4-38 レッドバニーガールズVS毒ガスコマンダー鷺沼 その2
-------N.A.Y.561年 7月3日 21時30分---------
暗がりの中、バニーガールズたちは暗視機能付きのガスマスクをしている。
地下道は下水道ではなく、清潔な街を保つために、多少綺麗な中水道が存在している。
下水道ほどはひどくはないところを通っているのだ。
保守の為に、ある程度は大きく作られているが、バニーマムに関しては、たえず中腰で移動するしかない。
他の隊員とは異なり、マムは六角形の眼帯をしている為、フルフェイスのガスマスクはしていない。
口許だけ覆うガスマスクをしている。
パーティカルロイドを使用しているとはいえ、相手はあの服部半蔵。
全員にも特製ワクチンを配布しているが、油断できない。
毒ガスを使われたときは、一刻も早くワクチンを使用するしかないのだ。
パーティカルロイドの粒子が全身を駆け巡ってはいるものの、1型を使用しているため、パーティカルロイドシェルがいつ切れてもおかしくない。
かれこれ、1時間以上引っ掻き回して、ようやく逃げ道の無い一通路へと追いつめたのだから。
内耳の通信網から声が聞こえる。
「バニー2(ツー)定位置に到着しました!」
「バニー3(スリー)も到着したにょん!」
「バニー4(フォー)……到着……」
作戦中なので、お互いにコードネームで呼び合っている。
2は真ん中、3は左側、4は右側だ。
その奥には服部半蔵鷺沼が暗闇の中へと潜んでいる。
「さあ、来なさい、服部半蔵!!」と、バニーマムは声を潜めてつぶやいた。
そして、コールタールのように真っ暗な空間から、声が聞こえた。
「うひひひひひ!! レッドバニーガールズ、やるじゃぁあああああないかぁあああああ!!」
相手もガスマスクをしているが、よもや、化け物のような大声で叫んでいた。
バニー4の声がした。
「バニー4、奥から人が沢山出てきました!! ハッキングされた中国国防部の兵士だと思われます!!」
マムは、指示を出す。
「手段は選ばない、無力化しろ!!」
「アイコピーマム!!」
バニー4は、ガスマスクの奥から真っ赤な瞳を光らせて、マチェーテを腰の鞘から抜く。
五回ほど暗闇の中でマチェーテを振った。
中国国防部の者達をあっという間にわき腹から豪快に切断する。
バニー4からの通信だ。
「マム、二人逃がしました!!」
マムが最も後方だ。
即座に命令する。
「バニー5(ファイブ)とバニー6(シックス)、着剣用意!!」
バニー5と6の声が同時に聞こえた。
「あーい、アイコピマム!!」
「アイコピー!!」
小銃にバヨネットを取付け、あっという間に服を刻んだ。
バニー6(シックス)から声が聞こえる。
「マム、すいません!! 残り1名です!!」
マムの右目の高性能眼帯が真っ赤に光る。
モードを切り替えて、予測モードに変更させた。
奥側から、ゾンビのように両腕を失っている状態で、マムに襲い掛かる。
バニーマムは肩ひもをぶら下げている小銃で対応するよりも、立ち向かってくる兵士の喉元を左側の片手で掴む。
「ああら、私に力で勝てるのかしら?」と、つぶやくと、あっという間に兵士の首がへしちぎれる。
左手のグローブは赤い血に染まってるのだ。
「私はバトルドレス抜きで、常時200キロ程度しかないわ。現在バトルドレスを着ているから、400キロよ!!」
倒れたゾンビの背中へと赤いハイヒールのかかとが突き刺さる。
首がないのに、水中を泳ぐようにあがいている。
マムは冷ややかな瞳でそのOD色の物体を見下げた。
「ふーん、それでも動くのね。やはり、パーティカルロイドシェルを断絶するしかないのかしら?」
マムは、そのまま背中へ手をのばし、ハイヒールで抑えたまま、襟元をつかんで一気に引きさいだ。
マムの力だったら、容易い。
ようやく肌色が見えると、その物体は止まった。
「やはり、これが一番みたいね……」
バニー4から通信だ。
「マム!! 服部半蔵が毒ガスを使いました!!」
「各自、フミガータスのワクチンを使用して!!」
11名全員から応答の返事が同時にする。
これで、全員分の安否がわかった。
「各自、近接戦闘の準備をして!! さあさ、ウサギちゃんたち!! 脱兎のごとく突撃よ!!」
「アイコピー!! バニーマム!!」
全員が一斉に一通路の行き止まりまで駆け抜けていく。
バニーマムたちは、一気に相手を追いつめた。
服部半蔵は黒い装束を見に包み、ガスマスク越しでも笑い声が聞こえる。
どんなに窮地に追いつめても、ヤツは笑っているのだ。
「うひひひひぃ!! レッドバニーガールズ……。面白いなぁ。本当に面白いなぁあああああ!!」
身を四つん這いになるほど低くさせ、そのまま一気に駆け抜けようとした。
あっという間に、バニーマムの所まで駆け寄る。
そのスピードは、他の隊員のトリガーを引くよりも早く、バニーマムの眼前まで迫った。
バニーマムは中腰のまま、相手のクナイを見切り、右頬すれすれでかわす。
一瞬のうちに、マムの眼帯を止めているゴムひもが切れる。
マムの赤い右目があらわになると同時に、クナイを持っている手首をつかんだ。
「覚悟しなさい? 毒ガスコマンダー鷺沼!!」と、マムは奥歯に力を入れ、相手の手首を砕いた。
「うひひひゃぁあああああああ!!!」と、鷺沼はそれでも抵抗する。
マムの腹に目掛けて、サイバー足袋で彼女の腹を蹴った。
マムは多少よろけ、相手と距離が離れる。
「バニー11(イレブン)!! 相手の後頭部へ目掛けてナイフですくいあげて!!」
「アイコピーマム!!」
バヨネットの先めがけて、服部半蔵の頭巾のみを器用にすくいあげる。
さすがの服部半蔵も後ろにカメラアイなどは装備していないため、その攻撃を免れることは出来なかった。
服部半蔵の顔があらわになると同時に、バニーマムは携行用ライトを相手の顔面に向ける。
「うぎゃあああああ!! めがばがぁぁああああああ!!」
相手にスキができた瞬間、そのままマムは相手の両足を払う。
服部半蔵は仰向けに倒れつつも、あがこうとするので、バニーマムはしゃがみ込み、喉元をつかみ徐々に力を入れていく。
「ぐ、ぐぎゃがあぁああ、せっしゃはぁあああぁあああ!!」
相手の顔が急激に青くなり、頸動脈のがグローブ越しでも伝わる。
「なあに? どうしたの? このバニーマムに返事すらできないの?」
特殊なガスマスクをした女の子が、オープンチャンネルのまま話しかける。
「マム、それ以上やってしまうと!!」
「殺しはしないわ? 半殺しにしてあげようかしら? 前回の時のユグドシアル大陸の件もあるしね、どう? 苦しい?」
「マム、お願いです!! 私に代わってください!!」
「せっしゃはぁあああぁあああ!!!!」
口許から泡があふれている。マムの握力も相当なものだが、相手のゴキブリ並みの生命力に、他のバニーガールズたちも閉口していた。
ガスマスクをしている女の子は、左肩にぶら下げている携行用ポーチから、酸素マスク用の小さなスプレー缶を出した。
「これでも食らいなさない!!!」
彼女は思いっきり、相手にそれをかぶせ、スプレー缶を押す。
無理やり相手に吸わせる。
「ギャー!! これはぁああああああ!!」と、叫んだ瞬間、服部半蔵は仰向けに気絶した。
ガスマスクをしている女の子は、立ち上がる。
よく見ると、右耳には「G」と形どられているピアスと、右耳には「CO2」と形どられているピアスをしている。
「バニー7(セブン)ありがとう止めてくれて。危うく報酬を失うところだったわ……」
「いえ、こちらこそ、マムが足止めてくれなかったら、これで気絶させることもできませんでした」
バニーマムは、赤い右目を光らせて笑う。
「いい、私達に逆らうと痛い目に見るわよ……」
マムは高性能眼帯を拾い上げる。
他の隊員たちは、気絶している服部半蔵に拘束具を着させた。
バトルドレス対応の拘束具なので、自力で脱出するには不可能だ。
「でも、バニー7……いいえ、アスペルギルスちゃん。本当に聞いたわね、このガス……」
ミリタリーコートを着ている、ガスマスク姿の少女は、マムと通信を介して話している。
「人には人の弱点があるものです。ようやく、何とか捉えましたね……。さっさとコイツを国防部へと渡してしまいましょう」
「そうね、作戦は終了!! さっさと地上へ戻るわよ!!」
総勢11名のウサギたちは、ガスマスク越しからのぞく赤い瞳を光らせて、マムへ振り向き返事をした。
「アイコピー……マム!!」
バニーマム
年齢27才?
女性
身長180センチ
髪 ブロンド長髪。
肌の色 白人
瞳 右目 赤 左目 青
人種 アメリカ人
口癖 この美女に文句ある?
利き腕 左手
コードネーム バニーマム、マム
BWH: 90 53 80
体重 77キログラム
チームのボス。
左目は青い瞳。
右目は黒い眼帯をしていて、ウェーブのかかった金髪の美女であり、ボスとしての迫力もある。
右目の眼帯を外すと、一応目は見えているが、ほとんど視力はない。
なので、高性能眼帯で視力をカバーしている。
六角形の高性能眼帯は、旧世代と言われているが、マムはとても愛用している。
眼帯を外すと、右目は赤い瞳をしている。
眼帯だけの生活をしているため、戦闘時以外は、実生活の時には左手利きになってしまった。
眼帯をはずせば、実は、超絶的アメリカン美女。
右目の眼帯にはパーティカルロイド技術を利用し、眼帯が視力補強と、情報収集。
衛星情報を見ることが可能になっている。
アメリカ政府とは既に繋がってはいないが、ある程度の技術をパーティカルロイドコアを交換条件に、取引をしている。
年齢は不詳だが、見てくれは二十代後半ぐらい。
元アメリカ傭兵女集団レッドバニー所属。
当時は副リーダーを務めていた。
長身の体格に似合わず、身軽な跳躍力と素手で戦車を転がせるほどの、怪力が特徴。
チャイナガールズのマーメイ以上の怪力の持ち主。
戦争相手からは、彼女がやってくるだけで、弾丸の命中率が悪くなる。
ウサギのようにぴょんぴょん跳ね回る様、気づいたときには、死んでいると言われるほど、
十字聖教騎士団から畏怖の念を込め「レッドバニー」と呼ばれていた。
非常に面倒見がよく、命をかけていることからか、いつでもみんなが帰ってこれるような場所を作ろうと、
レッドバニーガールズを結成したいきさつがある。
その為、彼女たちに頼む依頼人たちから金額の交渉も任されており、非常に強欲とも言われるが、
傭兵は非常にウェットワークでありながらも、値段に合わないと言われており、
全くひかない態度を取ることが多い。
実は中絶経験があり、
だからこそ、部隊内を守りたいという思いが強く、隊員一人一人を我が子のように思っていて、粗暴な銀龍とは一緒。
細身な方ではあるが、重いものを持つことを得意としており、バズーカを片手で二丁持つことも出来るし、
さらには装甲車を一人で持ってしまうことも可能。
ちなみに、細いハマキとウィスキーのロックが大好き。
使用武器は、レールガン、対物ライフル、ミサイルなど。とにかく、ごつくて重いもの!!