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チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
123/178

4-43 レイレイの怒り その3

 

 ――ユーたちの戦闘よりも30分前。


 レイレイは、金色の剣を片手に、扉に入った。


 すると、そこは客室のようだった。


 丸い椅子左右二つに、真ん中には大理石のテーブルが一つだけあった。


 そして、そのままレイレイは金色に装飾された扉の真横の壁に近づいて、そのまま七星剣を突き立てた。


 隣りの部屋から叫び声が聞こえた。


「ぎゃあああああああ!!!」


 レイレイの握っている七星剣が、震えている。


 彼女の心は真っ赤に燃えていた。


 そのまま横一直線に七星剣を扉ごとぶった切る。


 壁の奥から、もう一人の、男性らしき叫び声が響いた。


 これで、扉の左右にたっている男二人は、始末した。


 部屋の静寂が、ゆっくりと過ぎて行く。


 レイレイは、真っ二つになった扉に目掛けて赤いハイヒールをそのまま突き出した。


 威力が突き抜け、扉半分が、机の前に落ちた。


 後ろを向いたまま、かっぷくの良い男性が右手に持っている杖を突き、重い腰をあげる。


 そして、レイレイの方に身体を翻した。


「ほう、チャイナガールズの朱雀部隊の隊長さんじゃねーか……年端もいかねぇが、その気力。なかなか面白れぇ……」


「赤いコートの女はどこにいるの!?」


「赤い?……ははは!! そういうことかぁ……。俺が言えるのはな、赤いコートの女は雇っていねぇ……」


「どういうことなの?」


「ま、俺もそうやすやすと死ぬわけにはいかないんでなあ……」


 レイレイは、幾多の戦場を駆け巡ってきたので、分かる。


 相手の強さという程度はどうあれ、雰囲気、喋り方で何となくわかっているつもりだ。


 シィウェンという男は中ぐらいの強さだと思っていたが、相手にそのまま切りかかってもいい。


 だが、スピードスターであるのにもかかわらず、レイレイにはできなかった。


 他の黒服や、服部半蔵とは異なる空気をかもち出している。


 今までに味わったことない、気味の悪い感じだった。


 彼女の頭の中での、様々な経験が浮かび上がってくる。


 ユグドシアル大陸で味わった、オカマ達の強さ?


 大陸でガチで対決した、ビッグバンコステロ達?


 それとも、時には対峙するライバルチームであるレッドバニーガールズのビッグマム?


 どれもこれもとは違う、異なる空気を出しているのだ。


「俺はなあ、ありとあらゆる方法で、色々な物を手に入れてきた。だが、唯一手に入らなかったものがある……」


 相手の空気に飲み込まれそうになるので、レイレイはなんとか笑いながら言い返す。


「その、手に入らなかったものって、何かしら?」


 シィウェンは、片足を引きずりながら、龍の装飾が施された木製のデスクの前に立った。


 傭兵である少女と、マフィアのボスがお互いに向き合う。


「それはなあ、国だよお、国ぃ……」


「国って……」と、レイレイは腰を落とし、七星剣の柄を両手で掴む。


 刃を右頬横に持ってきて、構えた。


 レイレイの大きな瞳が、金色こんじきの七星剣にうつる。


「俺はなぁ、国が欲しいんだよ。国が。国があればどんなことでもできる。軌道に乗っけるまでは大変だが、力さえあれば、国はとりあえずまとめられるんだよ……。

おっと、力と言っても、相手を脅威にさせるとかじゃねぇ。

頭を使う力、国を動かす力、方針を定める力。全てにおいて、力が必要なんだよ……」


 シィ ウェンは、金色に装飾されている、杖を腰の辺りまで持ってきた。


「俺はなぁ、国を作って、表と裏を一切合切、全部逆転させてーのよ……。そのためには、龍王の傍にいるチャイナガールズ……。お前らが邪魔だ!!!」


 レイレイが高速で近づこうとした瞬間、レイレイの鼻先に刃をかすめる。


 ――一瞬だった。


 レイレイは、何とか身を引き事ができたが、レイレイの白い鼻筋に赤い線が刻まれた。


 その切り口は、パーティカルロイド粒子を高速回転させている、仕込み刀だった。


 やけどをしたみたいに、熱い。


 皮一枚、ずれていたら、間違いなくやられていた。


 シィウェンは、また、杖を刀のように構えた。


「黒龍会、居合のシィウェンとは俺の事だ……」


 レイレイのスピードも相当なはずだが、相手のスピードも驚異的だった。


 汗をぬぐいながら、レイレイは七星剣を構えなおす。


「アンタ……まさかの日本人でしょ?」


 ――居合道。


 レイレイは、知っていた。


 世界中には様々な剣技があって、海外の剣技もかなり勉強している。


 居合、日本の中でも古来からある剣技だ。


 本当は、日本独特の「正座」という姿勢から刀で対抗するための技術だが、居合道と言われるものは立ち合い時に一瞬で相手を切ることだ。


 非常に速く、一発即死の剣技。


 それが、居合だ。


 シィウェンは、中腰のまま、サングラスの奥から死線をのぞかせる。


 レイレイは、眉毛を吊り上げて笑顔になり、深呼吸をさせた。


「私、強い人と刃を交えれば交えるほど……強くなれるの!!」


「ほう、そんじょそこらのザコとはちげぇ……さすがだな、チャイナガールズ朱雀部隊小隊長、レイレイレイ……」


「フルネームで呼ばれるなんて、光栄ね!! 気功ユニット全開!!」


 シィウェンの杖に手が伸びる。


 杖の柄が外れ、隙間から白銀の刃が光る。


 レイレイのスマートコンタクトレンズに情報が乗る。


 右から払いがくる。


 剣と刀がかち合った。


「ほう、やるじゃねぇか。俺の居合抜刀術についてこられとはぁ……」


 二人は、右へ左へと刀と剣がお互いに交差する。


 相手の居合術は相当なものだ。


 レイレイの気功ユニットとパーティカルロイドの全開でも、追いついている。


 ただの、中年の男ではない。


 金と白銀の色がぶつかり合い、両者とも一歩も譲らない。


 お互いの剣と刀の残像が激しくなり、レイレイは金色の軌道を縦に振る。


 シィウェンは右手の刀で、その軌道を防いだ。


「ふ、やるなぁ……朱雀部隊隊長よお……。気まぐれで教えてやるよ……俺は以前、日本人だった……。

だがなぁ、その国は非合法の傭兵たちを帰国できないようにした……」


「ジャパニーズ? 日本? 海を越えたお隣の国よね?」


 シィウェンは、片手でレイレイを横に薙ぐ。


 レイレイは白銀の軌道を、金色の剣を縦に構えて防いだ。


 粒子で熱されている刃同士が、ぶつかり合いお互いの刀と剣の粒子熱を感じる。


 中年の男は低い声で、口を開いた。


「ああそうだ、アジアの中でも最も先進国だった国だ。だが、今はすでに中国や九龍城国に追い抜かれちまったがな……」


「あなた達には、帰る国がないの!?」


 レイレイは、刀を力で抑えるよりも、身体全身を翻し、相手の力を利用し逃した。


 横へ力を入れすぎていたのか、シィウェンは、左へと体勢を崩す。


 レイレイは一気に七星剣を縦に振った。


 決着は、つくはずだった。


 だが、シィウェンは刀を水平に掲え上げ、レイレイの攻撃を防いだ。


「そうだ、今更祖国に帰ったところで、未練などはない。今の日本は日本ではないからな……。

朱雀部隊隊長さんよぉ、他の所にその力を預けたりはしねぇのか? おめぇさんだったら、独立しても平気でやってけるぜ……」


 剣と刀との押し合いが始まる。


 お互いに一歩も引かず、赤いチャイナドレスのスリットから、細い太ももが膨らむ。


 一気におされて、レイレイの剣が弾かれた。


 赤い影を残し、すぐさま後方へ力を逃す。


 シィウェンと3メーターほど、間を取った。


 シィウェンは、刀の構え方を変える。


 中腰になり、右手で逆手に持った仕込み刀の刃先をレイレイに向けた。


「まちがいねぇな、お嬢ちゃん。おめぇさんは大物になるぜ……。この元日本赤軍であった、サムライソルジャーが口を開くんだからよぉ……」


 レイレイは、七星剣を右手だけで持ち直した。


「サムライソルジャー……? 聞いたことない傭兵チームね?」


 男のサングラスには、可憐で美しい左右お団子頭をしている、少女の顔立ちが浮かぶ。


 彼の口元は、黒く歪み、笑顔だった。


「ああ、ユグドシアル大陸でも非合法の傭兵チームだ。だが、戦績はそんじょそこらの団体、チームとは異なるぜ……」


「非合法チーム……」


 レイレイも聞いたことがある言葉だった。


 ただ、どういう訳か、チャイナガールズは非合法チームとは渡り合ったことがなかった。


 逆手に持っている男の手がゆらりと動いた。


 男は、とても左足が悪いようには見えず、右足を一歩踏み込み、独特な間合いの詰め方をさせた。


 レイレイのスマートコンタクトレンズの情報よりも、視覚に頼った方が良さそうだ。


 ――速い!!!


 手が見えた瞬間、身体を左にそらし、かわす。


 粒子の熱が、レイレイの白い右頬をかすめ、伝わる。


 ――次は、左側だ。


 レイレイは相手がつくたびに、驚異的な動体視力でかわす。


 彼女の黒い瞳に、刀の刃先がうつりこんだ。


 相手の突きに合わせて、金色の七星剣と白銀の刀が絡み、レイレイは剣を二回転させ、絡ませる。


 そして、天井へと剣を跳ね上げる。


 白銀の刀は、天井へ突きささった。


 彼女は相手の左側へ回り込み、足と太い首元に手をかけて、シィウェンを前方へと転がした。


 かっぷくの良い男は、壊された扉を下敷きにし、仰向けに倒れた。


 レイレイは、金色の剣先をその男の鼻先に向ける。


「あなた、パワードスーツで左足を補助していたわね、あなたの負けよ!!!」


「……いいぜ、俺の負けだ。男は負けを認めて、初めて生きた心地がする……。

しかし、おめぇさん、かなりの腕だな……。銀龍にはもったいないぜ……」


「全ては銀龍のためよ!!」


「へっ……」と男は寝そべったまま、サングラスをかけなおした。


 レイレイは、扉の枠に視線を向けた。


 客室から一つの影が、覗いていた事に気づいたのだ。


 拳銃だけをシィウェンに向けていて、気づいた時には火薬の破裂音が響く。


 シィウェンの眉間に銃創が突き抜け、頭から鮮血を流して赤いため池をつくる。


 二度と動かなくなっていた。


「ふー、ようやくボスを殺せたぜ……。これで、邪魔者はチャイナガールズだけになったな……」


 客室から、その影がニタリとさせた顔で、出てきた。


「よお、久々じゃねーか。貧乳!!!」


 金髪オールバックに白い中国服。


 身に覚えのある、低俗な笑い声。


「あなたは、チー 一铭イーミン!!」


「へっへっへ!! これで、俺達ドラゴンテロリストも、最高にハイになるっていうやつだぜ!!」


「アンタのボスじゃないの!?」


「おいおい、レイレイたんよお。ボスっていうのはなあ、最も信頼できて、頭良くて、男でも女でも色気がねーと勤まらねーんだぜ?」


 レイレイは、切っ先をイーミンへと切り替える。


「あんたたち……ドラゴンテロリストって、何者!?」


「さあ? レイレイたんよぉ、俺がそんな簡単にはいはいそうですか? って、言うかとおもうのかいよ?」


「あなた……殺してあげるわ?」


「おっと、俺を殺すと、メイヨウ様の場所が分からなくなるぜぇ?」


 レイレイは、下唇をかみしめる。


 金髪の男は、手出しできず悔しさがあふれている表情のレイレイの顔を下から覗く。


「おいおいよお、今までの威勢のいい声はどうしましたかあ? おれはなあ、もっと崇高なんだぜ? ひゃはははははは!!」


 その瞬間、イーミンの左横の壁がバツ字切りにされ、爆発音が響くと同時に、壁が壊れた。


 イーミンとシィウェンの遺体が同時には吹っ飛び、双方とも壁に衝突した。


 シャオイェンが赤い中国服を揺らし、腰をついているイーミンに梅花双刀の刃先を向ける。


「あなた、よくもまあ、また出てこれましたね?」


「シャオイェン!! そのゲス野郎を殺すんじゃない!!」


 シャオイェンはレイレイに顔を向ける。


「なぜですか?」


「そいつを殺せば、そいつを殺せば……メイヨウちゃんの居場所が分からなくなっちゃう!!」


「ですが、拷問でもかければ……」


「割と、そいつ……想像以上にバカじゃないわ……」


「ふーん、そうなんですね?」


 シャオイェンは、しぶしぶ刀を両方の鞘に納めた。


「そうそう、ちょっとからかっちゃっただけでよお、レイレイたん、怒りすぎなんだよお。

シィウェンを始末するのもそうだったんだけどよお?」と、金髪ゲス野郎は、腰を上げる。


 白いズボンを払うと、真っ白な歯を見せながら、笑っていた。


 陰惨な笑顔だった。


「てめぇらに、とあることを伝えに来たぜ……」


 レイレイは、瞳を細めて相手をずっと睨んでいる。


 今にも斬りかかりたいが、彼女はこらえていて、握っている七星剣が更に震えている。


 シャオイェンは、彼女の表情を見て、ユグドシアル大陸の時の彼女の顔を思い出した。


 その顔は、燃え盛る炎を背景に、真っ赤に光る瞳で破壊されている戦車を見下ろしていた時の事を思い起こしていた。


「あなた……嘘じゃないわよね?」


「ああ、俺は忠誠を誓った人には、正直にしっかりと伝達するぜ、レイレイたんよお。老龍省の地下通路、最も最深部の場所に来い……。そこに、メイヨウ様はいる」


「老龍省の地下? メイヨウちゃん無事なの!?」


「ああ、メイヨウ様は無事だ……」と、伝え終えると、イーミンは客室を超えて、どこかへ消えた。


 シャオイェンは、レイレイの表情を見た。


 その表情は、悔しさとメイヨウの無事であるという気持ちと、全部が一緒になっているという感じの表情をさせていた。


「レイレイ隊長、どうします? 私個人的には、反対です。確実に罠です。相手の真意が見えません」


「私は、それでも行くわ!!」


「まったく、しょうがない方ですね……。私も一緒に行くしかないじゃないですか……」


「メイヨウちゃんは、私にとっては妹みたいなものよ……。チャイナガールズの事務所に行くたびに、彼女の笑顔にどれだけ救われたのか分からないわ……」


「全く、マーメイさんの次にあなたはお節介な方です。そして、あなたの姿勢にどれだけの人達が影響されてきたことやら……。

どこまでもつきわなければいけない、私の身にもなって下さい」


 シャオイェンの後ろから、探検隊の恰好をしている背の高い女性が入ってくる。


「さてと、おねーさんもお節介だから、引き続きついていくわよ!!」


「ユーターチェ……。わたくし、シャオイェンからもお願いします……。私もまた一人の傭兵です。そして、やはりチャイナガールズは、誰一人としてかけてはいけないのです!! お願いします……」


「分かったわ、可愛い可愛い、女の子たちの為にねおねーさんは一肌、いや、二肌脱いじゃうぞ!!」と、二の腕をまくるポーズをさせた。


 レイレイのスマートコンタクトレンズからとある支持が出た。


 パーティカルロイド粒子がそろそろ切れかけているという、合図だった。


「ゴメン、シャオイェン……」


「どうしましたか?」


「パーティカルロイドが切れかけているわ……」


「我々は、必要最小限の荷物しか持っていませんでしたよね……」


 ユーは、元気よく笑った。


「あら、ちょうどいいじゃない!! 行くところは老龍省の真下よね?」


 レイレイとシャオイェンは顔を合わせて、二人は同時に頷いた。


「おねーさんもたまにしか行かないんだけど、そこには裏九龍城国でも超有名な


 パーティカルロイド技術の技師がいるらしいわよ? そこで補充してもらったら?


 時間は欲しいところだけど、しっかりと装備を蓄えないと、メイヨウちゃんは救えないわよ?」


「さあ、レイレイ小隊長、メイヨウさんを助けに行きましょう!!」


 レイレイは、下唇を噛んだまま無言でうなずいたのだった。




黒龍会副会長


シィ ウェン


身長170センチ

黒い髪をオールバックにし、サングラスをしている。

笑うと、全部の歯、金歯が見える。

杖を右手に持っていて、左足は引きずっている。

杖は、お約束の仕込み刀入りで、パーティカルロイド粒子を高速回転させているので、

何でも切れる。

夏場だろうが、秋だろうが長いコートを着ていて、

パーティカルロイドシェルが組み込まれている。

体格はかっぷくのよい男性で、年齢は45歳。

何事も牛耳るためには狡猾な思想を持っていて、

奪うことに関しては何も感じていない。

元日本赤軍であり、実は日本人。


本名は「斎藤問汰」さいとうといた。


影山流の流派を持っていて、影山流は現在でも存在しており、居合と杖が伝承されている。

ちなみにだが、日本赤軍である「サムライソルジャー」の中にも影山流の同期がいて、実は一緒に戦ったことがいる者がいる。



黒龍会は現存では非常に利益が乏しいため、麻薬アヘンなどを扱っている。

人身売買は特に手際が良く、いつでも子供を売る準備はできている。


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