4-24 ルェイジーちゃん、銀龍と合流せよ!!
-------N.A.Y.562年 8月16日 17時43分---------
レイレイ達は、ようやく闇市場へと到着した。
メイヨウは黒い箱をぶら下げていて、先ほどの出来事からずっと口を開こうとはしない。
あまりにもショックすぎて、言葉すら出ないのだろう。
気にしていてもしょうがないので、レイレイ達は銀龍たちが待っている場所を探した。
雑多にあふれる人々とぶつかりそうになりながら、シャオイェンは口を開く。
「随分と活気がありますね」
「私も初めてきたけど、上側にも負けていないわね。でも、上側のほうがもっとキレイだわ」
人々をかき分けながら、裏路地へと入る。
銀龍が待機している周辺は、屋台がほとんどだ。
すれ違う人々を見ながら、声が聞こえた。
「おぉーい、レイレイ、シャオイェン!!」
銀龍と金龍が二人でお酒を飲んでいる。
「ターレン、お酒飲んでるんですかぁ……」
レイレイが近づきながら、大きな瞳を細める。
「ったく、仕事中なのに……」
「なんでぇ、たまにゃーいーじゃねーかよー」
「ま、報告は先ほどの通りです。毒ガスコマンダー鷺沼の狙いは人体実験です」
「そうか、ゲスの極みだぜぇ。ヨウさんにはすでに連絡してある。捜査ついでにスラムの子供たちは何とかしてくれるってさ……。中国国防部は調査の為にそっちへ回ってもらった」
メイヨウは、銀龍に近づく。
「銀龍様……もってきました……」
「メイヨウ、ご苦労だったぜぇ……」
メイヨウは涙をポロポロこぼし始めた。
「銀龍さまー!! こわかったですー!!」
銀龍は長いまつげを少し下ろし、涙を流すメイヨウの頭を撫でる。
「悪かったな……二度とこんなことはさせねぇよ……」
「メイヨウちゃんが、勇気を出さなかったら、相手の狙いすらも気づかなかったんだよ? あなたは勇者よ」
シャオイェンも、眉毛を撫でる。
「そうです、メイヨウちゃんがいなかったら、我々も毒ガスコマンダー鷺沼にやられていたかもしれません」
「テメェらを派遣させて正解だったな。さあてとぉ、あとはルェイジー達と一度合流かぁ。あいつら今頃、こっちへ向かっているはずなんだけどなぁ……」
銀龍の向かいの席に座っている金龍は、足を組んだまま咥えたキセルを赤い唇からはずす。
「一度、五爪龍会に向かっているんじゃないのかしら? なんだっけ、ユーとかいう人が会長に報告ついでにシャワー浴びたいんじゃないかしら? ところで銀龍?」
「なんでぇ、金龍」
「今日、一体どこで泊まるつもり?」
「……あ、考えていなかった」
「そう、やっぱりね。じゃあ、チンヨウさんにでも聞いてみる? 結局はルェイジー達を待つしかなさそうね?」
「お、おおぉう、そうだぜぇ……」
銀龍は夜へと更けていく仮想の空を眺めながら、コップに口をつけた。
-------N.A.Y.562年 8月16日 レイレイ達と同時刻---------
ルェイジー達は、神龍会アジトへとりあえず戻ってきた。
ユーが鼻歌を歌いながら、シャワーを浴びている声が響く。
ルェイジーはソファーに座ったまま、アニメを見ている。
「ルェイジー、このアニメ楽しみにしているアルネ!!」
隣りのチャオは「ふーん」というふうに声を漏らし、ボーっと見ている。
チンヨウはリビングルームで、パーティカルロイドの緑色の宝玉をセットし、パーティカルロイドシェルが組み込んであるランタンに接続させる。
大体、ものの30分ほどあれば、エネルギーは最大まで蓄積されるであろう。
そのあいだ、チンヨウと神龍会会長はテーブルに座って向かい合っていた。
「なるほど、そうじゃったのか。牙龍会と黒龍会はつながっていたと……」
「はい、恐らくではあります。我々が気づいた時には既に仲違いを……」
緑色の中国服を着ている老人は、白色の長いひげを触る。
「そうか、誰かが裏九龍城国を戦争状態にしたいヤツがいるのだろう……」
「はい、老師様。少しつながるとは思いますが、服部半蔵鷺沼を入れることによって、黒龍会にとっても都合の良い出来事がおきます」
「そうじゃの、黒龍会は最近突如出てきた新進気鋭の会。
勢いはすごいのじゃが、内容は関心せんのう。外道のすることでお金を稼いでいる。
確かにここら辺も悪いところはある。じゃが、悪いところばかりではない……。
裏も表も表裏一体。
今だお互いに理解できないのは、人間じゃからろうて……」
ユーは、上半身ブラジャーのまま、青い髪をタオルで拭きながら出てくる。
下半身は探検服のズボンのままだ。
チャオは適当にソファーでくつろぎながら、九龍城国テレビを見ていたが、ユーを見るなり顔を真っ赤にさせて台所の方へと逃げた。
「チェン老師さま、シャワーありがとうございます」
「相変わらずよのう。その、何というか向こう見ずな恰好じゃな……」
「いいじゃないですか、女は色っぽさで決まるのですよ」
「ま、お前さんの性格じゃ、言ったって無駄じゃろ。好きにしなされ」
チャオは、ずっと台所の入り口辺りでこそこそとユーを見ている。
ユーとチャオは視線が合うと、ユーは自信たっぷりの笑顔をさせ、チャオはすぐに隠れた。
「それで、お互いに混戦状態になったと……」
「はい、老師様。白衣の提供をしていたみたいです。なので、あやつめを呼び込んだのは、黒龍会のボスとも言われている、齐 問なのではないかと……」
「動く成金みたいなやつじゃな……」
「はい、私はあのような者は気に食わないです」
「これこれ、感情的になるな。感情的になると良いクンフーも悪くなろうて……」
ユーは、チンヨウの隣の席に座る。
「つまり、黒龍会が一番怪しいわよね。牙龍会はあくまで私達みたいな感じで手を組んでいたっぽそうだし」
チャオは、台所の辺りから再び顔を出そうとするが、視線が合うとすぐ引っ込める。
「でもさ、黒龍会の目的は何なのかしらねー」
「黒龍会の勢いは凄い。だが、共存よりも一強を狙っているのではないか?」
チェンは白く長いひげを、猫を撫でるように手を幾度も優しく下ろす。
「彼らの狙いは、裏九龍城国を乗っ取るつもりじゃないのかのう?」
「乗っとる……って、本当にそんなバカな事考えているの!?」
「黒龍会だけでは不可能じゃ。じゃが……」
ルェイジーは、ボーっとしたまま緑色のソファーに座ってアニメを見ている。
「かーめーはーめーは-、アルネー!!」と、主人公と同じ両手を縦に出している。
「ドラゴンテロリストを使えば、不可能じゃあるまい……」
「ドラゴンテロリストは一体誰なのか……と?」
隠れているチャオに対して、ユーはブラの紐をつまむ。
チャオはすぐに隠れる。
二人はそれを繰り返している。
「でも、おねーさんの情報力でもドラゴンテロリストって、よくわからないわよ。
あくまで噂でしか聞かないし、仮に、この中にも紛れ込んでいるかもしれないし……。
でも、全部の空気が悪くなるじゃない。今はまだ安定しているけれど、よくドラゴンテロリストを使って、会を内部からメチャメチャにさせて崩壊させていたという情報もあるくらいよね……」
「ドラゴンテロリストは、本当に見えない組織というか、見え隠れしていて本当にわからんのう」
ユーは立ち上がる。
「じゃあ、とりあえず、闇市場に戻りましょ!!」
ルェイジーは青いチャイナドレスの裾を翻し、ソファーから立ち上がる。
「銀龍に報告しないといけないアルネ!!」
チャオは、ずっと入口の辺りでしゃがみ込んで隠れている。
「おっぱい怖いよー、おっぱい怖いよー……」
チンヨウはユーに一瞥し、話した。
「では、一度闇市場に向かおう。そして、全員で話を共有するべきだな……」
「ルェイジー君、再び出発だ!!」
「アイヤ、出発アルネ、了解アルネ!!」
ドラゴンテロリスト
九龍城国内に潜んでいる、国の意思に反対する団体。
その全容は不明だが、ドラゴンマフィアからも依頼がきたりする。
結構な人数が在籍していて、一般にすんでいる住人もドラゴンテロリストの可能性がある。
部隊らしきほどの別れ方もしていなく、全ては九龍城国内の思想に合わないのを理由に破壊活動を行おうとしている。
ドラゴンマフィア
九龍城国内に潜んでいる、裏社会のヤクザ的な組織。
クンフーを凶器と使い、容赦がない。
そして、何よりもバリア技術を壊す技術を持っているため、非常に厄介。
基本は徒手空拳だが、手下ほど重火器などを持つ、逆転現象が起きている。
バリアには頼らないという独自思想を持っており、邪道だと言う者もいる。
クンフーを極めることに関しては、非常に特化しており、暗殺拳の集合体なようなもの。
九龍城国の明るいところとは異なり、暗い陰惨な感じがする。
暗殺八極拳や、暗黒太極拳、滅殺トウロウケン、瞬殺カッケショウ、
裏九龍城国という、地下の施設も持っており、九龍城国の膿とも言われている。
ほぼ、スラムと言われても過言ではなく、アヘンなどの大量生産などは一部の組織が行っている。