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チャイナガールズ!!~スーパーカンフーハイパワーチーム~  作者: 乾ヒロキ
カオルンセングォ毒ガスパラダイス編
104/178

4-25 ショーキチの、死。

 


 -------N.A.Y.562年 8月16日 18時30分---------



 ここは、闇市場だ。


 雑多にあふれかえる人々の中、銀龍はテーブルの上で上半身を預けていた。


 ステンレス製の四角いテーブルなので、結構涼しい。


「あー、超冷えるぜー……」


 ほかのチャイナガールズたちは、多少時間があるので、色々と市場を見回っている。


 ルェイジー達が戻ってくれば、すぐさま招集させるつもりだ。


 金龍は、そのリラックスしている銀龍の目の前で足を組んで、眉根を寄せる。


 呆れたという感じだ。


「まったく、元お姫様とは思えない格好ね……」


 金龍の隣りにいるメイヨウは、衝撃的なことのあとなので、思いつめた表情をさせたままだ。


 金龍は、金の龍がかたどられている中国キセルを取り出した。


 メイヨウはすぐにハッとして、マッチで火をつけようとした。


「メイヨウちゃん、疲れているでしょ? 何もしなくていいわ……」


「ですが、金龍さま……」


「いいのよ、力を抜きなさい。まさかね、地下でこんなことが行われていたんて……。

私たちが守ってきた国はそういうことのために存在しているんじゃないわ。

人体実験のために国を作った訳ではないの……」


 メイヨウは、金龍が珍しく怒っていることに気づく。


 涼しい顔もしているし、いつもと同じ平常心に見えるが、メイヨウはそれが雰囲気で火傷するほどわかる。


「私はね、久々に侮辱された気持ちよ。確かにスラムもマフィアもあるし、警察なんていうのも作られていないわ。

けれど、これでも国民としての誇りは誰にも譲っちゃいないのよ。

そして……龍王様には何より感謝しているのよ」


「ま、ドラゴンマフィアのおねーさんが言うのもあれなんだけど、そのとおりよね?」


 金龍は左横から二十メータほどの辺りから歩いてくる青い髪の女性が近づいてくる。


 大きめのリュックを金龍の隣りの石畳の地面へと置いた。


 そして、ユーはテーブルの上に手を置いた。


「あら、やられたんじゃなかったのかしら?」


 ユーは、眉根をぴくつかせて、笑顔はくずさない。


「あらあら、そちらこそ。ここの悪環境で、脳みそイカれたんじゃなかったのかしら?」


 チンヨウがユーの後ろからやってくる。


「やめなさい、君たち。我々はいよいよ本格的に協力しなければいけなくなった……」


 銀龍は、ずっと冷たいテーブルの上でほっぺたをつけていたが、すぐに上半身を起こした。


「金龍、ちょいとチンヨウさんと話してぇ、どいておくんな……」


 金龍が少し席をずらし、チンヨウが椅子へと腰を下ろす。


「失礼、金龍殿」


「いいえ」と、キセルと紹興酒を交互に吸っては飲んでいる。


「で、何がわかったんでぇ?」


「相手は、まず黒龍会とドラゴンテロリストだ。ほぼ確定と私は睨んでいる」


「ほいで、ほかにはぁ?」


「ドラゴンテロリストは厄介だ。誰がテロリストなのかもわからないし、かなりハッキリしていない」


「なるほど。噂では聞いていたが、ドラゴンテロリストは会を内部から崩壊させるのが目的で作られたそうじゃねぇか……」


「そうだ。そして、恐らくうちのところにもいるかもしれん」


「そのぐらい、潜伏の仕方がうまいということだな。面倒だな。まだユグドシアル大陸で戦っていた方が、全然わかりやすい」


「とにかく、そのぐらい不明で根が深いということだ。構成人数も不明、所持している武器も不明、更にはボスも不明だ」


 ユーはヘッドライトと探検帽を外して首を振った。


「チンヨウさんと、おねーさんの情報網をもってもダメなのよね」


「めんどくせーなぁ、おい……」


「そう、凄くめんどくさいのよ。おねーさん、さすがに困っちゃう……」


「それよりもだ、次は相手がどう出るかが問題だ」


「けどさ、もう隠す必要がないから、相手もああやって出てきたわけじゃない? これって全面戦争というか……」


 雑多の中、石畳と固いものが触れる音が響く。


 オールバックにサングラス、夏場なのにコート姿がの男が歩いてくる。


 彼の周辺には黒服の男たちが囲っている。


 更に目立つのは、彼の真後ろには邪魔でしょうがない丸々とした大男が雑多の中を歩いているのだ。


 チンヨウは眉根を寄せて、瞳を細くさせた。


 銀龍はチンヨウの表情が並みならぬ殺気を持っている男だと感じている。


「全面戦争、それが狙いだとしたら……」


 オールバックにサングラスの男は、大男に指示を出す。


チャン 晓迪シャオディちょっと待ってろ」


「わかりましたダス、ボス!!」


 丸々とした大男を数百メートルほど置いていき、人々をかき分けながら奥の裏路地へと向かう。


 銀龍は酒を飲みながら、銀色の中国キセルをくわえる。


「つまりよぉ、あれだな。その黒龍会は裏九龍城国を牛耳りたいんだろぉ? 

 わっかりやすい奴だぜ、どんな奴なのか一度お目にかかりてぇぜ?」


 そう話しているうちに、チンヨウが左側にあるメインストリートを見つつ、立ち上がる。


「どうしてぇ、チンヨウの旦那ぁ……」


「その顔だが、どうやらすぐに拝めそうだ……」


 銀龍もチンヨウの顔を追った。


 そこには中年の男性が杖を突きながら歩いてきている。


「よう、チンヨウ。お前は邪魔だ。消えてもらう!!」


 チンヨウは両手を開き、クンフーの構えをさせる。


「そうか、いつでも来い……」


 ユーはすぐさま、中華鍋と中華包丁を用意させた。


 銀龍の瞳が薄青くなる。


 すぐさまチャイナガールズたちに緊急招集命令を出したのだ。


「おいおい、あれが例のやつかい?」


「ああ、黒龍会のボスとも言われている」


「へぇ、あんな奴なんだ……」


 チンヨウは叫ぶ。


「まさか、こんなところでやりあうのか?」


 ルェイジーとチャオは相変わらずチキンを取り合っている。


「これ、ルェイジーのアルネ!!」


「いいや、俺のだ!!」


 金龍は長身を椅子から起こさせ、ベルトにぶら下がっているポーチから針を取り出し、構えた。


「銀龍、どうやら私たちも巻き込まれそうね?」


「ああ、そうみたいだぜぇ金龍……。一番守らなくちゃいけないのは、メイヨウだ。今誰と一緒だっけ?」


「あれね、シャオイェンたちと一緒のはずよ?」


 黒龍会のボスは歯を見せて笑った。金歯が輝いた。


「なあに、おめーさんたちも十分に巻き込んでやるよ……。お前たち!!」


 黒龍会の手下たちは、拳銃をスーツの裏から取り出した。


「てめぇ、ルェイジー、ずるいぞ!!」


「アイヤ、チャオ、そのチキンよこすアルネ!!」


 空気の読めない会話が、銀龍たちの後ろで交差している。


 男は、杖を持ちながら、サングラスをかけなおした。


「おやおや、銀龍金龍までお揃いか? これはいいねぇ、本当に実にいい!! てめぇら、全員やっちまえ!!!」


 男の後ろで立っている黒服たちが、拳銃を一斉に構えた。


 ざっと数えて二十人ほどだ。


 銀龍は、腰ベルトにぶら下げている中国扇子を手に取り、構える。


「チンヨウさんよお、こういう時は裏九龍城国の場合はどうするんでぇ?」


「こういう場合は、大体のパターンは決まっている。20人を……10人にする!!」


「ああ……そうだったな……」


 それぞれに向けられている銃口が火を噴く。


 周囲の人々がとにかく逃げようと混乱している。


 銀龍はすぐさま相手へ向かう。


 白銀のバリアは全ての弾丸を弾き、建物のコンクリートや窓ガラスなどに突き刺さる。


 チンヨウは右側の建物を三角飛びで相手に突撃し、相手の手首をねじ上げ、拳銃を奪い、瞬間的に分解した。


「銀龍、行くわよ!!」


「おうよぉ!!」


 金龍は相手の目に向けて針を放つ。


 10メーター先だというのに、相手のサングラスを突き抜け瞳に突き刺さり、拳銃を落とした。


 銀龍はすぐさまそいつに目掛けて、銀色のチャイナドレスを翻し、銀色の鋼鉄ハイヒールで顔面に向けて回し蹴り。


 黒服は奥のメインストリートへ吹っ飛んだ。


 周辺の人々の悲鳴が聞こえる。


「さてとぉ、状況開始といたしますかぁ!!」


 もう一人の黒服は、銀龍のスキを狙って拳を横へ振ろうとしたが、突如背中に痛みが走り、吹っ飛んだ。


 銀龍は両手で手とうを作り上げ、相手の鳩尾にめり込ませ、右手で掌底を上へとあげる。


 男の顎が砕け、あおむけに倒れる。


 奥の方で白いチャイナドレス姿の女性と、小さな赤い中国服の女の子が立っていた。


「ヤーイー、リームォ、来たか!!」


「アッチョー!! 銀龍に手出ししたら、吹っ飛ぶわよ!!」


 ヤーイーの後頭部に、銃口が向けられる。


「きこぉーゆにっとぉー、おんー」


 リームォが超速で相手の股間にストレートパンチをさせる。


 男がひるんだ瞬間、跳躍、顔面に頭突きでヘッドシュートを決める。


 その衝撃にたえられず、男が十メーターほど道端まで転がっていく。


 ルェイジーとチャオはずっとご飯の取り合いになっていた。


 黒服五人はずっと拳銃を構えていたが、どうしようかという感じだった。


「てめ、本当にそのチキン離せよ!!」


「アイヤ、ルェイジー絶対譲らないアルヨ!!」


 黒服が、そのチキンに向けて、トリガーを引いた。


 二人で奪い合っている、チキンが吹っ飛び、地面へと転がった。


 ルェイジーは食べられなくなったチキンを、四つん這いになりながら、ポロポロと涙をする。


「アイヤ!! ショーキチ! なんで死んじゃったアルネ!! ショーキチーーーーーーーー!!!」


 そして、ボサボサになっている前髪で目が見えないが、チャオは身体を震わせていた。


「てめぇ、今度こそルェイジーよりも食おうとしていたチキンを……よくも……やりやがったな!!」


 チャオは身体を覆っているマントを広げ、叫ぶ。


「くらいやがれ!!!」


 右手に拳を作り、軽く跳躍し鳩尾へ向けて横一直線の軌道を描き、拳を運ぶ。


 黒服が小銃を構えトリガーを数回引くが、チャオには当たらなかった。


 内臓と胸骨をつぶす音が響く。


 黒服は「くべは!!!」と息をもらし、30メータほどメインストリートへ吹っ飛んだ。


 吹っ飛ばされた男は、仰向けになり気絶している。


 男の顔面は、中国靴により突如踏みつぶされた。


 チャオは始めてみる少女に眉毛をしかめた。


 少女は頭左右二つにお団子頭を作っていて、妙なサングラスをしていて、両手にはメリケンサックみたいな独特な兵器を持っている。


 彼女は、緑色のチャイナドレスを着ていた。


 動くたびに頭に飾られた鈴が「シャン」と鳴る。


「ルェイジーちゃん、大丈夫!!」


 ルェイジーは黒服全員に拳銃を向けられている。


 そして、嗚咽させながら、ゆらりと起き上がった。


 銀龍は相手の胸元に肘打ち、ハイヒールの踵で金的、爪を立てて額、目、顎にかけて顔面を下に思いっきり下げる。


「ぐぎゃああああああ!!!」と、黒服は叫び、両膝をついて屈みこむ。


 更に腕をねじり、地面に伏せさせ、そのまま銀色のハイヒールを後頭部へ落とす。


 黒服は叫ぶ暇もなく、動かなくなった。


 銀龍は、金龍の背中に寄りそう。


「これで、何人だ? 金龍?」


「さあ? 束になっても勝てないのに、よくやるのは、確かね?」


「ったくよぉ、あのチンヨウというやつ、バリアもねぇのによぉ、よくやるぜぇ?」


 銀龍と金龍は、前方後方共に黒服の男たちに囲まれている。


 金龍は、ちょっとだけ赤い唇の端をあげた。


「ふふ、懐かしいわね。以前は毎日こんな感じだったじゃない?」


「ま、チャイナガールズ一期生の時は、まさしくこんな感じでスリリングだったぜぇ……。

そういや、ルェイジー達は?」


「なんか、とんでもないことになりそうよ? 状況説明する? 早口だったらいけるけど……」


 銀龍は中国扇子を構えたまま、風を顔へ送るとため息をついて金龍にお願いした。


「はー、大体何となくわかるぜぇ? だが、お願いするわ……」


「チャオとルェイジーはお互いに食べ物の争奪戦を繰り広げる。黒服がその食べ物へと発砲。食べ物は既に食べられなくなっている。

ルェイジーは現在失意のあまり身体が震えているわ」


 銀龍は、苦笑いをさせる。


「はは。で、そろそろやべーっつーやつかい?」


「そうね……」


「全員聞けやぁああ!!」


 全員がとりあえず手を止めた。


 チンヨウやユーだけではなく、戦闘している黒服も全員止めている。


 いつの間にか周辺にいた人々も散り散りになって、どっかへ避難してしまっていた。


「とりあえず逃げた方がいいぜ!! ここは近々半壊する!!」



ショーキチ


年齢3か月

オス

身長65センチ

羽の色 白

肌の色 茶色

出身 九龍城国(養鶏所)

一人称 コケーッ!!

誕生日 NAY562年5月20日

体重 150グラム 



ルェイジーとチャオが奪い合っていた、鶏肉。

元は、ニワトリだったが、首を絞められてしまい、ついには鶏肉へとなってしまった。

そして、屋台まで違法精肉店で加工されてしまって、そのまま丸々豪華に包まれ、こんがりと焼きあがってしまった。

名前はなかったが、ショーキチはルェイジーが名付け親である。

なぜ、ショーキチであるのかどうかは、今後の展開で二度と明かされることはない。

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