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1-7 朱雀部隊隊長 黎 麗々(レイ レイレイ) その2


 レイレイの全力にもかなわない、化け物三人組をよそに、彼らを遠くで見ている、影が三つある。


 銀龍は、目を細くさせ、あきれ顔をしたままだ。


「綾ちゃんさぁ、何か変じゃね? そもそも論、何で演習の負けのリスクが、キレイにさせたり可愛くさせるわけよぉ?」


 綾は、金色のグラスレンズを下げ、テーブルに置いた。


「あらあら、良いじゃない。だってあの子たち可愛いし、彼女たちは……。メイドインガールズ達は、あれが一番のストレス解消よ? そうしないと、私が全て被験者となるんだから……」


 金龍はキセルの先端を返し、壺の中に灰を落とした。


 壺は、華の髪飾りをしている女の子が持ってくれている。


 金色の美女は、切れ長のまつげを銀龍へと向ける。


「あら、それはまた大変ね、綾ちん。たまにはあの子たちに、女の子らしいお洒落でも教えてあげたら? 銀龍?」


 銀龍は、美貌の持ち主なのだが、本人はあまり自覚していないらしく女性としてみても、言葉はクズゴミ並みの乱暴な口調だし、かなりガサツな所もあり、金龍と比較すれば色っぽさなど微塵もない。


 クンフーの直接指導は銀龍が教えているのだが、面倒くさがりの性格も手伝ってか、化粧のやり方などは一切あの子たちは教えていない。


 銀龍は、中国扇子を閉じる。


「うっせーなー、金龍」


 綾は椅子から立ちあがり、座っている銀龍に顔を落とすように近づける。


 ハミルトン綾は、金龍よりも多少高いぐらいで、この中では一番背が低いのが銀龍だ。


 ジロジロ見下ろされる銀龍がたえかねて、口を開く。


「な、なんでぇ……綾ちゃん……」


「銀龍さん、どお? この演習期間が終わったら、たまにはミツ群島の接待にでも来ない? もちろん、他のメンバーも来て貰ってもいいんじゃないかしら?」


「え? 行くわけないだろ。メンドイ……」


「あなた、磨けばもっと美しくなるわよ? 香水のチョイスも悪くないし」


 銀龍が唯一女性っぽいところは、容姿を着飾るよりも香水だ。


 香水が大好きなのは父親が九龍城国で香水などで商売していたからだ。


 その影響もあるし、母親は古物商を営んでいて、母親から譲り受けた銀色の扇子は銀龍の武器でもある。


 銀龍は、つんとそっぽを向く。


「うるせー、仕事できればいいんだろう。仕事できればさぁ」


 金龍は、目を細め、クスクス笑い始める。


「あら、接待も十分な仕事じゃない。たまには良いじゃないかしら。息抜きに男でもひっかけてきたら?」


 銀龍はムスッとして、腕を組んだ。


「金龍! オレをからかうな」


 場所は再び演習場へと戻る。


 かすかな、やかましい甲高い声に、レイレイは目を覚ました。


 右肩が痛む。


 目の前には、地面が円球にえぐられた跡がある。


 それに見覚えがあり、恐らく自分をぶん投げられた衝撃でその跡ができたのは、何となくわかった。


 横を振り向くと、聞き覚えのある声、ルェイジーが涙を流しながら、レイレイの名前を叫んでいた。


「レイレイ、大丈夫アルか!!」


「うん、何とかね……」


 レイレイは元気を振り絞り、再び身体を動かそうとするが、右肩も痛むし身体が動かない。


 自分の胸元に視線を運ぶと、自身の不自由さの原因が分かった。


 ルェイジーと同じように、黒い縄みたいなので、しつこくグルグル巻きにされていた。


 そして、顔面を真っ白に塗った屈強な男たちの、でかい顔がレイレイの目いっぱいに広がった。


 レイレイは、「ヒィッ!!」とあまりの迫力に声をあげてしまった。


 金髪の長髪が口を開いた。


「あんらー!!お目覚めぇ!!」


 金色にまぶしいシェンリュは口を開く。


「大丈夫、レイレイ? 肩脱臼してるんじゃないの?」


 レイレイは、自信を心配してくれている事にすまなさそうに言葉を紡ぐ。


「シェンリュ、ごめんなさい。私はあなた達を助けられなかった」


 シェンリュは、答える。


「アタイは、アンタの事信用してたよ。必ず助けに来てくれるってさ……」


 その言葉にレイレイは、ルェイジーとは違う涙目になって、下唇をかんだ。


 あらゆる修行を行い、適正テストも受かり、更には主席の成績で九龍城国賞も貰っている、レイレイにはこの姿そのものが屈辱であり、小隊長としても非常にふがいない姿の自分に腹をたてているのだ。


「負けたわ……」


 他の部隊とはいえ、二人にはあまりこんな顔を見せたくはなかった。


「まあ、いいんじゃないかしら? 私たち、雑魚敵じゃないからぁ」


 自信満々に丸太並みの腕を組む。


 レイレイはそのオカマに言葉をかける。


「すみません、見かけに騙されてました。こんなに強い人たちだったなんて……」


 金髪オカマは、レイレイに顔を寄せる。


「あら、ま、カワイイ。でもね、それは大切な事よ? 戦場では見掛け倒しはいっぱいいるけれどぉ、本物はわずかよ」


 レイレイは、金髪オカマに純粋なまなざしを向けた。


「ありがとうございます、そしてあなた達の名前を知りたいです……」


 金髪オカマは、にやりと笑う。


「そうねぇ……。本当は三人揃ってから、自己紹介するつもりだったんだけどねぇ……。

私の名前は、マリーンマグドガルよん!! 水の中だったら、誰にも負けない!! 鋼鉄の女の子!」


 そして、捕らわれたルェイジーのそばに立っている、立っている黒髪の東洋系オカマにも声をかけた。


「あなたは?」


 黒髪の瞳は実にまっすぐで、仕事に対しては真摯でプロフェッショナルな印象がある。


 実は、かなり忠実な人間ではないのかと思わせる。


「あらあら私のこと? 私は蒼井空。元陸上自衛隊、元日本外人部隊の者よ……空の上だったら誰にも負けないわ。大空が……私の晴れ舞台……」


 レイレイは、無駄に感動する。


 身なりなどは、はち切れんばかりの体格にメイド服の恰好をしているが、状況判断や身をていしてまでも、ボスに忠誠を誓う姿。


 更にはクンフーを通じて、その己自身を超えるぶれない揺るがない強さ。


 レイレイにとっては、初めての人間? だった……。


 ルェイジーは、顔をうなだれて、元気がなくなっている。


 違う意味で、目がウルウルしているのだ。


「うう……おなか……すいたアルゥ……」


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