4-36 部隊編成組み換え。
-------N.A.Y.562年 8月17日 10時00分---------
オレ達は、何とか裏九龍城国を脱出できた。
階段を登ると、光の矢のようにオレの瞳を貫く。
目の奥が痛ぇ……。
九龍城国は、晴れ晴れとした朝とは裏腹に、オレは違和感を感じていた。
なぜならば、こうもやすやすと出れたからだ。
オレは回線を金龍に繋ぐ。
「よお、どうでぇ? 金龍、無事けぇ?」
「そうね、サングラスを持ってきて正解だったわ。目の奥が少し痛いのよね」
「じゃま、とりあえず、事務所にでも戻るか?」
「事務所に戻って、今後の部隊編成、ヨウさんとも情報をすり合わせないといけないしね……」
「わかった、また後でだな」
オレは、リームォとヤーイーに話しかける。
「リームォ、ヤーイー。とりあえず、チャイナガールズの事務所で待機だ。会議終了後、指示を出す」
ヤーイーは、リームォの上に肩車をされている。
「わきゃったー、ぎんりゅ、リームォ、しじをぉまちゅ!!」
「分かったわ、銀龍ターレン!!」
オレは、腰ベルトに引っ提げているポーチから、キセルを取り出した。
マッチに火をつけて、くわえた。
「さ、朝の喫煙は超気持ちいーぜ……テメェら、事務所へ行くぞ」
巨大にそびえたつ、タワーへとオレ達三人は向かった。
-------N.A.Y.562年 8月18日 11時00分---------
オレ達が到着した時には、ヨウが既に事務所内にいた。
それと、待機していたチャイナガールズは、武術広場や休憩所で待機させた。
金龍は人数の把握をさせている。
オレは事務所内にいる、メガネをかけなおしている男と顔を合わせた。
「よう、久々だぜぇ、ヨウさんよぉ……」
ヨウは、眼鏡をかけなおし、オレを見下ろした。
「パワードスーツで出動させるのは失敗でしたね。私の判断ミスでした」
「こちらこそ、申し訳ねぇ。中国国防部とはいえ、守り切れなかった。それとよぉ、テメェさん。
アイツの攻撃方法知っていたんじゃねぇのか?」
「何のことでしょうか?」
「おいおい、勘弁してくれよぉ……。おめーさんのことをよぉ、ちょっと調べさせてもらったぜ?
幾度かやりあっているだろぉ? 特に、何とかヤツを捕まえた、上海服部半蔵捕獲作戦。
あの作戦に全部成功の秘訣が隠されてるんじゃねーの?」
金龍のデスクの横に立っている男の表情が一瞬だけ曇った。
こいつぁ、何かまだ隠し持っている。
オレは、左隣にある、黒いソファに腰を落とし、龍の装飾が施されている、銀色のキセルをくわえ、テーブルの上にあった粒子ライターでキセルをつけた。
「ヨウさん、テメェさんが何を考えているのか分からねぇが、テメェさんが他の事実を隠し持っているのはオレは分かっている。
そして、テメェさんの情報が、更に今後の作戦の成否、つまりでぇ、この国の未来にもつながっているはずだ」
ヨウは、少し黙り込んでから、決心した顔でオレを見つめた。
「銀龍さん、すみません。会議室でお話ししませんか?」
「わーったよ……」
オレ達は、会議室に入り、お互いに椅子に腰を落とした。
ヨウが静かに、切り出してくれたぜぇ。
「上海服部半蔵捕獲作戦なのですが、あれは、レッドバニーガールズの手を借りて、ギリギリで成立した作戦でした」
「ほお? あのクソバニーどもか!!」
オレは、キセルの灰を、灰皿に落とした。
ポーチの中にキセルをしまう。
「そうです、約一年前の事です。プランは三通りありました。上海の街一つをまず閉鎖。
毒ガスコマンダー鷺沼を捉えようとしたところです」
「ああ、裏九龍城国で泊まっているときに調べさせてもらったぜ。
軍のネットワークを介して報告書を見させてもらった」
「そのプランのうち、一つは失敗。中国国防部で捉えるということができませんでした」
「そうだったな。そして、第二のプランが……」
「保険であったレッドバニーガールズの投入作戦です」
「だが、クソバニー側も結構苦戦したみたいだなぁ?」
「そうです。3~4時間の短期集中戦略で、一気にヤツを捉えることができました」
「ま、それよりもよぉ、どうやってヤツを捕まえられたぁ? そこだぜぇ。報告書にも書いていなかった」
「これは、我々だけが情報を開示していますが……」
「ったくよぉ、これだからよぉお隣さんはよぉ。つまり、あれだろ? ほぼ国の長しか知らねぇ情報だろぉ? ったく、その隠蔽体質変わってねーなー中華人民共和国さんよぉ……」
「その、レッドバニーガールズの中でも唯一対抗できる、女性がいます」
「誰でぇ、そいつはぁ?」
「細菌兵器を作成でき、かつ戦地でも神経系ガスで倒れた人も救うことができると言われている、アスペルギルス=フミガータスという方です」
オレは、少し眉に力を入れた。
「えっとぉ、確か……」
何度かクソバニーとはやりあっているが、よく思い出せなかった。
どいつもこいつも個性的すぎて、色がちりばめられすぎていて、印象が薄くなってしまっている。
頭を抱えているオレの左横の扉から、ノックの音が聞こえた。
「いいぜ、入れ……」
扉を開けたら、金龍が入ってくる。
風呂に入っていたらしく、髪をタオルで巻いたままだ。
金色のチャイナドレスがまぶしいぜ。
「んだよ、金龍?」
「その子、ガスマスクをしているウサギちゃんじゃなかった?」
「ああ、思い出した!! そうそう!!」
「元研究所で働いていた、天才科学者じゃなかったっけ?」
「その通りです。これを秘匿で重要にしているのは……」
「すぐに、ガスのワクチンが開発されるからでしょ?」
「はい。中国国防部では、軍事力の低下が危ぶまれています。そのためには、ワクチンを売りさばいて、パワーバランスを取りたいというのが我々の考えです」
「なるほどね、そういうこと……」
「まあ、おめーさんたちの国が何しようが構わねぇ。
けどよぉ? うちの国にそんなことをしてみろぉ? さすがにぶっ倒すぜ?」
「私もそのような事はしたくはありませんが、国の意思というならば、従うしかありません」
「ま、テメェさんの人生でぇ、オレには口を挟むことは出来ねぇ。けどよぉ、いつか必ずしっぺ返しが来るぜ?」
「しっぺ返しですか、それもまたしょうがないです」
「お、そうだ、金龍。次の裏九龍城国への捜索だが、中国国防部は連れて行かねぇ」
「な、なぜですか!!」
オレは、椅子から腰をあげる。
「テメェさんを信用していないとかそういうことじゃねぇ。元からのプランだし、リスクが高すぎる。
うちらは第一部隊と第二部隊とで、オレと金龍含め、合計四人編成ずつで裏九龍城国を捜索する」
「そうですか、気をつけてください。ドラゴンマフィアとテロリストが同時に、しかも活発に動いています。あなた達も既に両足を入れてしまっている。確実にマークされたのは間違いありません」
「まあ、それもそのはずだぜ、なんたって裏九龍城国を半壊しちまっているからな……」
「しかも、教会まで壊しちゃって……。神すら恐れ知らずのルェイジーちゃんね?」
「ま、宗教がどうのこうのは後の話だ。まずはよぉ、この編成で行くぜ?」
オレは脳内で金龍に情報を運ぶよう、思う。
金龍側のウィンドウが開き、コネクトさせる。
「金龍、次はこの編成で行く。頼むぜぇ? これだったら、お互いにパワーバランスも均等。
かつ、毒ガスコマンダーにも対抗できる」
「分かったわ、銀龍。意見はなしよ、これで行きましょう!!」
「おうよ!! 第一と第二部隊、出動だぜ!!」
今回、挿絵は、由毘七緒 ツイッター「@NANAO_YUBI」さんから頂きました!!
ありがとうございます!!
キャラクター設定
張 悠
年齢25才
男性
身長178センチ
髪は黒 七三分け メガネをかけている
肌の色 黄色
瞳 黒
出身 中国(香港)
利き腕 右手
一人称 私は……
誕生日 NAY532年3月8日
BWH 体重 92/69/96 75キログラム
国防部の男。メガネをかけていて、「ですます」口調。
そこら辺の幹部とは異なり、部下の面倒見がよくて、国防のためだったら身を犠牲にしても良いと思っている。
しかし、中国政府との軋轢もあり、そこの狭間で葛藤している。
何事も、フラットにならないと気が済まないくらい、几帳面な性格。
ヨウは、見た目通りの几帳面な性格だ。
そして、中国国防部も一枚岩でもないようだ。