイジーは、ステンレス製のテーブルに身を預けて、銀龍がしていたように、よだれを垂らしながら上半身を預けていた。
「気持ちいいアルネ~」
チャオはルェイジーの隣りで、足を組んで同じテーブルに乗っけている。
態度は最悪だが、それぐらい金龍を待っている証拠だ。
「なあ、チンヨウさん。俺、待ちくたびれちまったぜ……」
ルェイジーは眠りそうになりがら、スヤァと声を出している。
「何でさ、俺達にはスマートコンタクトレンズがないんだよ?」
向かい側には、チンヨウが座っていて鋭い視線をチャオに向けてくる。
「しょうがないだろう、コンタクトレンズするにはそれなりの上水道施設がいる。だが、ここは腐ってでもスラム。
滅菌処理を施さなければ、あっという間に失明するぞ。我々も、そのような事ができれば、もっと情報拡散ができるはずなのだが……」
「ただし、拡散が広まるとはいえ、情報の価値が凄く落ちるんじゃないのかしら?」
チンヨウが座っているテーブルから、メインストリートの方から声が聞こえたので顔を向ける。
龍が装飾された金色の中国キセルを片手にした美女が、メインストリート方面からチンヨウが座っている裏路地まで歩いてきた。
金色のチャイナドレスの裾が、所々が赤く染まっている。
「金龍か、どうやらここまでの間で戦闘があったようだな……」
チンヨウの隣りに座ると「そうよ」と、赤い唇を動かし、目の前にある白い陶器で出来た灰皿を寄せてキセルの先端をひっくり返す。
「スマートコンタクトレンズの情報は、信憑性も落ちるし、安くなるわ。情報という名の口伝も、とっても大切よ……」
「あやつはいたのか?」
「それは、銀龍側で対処したわ……。こっちも情報を渡すわ。私達にもちょうだい……」
「まあ、いいだろう。我々の神龍会で探ってみたが、中国国防部。ヨウの動きだが、君たちの意見も聞かず黒龍会の真のトップを探している」
「あら、そうなの? こっちは毒ガスコマンダーを、あと一歩のところで逃してしまったわ。
そして、恐ろしいことに毒ガス製造機をこの地下を利用してつくられていたの。
更に銀龍との視覚情報との共有をさせて貰うと、完成された大量の毒ガスが、一切なかったわ……」
金龍の言葉を聞いたチンヨウの表情が更に険しくなった。
「つまり……ドラゴンテロリストと黒龍会が手を組み、大規模テロをしようとしているか……」
「可能性は、かなり高いわ。そして、彼らの狙いが何なのか? そこに全ての答えがあるのよ……」
ルェイジーの周辺に、白い中国服のリャンリャン、緑色のチャイナドレスのリーシー、頭を動かすたびに頭をシャンシャン鳴らしているファリンがルェイジーの周辺に集まっている。
「アイヤ!! みな、何やっているアルネ!! いっぱいご飯食べるアルネ、裏九龍城国のご飯も美味しいアルネ!!」
茶色い髪を、緑色のリボンでまとめている、いかにも育ちが良さそうなお嬢様という感じの少女が、自身の背と同じぐらいの長い棒を片手にルェイジーの隣に座る。
その兵器は、一瞬見たら槍に見えるが、刃先は三日月状の刃がついている。
関公大刀と言われる兵器だ。
そのお嬢様は、笑顔に見られがちの顔を、ルェイジーへ向ける。
「あらあら、ルェイジーさん~~。ご飯は、おいしいですね~~。でも、衛生面では大丈夫なのでしょうか~~」
「えいせいめぇん? アイヤ!! ルェイジーは体壊していないアル。大丈夫、アルネ!!」
「ルェイジーさんは~身体が頑丈ですから~大丈夫なんですよ~~」
黒髪を三つ編みにし、側頭部にまとめている、白い中国服の女の子がルェイジーの右隣に座る。
愛用の六角棍も一緒にテーブルにたてかけた。
「ルェイジーシェンシン、ひさびさです!!」
「アイヤ、リャンリャン、だいじょぶアルか? 休んでてもいいアルよ?」
「だいじょうぶです!! ホンホンのことをかんがえたら、やすんでいられないです!!」
「ムリ、禁物アルネ!!」
緑色に染めた髪を、お団子頭二つにさせ、小さな三つ編みを作っている。
その女の子は、妙なサングラスをしたまま、あたふたしていて、表情から察するに周辺に戸惑っているようだ。
「ボク……人混み、苦手だよ……」
ルェイジーは彼女が後ろにいることに気づき、振り向く。
わたわたしている、ファリンを見つつ話しかける。
「ファリン、大丈夫アルネ!! 何か食べたいものがあったら、ルェイジーに相談、アルネ!! 買ってきてあげる、アルネ!!」
ファリンは、うつむき加減に、顔を赤らめる。
「うん……ルェイジーさん……ありがとう……」
チャオは、足を乗っけたまま、ルェイジーの様子を見ていた。
「ふーん、おまえ、人気あるんだな?」
そっけない態度のチャオに、リャンリャンは眉根を寄せ、噛みつくようにチャオに牙をむける。
「ルェイジーシェンシンになんてといういいかたなのでしょう!! 」
「ふん、なんだよ、チビ。チビはチビらしく黙ってろよ」
「ルェイジーシェンシン、わたしこのひと、ゆるせません!!」
「アイヤ、ケンカ良くないヨロシ!! クンフーする者、みな仲良し、アルネ!!」
リャンリャンは、怒りがおさまらないようで、ずっとチャオに指を差している。
「こ、このマントばか!!」
チャオは、椅子から立ち上がり、リャンリャンの傍へと歩き向かい合う。
リャンリャンも立ち上がり、六角棍を右手で握りしめ、構える。
彼は、灰色の瞳を見下げながら、二人はいがみ合う。
「なんだ、やるか? このチビ!!」
「ちびじゃないです、わたしには、雷 梁梁という名前があります!!」
灰色の瞳のリャンリャンと黒い瞳のチャオとの視線に火花が散る。
「じゃあ、やるかぁ!! チビリャンリャン!!」
「双方とも、おやめなさい!!」と、金龍が声を張り上げた。そして、チンヨウも続く。
「そうだ、二人とも。我々神龍会は、今後チャイナガールズに正式に強力することとなった。
つまり、自動的にチャオ、お前も我々に協力するという図式になる」
金龍は金色の中国扇子をポーチから取り出して、顔をあおぐ。
「今後、チャイナガールズは現時刻をもって、裏九龍城国と手を組むことになりました。
よって、銀龍とわたし金龍、そしてインチンヨウさんの命令は必ず聞くように!! そして、逆もしかりです!!」
「我々には、表も裏もあるが……。しかし、表があれば裏がある。日が当たれば影がある。わかるな、チャオくん?」
「わかったよ……俺もバカルェイジーと渡り合ってよくわかってきたよ。自分がいかに狭い視野だったのかさ?」
「だったら、これ以上言うことはないな……」
メインストリートの方から、白い中国服姿の背が高い男が笑い拍手させながら、金龍たちに近づいてくる。
「そうですかあ……なかなか良い演説でしたねえ……」
その男の後ろには、龍の形相をさせている、大男が首の関節を鳴らしている。
チンヨウは眉根を寄せて、彼らに威圧的な眼光を40メーター先に向ける。
「牙龍会の吕 彪と、姚 国安!!」
男は、眼鏡の奥から瞳を細め、歪んだ唇をぐにゃりと曲げて、笑う。
「ちょっとだけお久しぶりですねえ、我々はルェイジーさんにようがあるのです……」
金龍は吊り上がった瞳を更に細め、口元を中国扇子で隠す。
「あら、お初目にかかりますね、牙龍会のビャオ会長……。ルェイジーちゃんに何の用かしら?」
ビャオは、中国服のポケットからメスを取り出した。
「いえね、ルェイジーさんの気功能力について非常に興味がありまして……私にい、彼女を、お貸してくださいませんかねえ?」
「あら、そうなのね? これから大事な任務があるのよ。それと、私達チャイナガールズでも、かなりの稼ぎ頭の一人なのよね……」
「ではあ、交渉決裂ということで……」と、違法執刀医は歯を見せながら、笑いつつメスを金龍へ投げる。
銀色のメスが、金龍に襲いかかる。
瞬間、リーシーが一歩踏み込む。後ろにまとめられた三つ編みがふわりと浮いて、彼女の背中に触れる。
彼女が槍のような形をした刀を振り下ろしたのだ。
メスは、金龍の足元地面へたたきつけられた。
リーシーの瞳がうっすらと開き、緑色に光る。
笑っているように見えるが、重々しい空気に変化しているのだ。
「ダメですよ~~私達のシェンシンに何するんですか~~?」と、対極刀を回して切っ先をビャオへ向けた。
「我ら~チャイナガールズは~~金龍シェンシンのためにです~~」
ビャオは、更に白い中国服からメスを取り出した。
「ではあ、やりましょうかねえ?」
パラソルが立てられていて、周辺の中国服を着ている一般人がそれぞれ立ち上がり始めた。
全員、中国服を脱ぎ始めると、白衣姿の者達が20名ほどビャオの後ろに横に連なっている。
それぞれが、メスを持ち構えた。
ルェイジーも立ち上がり、掌を胸元に構え、腰を落とした。
「アイヤ、牙龍会と大戦、アルネ!!」
チャオも眉をしかめつつ、ビャオの方へと構えた。
「めんどうだな~。ケガしたときには世話んなったけどよお、それとこれとはべつだよな? チンヨウさん」
チンヨウは手をつまむような形をさせて、腰を落とす。
「貴様たち……神童と言われているルェイジーくんをよこすと思うか? 彼女は我々にとっても希望だ!!」
「まあ、わたしたちはあ、欲望に素直なのですよお?」
リャンリャンは六角棍の先を向ける。
「ルェイジーさんは、わたしませんよ!!」
ファリンは両手こぶしに握っている「子母鴛鴦鉞」を構える。
「ボク、ルェイジーさんは渡さないから!!」
金龍は、開いた中国扇子を閉じ、相手に向ける。
「我らチャイナガールズは、断固として彼女を死守します!! と、言いますか……ルェイジーちゃんを捕らえられるものなら、捕えてみなさい!!」
「ほう、おもしろいですねえ。それではあ、手術開始といたしますかあ?」
ビャオはメスを金龍に向け八本同時に投げる。
ファリンが即座に金龍の前に立ち、高速で全てのメスを叩き落とす。
ヤオは、得意のヤクザキックでチャオに椅子を蹴り飛ばす。
チャオは即座に飛んできた椅子を回転蹴りで、粉々にする。
「ヤオさん、たまには俺と勝負するかい?」
「ほう、俺の少林拳をあまくみるなよ!!」
「わたしも、ルェイジーさんをまもります!!」
チャオは、黒い目で隣りにいる白い中国服を着ている、小さい子をにらむ。
「うるせぇ、手伝いは無用だ!!」
「わたしは、チャイナガールズ白虎部隊の、レイリャンリャンです!!」
ビャオは、余裕の笑みで、手を翻し、手首を二回折って、挑発する。
「どっちでもいいから、かかってこいや!! ガキどもお!!」
チャオとリャンリャンが同時に駆け出す。
バックにいる牙龍会の者がチャオに向けて投げる。
リャンリャンは、得意の六角棍を振り回し、メスを弾く。
二人は同時に急接近しようとするが、牙龍会側の手下どもが白衣を揺らし、二人の前に三人ほど立ちはだかる。
両手拳に四本のメスを持ち、チャオに向けて直線的な攻撃を入れ込もうとするが、チャオはくるりと身体を回し、相手の両端を払う。
――下段回し蹴りだ。
白衣の者は転げ落ち、チャオは既に跳躍、両膝を相手の鳩尾に全体重をかける。
「ぐがあああああああ!!」と、白衣は叫び、気絶する。
リャンリャンは、相手が右へ左へとメスで突き刺そうとするが、全てかわす。
「やあああああああああ!!」と、相手が前のめりによろけた瞬間、六角棍を相手の後頭部に叩き込む。
白衣は、地面に顔面を打ち付け、その衝撃が強力すぎて、目玉が飛び出る。
白衣三人目が、チャオに向けてメスを投げる。リャンリャンが既に叩き落し、チャオは強力な方拳を握る。
そして、一歩だけはずむと、拳が相手の顔面に食い込んだ。
「第二拳没有射击!!(二の打ち要らずの方拳)」
限界まで握られた拳が、白衣の鼻に食い込む。
力が完全に突き抜け、ヤオに白衣は吹っ飛ぶが、ヤオは異常に発達した右腕を払い、手下をどかした。
「お前ら!!」と、ヤオが叫ぶと、ぞろぞろと白衣が追加されていく。
「うおお、コイツらどんけいんだよお?」
リャンリャンは、六角棍を器用に振り回し、白衣の攻撃を全て防ぎながら、的確に足元をすくいつつ、六角棍を頭に当てている。
「へぇ、やるじゃねーかよ、チャイナガールズのヤツたちもよ……」
<キャラクター設定>
朝……18歳、男性。
拳龍会所属。
身長160センチ。
黒髪、黒い瞳、髪ミドルまでボッサボサ。
浅黒い肌。
口元には黒いバンダナを巻いて、
ボロボロの黒いマントを羽織っている。
地下組織裏九龍城国の中でも、最強の暗殺形意拳使い。
彼の放つ方拳は、チャイナガールズでさえ、手に負えないぐらい、威力が強い。
二のうちいらずの拳も持っていて、ポンケンを放つだけで、人は吹っ飛びます。
実は、地下組織にいるにも関わらず、非常に犬好きである。
ありとあらゆる闇を見てきたので、瞳は薄暗く、殺人となってもいとも容易く出来る。
拳銃などを持っていたとしても、素早く突撃し、引き金を引く前に事を処理しようとするので、どんな輩でもひく。
今回は、ルェイジーと共に神龍会と組むことになる。