4-34 襲来、黒龍会!! その3
「あ、あなた……。あなた達は何者なんですか? 拳銃の扱い方に慣れていて、会長は相当な実力の持ち主だし、門番である苏 蔚さんは超怪力だし、あなた達は何者なのですか?」
ユーは、レイレイに向けて人差し指を出し、ウィンクをさせる。
「それはね、おねーさんたちはしがないドラゴンマフィアよ!! えへ!!」
「えへ!! じゃないですよ、これだけの人数を相手にするなんて、しかもバリアに頼らず、乗り切るなんて只者じゃないですよ……」
「いい、レイレイちゃん。おねーさんたちは、五つの爪を持つ龍の会なの。つまり、ただもんじゃなくて当たり前なのよ!」
レイレイは、眉根を寄せて腕を組んだ。
確かに、最も権威が高いのは銀龍や金龍のタトゥーは、四本の爪なのだが、五つの爪の龍のタトゥーをしているのは「龍王」一人のみなのだ。
五つの爪を持つ龍。
それは、もっとも最高権威を持つ意味だと昔から言われている。
中国でも言われていることだが、この九龍城国内でもそれは変わらない。
「しっかし、今回はさすがに被害が甚大だわ……」
ユーは何とか身体を起こし、立ち上がる。
黒い下着姿のまま、テーブルからのぞくと、黒服たちが粉まみれになったまま、全員動かなくなっている。
右側にある鏡は全て粉々に砕け、そこら中に散乱している。
シャオイェンは、ハッと気づいた。
「そうだ、銀龍ターレンに報告しないと!!」
レイレイの瞳が薄青くなる。
「ターレン? ターレンのところは大丈夫?」
銀龍は寝ていたようで、こちらとは温度差が違いすぎる応答をする。
「んあ? ああ、レイレイか……。俺たちは大丈夫だ。どうしてぇ?」
「黒龍会に襲撃されました」
「マジか!!」
「ええ、あいつら、国を転覆させようとしているかもしれません」
「しかしよぉ、いってぇなんでこういうタイミングなんでぇ?」
「わかりませんが、言葉の節々から色々とそう感じられました」
「レイレイ、オメェさんに頼みてぇことがある」
「わかったわ、ターレンの頼みだったら何でも聞くわ!!」
「これから、オレと金龍は一度カォルンセングォへ戻り、編成を組みなおす。
レイレイ、オメェさんに頼みてぇのは、メイヨウの奪還だ……。
ルェイジーには、毒ガスコマンダーを招き入れた、組織。いいや、人物を特定してもらう」
「分かったわ、私達は赤いコートの女を探してみるわ!!」
「テメェさんの録画を見させてもらったが、あれは相当な手練れというか、かなりのスピードで動ける、とびぬけたヤツだ。
レイレイ、テメェさんは大丈夫だと思うがよぉ、一応念をおして言っておく、気をつけろよ?」
「分かったわ、ターレン!!」
通信を終えた後、レイレイは再びゆっくりと顔を上げた。
ピクリと、イーミンが動き始めたのだ。
周辺の粉塵が徐々に薄くなった辺りで、イーミンが飛び起きて、すぐに玄関から出て行った。
「てめーら、おぼえてろよー!!!」
レイレイは唇をへの字にさせて、健康的な白く細い腰に左手をあてた。
「うっわ、去り際までアイツひくわー……」
しゃがみ込んだままのシャオイェンは顔を上げる。
「レイレイ小隊長、とりあえず、私達はどうしましょうか? あの赤いコートの女を見つけるにしても、
この裏九龍城国だったら、非常に時間がかかります」
「二人とも、何話してるの?」
ユーが、二人の間に割って入ってきた。
「ユーさん、メイヨウちゃんを何としてでも助けたいんです……」
「ああ、あの小っちゃい子? うーん、そうね。最も信頼できる情報を扱えるのは、五爪龍会ね」
「チンヨウさんですか?」
「性格にはね、チンヨウシェンシンの、周辺を囲っている人たちよ。各エリアごとで様々なかっこうをしている人々、ここの住人であったり、表のカォルンセングォだったりするけど、おねーさんにも分からないぐらいの、口コミ。
つまり、口コミというネットワークを持っているわ」
レイレイは、薄い下唇を噛みしめたあと、ユーを見上げる。
「タダとは言いません!! 何としてでも、私はあの子を取り戻したい!!」
レイレイの瞳が、涙で覆われ揺らいでいる。
今にも声が上ずっていて、泣きそうだ。
「おねーさんはね、基本は親切よ? でもね、向こうの会の出方次第よね? 情報の引き出しはあなた達でやりなさい? 本当にね、手に入れたいものがあったら、手段は選んではいけないわ。
おねーさんも色々な手段を使っていたんだからね……。
とにかく、明日、朝一番で五爪龍会の所に行くわよ!!」
シャオイェンが、レイレイの右手をとりながら引き上げる。
「なぜ、電話、もしくはインターネット回線などの、通信機器を使わないのでしょうか?」
「シャオイェンちゃん。それはね、通信機器などを介することで情報がもれる可能性があるのと、通信機器を通した時点で、その情報の価値があっという間に下がるのよね。それと……」
「ほほ、それはじゃな、ドラゴンマフィア対策ということじゃよ?」
三人は、玄関側へと振り向いた。
老人が、笑顔をたやさぬまま腰の裏で手を組みながら、歩いてくる。
白いエプロンが、真っ赤に染まっていて、とても床屋には見えない。
玄関側では、本革性の肩パッドをしている中年の男性が、黒服の亡骸を四人ほど抱え上げ、外の暗闇へと放り投げている。
「ドラゴンマフィアはのう、我々の中にいるかもれないし、本当に誰が操っているのか特定ができんのじゃ」
レイレイは、首をさする。
小麦粉が肌について、気持ちが悪い。
「いつからドラゴンマフィアっているんですか?」
「さあ、わしが生きているよりも前から存在しておるかもしれん。とにかく、それぞれの組織に暗躍しているのは事実じゃ」
「毒ガスコマンダーよりも、不気味な組織ですね?」
「元は、ドラゴンマフィアも九つあったらしいのよね。でも、いくつかドラゴンマフィアで壊滅させられたという事実もあるらしいのだけど、正直、ハッキリしたことはよくわからないわ」
「情報も、過ぎ去れば劣化する」
「劣化もすれば、情報はあやふやになるのよね。さすがの情報通のおねーさんでも、ちょっとそこまでは分からないわ」
シャオイェンは、眉をよせる。
無表情なのだが、珍しく顔を歪ませている。
「とにかく、はやく着替えませんか? 夏場とはいえ、このままでは体温低下のため、カゼをひいてしまいますよ?」
「そ、そうね、私たち冷静に考えると下着姿で戦うって、ある意味エレガントだわ」
「ま、時間もないし、シャワーをさっさと浴びて、明日の10時ごろ向かいましょう」
大男は、黒服達を放り投げながら、手をはらった。
「ふう、ようやく終わった」
玄関の左右には、黒服達が山のように重なっていたのだった。
苏 蔚
年齢39才
男性
身長215センチ
髪の色 オールバックに、鼻の下はちょび髭
肌の色 黄色
瞳 黒色
出身 裏九龍城国
利き腕 両利き
クンフースタイル 八極拳
得意技 岩をも砕くショルダータックル
一人称 私
誕生日 NAY507年3月20日
体重 115キログラム
超ゴツイ大男。
五爪龍会の門番役。
上半身はピチピチの白いTシャツに、ズボンは茶色いスラックス。右肩には牛革製の肩あてをしていて、
肩あてには龍が刻印されている。
オールバックに右目に眼帯、鼻の下に髭を伸ばしている。
片目は、ドラゴンテロリストにスキを突かれて、クォンヨンジーを守ろうとして失ってしまった。
地下通路でのミッションは苦手だが、闇市場の所では非常に優勢的に動けるので、闇市場のトラブルの見回りなどをしている。
超屈強な外見とは異なり、実はお花鑑賞が趣味だったりする。
ちなみに、チャイナガールズと対決したメイドインガールズとは異なり、オカマではない。
得意な技は牛革の肩あてをしているショルダータックルで、岩をも砕くので、軽量級の人間が当たったら、威力は突き抜ける。