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生まれる世界を間違えた  作者: 南樹
第一話
4/7

の4

授業中、どうしても気になりちらちらと梨園さんを見てしまう。

彼女の席は教室のちょうどど真ん中辺りの席なので、遠すぎず近すぎずよく見えてしまう。

前を向いていても視界の端に入るような位置なので、

黒板を見ようと思ったらどうしても視界に入ってしまうのだ。


黒板を見る。ノートに写す。黒板を見る。ノートに写す。

その動作の一つ一つに静かな印象を受けるが、普通に授業を受けている女子だ。


(ってかこんなに見ちゃうとか僕やばくないかな?)


やはり気になるのだ。彼女を怒らせてしまったかもしれない。

女子の間では僕は「曲がり角ぶつかり男」とか噂されているのかもしれない。

わざとじゃないんだ!わざとだとしたらそりゃ最低なヤツだけど、そんなことは絶対しない!

ってか「曲がり角ぶつかり男」ってなんだよ!わけわかんないだろ!

頭の中がもんどりうったようにぐちゃぐちゃになっている。

頭が落ち着かないと体も落ち着かないのか、

もぞもぞ動いたり、顔をごしごしと手で拭っていると


「どーしたー?」


と隣から間延びした声で話しかけられる。


「いや、どうもしないよ。うん、どうもしてない」


「いやー、今日のあるあるなんか変だぞー」


「いや、変じゃないよ?うん、変じゃない」


(まっずーい!これじゃ「曲がり角ぶつかり男」じゃなくて、

 授業中に女子をちらちら見ている変態と思われてしまうかもしれない!)


「まー、なんか悩んでるなら言えよー?」


「う、うん。ありがとう。」


と、午前中にそんなやり取りもあったが何もせずとも時は流れるもので

いつの間にやら放課後になる。

ヒソヒソと噂話をされてるような感じもないし、

どうやら「曲がり角ぶつかり男」とは呼ばれていないみたいだ。よかった。


今日一日見ていて思ったのだが、梨園さんはとても物静かな人である。

授業中は真面目にノートを取り、休み時間は次の授業の準備と予習・復習をして過ごす。

昼は、僕は学食に行くので詳しくはわからないが、教室で静かにお弁当を食べているみたいだ。


放課後は部活動に入っていないのか、教室を出てそのまま帰るみたいだ。


僕は、いつもは誰かと話してたりどこかに寄ってから帰るのだが、

今日はそんな気になれずに直帰することにした。



◇ ◇ ◇ ◇


「なぜこんなことに・・・」


知らなかったのだが、どうやら僕と梨園さんは帰る方向が同じようだ。


梨園さんの方が学校を出るのが少し早かったため、

僕がその少し後ろを歩くという位置関係になってしまっている。

なんとも気まずい位置関係だ。

少し早歩きして追い越すのもなんだかなぁ‥と思ってしまい、

同じような速度でつかず離れずの距離を保っている。

しかし気まずい。

そう感じているのは僕だけかもしれないが、

怒らせてしまったかもしれない女子の後ろを歩くのはなんともツラい。


意を決して話しかけてみるか?

いや、いきなり話しかけるとか気持ち悪いだろう。

今朝はごめん。とか?

いや、なんて話しかけるかとか考えなくていいだろ。

梨園さんもこっちなんだ。とか?

なんだ?僕は話しかけたいのか?


そうか僕は話しかけたいのか。今朝からずっと気になっていたのはそれか。

しかし気の利いたことも言えない面白くもない僕がいきなり話しかけたとしてどうする。

「なんだこいつ?きもちわるっ」とか思われてしまうのではないだろうか。

あぁ、ダメだ。気にはなるのにやめる理由ばっかり探してしまう。

話しかけようとしてちょっとだけ前に出した手がガチョーンのような形で静止してしまう。


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