4-22 第三部隊VS服部半蔵鷺沼!! その1
-------N.A.Y.562年 8月16日 16時15分---------
ここは、裏九龍城国内だ。
黒龍省の上側に位置する、牙龍省からレイレイたちは入った。
入ってからもうどれくらいたったのだろうか?
レイレイは方向音痴なので、右も左もよくわからなくなっているが、メイヨウは頼もしいくらいに方向感覚も、一度通ったような道でも覚えていてくれる。
排気されている場所とされていない場所が存在しているので、鼻の奥が痛いときもあれば、何とか許容できる範囲もある。
レイレイは噂でしか聞いたことしかなかったが、想像以上に狭い通路を見渡しながら歩いていた。
彼女は夜戦用のスマートコンタクトレンズをしているので、想像以上に周辺が明るい。
熱源式、3D座標式などいろいろとあるが、その中でも最も見えやすい、暗視式だ。
500年以上前の技術だと、放射能を塗布させて、暗視ゴーグルとして扱われていたらしいが、全てはパーティカルロイド粒子のおかげで、あらゆる技術が革新的になった。
このスマートコンタクトレンズもそうだ。
パーティカルロイド粒子が、反射を計算して、ある程度形を作ってくれる。
それが高速で処理されているので、どんな物体なのか、立体的に見えるのだ。
ただし、色は緑色のみなので、元の色はよくわからない。
最新式では、色も付与されるので、ライトの下で見ているのとほとんど変化ないらしい。
しかも、暗視ゴーグルの場合はフラッシュライトなどが弱点なのだが、そういう事も一切ない。
バトルドレスを着用時、明るいときはブレインインターフェースが自動的に読み取り、色々とモードを切り替えてくれる。
レイレイを先頭にして、その後ろにはメイヨウ、最後尾はシャオイェンという順で歩いている。
メイヨウはランタンをぶら下げつつ、頭の左右両方に飾っている鼻の髪飾りを揺らしながら前を歩いている、朱雀模様の背中に話しかける。
「ここは、牙龍会の縄張りかもしれません」
「牙龍会?」
変な話だが、傭兵なのにレイレイは全くそのような裏社会と言われるものにはピンとこない。
なぜか、シャオイェンのほうが詳しい。
陰謀論というか、そういうのは元からこの女の子は興味があるのだ。
「牙龍会、以前はそんなに大きくはない会だったといわれています。ですが、どうやら牙龍闘技場というものを作ってから大きくなったようです」
「あんた、本当に詳しいわね……」
「はい!! 私はUMAやそういう陰謀論とかのファンですからね!!」
「無駄に知識が深いのも構わないわけど、それを九龍城国全体で放送するよりかも、たまにはそれを他で役立てるようなことしたら?」
「そうですね、私が24時間はなしたがるのは、もうしょうがないわけで、それよりも……」
「ああ、めんど。あとで聞くからさ」
「メイヨウちゃんは大丈夫? こんなところ、二度と来たくないでしょ?」
「そんなことありません。わたしは、ここで銀龍様にすくわれました。ここがなかったら、わたしは生きていなかったとおもいます」
「そうね、ひどい環境でも、メイヨウちゃんが今幸せだったら、過去もバカにできないものね……」
レイレイは、背中から視線だけでメイヨウをみる。
彼女がかすかに笑っているような気がした。
「レイレイ様、レイレイ様はなぜチャイナガールズに?」
「私? 私はターレンのためよ!! 私の生まれは中国の福建省なんだけどね?
両親は九龍城国の周辺の香港で住んでるんだけど、福建省などはクンフーは強くても、強いだけでほとんどが農民の生活なんだよ。
自給自足で、どんなに強くても、生活は貧しい人も多いわけ。
そして、七歳の時だっけかな? 私は九龍城国に両親と旅行に来て、たまたまチャイナガールズの軍部パレード? まあ、傭兵だから、何て言うんだろう?
細かいことはいっか!! そこで、私はキレイな銀色の龍が空から降りる所を見たんだ。
あれは、今でも目に焼きついているわ。空から銀色の凛々しい長髪の女性が降ってくるんだもん。
その姿に圧倒された私は、目標が変わったの。
お金稼げるのも良いんだけど、私の地元のクンフーをここで生かしてやろうと思ったら、福建省のお師匠様の所で学んでいるうちに、いつの間にか虜になって、ここに入隊していたんだよ」
「さすが、レイレイさまです。わたしは銀龍さまにひろわれた身。この身をこなにして忠誠をちかいます……」
「だめよ、メイヨウちゃん。9歳の子供が言うセリフじゃないわ。あなたも目いっぱい長生きしなさい!!」
シャオイェンが、突如足を止めて、レイレイも足を止めた。
シャオイェンの、つり目が少し細くなる。
「……何か嫌な予感と言いますか、足音が聞こえますね」
「うそ、マジ!!」
暗がりの中、ぴちゃり、ぴちゃりと足音が聞こえる。
「強襲にしては、随分と足音がバレバレですね」
ここは一通路だ。
レイレイは金色に輝く剣、七星剣を腰ベルトにひっかけている鞘から抜いた。
「シャオイェン……」
レイレイは後ろにいるシャオイェンに視線で合図を送る。
シャオイェンはすぐにレイレイと背中合わせにさせた。
「わかっています……」
二人は同時に言葉を揃えた。
「パーティカルロイド起動、気功ユニットオン……」
シャオイェンの赤い中国服に、頭から靴先まで薄青い幾何学模様が全身を駆け巡る。
徐々に、水たまりを踏みつける足音が近づいていく。
だが、相手はオリーブドラブ色の軍服を着ていて、胸元には大きな星一個に小さな星が四つ並んでいる記章をちらつかせている。
中国国防部の者だった。
ランタンを掲げている顔からどこの部隊の者かは分からないが、確実にそうだ。
レイレイはその者の顔を見上げると、男は完全に白目になっていて、口を動かす。
即座に彼女は判断を下した。
「メイヨウちゃん、しゃがんで!! 耳をふさいで目をつぶって!!」
メイヨウはすぐにしゃがみ込み、両目を強くつぶった。
「ははははは、服部半蔵……参る!!」と、ぴちゃりと音をたてながら近づいてくるが、
レイレイは即座に相手の鋼鉄製の帽子のてっぺんから一刀両断する。
七星剣からは焦げた匂いが立ち込めて、暗い地下通路に充満する。
相手の肉や骨などは、七星剣の前では無いに等しい。
「うひひひひひぃぃぃいいいい!!」と、後方からももう一名出てくる。
「やりますね、ゲスイですね、ハッキングですね!!」
相手は小銃を構えていて、レイレイはすぐにメイヨウに伏せるように抱き寄せる。
シャオイェンが、両手の刀を振り回す。
梅花双刀と言われていて、暗がりの中でも15発全ての弾丸を刀二本だけで全部はじき返す。
時折、メイヨウの辺りまで跳弾が飛ぶが、レイレイのバリアにより守られている。
メイヨウはずっと肩を震わせながら、ずっと目をつぶっているのだ。
シャオイェンが、あっという間に相手に近づいて、バツ字切りに刀を下ろす。
刃内で高速に回っている粒子が衣服を貫通し、あっという間に人の形を変えてしまった。
「なかなか、技術的には興味ありますが、私も嫌悪するほどゲスイ手口ですね……」
レイレイは立ち上がる。
「ふう、ターレンの言っていた通り、斬撃はかなりきくわね!!」
シャオイェンが、背中のレイレイに声をかける。
「そうですね、それだけ我々が闇市場へ到着することがカギとなっているのです」
「メイヨウちゃんごめん!!」と、レイレイはメイヨウを肩越しで担ぎ上げる。
50メータほど歩いたところで、メイヨウに指示を出した。
「メイヨウちゃん、目を開けていいわよ」
メイヨウをゆっくりと下ろした。
「なんどもここでしにかけていました。だけど、本当にこわかったです……」
「慣れろなんて言わないわ。けれど、色々とやむをえない戦いになりそうね、特に今回は……」
レイレイのお団子頭のを二つ結っている、長めのリボンがひらひらと揺らめく。
よくわからないが、排気ダクトがあるのかもしれない。
銀龍に一番言われているのは、あらゆる物事に対してよく観察しろと言われている。
関係ないと思われたことが、急激な突破口になりえる時もあるのだ。
レイレイは音がするので、天井を見上げた。
天井には巨大なファンが回っている。
巨大な排気ファンだ。
夜戦用スマートコンタクトレンズを通してみると、その周辺小さなダクトがいくつかある。
不思議に思ったシャオイェンが、レイレイを呼ぶ。
「どうしました? レイレイ小隊長……」
「あんたも見えるでしょ? 上のほうに小さな保守用ダクトがあるわ」
シャオイェンはレイレイのそばによって、天井を仰ぐ。
「あれが、どうかしましたか?」
「そうね、毒ガスコマンダー鷺沼は、あれを使ってるんじゃないのかしら?」
遠くのほうから、声が聞こえた。
「うひひひひぃぃいいいい!! 良いカンをもっているじゃないかぁあああああ!!!」
保守用ダクトの入り口のネットが一度膨らむ。
そして、白衣を着た男がものすごいスピードでネットを突き破って出てきた。
レイレイはすぐさま、上空から強襲してくる半蔵に対して、七星剣で小太刀をしのいだ。
火花が散り、その光はガスマスクの形をかたどる。
レイレイは気功ユニットを回し、相手に押し返した。
鷺沼は白衣をなびかせて、一度後ろに跳躍し、10メータほど距離を離す。
ガスマスクが邪魔をして、聞こえにくいが、言っていることは何なのか聞こえた。
「うひひひぃいぃいいいい!!! 子供だ、子供だ、こどもだぁああああ!! おじさんとお、あそぼうよぉおおおおおお!!」
レイレイはすぐさま、シャオイェンに指示を出す。
「シャオイェン、メイヨウちゃんを頼むわ!!」
「了解です、レイレイ隊長!!」
「待て待て待て待てまてぇええええいいいいぃいいいい!!」
鷺沼は大声で叫ぶと、白衣をその場に脱ぎ捨てた。
噂では聞いていたが、忍者装束というものをレイレイは初めて見た。
全身を漆黒の衣装に染めていて、頭巾というものを頭にかぶっている。
足元は日本で聞いたことある足袋というものを履いている。
背中には小太刀、つまり忍者刀を収めるための鞘を背負っている。
完全に暗殺向きだ。
「ニンニン、待たれぇえええい!! そこの者よ!!」
シャオイェンが30メータほど来たところで、真っ暗な闇からゆっくりと中国国防部の者が出てくる。
シャオイェンがまずい!! と、思い、メイヨウに覆うように抱きつく。
銃口から激しく火花が散り、シャオイェンが足止めを食らっている。
服部半蔵は、小太刀に手をかけたまま片手を広げた。
「忍法、分身の術!!」
そう叫ぶと、中国国防部は給弾し狙い続ける。
その奥からも、銃口が向けられていた。
シャオイェンの前には二名ほどの、動く死体が彼女を狙っているのだ。
レイレイは深呼吸をさせた。
「さあ、かかってきなさい!! 毒ガスコマンダー鷺沼!!」
鷺沼は中腰になりながら、足をすり足させて近づこうとしている。
レイレイは相手と対峙しながら、後ろで健闘しているシャオイェンを狙っていることに気づく。
どうやら、鷺沼は子供、メイヨウを狙っているらしい。
レイレイの奥のほうへ奥のほうへと覗こうという動きを見せている。
キャラクター紹介
黎 麗々(レイ レイレイ)
年齢15才
女性
身長154センチ
髪は黒髪 髪型は、お団子頭左右2つ 布では覆われていない。 右耳に七星剣のイヤリングをしている。
肌の色 黄色
瞳 茶色
出身 中国(福建省)
利き腕 両方
クンフースタイル 七星蟷螂拳
得意技 无形的速度削减(見えない速度の斬撃)
得意武器 七星剣
一人称 私
誕生日 NAY547年4月10日
部隊 朱雀
BWH 体重 80/53/85 59キログラム
朱雀部隊リーダー。
若年の割にはかなりのしっかりもので、武道を重んじ、相手が強いと思ったら、必ず敬うように教育されている。
チャイナガールの中でもスピードスター。
赤いチャイナドレスを着ていて、丈が長いドレスを好んで着ている。
チャイナドレスの背面には朱雀の刺繍がされていて、
朱雀の刺繍が、気功ユニットになっていて、
気功ユニットを使用したときの反射速度や移動速度は、
弾丸よりも早く移動すると、大げさながらにも言われている。
チャイナドレスの、両腕の左右は長さが異なっていてアシンメトリーになっている。
髪型はお団子を左右に結っていて、お目目パッチリ。
右耳には小さい七星剣の形をしたイヤリングをしている。
イヤリングは、部隊内で七星剣であらゆる戦果を挙げた者に送られるような勲章。
兵器は、七星剣が得意で、クンフーは七星蟷螂拳をメインに戦う。
七星剣を両手に持ったときの戦闘力は異常で、一般兵がどんなに束になっても、勝てない。
得意のクンフーは、見えない突き攻撃や、見えない刀捌きで、次々と様々な物を切っていく。
足の速さも断トツで、初速最大スピードが、100キロ出せる。
現在は、九龍城国の「紅龍省」に住んでいて、マンション「紅木楼」の301号室で一人暮らしをしている。
シャオイェンとはお友達兼戦友で、相棒。
実家は香港の生花店。
お父さんとお母さんは一般人で、彼女は父と母の為に一生懸命お金を仕送りしている。
朱 曉燕(晓燕) (シュ シャオイェン)
年齢16才
女性
身長155センチ
髪は赤 髪型は、短髪。右耳に、梅の花の髪飾りをしている。
肌の色 黄色
瞳 赤
人種 中国(山東省)
利き腕 両方
クンフースタイル 梅花蟷螂拳(連続攻撃を得意とする)
得意技 赤き閃光の突き 最快的速度决策技术(Zuì kuài de sùdù juécè jìshù)
得意武器 梅花双刀
一人称 自分
誕生日 NAY546年3月11日
部隊 朱雀
BWH 体重 73/50/74 61キログラム
実直で、まじめな女の子。
だが、ストレートすぎるが故、分析癖は他の部隊員の追随を許さず、
セリフの量も膨大になりがち。
カンフーは、本当に実直、まじめで、まっすぐな技を撃つと、
部隊長である、黎 麗々(レイ レイレイ)からも評価をもらっている。
服装は、中国服に、七分丈のパンツをはいている。
とても、さっぱりしていて、ボーイッシュ。
その為なのか、あまり感情を表立って表情を変えることは少なく、
空気読まず膨大な言葉を出てしまうのが、たまにキズ。
だが、それを含めて皆から慕われている。
趣味は、ボーイッシュとはかけ離れている、女の子らしいピアス集め。
現在は、九龍城国の「紅龍省」に住んでいる。
マンション「紅木楼」の101号室に住んでいる。
美友(美友) メイヨウ
年齢9才
女性
身長125センチ
髪は黒色 長髪で、左右に花の髪飾りをしている。
肌の色 黄色
瞳 黒
出身 裏九龍城国
利き腕 両方
クンフースタイル なし(猿拳を習っている)
得意技 なし
得意武器 なし
一人称 私は
誕生日 不明だが、NAY519年頃
所属部隊 なし
銀龍がポケットマネーで運営している孤児院の女の子。
非番の時にもお手伝いをしたり、銀龍にとても忠実。
元は、裏九龍城国にいた孤児で、その命を銀龍に救ってもらって恩義も感じている。
本人は生きられれば良いと思っているが、実はかなり手伝ってもらっているため、
一般のサラリーマン以上の金額を貰っている。
後方支援的な役割が多いのだが、下手な九才児よりもソツなく何事もこなすせいか、
リームォよりも大人っぽいと評されることが多い。
非常に頭のキレがよく、手先も器用なので、後方なのにかなり重宝されている。
金龍についているが、銀龍にも信頼を寄せていて、双龍の為に色々とお世話をしている。
落ち着いた雰囲気や見かけによらず、超頭脳派で誰よりも行動派。
金龍と銀龍の目の前では、特におめかしに気を付けており、銀龍や金龍に負けないようにと
しっかりと漢服を着こなしている。
リームォとは、実は結構はなししたり、交流がある。