4-29 闇の中の、冷笑
-------N.A.Y.562年 8月16日 23時33分---------
金色に塗られた椅子に、女の子が座っていて、小さな顔を傾けて眠っているのだ。
彼女を囲むように、右に黒い影一つ、左に赤い影一つある。
右側には面長の顔に丸いサングラス、革のジャンパーを着ている男が一人立っている。
左側にはお団子頭二つに、赤いコートを着ている小柄な女性が立っている。
金色の椅子は、赤い布で覆われた階段状の台座の上に乗っている。
赤い中国服を着ている女の子は、華奢な身体にロープでがんじがらめにされているのだ。
脚、両手首にもロープで頑丈に止められている。
面長の顔の男はサングラスをかけなおし、その女の子を見下げていた。
「いやー、運がよかったぜ。まさかあそこで鉢合わせになるとはねぇ……」
赤いコートの女性は、階段状になっている台座に腰を下ろした。
「これで、報酬アップ、アル?」
「レイリン、今回の契約は成功報酬だからな。今回の計画が終わればキッチリ払うぜ……」
レイリンは長いまつげを下ろしている、華奢な女の子を一瞥し、闇の中でかすかに光るサングラスを見つめた。
「でも、そのぐらいの価値があるような女の子には見えないアル」
「おっと、おめーさんもそれ以上言わない方がいいぜ……」
カツリ、カツリと、石畳と固いものが触れ合う音が響く。
暗がりの中、入り口に突っ伏す女性へと二人は顔を向けた。
「ふふ、よくやってくれたわ、ウェンハイとレイリン?」
暗すぎて、顔は見えないが、声からにして女性だ。
真っ黒いレディーススーツには黒龍会のバッヂが胸元についていて、黒いタイツに黒いハイヒール
を履いているのはよくわかる。
ウェンハイは、その影に向けて話した。
「ボス、本当に彼女が……その……あれなんですかい?」
「間違いないわ。まさか、チャイナガールズの方に行っていたなんてね? レイリン、価値ってどういうものか分かる?」
「価値? お金ほど高い価値はないアル……」
「ま、それも一つの価値よね。教えてあげるわ、価値ってものによって多方面に変化するものよ……」
「どういう意味アル?」
「チャイナガールズにとっては、そうでもないと思っているのじゃないかしら? でもね、私達にとっては、彼女は最高の価値っていうこと……」
「普通の女の子にしか見えないアル」
「彼女を探すのに余計に難航した理由よ。スラム街の子供たちを探しまくっていたけれど、まさか表社会に行ってるとはね。
たまたま、道端で見かけたけたのも幸運。彼女が生きていて、更に幸運だったわ……」
「ふーん、ま、私はお金がもらえればいいアル」
「見張りはよろしく頼むわ。計画は次のフェーズに移行。良いわね、二人とも。更なる価値のある行動を起こして行くわよ!!」
革ジャンパーの男は、両手をポケットに入れた。
「へぇ、了解ですわ、ボス……レイリンも準備オッケーだろ?」
「ま、言われたとおりにいつでも動けるアル」
闇夜に染まっている女性の、真っ赤な唇と、目の下にあるホクロだけは見えた。
そして、深紅の赤い唇の端が、吊り上がった。
「そうよ……価値のある、破壊をお願いするわ!!!」
田 文海
黒龍会所属。
男性。
身長158センチ。
瞳は薄茶色。
髪は、黒髪で、革のダブルジッパー(斜め)のジャンパーを羽織っている。
胸元には黒龍会のバッヂをしている。
会長に忠誠を誓う男性。
ツィイーの事を慕っており「姉さん」と呼んだりしている。
暗闇でもサングラスをしており、暗闇に慣れ過ぎたせいか、光が弱点。
今回、レイリンを手招きした人物でもある。
レイリン
年齢24才ぐらい
女性
身長160センチぐらい
肌の色 黄色
瞳 黒
人種 中国(湖南省長沙市)
利き腕 右手
クンフースタイル 形意拳(五行拳のほとんどで対応)
一人称 私
所属部隊 黒龍会(一時的)
黒龍会に雇われた、フリーランサーの女性。
ルェイジーと同じ方言を使っていて、中国、湖南省長沙市の農村の産まれ。
奨学金を出したNPOが超悪徳だと判明。
借りた奨学金が数十倍に膨らみ凄まじい負債をかかえることになった。
頭脳派なため、相手の挙動に対して、どの様に動けばいいのか
たえず頭のなかでイメージしながら戦う。
その為、形意拳を踏襲しているが、形意拳の中の五行拳のみで戦う。
土火木金水の通りの動きをし、チャイナガールズに立ちはだかる。
セリフリスト
「九龍城国人! アンタらの国は恵まれ過ぎているだけネ! 中華人は、別に怠けてるわけないのヨ!!」
「アタシ、ビンボに負けないアルよ……」
「ん?あんた、夜のお仕事できなさそうアルね?」
「形意拳のなかでは、五行拳が一番強いアル」
「なかなか、やるアル」
「アインシュタインを超えるアル」
「この技はきかない。ならば、この必殺技……くらうアル!!」
「土火木金水、このクンフー理論は崩れないアル……」
「同じ方言? あんた長沙の産まれかネ? ダッサイアルよねー」